Japanese Journal of Acute Care Surgery
Online ISSN : 2436-102X
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特集1:外傷手術看護とトレーニング実践
  • 石井 亘, 神鳥 研二, 仲村 美輝, 工 美恵子, 角 典以子, 堀江 英恵, 飯塚 亮二
    原稿種別: 原著
    2023 年 13 巻 p. 1-7
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/27
    [早期公開] 公開日: 2023/12/16
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕当院は併設型救命救急センターおよび重症外傷センターであり, 一次から三次対応の救急を受け入れている。年間の重症外傷(Injury Severity Score≧16)は250症例前後のhigh volume centerである。重症外傷診療を行ううえで院内での初期診療は非常に重要であり,なかでも初期診療におけるdamage control resuscitationを遅滞なく行うためには,外傷診療に携わる医師だけでなく,看護師やその他のメディカルスタッフが同じ戦略と戦術を共有して診療にあたることが求められる。当院では,2010年ごろより重症外傷診療システムを構築するため,院内システムの整備や外傷に携わる医師の育成だけでなく看護師やメディカルスタッフの育成および教育を行ってきた。とくに看護師においては,外傷看護の実践を行ううえで実臨床だけでなくoff-the-job trainingでその役割を認識し他職種と共働することが重要であると考えられるので,当院での取り組みとその効果を報告する。
  • 辻 華子, 室野井 智博, 比良 英司, 坂田 直美, 渡部 広明
    原稿種別: 原著
    2023 年 13 巻 p. 8-13
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/27
    [早期公開] 公開日: 2023/12/21
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕【緒言】Acute Care Surgery (ACS)を担う看護師は集中治療を必要とする外傷外科と救急外科に精通すべきであるが,その教育は確立しておらず,実践は容易ではない。そこで,われわれはACS看護師教育プログラムとして新たに手術室研修を導入した。【目的】手術室研修の効果と課題を明らかにすること。【方法】救急看護師26名を対象に質問紙調査を実施し,結果を質的に分析した。また,Hybrid Emergency Room System(HERS)にて行われた緊急開腹術症例における手術室応援件数の推移を後方視的に調査した。【結果】研修が役に立つと答えたものは86.4%であった。「手術室における基本的な技術を学ぶことができた」「手術特有の看護ケアを学ぶことができた」とする回答が得られ,手術室研修の有用性を示していた。さらに,HERSでの緊急手術における手術室からの応援件数も徐々に減少し,救急看護師の自立がみられた。【結語】応援体制と教育体制の構築を基盤とすることで,ACS看護の専門性と特殊性を踏まえた高度な看護実践が可能となることが示唆された。
特集2:大血管損傷に対する治療戦略
  • 松永 裕樹, 柳 新太郎, 加藤 太治, 志水 祐介, 谷本 篤紀, 山川 潤, 大倉 淑寛, 杉山 和宏
    原稿種別: 原著
    2023 年 13 巻 p. 14-20
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/27
    [早期公開] 公開日: 2023/10/06
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕【背景】外傷性大動脈損傷や大動脈瘤破裂など大動脈緊急症は死亡率が高く治療が難しい。救命には迅速な診断・蘇生が肝要であり,出血コントロールや根治治療までの時間短縮が課題である。当院は自走式CTと透視装置を備えたHybrid ER(HER)を有し,診断から治療までシームレスな診療が可能である。当院のHERにおける大動脈緊急症のステントグラフト治療を検討する。【方法】2018年以降,当院のHERでステントグラフト治療実施17(男13,女4)例を後方視的に検討した。【結果】病名は胸部大動脈損傷4例,腹部大動脈損傷2例,胸部大動脈瘤破裂4例,腹部大動脈瘤破裂7例であった。来院から手技開始までの中央値は81(IQR 68~124.5)分で早期死亡は3例であった。【結論】大動脈緊急症に対するHERでのステントグラフト治療は患者移送によるリスクを排除し,シームレスな蘇生,診断,治療が可能であり,有用であった。
  • 内田 健一郎, 栗正 誠也, 日村 帆志, 芳竹 宏幸, 佐尾山 裕生, 西村 哲郎, 溝端 康光
    原稿種別: 原著
    2023 年 13 巻 p. 21-27
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/27
    [早期公開] 公開日: 2023/10/06
