本稿では保育士たちが,どのような意識をもち多文化保育を実践しているのかについて,①差異をどのように捉えて,②どのような対応をし,③それによってどのような負担を感じているのかを,保育士たちを取り巻く環境に着目しながら検討した。
その結果,多くの保育士が,日本人児童とブラジル人児童の違いを認識していた。またその違いは,すぐに保育者が対応しなければならないことが多いため,保育士たちは日常の保育のなかでさまざまな工夫をしていた。そのため,多くの保育士が日常の保育に難しさを感じていたが,ブラジル人児童の受け入れには肯定的な者が多かった。
それを支えるものとしては,2つの要因がある。一つは通訳の存在である。通訳は単に言葉の伝達者としてだけではなく,日系ブラジル人児童を取り巻く文化を説明する役割を果すことで,保育士たちの理解が深まり,日常生じる問題に上手く対応することができていると考えられる。さらにもう一つの要因として,当該園が多文化共生保育を行うことを,保育方針として掲げていることで,保育士たちにごく自然と多文化保育の理念が浸透していると考えられる。
以上のように,保育士たちは難しい状況にあっても,それを支える環境があることで,多文化保育を前向きに捉え実践していることが分かった。
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