【目的】先行研究で,乳酸菌LAB4(Lactobacillus delbrueckii LAB4)には血糖値スパイクの抑制作用があることが明確になったが,その作用機序解明のため,自律神経反応と血糖値スパイク(G-スパイク)・インスリンスパイク(I-スパイク)の関係を検討した.
【方法】研究1では,G-スパイクを有する線維筋痛症(fibromyalgia syndrome:以下FMS)対象群77例に心拍変動(HRV)のスペクトル解析を行った.対照群は,健常者60例.研究2 では,FMS 22例に,3時間の75gOGTTとHRVのスペクトル解析を同期して行い,30分毎のBS(血糖),IRI(インスリン),LF/HF ratio(低周波数成分と高周波数成分との比/交感神経の指標),HF amp.(副交感神経の指標)を測定した.糖負荷後のMax BS-Min BS≧60mg/dL をG-スパイク,Max IRI-Min IRI≧20μU/mL をI-スパイクとした.
【結果】研究1では,HRVは,対象群では副交感神経機能不全型(dys-P型)が多かった(63.4%).研究2では,全例にdys-P型が観られた。また,スパイク型(9例)のうち,G-スパイクとI-スパイクの一致した例は7例(77.8%)であった.
【考察】I-スパイク初期型はインスリンの初期追加分泌が過剰に反応し,I-スパイク後期型は初期追加分泌が十分に起こらず,後期追加分泌が過剰に反応したと考えられた.G-スパイクは77.8%がインスリン依存性であった.これらは,被険者の膵副交感神経反応が不十分でありながら,糖負荷刺激に対し膵副交感神経が過剰反応を起こしていた.その結果,インスリンを過剰分泌しG・I-スパイクを創っていた.dys-P型の背景に,インスリン分泌機能の障害があることが示唆された.乳酸菌LAB4 投与により,膵臓の交感神経活動が抑えられ,その結果,糖摂取直後の初期の血糖値上昇が抑えられた(第1相の食後高血糖の抑制).それは,インスリンの追加分泌の過剰反応を抑制し,低血糖を抑制した(第2相の改善).その後,血糖値は緩やかに正常化した(第3相の最適化).第2相において,乳酸菌LAB4が肝交感神経系を刺激して糖新生を促し,さらに,膵副交感神経系に抑制的に作動し,インスリンの過剰分泌を抑制させたからであろう.この ようにして,乳酸菌LAB4 は,血糖値のホメオスタシス(血糖値の最適化)に貢献したと考えられた.以上の効果は,乳酸菌LAB4群よりグルコマンナン加乳酸菌LAB4群 において著しかった.
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