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕【背景】多発外傷に伴う胸部鈍的大動脈損傷(BTAI)に対するdebranching TEVARの適応や安全性は不明である。【方法】2014年4月〜2021年12月に当院でBTAIに対して施行したTEVAR患者を後方視的に検証した。【結果】対象期間においてsimple TEVARを4例で,左鎖骨下動脈閉鎖および左総頸動脈左鎖骨下動脈バイパスを付加した1-debranching TEVARを7例に施行した。手術時間はsimple TEVARが約60分短縮されたが,術中合併症や後遺症,debranchingによる他の外傷に対する治療的介入の遅延は認めなかった。【結語】重症多発外傷患者におけるBTAIに対するdebranching TEVARの短期的成績は合併症なく良好であり,治療優先順位を正しく判断できれば他併存外傷に対する介入の遅延なく安全に施行可能であると思われた。
原著
  • 伊藤 裕介
    原稿種別: 原著
    2023 年 13 巻 p. 28-34
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/27
    [早期公開] 公開日: 2023/06/27
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕当院における高齢者の消化器外科領域の緊急手術症例において,術前のフレイルの状態をClinical Frailty Scale(CFS)を使用して評価し,術後成績への影響について検討した。2019年1月〜2020年12月に当院で行った緊急手術のうち,75歳以上の高齢者で外傷症例を除外した107例を後方視的に検証した。Non-frail群(CFS≦6)が93例,frail群(CFS≧7)は14例認め,frail群のほうが併存疾患が多く,栄養状態は悪く,術前のショック症例が多く,30日後死亡率が高かった。術後合併症は二期的手術の選択が,入院期間はPrognostic Nutritional Index(PNI)がもっとも関連する因子であった。高齢者の緊急手術では術前の栄養状態・フレイル状態を評価し,重篤な全身状態の場合は本人・家族と十分に相談して治療方針を決定することが重要である。
  • 上田 順彦, 三浦 聖子, 本山 翔太, 爲澤 帆純, 永山 太悟, 三ノ宮 優太, 西木 久史, 橋本 明史, 甲斐田 大資, 宮田 隆司 ...
    原稿種別: 原著
    2023 年 13 巻 p. 35-41
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/27
    [早期公開] 公開日: 2023/08/14
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕過去12年6カ月間に当科で経験した鈍的腹部外傷による腸管・腸間膜損傷30例を対象として,臨床像と治療上の問題点を明らかにすることを目的として検討した。受傷機転では交通事故が24例(80%)で,シートベルト装着は22例であった。腸管損傷14例中5例(36%)は複数箇所の損傷であった。腸間膜損傷16例中8例(50%)は複数箇所の損傷であった。来院時または診察中にショック状態となった症例は9例(30%)であった。このうち後腹膜の大血管損傷の2例(1例は十二指腸損傷合併)および回結腸動脈からの出血でショック状態の1例は救命できなかった。一方,6例(20%)は受傷から9時間(中央値)が経過してから腹痛など症状が出現した。鈍的腹部外傷による腸管・腸間膜損傷の治療では後腹膜の大血管損傷の併存例,複数箇所の腸管損傷例,遅発性の症状発現例に注意して対応する必要がある。
  • 中村 明弘, 内田 恒之, 野川 悟史, 田中 邦哉
    原稿種別: 原著
    2023 年 13 巻 p. 42-46
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/27
    [早期公開] 公開日: 2023/08/31
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕【目的】腸閉塞に対する高圧酸素療法(HBO)の治療効果をHBO施行例の臨床成績から検討する。【対象・方法】2019年4月~2022年3月までに腸閉塞を発症しHBOを施行した13例を対象とし,臨床成績からその安全性,有効性を検討した。【結果】全例腹部手術歴を有し,癒着性小腸閉塞と診断した。発症からHBO開始までの期間(中央値)は7日で,HBO施行回数は6回,胃管やイレウス管による減圧併用例は11例であった。中耳スクイーズにより1例(7.7%)が治療中断となったが,治療効果は奏効が8例(61.5%),非奏効が4例(30.7%)であった。発症7日以内にHBOを導入した早期導入群7例と8日以降の晩期導入群5例を比較すると(治療中断例除外),早期群は全例奏効したが,晩期群では奏効例は1例のみ(20%)であった。【結語】腸閉塞に対してHBOは重大な有害事象なく安全に施行可能であり,発症早期のHBO導入が手術回避に重要と考えられた。
  • 稗田 拓朗, 内藤 滋俊, 濱畑 圭佑, 細田 康仁, 中村 廉, 小宮 和音, 嬉野 浩樹, 森本 光昭, 吉田 泰, 栁澤 純, 乘富 ...
