地理学論集
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85 巻, 1 号
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紙碑
論文
  • 澤柿 教伸, 松岡 直子, 岩崎 正吾, 平川 一臣
    2010 年 85 巻 1 号 p. 3-15
    発行日: 2010/09/30
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
  • 山下 亜紀郎
    2010 年 85 巻 1 号 p. 16-25
    発行日: 2010/09/30
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
  • 渡辺 悌二, 泉山 茂之, ガウナビナカ レンバイアテライテ, アナルバエフ マクサト
    2010 年 85 巻 1 号 p. 26-36
    発行日: 2010/09/30
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
     キルギス共和国南部のアライ谷とタジキスタン共和国北部のパミール北部で,1991年独立後のオオカミによる家畜への被害と被害の軽減策の問題点を明らかにした。2008年と2009年に合計14人から聞き取りを行い,また,キルギス側ではアンケート調査を行い,2008年に331軒から,2009年に468軒から回答を得た。
     アライ谷では1991年以降,集落の周辺に住む「里オオカミ」の頭数が増加しており,アンケート調査によれば70.8%の住民が実際にオオカミを目撃している。オオカミによる家畜の被害を実際に経験した世帯は,7つの集落の平均で67.8%に達し,なかでもカシカス村では80.7%の世帯が家畜への被害を経験している。この被害は,1991年以降,中央政府によるオオカミの駆除がなくなり,住民自身の手で駆除しなければならなくなったために増加している。ところが,現地のハンターは,貧困のため銃の修理や買い換えの資金がなく,銃弾の購入さえ困難な状況におかれている。このため,オオカミを自分たちの手で駆除できずにいる。一方で,銃や銃弾が容易に入手できる軍人や国家保安委員会職員が,野生動物(アイベックス)を大量殺戮しており,オオカミの餌資源である野生動物が減少していることも,家畜への依存を高めた原因の一つとなっている可能性が大きい。
     このように,アライ谷におけるオオカミによる家畜への被害の増加は,国家独立後の社会変容と大きく関係している。オオカミが家畜に与える脅威が増大していると考えている住民は全体の90.0%に達しており,オオカミの頭数のコントロールが必要がと考えている住民は94.4%にのぼる。地元ハンターがオオカミを駆除すると報奨金が支払われる制度が存在してはいるものの,機能しているとはいえない。報奨金制度を有効なものにするには,支払いが地元で行われるように制度を変更し,地元ハンターに銃・銃弾の支給を行うなどの改革が必要となる。また,野生動物の大量殺戮を防止するためにも,軍人や国家保安委員会職員がオオカミ駆除に加わり,報奨金を得られる制度にすべきである。
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