近年,基盤産業である農業の不振,過疎化,高齢化など深刻な問題を抱える農村地域において,地域活性化に向けての様々な取り組みが試みられてきている。こうした動きの中で,従来型の農政主導の地域形成の転換が徐々に進みつつある状況と言えよう。本稿では,近世後期以降,国家主導の開発政策の影響が極めて強い点が指摘されている北海道農村地域に焦点を当て,地域形成の変容がどのように進展しているのかという問題について,先行研究で示された視角を採用しつつ,その要因を探ることを目的とする。その際,道央大規模水田地帯三市町村の事例を取り上げ,米の生産調整が開始された1970年以降の地域形成の展開過程について,国,道の政策と,農業者の活動が相互に影響を及ぼし合う集団レベルに焦点をあてつつ比較分析を行う。ここで得られた知見を整理すると,国,道の政策の転換が地域形成の変容の大枠を規定するものの,地域集団の活動形態が,農村地域形成の方向性を大きく左右している点である。
その中でも,政策推進に先行する集団活動,集団活動を結びつける水平的ネットワークという二つの要素の重要性が明らかになった。これらの知見は,従来支配的だった「官」主導の影響力が著しい北海道農村地域形成という把握の再考を迫るものであり,地域住民の主体的な活動を強調する内発的発展論の理論的展開に向けての一つの根拠となるものと思われる。
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