    原稿種別: 原著
    2023 年 13 巻 p. 47-51
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/27
    [早期公開] 公開日: 2023/10/06
    ジャーナル フリー

    〔要旨〕【背景】シートベルトを着用した自動車事故被害者は,非着用者に比べ死亡率が低いと報告されている。しかし,シートベルトを着用した場合,消化管損傷の発生率が増加するとの報告がある。【方法と対象】当院で手術を行ったシートベルト外傷による消化管全層性損傷9例について,後方視的に臨床的背景や周術期短期成績の検討を行った。【結果】初診時に消化管全層性損傷と診断したのは4例で,5例は経過観察開始から24時間以内に診断し手術となった。【考察】鈍的外傷の小腸穿孔は症状や画像所見が出現しにくく,初診時に診断が困難な場合がある。初診時に確定診断できなかった全症例の初回造影CT検査で消化管の壁肥厚と造影増強像を認めた。【結論】造影CT検査で消化管壁の肥厚と造影増強像等の所見を呈する症例では,シートベルト外傷による消化管損傷を疑う必要がある。

症例報告
  • 上田 菜保子, 坂平 英樹, 福岡 正人, 松本 尚也, 酒井 哲也
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 13 巻 p. 52-56
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/27
    [早期公開] 公開日: 2023/04/10
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕内臓動脈瘤破裂後に重症肝不全をきたし,正中弓状靭帯切離により肝不全の改善を認めた症例について報告する。症例は75歳男性。突然発症の強い上腹部痛を訴え救急搬送され,造影CT検査にて下膵十二指腸動脈瘤破裂による後腹膜出血と判明した。正中弓状靱帯症候群があり手技に難渋するも,経カテーテル的動脈塞栓術(transcatheter arterial embolization;TAE)により止血が得られた。膵十二指腸アーケード領域に計3回TAEが施行され,肝血流の低下を契機に重症肝不全をきたした。集学的治療により肝不全がChild Pugh分類Grade Bまで回復したのち,開腹正中弓状靱帯切離を施行して肝機能は完全に正常化した。正中弓状靭帯切離により肝血流が増加し,肝不全の改善に寄与した一例を報告する。
  • 三浦 聖子, 上田 順彦, 甲斐田大資 , 宮田 隆司, 宮下 知治, 藤田 秀人, 高村 博之, 飯沼 由嗣
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 13 巻 p. 57-61
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/27
    [早期公開] 公開日: 2023/04/10
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕症例は63 歳,男性。総胆管結石に対する内視鏡的切石術後に重症急性膵炎を発症した。被包化壊死を残した状態で退院となったが,退院後37日目より発熱,右鼠径部痛を認めた。十二指腸穿孔を伴う感染性膵壊死と診断し手術を施行した。初回手術ではネクロセクトミーと胆嚢摘出術を施行し,計画的再手術を予定しopen abdomen management(OAM)とした。CT検査にて残存する壊死物質の貯留を確認し,2日後に再手術を施行した。ネクロセクトミーの追加と十二指腸穿孔部を縫合閉鎖し,ドレーンを留置して閉腹した。再手術後88病日に退院となった。十二指腸穿孔を伴う感染性膵壊死に対してOAMを用いた計画的再手術によるネクロセクトミーが有効であった1例を報告する。
  • 原 大介, 濱廣 友華, 前田 亮, 綾部 貴典, 富田 雅樹
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 13 巻 p. 62-66
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/27
    [早期公開] 公開日: 2023/04/17
    ジャーナル フリー

    〔要旨〕症例は,統合失調症既往のある30歳台女性。自殺企図で自刃し,腹部から出血しているところを発見され当院救命救急センターに搬送となった。出血性ショック,切迫心停止に対して蘇生的開胸術による下行大動脈クランプを施行し,開胸心臓マッサージを行った。腹部外傷に対してはダメージコントロール手術を行った。術後2日目にガーゼデパッキングおよび消化管再建目的で手術を予定したが,術前の胸部X線,胸部CT検査で左上葉の透過性低下を認め,術後肺炎と診断したものの,予定どおりに再手術を施行した。再手術後6日目のCT検査で同様に左肺の異常を指摘され,当院呼吸器科の介入を得たところ左上葉肺捻転症と診断され,同日緊急手術が施行された。

  • 青木 佑磨, 野路 武寛, 田中 公貴, 松井 あや, 中西 喜嗣, 浅野 賢道, 倉島 庸, 海老原 裕磨, 村上 壮一, 中村 透, 土 ...
