抄録
[60] フラーレン (C60) を代表とするフラーレン類は特異な電子構造が注目され, 半導体, 超伝導, 光電変換, 導電材料, 医療材料など様々な応用が期待されている。しかし, (i) 極性溶媒に対する溶解性の低さ, (ii) 光二量化などの副反応の存在, などの問題点を抱えている。これらの問題点を解決するため, ホスト-ゲスト包接錯体を形成させ未修飾C60の水溶化を行った。さらに, この水溶化された包接錯体がDNAの光切断試薬として機能することを確認した。この包接錯体は電極上に並べることにより, 光電変換素子としても機能することが明らかとなった。これらの機能は, いずれもカチオン性のホストゲスト包接錯体がアニオン性のDNAや電極上に静電相互作用によって集積されたことにより発現したものである。さらに, 光機能性分子を材料に適用する上で, 包接錯体を形成することによる孤'立化の効果が確認できた。今後, ホストゲスト包接錯体の利用によって, より複雑な系を構築することが容易となると予測され, 様々なナノテクノロジーやセンシングシステムにおける超分子デバイスの開発に包接錯体の導入は有効な手段となるものと期待される。