日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会雑誌
Online ISSN : 2189-7085
Print ISSN : 1882-0123
11 巻, 2 号
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総説
  • 関東 裕美
    2017 年 11 巻 2 号 p. 103-109
    発行日: 2017/04/30
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル 認証あり

     パラベンに替わる防腐剤としてイソチアゾリノン系防腐剤が広く使用され, 塗料や冷却タオルなどの日用品のみでなく香粧品による接触皮膚炎 (CD) も報告されている。当科で実施した過去5年間のパッチテスト (PT) 症例は832例でアトピー性皮膚炎 (AD) 患者群も10%含まれていた。接触皮膚炎学会PT共同試薬委員会より配布されたイソチアゾリノン系防腐剤を含む共通アレルゲン2015を当科で貼付した85症例についてAD群とCD群の陽性率を比較してみた結果パラベンmixではAD群の陽性率が高く, イソチアゾリノン系防腐剤MI/CMI (Kathon CG) の陽性率はCD群で高値を呈した。その原因としてAD群では外用剤使用によるパラベン感作の可能性が, CD群の患者は海外化粧品使用頻度が高い可能性を考えている。世界的に使用制限がされるようになったイソチアゾリノン系防腐剤について, 今回のPT結果からMI/CMI感作状況の把握には現在の貼付濃度の変更が必要, 併せてMI単独の貼付も必要であると考えた。

研究
  • 安藤 亜希, 矢上 晶子, 鈴木 加余子, 森田 雄介, 小林 束, 永井 晶代, 岩田 洋平, 松永 佳世子
    2017 年 11 巻 2 号 p. 110-120
    発行日: 2017/04/30
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル 認証あり

     目的 : 2013年の当科における持参化粧品による接触皮膚炎および原因製品の動向を明らかにすることを目的とした。

     方法 : 2013年に化粧品による接触皮膚炎の疑いで当科を受診した症例に対し, パッチテスト (以下PT) を施行した。PTは患者が持参した化粧品と, Japanese standard allergens 2008および化粧品関連アレルゲンを貼布した。判定は72時間または1週間後International Contact Dermatitis Research Group基準で+以上を陽性とした。

     結果 : 123例にPTを施行した。化粧品のPTが陽性で臨床的に関連性があると考えられた症例は39例で, 原因製品は60製品であった。ロドデノール含有製品もしくはその主成分であるロドデノールに陽性反応を呈したのは15例 (38%) であった。

     結論 : 2013年度は, 基礎化粧品による接触皮膚炎の数が例年と比べると多い結果であった。

症例
  • 野上 京子, 金子 栄, 千貫 祐子, 新原 寛之, 森田 栄伸
    2017 年 11 巻 2 号 p. 121-129
    発行日: 2017/04/30
    公開日: 2017/06/30
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     51歳女性。関節リウマチに対しサラゾスルファピリジン (SASP) 1,000 mg/日, セレコキシブ200 mg/日の内服を開始後, 27日目より38度台の発熱, 全身の紅斑を認めた。2週間以上遷延する皮疹と好酸球の上昇, 肝障害の二峰性の悪化, ヒトヘルペスウイルス-6の再活性化を認め, 典型薬剤性過敏症症候群 (DIHS) と診断した。薬剤添加リンパ球刺激試験 (DLST) , 皮膚パッチテストでセレコキシブが陽性となり, セレコキシブが原因薬である可能性が高いと考えた。しかし, 過去の報告ではSASPによるDIHSの症例が多いとされ, DLST, 皮膚パッチテストが陽性でない症例も含まれることから, SASPが原因薬の可能性も否定できなかった。血清TARC値は, 初診時は3,954.2 pg/ml, 発症18日目に13,944.1 pg/mlと高値を認めた。血清TARC値はDIHSの早期診断マーカーとして期待されているが, 本症例では, 症状の遷延とともに血清TARC値がさらに高値を示した。

  • 小泉 明子, 瀧田 祐子, 西岡 和恵
    2017 年 11 巻 2 号 p. 130-137
    発行日: 2017/04/30
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル 認証あり

