抄録
土壌・水環境において金属イオンの化学種分布に影響を及ぼす天然コロイドとして, 天然高分子電解質である腐植物質に着目し, その静電モデルをレビューするとともに, 蛍光消光法による電位評価との比較から, 各モデルの妥当性を検証した。腐植物質の一種であるフミン酸の負電荷が, 分子内部および外部の電気二重層中で中和されるとして, それぞれの寄与を明示的に考慮したモデルによる電位の計算値は蛍光消光実験の結果と良い一致を示した。一方, Donnan平衡を仮定したモデルでは, 実験値と比べ, フミン酸の負電位を過大評価することが分かった。これは, フミン酸分子が完全なDonnan平衡を考えるには小さいことを示唆しているといえる。