大学体育学
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8 巻
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
表紙、目次など
原著論文
  • ―大学体育の効果に関する研究―
    中山 正剛, 田原 亮二, 神野 賢治, 丸井 一誠, 村上 郁磨
    2011 年 8 巻 p. 3-12
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/01/09
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】本研究の目的は,大学生のメンタルヘルスを規定する大学体育授業の要因を調査することであった.

    【方法】大学で体育授業を受講した2602名の学生を対象とし,アンケート調査を行った.内訳は,1年生1419名(男性807名,女性612名),2年生820名(男性419名,女性401名),3年生363名(男性198名,女性165名)である.アンケート調査は,個人的属性,授業構成因子,体育授業と運動習慣との関係性,大学生活のメンタルヘルスについて実施した.

    【結果】因子分析の結果(主因子法,プロマックス回転),4因子(15項目)が抽出された.それぞれの因子名を「不規則な日常生活(6項目)」「学業のつまずき(3項目)」「学生生活の充実感の乏しさ(3項目)」「自分への自信のなさ(3項目)」とした.大学生のメンタルヘルスと授業構成因子の重回帰分析の結果は次のとおりである.(1)「不規則な日常生活」は,「授業外学習・活動」と負の有意な関連性が認められた.(2)「大学生活への充実感の乏しさ」は,「学生間コミュニケーション」と「授業の楽しさ」で負の有意な値が得られた.(3)「自分への自信のなさ」では,「学生間コミュニケーション」と「授業の楽しさ」で負の有意な値が得られた.

    【考察】これらの結果は,大学の体育授業において「授業外学習・活動」や「学生間コミュニケーション」,「授業の楽しさ」を意図することで,「規則的な日常生活」や「大学生活の充実」,「自分への自信」に好影響を及ぼすことが示唆された.

  • 西田 順一
    2011 年 8 巻 p. 13-23
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/01/09
    ジャーナル オープンアクセス

    水泳・水中運動の実施は,身体的側面および心理的側面などへの効果が過去の研究にて実証されており,健康への恩恵は極めて大きいものと考えられる。

    本研究は,「意思決定理論(Janis & Mann,1977)」に基づいた大学生の水泳・水中運動における意思決定バランス尺度を開発し,その信頼性および妥当性を検討することであった。一次調査では,最初にパイロット調査と先行研究の検討によって水泳・水中運動での意思決定バランスを測定するための項目が作成された。調査は関東地方,関西地方,そして九州地方の5つの大学の講義の時間内で実施された。大学生573名が調査票に記入した。探索的因子分析の結果,2因子からなる「水泳・水中運動の意思決定バランス尺度-大学生版(Decision Balance Scale for Swimming & water exercise with University student:DBSSU)」が開発された。続いて,開発された尺度の信頼性についてα係数から確認され,さらに妥当性については ‘水泳・水中運動の好き-嫌い(態度)’ および ‘水泳に対するセルフエフィカシー’ の観点から確認された。加えて,DBSSUの性差が認められ,男子に比べ女子にて負担が高いことなどが明らかにされた。さらに二次調査では,大学生271名を対象として行動変容ステージの観点から妥当性が検討された。行動変容ステージの上昇により,恩恵が高まり負担が低くなることなどが明らかにされたことから,本尺度は妥当性を有していることが考えられた。本尺度は大学生の水泳・水中運動増強に関する今後の研究において活用される可能性が考えられた。最後に本尺度の使用方法と今後の課題などについて議論された。

研究資料
  • 池上 久子, 坪田 暢允, 鶴原 清志, 村本 名史, 池上 康男
    2011 年 8 巻 p. 25-35
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/01/09
    ジャーナル オープンアクセス

    Golf has become more and more popular even in the younger generation.

    The purposes of this study were to investigate the necessity of the actual round of golf in the golf class for university students and to find useful teaching technique for actual rounding.

    The students in the golf class self−evaluated their swing technique by using specially designed check−sheets after the practice in the driving range and the actual round of golf.

    From the results of this study the followings were suggested for the golf class;

    1. Playing golf can be learned through actual round.

    2. In the practice it is important to be fully aware of actual round.

    3. In the address it is important to pay an attention to the spine position.

    4. It is effective to advise the rotation of the trunk in the backswing.

    5. In the downswing anticipated movement of the lower body should be learned.

    6. In the practice it is important to try to hit a ball clean without duffing.

  • 北 徹朗, 山本 唯博
    2011 年 8 巻 p. 37-42
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/01/09
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では、ホームワークとして学生に自分自身の動作映像を認識させ評価させることが、運動動作に対する気づきや運動技能向上に寄与するかを検討するとともに、本授業方式の恒常的導入の可能性を探ることを目的とした。対象は4年制大学に在籍し授業を履修した20名であった。受講生には自分自身の運動動作映像の評価をホームワークとして取組ませた。また、ホームワークに取組む前後に実技テストを実施し、技術の正確性を評価した。その結果、殆どの受講生が『自分の運動動作を確認・評価することが初めてで、これまでイメージしていたフォームと異なっていた』と記述し、各チェック項目において具体的な修正点を見出し記述していた。また、投球の正確性のテストの結果、課題提出後に70%以上の受講生にストライク率の向上が見られた。

  • 平野 智之, 植野 友紀子, 海野 孝
    2011 年 8 巻 p. 43-54
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/01/09
    ジャーナル オープンアクセス

    この研究の目的は,組織キャンプ体験が大学生の自己効力感と無気力に及ぼす効果を明らかにすることであった.我々は短期大学生の2つのグループ(キャンプ体験群と統制群)の小標本を対象に質問紙調査を行った.キャンプ体験群では35人の学生から有効データを得,有効回答率は100%であった.統制群では60人の学生から有効データを得,有効回答率は48.8%であった.