     過去7年間に染毛剤皮膚炎と診断した患者73例について, 臨床症状およびパッチテスト結果をもとに検討を行った。臨床的検討では, 頭部の接触皮膚炎でありながら被染毛者の13/60例 (21.7%) に被髪頭部の症状の訴えがなかったこと, また, 全患者の26/73例 (35.6%) に汎発性の病変を認めたことが注目された。顔面・頚部の湿疹病変, 体幹・四肢の汎発性湿疹診察の際, 接触原として染毛剤を念頭におくことが重要である。パッチテストで最も陽性率が高かった染毛剤関連アレルゲンは p-phenylenediamine (PPD) であり, その陽性率は94.5%であった。一方で4例のPPD陰性例を認めた。PPDパッチテスト陽性, かつ本人使用の染毛剤中にPPDの含有が明らかであった患者37例のうち, 本人使用染毛剤 I 剤のオープンテストで陽性を示したのは23/37例 (62.2%) であった。製品のオープンテストのみでは患者を見逃す可能性がある。また, オープンテストの陽性率は混合剤を用いるよりも I 剤単独を用いたほうが高かった。

  • 静川 寛子, 岩本 和真, 平郡 隆明, 秀 道広
    2017 年 11 巻 2 号 p. 138-143
    発行日: 2017/04/30
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル 認証あり

     19歳女性。学童期より寒冷刺激に曝露した部位に瘙痒を伴う紅斑, 膨疹が出現するようになった。近医にて, 各種抗ヒスタミン剤で加療されたが, 症状の改善がないため当科を紹介され受診した。寒冷蕁麻疹の診断のもと, 補助的治療薬や試行的治療薬を追加し加療するも, 気候の寒暖によると考えられる症状の自覚の変化もあり, なかなか患者の効果の自覚が得られなかった。そこで, 内服薬の効果を客観的に評価するため, 4~44度温熱勾配発生装置 (TempTest®4.0) を用いて紅斑と膨疹の誘発閾値を測定した。その結果, すべての内服薬を中止した状態では紅斑と膨疹が誘発され, いずれかの薬剤を内服した状態では種々の温度域で境界明瞭な紅斑のみが出現し, 各治療薬の効果を客観的に評価することができた。この装置を用いることで, 患者とともに治療薬の効果を客観視でき, この患者のためのよりよい治療薬の選択と患者満足度の向上に有用であった。

  • 坂井 博之, 野村 和加奈, 菅原 基史
    2017 年 11 巻 2 号 p. 144-148
    発行日: 2017/04/30
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル 認証あり

     マンゴーはウルシ科の植物でアレルギー性接触皮膚炎の原因果物としてよく知られているが, 蕁麻疹やアナフィラキシーをきたすことはまれである。今回, 市販のマンゴーゼリーを摂取後にアナフィラキシーを発症した1例を経験したので報告する。患者は43歳, 女性。初診の6~7年前に初めて誘因不明のアナフィラキシーを発症し, その後, 年に1~2回の頻度で繰り返していた。2014年7月, マンゴーゼリーを摂取し布団の片付けを行った。40分後に咳嗽と呼吸困難が出現し, さらに顔面, 頚部と手足に瘙痒感と紅斑が出現した。プリックテストは, マンゴーゼリー3+, 生のマンゴー3+, 生ゴボウ2+で陽性だった。マンゴー特異的IgEはクラス1だが, ヨモギがクラス4だった。原因アレルゲンコンポーネントは未確定だが, 耐熱性の成分と推測した。摂取後に肉体労働を行っており, 運動誘発性の可能性も考えられた。

  • 若嶋 千恵, 山本 真有子, 中島 喜美子, 佐野 栄紀
    2017 年 11 巻 2 号 p. 149-153
    発行日: 2017/04/30
    公開日: 2017/06/30
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     68歳, 男性。誤嚥性肺炎に対するタゾバクタム / ピペラシリン, カルボシステイン, アンブロキソール塩酸塩の投与後に, 体幹, 四肢に小膿疱を伴う半米粒大の紅色丘疹が多発した。パッチテストでカルボシステインの主要夜間代謝産物であるチオジグリコール酸が5%, 10%濃度で陽性であったため, カルボシステインが原因の膿疱型薬疹と考え, 3日間連続で常用量の内服テストを施行したが, 皮疹は誘発されなかった。一方, タゾバクタム / ピペラシリンのパッチテストは陰性であったが, 1/2量を点滴投与したところ, 7時間後に発熱と淡い紅斑が体幹および下肢に出現し, これを原因薬剤と同定した。チオジグリコール酸は強酸であるため, 自験例のようにパッチテストで刺激反応を認めることが最近報告されている。カルボシステインによる薬疹を疑う際には, チオジグリコール酸のパッチテストのみではなく, できる限り誘発テストを行い確定診断をつける必要がある。

  • 永田 寛, 大塚 明奈, 夏秋 洋平, 石井 文人, 名嘉眞 武国
    2016 年 11 巻 2 号 p. 154-157
    発行日: 2016/04/30
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル 認証あり

