2025 年 25 巻 12 号 p. 539-546
シクロデキストリン(CD)は,グルコースが環状に結合した分子であり,その内部は外部よりも疎水性環境であることから,CDはその内部の空洞に疎水性の物質を包接する。この包接によって,CDは水に溶けにくい化合物の溶解性改善や不安定な化合物の安定化などの機能を示す。CDによる化合物の包接は疎水性相互作用やファンデルワールス力,水素結合といった非共有結合に基づく分子間相互作用によってもたらされるため,溶液中でのCDと化合物の包接複合体の形成は平衡状態にある。薬物の可溶化を目的としたCDの使用例は多くあるが,生理的条件ではCDは生体膜をほとんど通過せず,CDから遊離した薬物のみが生体膜から吸収される。このため,水性溶媒中での強固な包接複合体形成が薬物の可溶化につながるが,生体への吸収の際には遊離される必要がある。したがって,薬物の可溶化にCDを利用する際には,薬物とCD間の安定度定数を把握することが重要である。近年,ハイスループット技術の導入が進み,開発される化合物には水に溶けにくい性質をもつものが多くなっている。CDの特性を最大限に活用することで,多くの水に溶けにくい新規化合物を医薬品などに利用できるようになることが期待される。