    主な調査結果は以下の通りである.

    1)キャンプ体験群の自己効力感得点の平均値は,組織キャンプ体験後に有意に向上(P<0.01)していた.一方,統制群の平均値には有意差は認められなかった.

    2)キャンプ体験群の無気力得点の平均値は,キャンプ体験後に有意に低下(P<0.01)しており,特に「自己効力感欠如」,「身体的疲労感」および「無力性」の3つの下位尺度において有意な低下(P<0.05,P<0.01)を示した.一方,統制群の平均値には有意差は認められなかった.

    3)自己効力感の向上が著しい学生の無気力の平均値は組織キャンプ体験後に有意に低下(P<0.05)しており,特に,「自己効力感欠如」,「対人的無気力」および「身体的疲労感」の3つの下位尺度の平均値において有意な低下(P<0.05,P<0.01)がみられた.

    以上の結果より,大学生の自己効力感と無気力は,組織キャンプを体験することによって改善されることが示唆された.

  • 松本 裕史
    2011 年 8 巻 p. 55-64
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/01/09
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究の目的は,女子大学生を対象に,体育の宿題を課す授業が日常身体活動量および身体活動に関連する心理学的変数に及ぼす影響を明らかにすることであった.64名の女子大学生を対象として,介入群(28名)と対照群(36名)に分けた.介入群には体育授業のほかに日常身体活動を促進することを目的とした日常身体活動状況のモニタリング(体育の宿題)を課題とした.両群とも日常身体活動量と心理学的変数(日常身体活動意図,運動セルフエフィカシー,運動に関する意思決定バランス)を測定した.2要因の分散分析および単純主効果の検定を実施した結果,日常身体活動量に関する指標である日常活動性得点に有意な介入効果がみられた.心理学的変数に関しては,日常身体活動意図に有意な介入効果がみられた.本研究の結果から,体育の宿題を課す授業は,女子大学生の身体活動量および日常身体活動意図に好ましい影響を及ぼすことが示唆された.

  • ~学年別調査を通じて~
    丸井 一誠, 田原 亮二, 中山 正剛, 神野 賢治, 村上 郁磨
    2011 年 8 巻 p. 65-73
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/01/09
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究の目的は,学士教育における体育の授業構成因子と受講後の運動・スポーツ習慣との関係を明らかにすることである.

    対象者は2539名の大学生(男性1387名,女性1152名)とした;1年生1380名(男性781名,女性599名),2年生798名(男性410名,女性388名),3年生361名(男性196名,女性165名).調査はすべて質問紙により行われ,調査内容は,(1)運動習慣と大学体育の関係性,(2)現在の部活動,サークル,クラブ等における運動活動頻度,(3)運動行動ステージ,(4)授業構成に関する質問の4分野からなっている.

    分析の結果,(1)大学体育授業によって影響を受けた学生(体育影響群)は,1年生52.1%(男性47.6%,女性58.1%),2年生21.0%(男性20.9%,女性21.1%),3年生12.0%(男性14.0%,女性9.7%)であり,(2)体育影響群において,運動行動ステージと関連のある授業構成因子は “授業の楽しさ” と “授業外学習・活動” であることが明らかになった.

    これらの結果から,(1)大学体育授業で身についた運動習慣は学年が上がるにつれて弱まっていくことと,(2)“授業の楽しさ” と “授業外学習・活動” は,授業後の運動習慣に影響を及ぼすことが示唆された.

事例報告
  • 森田 啓, 引原 有輝, 谷合 哲行, 東山 幸司, 三村 尚央, 亀山 巌, 黒澤 健太郎, 林 久仁則, 松元 剛
    2011 年 8 巻 p. 75-88
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/01/09
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究の目的は、「課題探求能力の育成」,「広い視点の獲得」を目的に設定した大学体育の教育実践、および受講生の学習成果の検討を通じ、今後の大学体育における可能性と課題を明示することである。教材としてフラッグフットボールを用いた。

    二つの大学の体育授業の受講生を対象に、①フラッグフットボールの特性について、②フラッグフットボールは運動が苦手な人でも活躍できる種目か、③大学体育授業で他大学と交流する授業形態、について受講生自らが考察を行った。

    本研究では教養教育として大学体育を実践することで、従来の「健康」「健康教育」「生涯スポーツへの動機づけ」とは異なる大学体育の実施を試みた。大学体育の可能性を拡大する試みでもある。

    受講生の学習成果について考察すると,大学体育には多くの可能性あり,多くの学習成果を達成する可能性がある。「健康」「健康教育」「生涯スポーツへの動機づけ」がスポーツクラブにアウトソーシングされるとしても何ら悲観することはない。むしろ,「健康」「健康教育」「生涯スポーツへの動機づけ」というこれまでの枠・限定にとどまっているのではなく,「課題探求能力の育成」,「領域に限定されない授業内容の実施」,「他大学との共同プロジェクト」などの多様な可能性を追求するチャンスが拡大したととらえることが適切である。

    大学体育は,教養教育としてふさわしい学習成果を達成することが可能である。

奥付、裏表紙など
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