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 13 巻 p. 67-72
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/27
    [早期公開] 公開日: 2023/04/10
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕患者は90歳代,男性。意識障害と血圧低下を主訴に救急外来に搬送された。血液生化学検査では低ナトリウム血症を認め,腹部造影CT検査では著明な門脈ガス血症,左側結腸の造影不良・腸管気腫,腹水貯留を認めた。血液検査では炎症反応の上昇はみられず,腹膜刺激症状も認めなかった。胸部単純CT検査では腕頭動脈・左鎖骨下動脈内にもガスを認めた。虚血性腸炎に起因する無症候性の門脈ガス血症,動脈内ガスと診断したが保存加療の方針とし,入院加療を行った。低ナトリウム血症の改善に伴い意識レベルは改善し,第18病日の腹部造影CT検査では門脈ガス血症や腹水の改善がみられた。その後、症状の再燃を認めず,退院となった。
  • 石澤 義也
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 13 巻 p. 73-77
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/27
    [早期公開] 公開日: 2023/04/10
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕症例は39歳,男性。ボイラー室兼更衣室にて更衣中にボイラーが爆発を起こして吹き飛ばされ,外壁と柱の間に挟まれている状態で発見された。顔面,両上肢にⅡ度の熱傷,気道熱傷,左下腿開放骨折,右下腿骨折を受傷し,直近病院を経て当院へドクターヘリにて緊急搬送となった。当院到着時,血圧が93/62mmHg,脈拍は120回/分,FAST陽性であった。同日緊急開腹術にて腸間膜損傷,回腸穿孔に対しダメージコントロール手術,vacuum pack closureとし,左下腿創外固定を施行後に入院となった。48時間後に消化管再建,閉腹術を施行した。その後,外科的経過は良好と思われたが腸管麻痺が遷延しを改善に3週間を要した。爆発の衝撃を全身で受けたことによる全身性の炎症が腸管麻痺を遷延させた可能性があり,爆傷による腹部外傷では,通常の急性腹症や腹部外傷症例より経腸経口栄養再開には慎重な評価が必要であると考えられた。
  • 福家 拓郎, 岸野 貴賢, 隈元 謙介, 上村 淳, 大島 稔, 北本 昌平, 阪本 浩助, 山下 洋一, 堀井 泰浩, 岡野 圭一
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 13 巻 p. 78-83
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/27
    [早期公開] 公開日: 2023/06/27
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕症例は64歳,男性。弓部大動脈置換後の繰り返す人工血管感染の治療のため,当院へ紹介となった。上部消化管内視鏡検査では食道から人工血管への瘻孔を認め,二次性大動脈食道瘻(aortoesophageal fistula;AEF)と診断し,3期分割手術を施行した。最初に鏡視下食道亜全摘,次に人工血管の再置換と大網被覆を行い,最後に胃管による食道再建術を施行した。術後経過は良好で,現在抗菌薬を終了し外来経過観察中である。二次性AEFの治療においては,人工血管の再置換と食道切除を行うことが根治治療と考えられているが,手術に伴う侵襲は非常に高度である。段階的手術や胸腔鏡の使用による手術侵襲の分散や侵襲度の低減が有用と報告されているが,自験例では,既存の報告に加えて計画的な血管処理で異時性に大網充填・胃管再建を両立し良好な結果が得られたため,記録すべき手術手技として報告する。
  • 田村 暢一朗
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 13 巻 p. 84-88
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/27
    [早期公開] 公開日: 2023/06/27
