関西学院大学先端社会研究所紀要
Online ISSN : 2434-4613
Print ISSN : 1883-7042
11 巻
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論文
  • Well-being, Trust and Political Attitudes
    真鍋 一史
    2014 年 11 巻 p. 1-9
    発行日: 2014年
    公開日: 2021/05/15
    ジャーナル フリー
    The purpose of this paper is to illustrate the utility of Smallest Space Analysis (SSA) developed by Louis Guttman for the data analysis of cross-national survey using the example of the AsiaBarometer survey. The AsiaBarometer is a large scale multi-national questionnaire survey conducted at regular intervals (every year from 2003) within the Asia region. This paper analyzes the data from the 4th AsiaBarometer survey which was conducted from June to August 2006 in seven countries: China, Hong Kong, Japan, South Korea, Singapore, Taiwan, and Vietnam. The AsiaBarometer survey contains question items that measure the respondents' beliefs, attitudes and behaviors in various aspects of everyday life, as well as items intended to measure their values related to freedom, human rights, and democracy, and their political behaviors. In this data analysis, I deal with the following three groups of question items: (1) question items on “well-being,” (2) question items on “social trust, ” and (3) question items on “political attitudes.”
  • -日本における先祖調査の展開-
    山口 覚, 喜多 祐子
    2014 年 11 巻 p. 11-26
    発行日: 2014年
    公開日: 2021/05/15
    ジャーナル フリー
    専門家の系図学 (genealogy) とともに、一般の人々による先祖調査 (popular genealogy) が世界中で実施されている。欧米諸国では先祖調査ブームと言い得る状況が長期的に見受けられ、アレックス・ヘイリーの『ルーツ』(1976年)はその象徴となる。日本でも先祖調査の「静かなブーム」が確認されるが、先祖調査の展開について整理されたことはこれまでほとんどなかった。本稿の課題は日本における先祖調査の展開を整理することにある。日本では『ルーツ』とはほとんど無関係に、1970年代には先祖調査ブームが生じていた。2000年代以降でも関連する様々な動きが見出される。先祖調査はいわゆる家意識と結びつく面もあるが、実際にははるかに多様な実践となっている。たとえば、近親者を中心としたパーソナルな家族史 (family history) への志向があり、他方ではテクノロジーの進化や情報整理の進展によって巨大な家系図の作成も可能となりつつある。先祖の故地や自身の苗字と同じ地名をめぐる先祖ツーリズムも珍しくない。先祖調査は趣味としての側面を強めているのである。
  • 李 建志
    2014 年 11 巻 p. 27-46
    発行日: 2014年
    公開日: 2021/05/15
    ジャーナル フリー
    「兵隊やくざ」は、1960年代に大映で制作された娯楽映画だ。その原作は、有馬頼義によって書かれた「貴三郎一代」であるが、原作小説と映画は並行してつくられており、日本陸軍の内務班について描かれているのが特徴といっていい。この軍隊内の生活を描く小説は、1952年に野間宏によって発表された「真空地帯」以降、1960年から80年にかけて書き継がれた大西巨人の「神聖喜劇」など、いくつかあげられる。この文脈の中に「貴三郎一代」および「兵隊やくざ」を位置づけると、内務班という非民主的な社会を打破するヒーローとして、「貴三郎一代」および「兵隊やくざ」の主人公である大宮貴三郎の存在の意味が見えてくる。また、「兵隊やくざ」と「貴三郎一代」に登場する歌も分析する。当時軍隊で好んで歌われていたのは軍歌ではなく、「満期操典」や「軍隊数え唄」といったものであった。このような兵隊の唄を知ることで、当時の日本軍の生活を知ることができるようになることだろう。また、「貴三郎一代」では、大宮と「私」は朝鮮人女性を連れてきてP屋(慰安所)を経営するのだが、日本の敗戦で彼女たちと別れるとき、「私」は朝鮮人女性から「アリラン」と「蛍の光」を歌ってもらい、感動しているという場面がある。しかし、当時の朝鮮では韓国の国歌である「愛国家」にはまだメロディがなく、「蛍の光」のメロディで歌われていたことを考えると、彼女たちが「私」に歌ったのは別れの歌ではなく、朝鮮独立の歌としての国家だったと考えられる。このような認識のギャップは、現在までも続いているのではないかと考えるのだ。
  • -GHQ、検閲、田村泰次郎「肉体の門」-
    塚田 幸光
    2014 年 11 巻 p. 47-60
    発行日: 2014年
    公開日: 2021/05/15
    ジャーナル フリー
    本稿では、占領期の有楽町という文化的、政治的コンタクト・ゾーンにおける「性」表象に関して、田村泰次郎の短編小説「肉体の門」(『群像』1947. 3)を軸に考察する。パンパン/私娼とは、社会が排除し、同時に必要悪として包摂した象徴的存在である。そして、パンパンが住まう有楽町は、GHQ の政治的中心であり、敗戦と占領のトラウマを映し出すトポスだろう。だが、有楽町とパンパンを描く文学テクストにおいて、アメリカの「影」は排除されている。GHQ の検閲は、メディアに括弧付きの自由を与え、民主主義を説く。しかしながら、検閲と民主主義とは、矛盾する概念であり、その捻れは「不在の米軍」に照射されるのだ。では、この不在のワンピースは、テクスト/コンテクストの何処に隠蔽/開示されるのだろうか。本稿は、占領期の複層的な性表象に辿る文学研究であり、映画『肉体の門』(マキノ正博・小崎正房監督、1948)に至るメディア研究の序論となる。
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