現代社会学研究
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21 巻
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
自由投稿論文
  • ――群馬県富士見村を事例として――
    新藤 慶
    2008 年 21 巻 p. 1-17
    発行日: 2008年
    公開日: 2012/01/31
    ジャーナル フリー
      1990年代後半から進められたいわゆる「平成の大合併」では,合併をめぐるコンフリクトが多数発生した。合併の是非や枠組みをめぐって,地域内が複数の派閥に分割され,地域社会の連帯が断ち切られることも多々あった。ただし,「昭和の大合併」研究を振り返ると,合併をめぐるコンフリクトが,「地域社会の民主化」の契機となったことが明らかにされたことがわかる。そこで本稿では,合併をめぐる住民投票運動が展開された群馬県富士見村を事例として,「平成の大合併」におけるコンフリクト構造の実態や,そのコンフリクトが地域社会にもたらした影響の解明に取り組んだ。
      その結果,以下の諸点が明らかとなった。第1に,合併協議から離脱した富士見村に対し,他の自治体から行政上の提携解消という「制裁」が課せられることで,村内での合併の是非をめぐる対立が強化された。第2に,合併推進・反対両派とも,異なる階層間の連携や,同一階層間の対立が見られ,多様な階層から構成されていた。ここには,保守対立を基調する地域権力構造が関わっていた。そして第3に,合併をめぐるコンフリクトを通じて,それまでの地域権力構造が変容した。この原動力となったのは,教育や保育などの「生活のアメニティ」を重視する新住民である。このように,「平成の大合併」をめぐるコンフリクトでは,新住民を主たる担い手としながら,「地域社会の民主化」につながる動きが確認された。
  • ――社会的ネットワークの再編成と職業ニッチ――
    人見 泰弘
    2008 年 21 巻 p. 19-38
    発行日: 2008年
    公開日: 2012/01/31
    ジャーナル フリー
      主な移民の就労に関する研究が,彼らの就労先が職業別の「ニッチ」のような特定の産業や職種毎に分断化されていくとみなしていたなかで,移民たちがどのようにして特定のニッチに参入していくのかという問いが提示されている。本稿は,1990年代以降,資格外就労者の労働市場に参入するビルマ系難民を事例とし,彼らがどのようにして労働市場における位置づけを確立していったのかを,入職経路に着目しつつ明らかにする。特に初職から現職に至るまでの過程において,彼らがどのようなアクターから就労に必要な資源を提供されてきたのかに注目する。
      フィールドワークのデータからは,以下のことが確認された。ビルマ系難民は,都市部の飲食業において職業ニッチを形成してきた。この職業ニッチは労働者の高い流動性を背景に,社会的ネットワークによる連鎖雇用によって形成されてきたものである。ビルマ系は,初職には親類や同居人などの身近な友人とのネットワークを介してアクセスしていく。その後,現職に至るまでに,政治組織や宗教組織,職場といった場面を通じて新規の友人関係を形成し,豊富な転職機会にアクセス可能にしている。なかでも多様なエスニックな出自や宗教的背景は,ビルマ系に同じエスニック集団成員に限らない友人関係を形成可能にしてきた。こうした来日以降に形成されたネットワークが,ビルマ系の職業ニッチを維持・拡張させてきたのである。
  • ――沖縄本島都市部を事例に――
    吉野 航一
    2008 年 21 巻 p. 39-57
    発行日: 2008年
    公開日: 2012/01/31
    ジャーナル フリー
      本稿の目的は,沖縄の都市部を事例に,近現代における外来宗教の土着化を明らかにすることである。宗教は近代化によって「私的」な事柄とされた。しかし,現在でも,宗教(が持つ儀礼/慣習)は,社会的/文化的な規範の1つとして認識されることもある。そのような中,外来宗教はどのように受容され,定着したのかを,信者の宗教実践から明らかにする。
      沖縄では,戦後の都市化によって,民俗宗教はその救済能力を十分に発揮できなくなってしまった。そのような中,外来宗教は,(1)「普遍的な神仏と明文化された教義教学」,(2)「信者同士の.がりと活動の場」などの,宗教的資源を提供することによって,民俗宗教では救済されなかった信者たちに受容されてきた。その際,信者たちは,再解釈によって,その地での信仰に適する神仏と教義教学を想定していった。さらに,信者たちは,(1)「宗教的慣習の転用/再利用」,(2)「民俗宗教が持つ宗教性の回避」,(3)「宗教的連続性/接続」といった方策を用いて,自らの信仰と地域社会/文化との関係を再構築することで,家族からの非難を回避し,異なる宗教文化を共存させることを可能にしていった。
      このような信者たちの信仰は,教義への黙従や地域文化への妥協ではない,土着化における創造的な宗教実践と言えるのではないだろうか。
  • ――「純福音教会」を中心として――
    李 賢京
    2008 年 21 巻 p. 59-77
    発行日: 2008年
    公開日: 2012/01/31
    ジャーナル フリー
      近年,韓国内ではプロテスタント人口が年々低下している状況であるが,福音主義教会は依然としてその教勢を維持し,海外宣教活動に積極的に取り組んでいる。特に,日本で成長している韓国プロテスタント教会の展開過程を通じて,韓国プロテスタント教会による宣教活動を再考することが本稿の目的である。
      本稿は以下の章で成り立つ。
      (1)韓国プロテスタント教会が海外宣教に目を向けることになった要因と,それを期に本格的に始まった海外宣教活動上の特徴を考える。(2)韓国に本部をもちながら日本で積極的に展開している「汝矣島(ヨイド)純福音教会(Yoido Full Gospel Church)」を中心に,韓国での特徴が日本においてもそのまま適用あるいは維持されているかを確認する。このために韓国においてのヨイド純福音教会がもつ特質について分析しつつ,日本における宣教活動の実態を把握する。(3)大都市を中心として展開している純福音教会(Japan Full Gospel Association)が,実際の伝道現場でどのように信徒の宗教的ニーズに応じているのかを,参与観察および聞き取り調査から検討する。
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