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕〕鈍的頸横動脈損傷に対して外科的止血術を施行した1例を経験したので報告する。70歳,男性。軽四輪自動車運転中にガードレールに衝突し,受傷。右頸部鎖骨上に手拳大の血腫と気管偏位を認めた。頸部造影CT検査にて造影剤漏出像を伴う血腫を認めた。止血ならびに血腫除去による早期抜管を目的とし,外科的止血術の方針とした。右胸鎖乳突筋前縁と右鎖骨上に皮膚切開を置き血腫を除去したところ,頸横動脈損傷を認めたため結紮止血した。鈍的頸横動脈損傷は早期の気道確保と適切な止血が重要である。止血法としては経動脈塞栓術(trans arterial embolization;TAE)と外科的止血術があり,血管の損傷形態,合併する他部位損傷の有無,バイタルサイン,TAEにかかわる環境がその決定において重要である。
  • 山川 泰明, 津野 龍太郎, 降幡 多栄子, 樋口 眞也, 宮下 浩平, 盛實 篤史, 齋坂 雄一
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 13 巻 p. 89-93
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/27
    [早期公開] 公開日: 2023/06/27
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕症例は83歳女性。鎖骨遠位端骨折,胸椎破裂骨折の手術のため前医より紹介入院となった。受傷後7日目に手術が行われ,受傷後14日目に尿道カテーテル抜去となったが,抜去翌日に腹部膨満・筋性防御が出現し,造影CT検査では腹水の出現を認めた。子宮癌に対する放射線治療歴などから尿道カテーテルによる膀胱破裂の診断となった。尿道カテーテル留置・メロペネムによる保存的加療が行われたが,受傷後2年の最終経過観察時にも尿道カテーテル留置が継続され,近医で2週間おきに交換されている。放射線治療による膀胱壁脆弱性に尿道カテーテル先端による膀胱過伸展が加わり,膀胱破裂に至ったと推測された。
  • 加藤 秋太, 持田 弦, 谷澤 秀, 中本 礼良, 小島 光暁, 庄古 知久, 塩澤 俊一
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 13 巻 p. 94-98
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/27
    [早期公開] 公開日: 2023/08/14
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕【症例】63歳男性。右被殻出血で手術後,脳外科入院中に心房細動などに対して抗血栓薬を再開したところ,腹部膨満,血圧低下を認めた。CT検査で腹水貯留,結腸脾彎曲前面に造影剤漏出を認めた。腹腔内出血の診断で緊急手術を行った。開腹すると血性腹水の貯留,大網と横行結腸間膜との間に血腫を認めた。血腫を除去すると大網からoozingを認めたが,それ以外には活動性出血は認めなかった。責任血管として確信がもてなかったため,後出血を懸念して,open abdomen management(OAM)として手術終了とした。翌日に二期的手術を行い,止血を確認し閉腹した。【まとめ】出血源に確信がもてず,後出血のリスクが高い場合にはOAMによる二期的手術も選択肢となり得る。
  • 平山 伸, 千代 孝夫
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 13 巻 p. 99-103
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/27
    [早期公開] 公開日: 2023/08/31
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕19歳男性が右前胸部を強打し,当院救急科に緊急搬送された。胸部CT検査で右外傷性血気胸を認めたため,緊急胸腔ドレナージを実施した。止血薬投与を開始し,vital signは安定した。5時間後,貧血増悪と血小板消費を認めたため急遽輸血を開始し,緊急胸腔鏡手術を実施した。右胸腔内肺尖部に血餅が存在し,これを除去すると胸膜頂に破綻した拍動性新生血管の出血を認めた。同病変部の止血を行い,さらに肺尖部ブラ近傍の損傷を認めたため,肺尖部ブラを含めて肺囊胞切除術を施行した。術後の状態が良好なため翌日にドレーンを抜去し,入院後4日目で退院した。当院呼吸器外科で8K内視鏡システムを使用した初めての緊急手術症例を報告する。
  • 神戸 勝世, 中村 徹, 藏本 俊輔, 室野井 智博, 下条 芳秀, 木谷 昭彦, 比良 英司, 渡部 広明
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 13 巻 p. 104-108
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/27
    [早期公開] 公開日: 2023/09/19
