オレオサイエンス
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受賞論文
植物由来グルコシルセラミドの食品機能性評価とその応用
植物および真菌由来スフィンゴ脂質による大腸ガン予防効果
間 和彦
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2007 年 7 巻 4 号 p. 141-149

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抄録

植物の主要なスフィンゴ脂質であるグルコシルセラミド (GlcCer) には興味深い生物活性が見出されており, 保湿、性向上や美肌効果を期待した機能性食品素材として利用されている。植物GlcCerの構成セラミド組成は動物由来スフィンゴ脂質と比較して複雑で, その分子種特性には種や組織による多様性が認められるが, そのことは物理的性質や機能性にも影響を与えるものと考えられる。低コスト・大量分離が期待される各種植物由来のグルコシルセラミド構成分を分析したところ, ダイズ由来GlcCerの主なスフィンゴイド塩基は4一トランス, 8-トランスースフィンガジエニン, コメやトウモロコシ由来では4-トランス, 8-シスースフィンガジエニン, コムギやライムギでは8-シスースフィンゲニンであるなど, 植物種によって構成分には特徴があった。
動物起源のスフィンゴ脂質は抗発ガン作用や各種細胞へのアポトーシスを誘導することが知られていたため, 植物および真菌由来GlcCerからスフィンゴイド塩基およびセラミド類を調製し, アポトーシス誘導活性との関連についてヒト結腸がん細胞株Caco-2を用いて検討した。その結果, 植物および真菌由来スフィンゴイド塩基のCaco-2細胞におけるアポトーシス誘導が示された。また, 分化させたCaco-2細胞ではアポトーシスをほとんど誘導せず, 植物および真菌由来スフィンゴイド塩基はガン細胞特異的にアポトーシスを誘導すると考えられた。続いて, 植物および真菌由来GlcCerの生体内での大腸ガン発症予防効果をDMH投与マウスの大腸腺腫 (ACF) 誘発系を用いて検証した。トウモロコシおよび酵母から分離精製したGlcCerを, 飼料 (AIN-76) に0.1~0.5%の割合で添加し, 試験食とした。10週間試験飼育後, ACFの発生はGlcCer投与により無投与の場合と比較して有意に減少し, 酵母由来GlcCerO.1%投与で54.0%, トウモロコシ由来GlcCerO.1%投与で58.9%, 0.5%投与で44.7%に減少した。また, 糞中の脂質を分析した結果などから, GlcCerの分解が確認された。以上の結果より, 植物および真菌由来GlcCerの経口摂取による大腸ガン発症予防効果が示唆された。

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© 2007 公益社団法人 日本油化学会
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