オレオサイエンス
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特集総説
猫はなぜ魚を食べるのか : 脂質栄養学から見た仮説
日比野 英彦
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2009 年 9 巻 10 号 p. 443-453

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抄録
真性肉食動物の猫は栄養素必要性としてアラキドン酸, レチノール, タウリンが知られている。アラキドン酸の必須性は△6-不飽和化酵素の欠損による。そのため, リノール酸を摂取してもアラキドン酸に代謝できない。レチノール (ビタミンA) の必須性は腸内ジオキシゲナーゼを欠失しているためβ-カロチンをレチノールに分解できない。タウリンを合成する酵素を持っていないため, 動物性タンパク質にのみ存在するタウリンを摂取する必要がある。△6-不飽和化酵素の欠損はn-3系脂肪酸のリノレン酸を摂取してもEPAやDHAに代謝できないことも意味している。真性肉食動物の猫はアラキドン酸およびEPAやDHAを得るため植物のリノール酸やリノレン酸を摂取しても代謝できないのでそれらを含有している哺乳類の肉を摂取する必要がある。魚はEPAやDHAの他, アラキドン酸, レチノール, タウリンを含有している。闇の中でものが見える猫の網膜の視細胞, すなわち, 光受容器細胞の構築と維持のためにもDHA, レチノール, タウリンが必要である。以上の理由から筆者は, 「肉を摂取できない時は, 猫は魚を食べる」という仮説を提案する。
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© 2009 公益社団法人 日本油化学会
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