現代社会学研究
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20 巻
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  • 人見 泰弘
    2007 年 20 巻 p. 1-18
    発行日: 2007/06/10
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    近年,国境を越えた移民の国際的な移動は拡大してきた。この拡大を受けて,先進諸国では市民権制度に基づいた移民政策によって,移民の受け入れやホスト社会への統合の問題に対応しようとしている。他方で移民たちは,社会組織などを活用しながら,定住国での様々な問題に取り組むと言われている。
    では,こうした移民政策は社会組織にどのような影響を与えているのだろうか。本稿では国際移民のひとつである難民が,彼らを対象とした庇護政策にいかにして組織的に対応しているかを明らかにする。特に母国の軍事政権を倒すために組織的な活動を行うとされるビルマ系難民を事例として取り上げる。
    ビルマ系は,本国の軍事政権を倒し,将来帰国することを目的とした政治組織を形成してきた。一方で,ビルマでの複雑な多民族的背景によって,政治活動は一枚岩で展開することはできなかった。また同時に,非正規状態にいるビルマ系難民にとっては,在留権の確保が必要になった。ビルマ系は,難民認定制度を利用して在留権を獲得することが求められる。ビルマ系は,難民支援NGOと連携しつつ,難民認定に必要な情報や資料の収集を組織的に行うことになった。
    こうした過程を経て,ビルマ系は政治組織を再編しつつある。ひとつは,これまでの民主化運動の有り方を見直す方向に。もうひとつは,定住期間の長期化を視野に入れた方向に。それらは,彼らの将来への取り組みを示すものだった。
  • 閉鎖性とホモソーシャリティ
    坂無 淳
    2007 年 20 巻 p. 19-36
    発行日: 2007/06/10
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    本論文ではハラスメントと大学研究室の構造の関係を北海道大学の大学院生へのインタビュー調査から考える。大学研究室の構造には固定メンバーが長時間すごす閉鎖的な特徴があり,上下の関係としては研究室の権力がトップの教員に集中している。またジェンダーの関係として,ホモソーシャルな構造がみられる。具体的には,女性に対して(1)男性から女性への性的なジョーク,(2)少数派である女性が男性院生の友人を作りにくい状況,(3)研究が女性には向いて吟ないという偏見,(4)少数者である女性は会話の選択を強いられるという4点があり,同性愛に対しては同性愛ジョークがある。一方で,研究室では少数である女性院生の抵抗の戦略をみることもできた。
    上記のような閉鎖的でホモソーシャルな構造が大学研究室にできやすいようであるが,権力が集中する教員,また院生においても男性が多い。そこでは教員や多数派である男性院生に都合の良いように研究室の慣習がつくられ,下位で少数の女性院生が不利益を強いられることが多い。インタビューと『学生生活実態調査』からは「普通」の研究室にもハラスメントの潜在例は多く,大学の対応システムにのらない例も多い。また閉鎖的で教員の権力が強い,ホモソーシャルな構造のもとで,ハラスメントは温存される可能性が高いと考えられる。
  • 釧路湿原自然再生事業を事例として
    新藤 慶
    2007 年 20 巻 p. 37-54
    発行日: 2007/06/10
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    近年,地域社会の運営のあり方をめぐる議論のなかで,多様な主体が参加して地域運営のあり方を決定していくローカル・ガバナンスへの関心が高まっている。しかし,ローカル・ガバナンスを規定する論理,およびローカル・ガバナンスを通して見える地域社会の実像は,十分に明らかにされているとはいいがたい。そこで本稿では,釧路湿原自然再生事業の検討を行った。この事業は,行政,研究者,NPO,住民など多様な主体の参加が見られるため,ローカル・ガバナンスの実践例と捉えられる。この事例の分析を通じて,ローカル・ガバナンスを規定する論理と,そこから見える地域社会の実像の解明を試みた。
    その結果,本事例のローカル・ガバナンスを規定する論理として,第1に,実施者である中央省庁のイニシアティブ,第2に,ローカル・ガバナンスに参加しない住民の存在,第3に,ローカル・ガバナンスの主体間関係を根拠づける諸個人の労働や生活,が見出された。また,地域社会の実像として,第1に,地方自治体の弱さ,第2に,住民の行政不信,第3に,釧路湿原保全の見直しの必要性が明らかとなった。これらの知見から,本事例のローカル・ガバナンスの裏面には,ローカル・レベルでの危機的状況の進行,ローカル・ガバナンスにとっての外在的資源の重要性,さらにローカル・レベルに対するナショナル・ガバメントの強力な統制の存在が看取できるといえるだろう。
  • スチャリクル ジュタティップ
    2007 年 20 巻 p. 55-72
    発行日: 2007/06/10
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    大都市と地方小都市との格差,貧困問題,家族問題,及びコミュニティの問題は,多くのストリート・チルドレン(SC)を誕生させた。現在,タイでは約2万人のSCが存在している。SCは教育が不足しているため,行政やNGOはその問題解決のためにプログラムを編成し,ノンフォーマル教育(NFE)を提供している。
    本稿ではタイのNGOにおけるNFE活動について分析する。具体的には,「NFEが果たすSCのための役割」と「NFEにおけるNGO活動の役割」の二つを中心に,SCの能力向上のためのNFEの可能性について考察する。
    本稿ではタイにおけるNFEの活動がみられる3ヶ所のNGOプログラムを選んで調査した。SC15人とNGOのスタッフ6人に対して個人インタビューを行った。
    NFEはSCの状態と住む場所の違いによってSCの能力開発のために基礎的な学習を提供している。プログラムの内容はライフスキル,識字能力,職業訓練などである。プログラムを受けた後のSCには学力・ライフスキルの向上がみられた。また,SCにとってNGOのNFEプログラムはSCにとって,将来の選択肢を広げさせる重要な役割に果している。
