抄録
バイオレメディエーション技術は経済的かつ汚染現場で行うことができるため, 有効な環境修復技術の一つとして用いられている。数多くの汚染物質の中でも, ガソリン, 航空燃料, ジーゼル燃料, 燃料油等の石油系炭化水素は, 通常の場合, 微生物の生育炭素源・エネルギー源であるため, バイオレメディエーションによって二酸化炭素と水への完全無機化が可能であり, これまでに数多くの石油分解微生物について研究報告がなされている。しかしごく最近までは, 環境中において分解に関わっているが培養できない微生物については, ほとんど解明されていなかった。バイオレメディエーションに伴う微生物コミュニティーの変動に関しては, 解明の緒に就いたばかりである。本稿では, 最近徐々に明らかにされつつある油分解の「主役微生物」に関する知見を紹介するとともに, 油汚染の浄化は単一微生物によるものではなく, 直接的あるいは間接的に分解に関わる多数の微生物によるネットワークで行われることも紹介する。