オレオサイエンス
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特集総説
ホスファチジルセリンの代謝調節とオルガネラ間輸送
久下 理
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2009 年 9 巻 10 号 p. 455-464

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抄録

リン脂質の代謝調節とオルガネラ間輸送は, 真核生物の生体膜の構築に必須の反応である。真核生物の主要リン脂質の一つであるホスファチジルセリン (PS) は, 小胞体 (ER) とERのサブドメインであるミトコンドリア結合膜 (MAM) で生合成される。哺乳動物培養細胞では, PSの生合成は外因性のPSにより著しく阻害され, このフィードバック制御は, PS合成酵素遺伝子の発現調節ではなく, PSの存在により酵素の活性そのものが阻害される様式による。一方, ER/MAMで合成されたPSは, 形質膜, ミトコンドリア, ゴルジなど細胞内のさまざまなオルガネラに輸送される。これまでの研究により, PSのオルガネラ間輸送は, PSを供与するドナー膜とPSを受け取るアクセプター膜の問の接触領域を介して行われることが示唆されているoまた, 近年の研究により, PSのER/MAMからミトコンドリアあるいはゴルジへの輸送に関与するいくつかの脂質因子とタンパク質因子が同定されている。本総説では, 哺乳動物細胞におけるPS生合成調節機構と哺乳動物細胞と酵母におけるPSのER/MAMからミトコンドリアあるいはゴルジへの輸送機構に関して現在理解されていることを紹介する。

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© 2009 公益社団法人 日本油化学会
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