オレオサイエンス
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20 巻, 3 号
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特集総説論文
  • 小川 順, 奥田 知生, 菊川 寛史, 安藤 晃規
    2020 年 20 巻 3 号 p. 103-109
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/03/04
    ジャーナル フリー

    アラキドン酸高含有油脂の発酵生産に代表されるように,Mortierella alpina 1S-4株の高度不飽和脂肪酸(PUFA)高含有油脂生産におけるポテンシャルは高く,多面的な育種研究が展開されてきた。本稿では,M. alpina 1S-4株の形質転換系の開発を俯瞰するともに,近年取り組んだ分子育種研究である,オメガ3系エイコサペンタエン酸(EPA,20:5n-3)の発酵生産研究,ならびに,有用プロモーター,遺伝子ターゲティングシステムの開発と多様なPUFA生産への応用について述べる。

  • 安藤 晃規, 奥田 知生, 波多野 文美, 菊川 寛史, 松山 恵介, 小川 順
    2020 年 20 巻 3 号 p. 111-117
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/03/04
    ジャーナル フリー

    ω3高度不飽和脂肪酸(ω3-PUFA)は,脳機能の発達促進やアレルギー抑制など多彩な生理機能を有することが知られており,哺乳類では生理活性物質の前駆体ともなることから,医薬品原料や食品添加物としての需要が高まっている。ω3-PUFAのうち,エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA),α-リノレン酸(ALA)は,天然資源に比較的多く存在することから,生理機能解析や商業利用がすでに進められている。一方,ステアリドン酸(SDA)やω3-ドコサペンタエン酸(ω3-DPA),ω3-エイコサテトラエン酸(ω3-ETA)といった天然に希少なω3-PUFAは,他のω3-PUFAと同様に有用な生理機能が期待されているものの,供給が不十分であるために研究が進んでいないのが現状である。例えば,ω3- DPAはタテゴトアザラシなどの抽出油に含まれていることが報告されているが,含有量は総脂肪酸の5%以下であり十分な供給は望めない。

    近年,細菌や真菌,植物,微細藻類などによるω3-PUFAの生産に注目が集まっているなか,我々は特に希少ω3-PUFAに着目し,安価で大量かつ安定的に生産できる供給源として期待されているAurantiochytriumSchizochytriumをはじめとするラビリンチュラ類微生物を対象にスクリーニングを行なった。本稿では,希少ω3-PUFAの生産株探索に関して,新たに見出したAurantiochytrium sp. T7株によるω3-DPA 生産に関する研究について紹介する。

  • 渡邉 研志, 秋 庸裕
    2020 年 20 巻 3 号 p. 119-124
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/03/04
    ジャーナル フリー

    地球環境の保全と資源・エネルギーの再生利用を両立する持続的技術として,海洋大型藻類や火力発電排出ガスを原料としたバイオリファイナリーにより,高度不飽和脂肪酸やカロテノイド,炭化水素などの有用脂質を生産する新規システムの構築を進めている。油糧微生物ラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属の有機酸資化性を活用した二段階発酵系とゲノム育種による高機能化を統合して生産性の最大化をめざしているので,その進捗を紹介する。

  • 尾崎 達郎, 和田 真由美
    2020 年 20 巻 3 号 p. 125-133
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/03/04
    ジャーナル フリー

    エイコサペンタエン酸(EPA)等の高度不飽和脂肪酸(PUFA)は様々な生理機能を有することで知られるが,主な供給源が魚油であるため供給不足が懸念されている。そのため,PUFAのサステナブルな供給源の開発が求められている。微細藻類は高い油脂生産能からPUFAの新規供給源として期待されており,培養から油脂抽出・精製に至るまで様々な取り組みが行われてきた。しかし,微細藻類の商業利用のためにはPUFAの生産性が不十分であり,藻類株の改変による生産性向上が必要不可欠であった。本稿では微細藻類NannochloropsisのEPA合成経路の解明および複数の遺伝子の発現強化によるEPA生産性向上について研究成果を紹介する。

総説
  • 徳留 嘉寛
    2020 年 20 巻 3 号 p. 135-139
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/03/04
    ジャーナル フリー

    薬学や健康科学領域で,化合物の経皮吸収は大変重要な技術領域である。一般に,皮膚は外部からのバリアとしてはたらくことが知られている。一般的に経皮吸収に有利な化合物は,低分子(分子量500以下),脂溶性が高い(オクタノール水分配係数が1から2)であることとされる。したがって水溶性高分子化合物の皮膚浸透性は極めて悪い。本稿では,一般的に経皮吸収に不向きとされる水溶性高分子としてヒアルロン酸をモデルとして最近の著者らの研究成果を紹介する。具体的には,ポリイオンコンプレックス法でヒアルロン酸ナノ粒子を作成し,それを皮膚に適用することでHA を受動拡散で皮膚中に送り込むことができた。これらの技術が将来,健康科学に貢献できることを望む。

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