現代社会学研究
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10 巻
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  • 小内 透
    1997 年10 巻 p. 1-22
    発行日: 1997/06/30
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    戦後の北海道における地域社会は,国家の農業政策,地域開発政策,人々の都会志向の高まりなどによって,大きな変貌をとげた。
    戦後の農業政策が推進した「選択的拡大」,農産物の輸入自由化,米の減反は,数多くの農家の離農をもたらし,多くの農村社会を解体させた。しかも,それらの地域の多くは,国家の地域開発政策が農業に代わる産業を生み出しえなかったため,地域社会の経済的基盤を弱体化させざるをえなかった。また,若者を中心にした人々の都会志向の高まりは,大都市地域への人口移動のパターンを作り上げた。
    その結果,経済的な基礎構造の再編を基底にして,数多くの市町村で人口が減少する一方,高学歴者や相対的な若年層にシフトした形で札幌市や札幌圏へ人口が集中した。現在,42.9%に及ぶ市町村が国勢調査開始以来最小の人口規模となり,道内人口の30.9%,高等教育修了者の45.4%が札幌市に集中するようになっている。しかも,その過程で,札幌市を含む全般的な生産力(所得)水準の低下も進んだ。そのため,過密地域,過疎地域とも大きな課題を抱えるようになっている。
    そこでは,従来の国家の諸政策のあり方を転換し,地域社会を再建する担い手を育て,支えることが必要となる。
  • 松田 光一
    1997 年10 巻 p. 23-43
    発行日: 1997/06/30
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    原材料資源の供給基地として日本経済の補完的な役割を果たしてきた北海道は,農林漁業,石炭,鉄鋼,パルプ等少数の産業に著しく特化した産業構造をもっていたが,高度経済成長期以後はサービス業,卸売・小売り業等第3次産業へ比重を移してきた。明治以来,国や道による「官」主導の開発が進められてきた北海道では,基幹産業の衰退は代替産業がないだけに経済活動の中心を勢い公共事業や観光事業に求める傾向が強く,その体質改善が北海道経済の自立に結びつけて昨今鋭く指摘されているところでもある。また就業構造については自営業主,家族従事者が減少して雇用者が増える中,雇用者全体のホワイトカラー化が進みかつ女子の就業率の増加が顕著である。しかし基幹産業の縮小・後退による地域の雇用問題に加えて,経済のグローバル化にともなう産業の再編過程で,われわれをとりまく雇用環境も大きく変わりつつある。パートタイム,派遣労働など非正規雇用が増加し日本的雇用の枠組みも徐々に崩れつつある今日,だれもが将来の雇用と生活に漠然とした不安をもつ時代になった。ここではそのような現状の把握と問題点の指摘を行うものである。
  • 北海道的特殊性と21世紀への課題
    笹谷 春美
    1997 年10 巻 p. 44-65
    発行日: 1997/06/30
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は,戦後北海道における家族の変容の特色を分析し,21世紀に向けての家族研究の課題を示すことである。その方法は,家族の動向を示すメルクマールの一つとしての,出生率を中心とする人口学的要因の変動を分析し,全国レベルとの共通性と異質性をもたらす原因やメカニズムについての社会学的内実を,先達の研究から検証することである。明らかになったことは,北海道においては,戦後の出生率の安定期が短期間で終り,全国レベルに比べ,一階梯早く,家族形態のシンプル化,小家族化,脱直系的三世代家族化が進行していることである。これと関連し,家族研究においては,農漁村においても都市においても,「家」や「村」の伝統的ネットワークから自立した裸の家族としての,合理性と同時に脆さも持つ,北海道的近代家族の労働と生活の世代的営みの特色が明らかにされた。それは,「高度成長」期においては,農漁業のスクラップ化と労働力供給源としての厳しい北海道社会の位置において,自らの労働と生活を守る過程でもあった。その結果,21世紀の高齢社会に向けて,孤立化し縮小化した近代家族の枠を超えた新しいネットワークの形成が,全国にも増して問われているところである。
  • 杉岡 直人
    1997 年10 巻 p. 66-82
    発行日: 1997/06/30