  • 古口 真澄
    2007 年 20 巻 p. 73-91
    発行日: 2007/06/10
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    親の代わりに第一責任者となって,孫の養育を担う祖母の調査を日本で先駆的に試みた。得られた知見は以下のとおりである。(1)~(3)は本稿中の「家族適応」している祖母からの結論である。
    (1) 祖母の定位家族期の経験が生殖家族期の子育てに影響を与え,生殖家族期の子育てが十分でなかったことが孫の養育を正当化していた。
    (2) 祖母の「年齢」が若く,孫の「年齢」が低い方が,父方祖母にとって孫が「男の子」(直系ライン)である方が「家族適応」しやすい。
    (3) 祖母による孫の養育開始時の養育の「意味づけ」は,子育てが十分でなかった祖母の生殖家族期の子育てにあったが,子育て以上のことを成し得た結果,「生きがい」へと変化していた。「子育て」に対する満足度が養育の「意味づけ」に影響を与えていた。
    (4) ブール代数を用いた分析から養育の継続性のためには,身体的資源の「年齢」が必要条件となり,さらに経済的資源の「就業の継続」または規範的資源の「父方祖母と孫娘という組合せでないこと」が必要となっている。継続性を可能とさせないのは,経済的資源の「無職(専業主婦)」かつ規範的資源の「父方祖母と孫娘という組合せ」である。
    (5) 祖母の孫の養育を正当化する要因として精神的資源による家族の「全一性」があり,継続性を左右するものとして規範的資源である家族の「存続性」が認められ,限定的であるが戦前の日本的家族の特徴が維持されている。
  • 中高年女性を中心として
    乙部 由子
    2007 年 20 巻 p. 93-112
    発行日: 2007/06/10
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    本稿は,スーパーマーケットで働く非正社員はパートタイマーとして働く中高年既婚女性が大部分であるなか,あえて派遣社員として働く中高年既婚女性の就労要因を,事例分析から明らかにしたものである。調査結果を,「生活重視型」,「キャリア延長型」,「長時間労働希望・労働意欲型」,「就労柔軟型」に分類した。それぞれの特徴を明らかにしたのち,スーパーで働くパートタイマーと派遣社員の違いに検討を加え,派遣社員として働く人の特徴を見出した。一連の調査を通じて明らかになったこととして,スーパーマーケットで派遣社員として働くのは,時給の高さがもっとも重要なこと,パートタイマーとは異なる雇用の柔軟性を求めたことだった。また,パートタイマーとして働く人との差違は,家族的な要因,つまり子どものことが理由で働くのではなかったことである。
    先行研究では,派遣社員として働く人は,仕事よりも家庭生活重視とされているが,今回の調査で得られた結果は,それとは異なるものだった。つまり,スーパーで派遣社員として働くことは,中高年既婚女性にとって新しい働き方の一つであることが調査結果より明らかになったといえる。
  • アメリカにおける中年期研究(MIDUS)の日本版調査データにみる
    平賀 明子
    2007 年 20 巻 p. 113-126
    発行日: 2007/06/10
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は,主観的幸福感(生活への満足感,肯定的感情,否定的感情)のうち,肯定的感情と否定的感情を若年期,中年前期,中年期,中年後期という4つの年代に分け,性別によって差異があるかどうかを調べ,つぎに両感情を規定する要因を基本属性,主観的健康感,さらに文脈的変数を加えて検討することである。調査対象者は153カップル,それぞれの平均年齢は,若年期31.9歳,中年前期38.1歳,中年期49.3歳,中年後期57.2歳である。結果は以下のとおりであった。(1)中年前期と中年期では夫の肯定的感情は他の年代よりも低く,とくに肯定的感情における性差は中年期の夫と妻で大きかった。一方,どの年代においても妻の否定的感情は夫よりも高く,中年期と中年後期の妻にジェンダー効果が示唆された。(2)若年期にのみ主観的健康感は両感情に対して強い規定力を示し,健康感の他に若年期では子ども数が少ないことが肯定的感情を高め,中年期では妻であることが否定的感情を高めていた。(3)仕事ストレス項目は中年前期と中年期の肯定的感情と中年期の否定的感情に対して規定力を示した。一方,関係ストレス項目は中年前期の両感情と中年期の肯定的感情,若年期の否定的感情に強い規定力を示した。中年期は仕事や関係ストレス項目を考慮に入れても両感情の説明力は十分ではなく,パーソナリティ変数を含めて検討する必要があるだろう。
  • 松宮 朝
    2007 年 20 巻 p. 127-132
    発行日: 2007/06/10
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
  • 中村 則弘
    2007 年 20 巻 p. 133-135
    発行日: 2007/06/10
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
  • 川又 俊則
    2007 年 20 巻 p. 137-142
    発行日: 2007/06/10
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
  • 川又俊則氏の書評にこたえて
    櫻井 義秀
    2007 年 20 巻 p. 143-146
    発行日: 2007/06/10
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
  • 須田 直之
    2007 年 20 巻 p. 147-155
    発行日: 2007/06/10
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
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