2022 年 22 巻 3 号 p. 121-126
タンパク質や核酸などのバイオ分子は医薬品として利用され,臨床現場で大きな成果をあげるようになった。経皮吸収とは薬を皮膚から送達する方法であり,注射投与と比較して,安全かつ簡便な方法であることから,バイオ分子を経皮吸収させるための技術開発が注目されている。バイオ分子を油中にナノメートルサイズの粒子として分散させるSolid-in-Oil(S/O)技術は,経皮吸収促進効果をもつ油状基剤とバイオ分子を組み合わせることができることから,バイオ分子の経皮吸収において非常に有効であることが知られており,インスリンのようなタンパク質の経皮吸収効率の向上が報告されている。近年では,塗り薬型ワクチンの開発などが盛んに研究されており,抗原特異的な抗体産生や細胞性免疫の誘導が可能であることが明らかとなっている。今後の発展によって,S/O技術によるバイオ分子の経皮吸収製剤が実用化されることが期待される。