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    社会福祉の歴史は貧困や失業等による社会経済生活の問題に起因する児童・家族問題や産業化と都市化にともなう地域生活の変容に伴い発生する問題への社会的対応として展開してきた。戦後50年を経た今日,北海道社会における社会経済的変化がどのように社会福祉サービスの方向づけと関連してきたのか。北海道における戦後の社会変動と社会福祉の力動的な関係を意識しつつ,社会福祉政策のグローバルな変化を射程に入れて直面する課題への接近を試みることにしたい。とくにゴールドプラン以降,社会福祉政策は大きく変化しているが,過疎地域が多く,医療サービスへのアクセスも十分とはいえない北海道の社会福祉の展開にどのような意味と関連をもたらしているのか,公的介護保険制度の導入の問題を含めて総括する。
  • 戦後50年
    蓮池 穣
    1997 年10 巻 p. 83-98
    発行日: 1997/06/30
    公開日: 2010/07/30
    ジャーナル フリー
    戦後の北海道民の投票行動は,国政選挙についてみても,全国の平均値から大きくずれていた。自民党と社会党への投票がほぼ拮抗し,さらにこの二政党への投票が,全投票のなかできわめて大きな割合を占めていた。特に社会党の得票率では,1958年以降全国的に大きく下降したのに対し,北海道での下降は目立つほどのものではなかった。このため北海道は,「最後の社会党王国」ともいわれた。
    北海道に在住する大学関係者による投票行動調査は,1953年から断続的ながら続けられてきた。これらの調査では,それぞれ大なり小なりに,なぜ北海道が「社会党王国」であり続けているのかが,問題関心として共有されてきたといえる。1970年以降,コンピュータの利用も含めての調査技術の発達に加え,本州各地域での調査も活発に行われるようになり,「北海道の特殊性」もかなり具体的に検証が可能になったといえる。
    この課題のためには,自民,社会両党の支持者の政治的意見,所属団体,投票政党とその変動,支持の強さ,生活満足度,拒否政党などについて,多面的かつ継続的な調査・分析が必要であった。また,調査結果の解釈では,論者によって異なるところもあろう。筆者は,この「北海道の特異性」を,北海道における政党と政党支持者のかかわりのゆるさ(ルーズなかかわり)から説明した。これは,北海道における社会関係の特性ともかかわっていよう。
  • 原 俊彦
    1997 年10 巻 p. 99-117
    発行日: 1997/06/30
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    「テクノロジーが申し分のない発達をとげれば,それは魔法と見分けが付かなくなる」というアーサー・C・クラークの言葉が示すように,西暦2001年を目前にして,我々は,マルチメディアパソコンやインターネットの普及,シミュレーションをべースとしたバーチャルリアリティ技術の登場など,急速な情報技術革新の波に呑み込まれようとしており,このような変化が最終的にどのような社会を生み出して行くのか,あるいは,どのような社会を生み出しうるのかという問題は,極めて今日的な社会学的テーマとなりつつある。
    そこで本稿では,まず,近年の情報技術革新の発展方向を(1)デジタル化(2)メディアの融合(3)ネットワーク化(4)データベース化(5)仮想現実化という5つの側面から分析し,それらがメディアをどのように変貌させうるかについて検討する。
    次に,エンタテインメント,商取り引き,行政,教育の4分野を例に,これらの情報技術の背景に想定されている潜在的社会需要を探り,いわゆる「マルチメディア・ブーム」の社会的モチーフについて考察する。
    最後に,仮に現在進行しつつあるメディアの変貌が全面的に実現するとすれば,それが,どのような生活環境の変化を産み出すことになるのかについて,メディア接触時間の拡張や現実感覚の変化,情報メディアの環境化などの問題を取り上げ,「仮想現実社会の到来」の可能性を提示する。
  • 余暇活動としてのボランティア活動
    西浦 功
    1997 年10 巻 p. 118-131
    発行日: 1997/06/30
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    従来のボランタリーアソシエーション研究の多くは,社会問題解決のため特定の組織目標を効果的に遂行するボランティア団体の手段的な役割に注目し,かつ団体の理念実現を熱望する理念主義性の強いボランティア活動参加者像を暗黙の前提としてきた。しかし,ボランティア団体にはもう一つの役割,すなわち参加希望者に対して社会参加の機会を提供する表出的な役割があり,もっと多様なボランティア活動参加者像に目を向けるべきではないだろうか。
    本研究では,ボランティア団体の表出的な役割に注目した研究をめざし,ボランティア活動を余暇活動としてとらえるパースペクティブを採り上げた。余暇活動的視点に従って,ボランティア活動への参加を継続的に充足感を得るためのキャリアの探索と獲得の過程としてとらえることによって,従来はボランティア団体への関わりに関心が薄いとみられてきた周辺的なメンバー層を研究対象として積極的に採り上げることが可能となった。
    今後,参加メンバーに参加機会を提供する表出的役割の遂行を可能にするボランティア団体の組織運営の研究を深めるために,ボランティア団体への参加者の関わり方と,参加者がキャリアを蓄積していく過程とのつながりについてさらに分析が必要である。