     64歳男性。職業は農家で, サニーレタス栽培に従事している。約10年前より露光部中心に紅斑が繰り返し出現していた。近医皮膚科を受診し, 抗アレルギー薬の内服やステロイドの外用で加療していたが, 改善に乏しかった。皮疹は露光部に限局しており, 光線過敏症やレタスによる光接触皮膚炎を疑い精査を行った。光線照射試験では最少紅斑量 (MED) , 最少反応量 (MRD) はいずれも低下していた。パッチテストではサニーレタスの葉, 茎は陰性であった。光パッチテストは未施行である。問診により, サニーレタス収穫作業時に喘息様症状が出現していたことが明らかとなった。プリックテストでサニーレタスに陽性を示し, サニーレタスによる即時型アレルギーと診断した。

  • 木村 友香, 加藤 敦子
    2017 年 11 巻 2 号 p. 158-164
    発行日: 2017/04/30
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル 認証あり

     22歳, 男性。初診の2年前に寿司屋に就職し, 生の魚介類を扱うようになった。1ヵ月前に生のアワビ, クルマエビとアカエビを調理中に手に瘙痒感を伴う発赤が生じ, その後全身の瘙痒感, 呼吸困難感を訴え救急搬送された。その後も仕事を継続し, アワビとクルマエビを調理した際には, 時折手の瘙痒感や咳嗽を自覚する。アワビとクルマエビはいつも同時に扱うという。精査目的に当科初診した。血液検査ではアサリ, カキとホタテの特異的IgEがクラス2であった。プリックテストを施行し, 生のアワビで強陽性, 加熱したアワビ, 生のクルマエビ, 生のタコで陽性であった。アワビのプリックテスト中, 軽度の呼吸困難感が出現したが, 5分ほどで自然に軽快した。また, 生と加熱したアカエビを含むほかの各種魚介は陰性であった。タコは接触しても摂取しても症状は生じない。以上より, 生のクルマエビに対する接触蕁麻疹を合併したアワビによる接触蕁麻疹症候群と診断した。

  • 鶴田 紀子, 桑代 麻希, 永瀬 浩太郎, 井上 卓也, 成澤 寛, 與田 幸恵, 能城 浩和, 中村 公秀, 坂口 嘉郎
    2017 年 11 巻 2 号 p. 165-168
    発行日: 2017/04/30
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル 認証あり

     21歳男性。外科手術の麻酔導入時にアナフィラキシーショックを発症し, 手術が中止された。ロクロニウムの皮内テストが陽性であったため, 筋弛緩薬を用いずに再手術を行ったが, 再びアナフィラキシーショックをきたし中止となった。原因薬を同定するために, ICUでモニタリング下に1剤ずつ投与テストを実施したところ, ウリナスタチンで膨疹, 咳嗽等のアナフィラキシー症状が誘発された。ウリナスタチンによるアナフィラキシーはまれであり, 貴重な症例と考え報告した。また, 筋弛緩薬における皮膚テストの偽陽性についても考察した。

  • 三村 慶子, 中村 和子, 乙竹 泰, 佐藤 麻起, 森下 恵理, 河野 真純, 相原 道子, 蒲原 毅
    2017 年 11 巻 2 号 p. 169-174
    発行日: 2017/04/30
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル 認証あり

     26歳, 男性。咽頭炎に対しメシル酸ガレノキサシン (ジェニナック®) を含む複数の薬剤を内服した数時間後に発熱, 口唇腫脹および四肢, 体幹に多発する紅斑が出現した。固定薬疹が疑われ被疑薬を中止したが, 症状が悪化したためPSL 60 mg/日 (1 mg/kg/day) 内服治療を行ったところ, 症状は軽快した。また, 被疑薬3剤の貼付試験および薬剤誘発リンパ球幼若化試験はすべて陰性であったため再投与試験を施行したところ, メシル酸ガレノキサシン40 mg (1回常用量の1/10量) 内服後に高熱を伴う重篤な症状が誘発され, PSL 60 mg/日内服治療を要した。以上より, 自験例をメシル酸ガレノキサシンによる多発性固定薬疹と診断した。同薬剤による薬疹では, 自験例を含め多発性固定薬疹の報告が多く, 再投与試験により原因薬と同定される例が多かった。自験例では, 1回常用量の1/10量の再投与試験で重篤な症状が誘発された。今後, 本剤の再投与試験を施行する際には投与量に関する注意が必要と考えられた。

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