本研究では,フェイスマスク微細構造内におけるサブミクロンサイズの粒子挙動を明らかにするために,実際のフェイスマスクのX線CT画像を連携した数値シミュレーションモデルを開発した.微細構造内部に大きな細孔が存在すると,当該部近傍で流線が湾曲し,その流れに同伴する粒子が細孔表面で捕集されやすくなることがわかった.細孔の存在は,圧力損失と捕集率の低下をもたらすものの,上記の効果により捕集率の低下が抑制されるため,フェイスマスクの性能(quality factor)を向上させることがわかった.
本研究ではフェイスマスク微細構造内におけるサブミクロン粒子の捕集挙動を数値的に検討した.市販のフェイスマスクをX線CTを用いた画像解析により3次元的な構造を得た後,この数値的に得られた微細構造にエアロゾルを供給するシミュレーションを行った.その結果,微細構造内に局所的な粗密性があり,大きな貫通孔が存在すると,その細孔表面で粒子が捕集されやすくなり,quality factorが高くなることがわかった.
常圧焼結では大きな亀裂状欠陥は収縮せず,むしろ,わずかに成長する.理論的にも,小さな空隙や欠陥は収縮するが,成形段階で形成された粗大欠陥を常圧焼結で除去することは困難である.一方,ホットプレス(HP)や放電プラズマ焼結(SPS)等の加圧焼結では,比較的低温で,緻密な微細組織を有する高強度・高信頼性セラミック部材が製造でき,また内部欠陥の除去により透明セラミックスの製造も可能となる.ただし,加圧焼結では高圧力が必要で,比較的小型の単純形状部材しか製造できないという問題がある.このため,複雑形状大型部材の製造に適した常圧焼結では粉体成形プロセス中に形成される欠陥寸法を抑制し焼結中に除去することが,また,加圧焼結では大型部材製造のために,より低い圧力でも欠陥除去ができるように,3次元マルチスケールでの欠陥消失過程の解明が求められる.本研究ではSPS中にどのように気孔と欠陥の形状が変化・消失していくかを観察する.
複雑形状大型部材の製造に適した常圧焼結では粉体成形プロセス中に形成される欠陥寸法を抑制し焼結中に除去することが,また,加圧焼結では大型部材製造のために,より低い圧力でも欠陥除去ができるように,3次元マルチスケールでの欠陥消失過程の解明が求められる.本研究ではSPS中にどのように気孔と欠陥の形状が変化・消失していくかを観察する.
全固体リチウムイオン二次電池は,その優れた安全性などから次世代の二次電池として期待されている.その製造工程で,粒子間の接触界面を大きくし,粒子の流動性を向上させる必要がある.また,固体電解質の粒子形状は,接触界面の増大と流動性向上で重要な役割を果たす.Li3PS4(LPS)は固相反応だけでなく,液相で合成されることから高い生産性という利点を有する.しかし,粒子サイズと形状を制御するメカニズムはまだ明らかにされていない.本研究では,ホットスターラーと超音波ホモジナイザーを用いて液相中でLPS粒子を合成し,反応温度と衝撃力が反応時間と粒子形状に及ぼす影響を検討した.ホットスターラーを利用し,イオン伝導度が1.3 × 10–4 S/cmと高いLPS粒子を67°Cで60分かけて合成できることが示された.この合成法は,従来の液相振とう法(6時間)よりも大幅に高速であった.また,LPSの粒子形状は,反応過程における衝撃エネルギーによって決定されることを見い出した.さらに,異なる合成法を組み合わせることにより,高いイオン伝導性を有する形状制御粒子の合成に成功した.本研究で得られた結果は,特定の粒子形状と粒子サイズを得るために合成条件を最適化するための貴重な知見である.
全固体電池において,固体電解質の粒子形状は,接触界面の増大と流動性向上で重要な役割を果たす.本研究では,Li3PS4(LPS)粒子の液相合成において,反応温度と衝撃力が反応時間と粒子形状に及ぼす影響を検討した.ホットスターラーを利用することで,従来の合成法よりも高速でLPS粒子の合成に成功した.さらに,LPS の粒子形状は,反応過程における衝撃エネルギーによって決定されることを明らかにした.
微粒子の多孔質構造化は,環境触媒の開発においても重要である.本研究では,マクロポーラス構造を持つ三元触媒(ポーラスTWC)粒子の合成を検討した.ポーラスTWC粒子は,TWCナノ粒子と造孔材粒子を噴霧乾燥することで合成した.ポーラスTWC粒子と造孔材を用いずに合成したTWC凝集体粒子のCO酸化性能を評価した結果,ポーラスTWC粒子はTWC凝集体粒子の構造と比較して,COの酸化効率が50%向上した.これは,微粒子内に連通孔を有した多孔質構造により,粒子内部の対流拡散が促進されたためだと考えられる.この研究成果は,環境触媒の機能向上のための重要な知見となると考えている.
三元触媒(TWC)のガス浄化効率を向上させるために,ポリマーテンプレート粒子(ポリスチレンラテックス)を使用したエアロゾルプロセスにより,マクロポーラス構造を持つTWC微粒子を合成した.その結果,マクロ孔が存在しないTWC微粒子と比較して,マクロ孔を持つTWC微粒子は,粒子構造内のガス拡散が促進し,触媒性能(CO酸化反応)の向上へと繋がった.
構造柔軟性を有する多孔性錯体(MOF)は,骨格構造の体積膨張を伴うステップ状の吸着挙動を示す.MOFは粉末試料であるため,工業利用には何かしらの成形が必要だが,高分子バインダーを用いてペレット化すると,ステップ挙動が緩慢になることが報告されている.この原因は,高分子によってMOFの体積膨張が阻害されるためだと考えられる.本研究では,体積膨張率の異なるMOFをペレット化し,吸着挙動の比較を行った.
構造柔軟性を有する多孔性配位錯体(MOF)は,その高い吸着性能から,吸着分離プロセスへの応用が期待されている.吸着カラム内での使用を見据えると,粉末材料であるMOFは何かしらの成形が必要だが,ガス吸着時に粉末の体積膨張を伴うため,成形体が粉末とは異なる挙動を示す.本研究では,吸着時の体積膨張率に注目して,体積膨張率の異なる二種類のMOFを成形し,その吸着挙動を比較した.
粒子特性を考慮した動的な流動性と噴流性の評価
公開日: 2023/05/25 | 30 巻 p. 34-39
尾形 公一郎
らせん状メソ細孔を有するシリカ微粒子の合成と応用
公開日: 2017/12/29 | 17 巻 p. 17-20
辰巳 敬
固体酸化物形燃料電池における電極微構造の最適化
公開日: 2019/06/25 | 16 巻 p. 46-52
森 英利
脂質ナノ粒子の形成と形成メカニズムの解明
公開日: 2017/06/10 | 24 巻 p. 74-78
渡慶次 学
アップコンバージョン発光ナノ結晶の環境調和型育成
公開日: 2017/12/29 | 17 巻 p. 61-66
手嶋 勝弥
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