  • 塩谷 治彦
    1997 年10 巻 p. 132-149
    発行日: 1997/06/30
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    いじめが重大な社会問題となっている中で,この論文は現代的いじめをもたらす社会的背景についての解明を試みたものである。いじめを引き起こす原因,または仮説として,家庭の中での過保護や放任,甘やかしなどが指摘される一方,その社会背景として受験競争や管理主義の学校教育の弊害が指摘されてきたが,現代のいじめを引き起こす原因の説明としては不十分の感がある。そこで本論では,いじめを引き起こす社会背景として共同社会から利益社会への変化の中で相互の信頼関係が衰退しており,それが進学競争や管理主義教育の中で青少年の不満や葛藤を強めているという仮説を設定した。現代的いじめを引き起こす要因として家庭や学校での青少年の置かれた抑圧的状況を仮定し,少年たちの欲求不満やストレスの増大がいじめにそのはけ口をもたらしているものと考えられる。ただし,いじめが暴行や恐喝,傷害など陰湿で残酷な行為につながる場合には,管理主義的教育や進学競争の中での緊張や欲求不満ばかりでなく,問題を起こす少年たちの管理・抑圧されることへの「うらみ」の感情があることを仮定することが必要である。いじめが暴力的非行に結び付く場合には,自己主張を抑圧されることのうらみの心理が方向転換されて弱い者いじめに結び付く可能性が高いことを示した。
  • 農村社会学からパーソナル・ネットワーク研究へ
    三谷 鉄夫
    1997 年10 巻 p. 150-158
    発行日: 1997/06/30
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
  • スウェーデン・モデルとジェンダー・コンフリクト
    加藤 喜久子
    1997 年10 巻 p. 159-168
    発行日: 1997/06/30
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    本稿では,スウェーデン・モデルの危機をめぐる議論の中で登場したジェンダー・アプローチに焦点をあてる。それは,女性と国家/社会との関係を解読しようとする試みとして位置づけられる。福祉国家は,女性の労働市場進出を条件づけ,市民権を獲得する道を開いたが,そこには女性の問題が社会や国家の中心問題となるプロセスが必要であった。ここでは,その過程をジェンダー・コンフリクトのダイナミクスとしてとらえるイヴォンヌ・ヒルドマンの方法を紹介する。彼女は,フェミニズムの運動と女性の社会的地位の向上のプロセスを,統合と分離,表層と深層の2つの軸を用い分析している。それは,社会のダイナミズムを把握する方法として有効であるといえよう。彼女の分析は,女性が男性と対等の地位を獲得するうえで,労働市場への参入が決定的な要因であったことを示す。福祉国家は,ジェンダー・コントラクトによってそれを約束するプランを用意したのである。彼女は,両親保険が今世紀のスウェーデンにおいて女性のためになされた最も重要な政治改革の1つであると指摘する。育児休業中の家事はペイドワークと同じ価値で支払われることになった。また,育児サービスの拡大は,家庭が公的領域にとりこまれることを意味する。今,ジェンダー・コンフリクトは労働市場での地位の対等をめぐって激化しつつある。スウェーデン・モデルは,それを新たな発展のエンジンにできるだろうか。
  • 白樫 久
    1997 年10 巻 p. 169-174
    発行日: 1997/06/30
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
  • 小内 透
    1997 年10 巻 p. 175-178
    発行日: 1997/06/30
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
  • 森 雅人
    1997 年10 巻 p. 179-181
    発行日: 1997/06/30
    公開日: 2010/07/30
    ジャーナル フリー
  • 河野 仁志
    1997 年10 巻 p. 182-184
    発行日: 1997/06/30
    公開日: 2010/07/30
    ジャーナル フリー
  • 原田 信男
    1997 年10 巻 p. 185-187
    発行日: 1997/06/30
    公開日: 2010/07/30
    ジャーナル フリー
  • 轟 亮
    1997 年10 巻 p. 188-191
    発行日: 1997/06/30
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
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