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕症例は76歳男性。4日前より排便がなく,意識障害,体動困難で救急搬送された。来院時ショック状態で,腹部は緊満していた。CT検査で大腸を中心とした著明な腸管拡張を認め,腹部コンパートメント症候群および敗血症性ショックと診断した。緊急で腹腔減圧術を行い,vacuum assisted closure法を用いたopen abdomen management(OAM)で手術を終了した。集中治療管理を行い,第3病日に循環不全は改善するも誤嚥性肺炎および無気肺による重度呼吸不全を認めたため,OAM中ではあるが腹臥位療法を行い,呼吸不全を離脱した。OAM中でも腹部が平坦化するような症例では,循環動態やデバイス類の取り回しに注意を払い,腹腔内圧をモニタリングできれば腹臥位療法は治療選択肢の一つとなりうる。
  • 矢野 愛華, 天野 浩司, 茅田 洋之, 安原 裕美子, 橋本 優, 加藤 文崇, 向井 信貴, 晋山 直樹, 臼井 章浩, 森田 正則
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 13 巻 p. 109-113
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/27
    [早期公開] 公開日: 2023/09/19
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕59歳女性。上腹部打撲後,心窩部に圧痛と腹膜刺激症状があり,画像上十二指腸背側に腸管外ガスと液貯留およびVater乳頭近傍に憩室を認めた。外傷性十二指腸損傷と診断し同日緊急手術を施行した。開腹時穿孔部の粘膜は囊状に突出しており,外傷性十二指腸傍乳頭憩室穿孔と診断した。憩室・穿孔部を切除し,大網被覆とした。ドレーンを留置し,十二指腸内の減圧目的で経胃十二指腸瘻,栄養目的で腸瘻を造設した。術後11日で発熱を認め,縫合不全と診断した。保存的治療の後改善し,術後56日で独歩退院した。外傷性十二指腸憩室穿孔はきわめてまれであり治療方針について明確な答えは出なかったが,本症例では経胃十二指腸瘻・腸瘻が合併症発生後の管理に役立った。
  • 山本 祐太郎, 室野井 智博, 松本 亮, 川口 留以, 藏本 俊輔, 岡 和幸, 下条 芳秀, 木谷 昭彦, 比良 英司, 渡部 広明
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 13 巻 p. 114-118
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/27
    [早期公開] 公開日: 2023/09/19
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕症例は10歳,女児。屋内で転倒し鉛筆が左頸部に刺さり搬送となった。CT検査で左椎骨動脈損傷,左第7頸椎椎体骨折と診断した。同日,バルーン補助下に左椎骨動脈近位部にコイル塞栓術を施行し,左頸部の鉛筆を除去するとともに圧迫止血術を施行した。破折した鉛筆の芯は第7頸椎椎体内に遺残したため,術後1カ月間の抗菌薬静注投与を行った。杙創での外傷性椎骨動脈損傷報告例は,本邦で4例であった。本症例では,椎骨動脈のカテーテル塞栓術を先行後に異物除去を施行し,良好な成績を得た。頸部杙創による椎骨動脈損傷では,成傷器の除去において,出血と塞栓による脳梗塞発症を防止する点を念頭に置いた治療戦略が必要である。
  • 鈴木 源, 勅使河原 勝伸, 山本 大輔, 坂本 早紀, 五木田 昌士, 田口 茂正, 清田 和也
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 13 巻 p. 119-124
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/27
    [早期公開] 公開日: 2023/12/16
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕十二指腸手術後の縫合不全を防ぐためには十二指腸内の減圧が重要である。今回,十二指腸手術後にマルチスリット型シリコンドレーン(multi-slit silicone drain 以下, MSD)を用いて十二指腸の減圧(tube decompression)を行った9症例〔予測死亡率(中央値)72%〕を報告する。全身状態が悪くなるほど,血管内脱水や消化ホルモンの分泌低下による消化液の分泌量の低下や濃縮により粘稠度が上昇し,チューブ閉塞のリスクが高くなることが予想される。しかし,本例ではチューブ閉塞による減圧不良となった症例はなく,予測死亡率を下回る死亡率(22.2%)であった。十二指腸のtube decompressionはドレナージ効果が高く,閉塞しにくいMSDが有効な可能性がある。
  • 松永 裕樹, 志水 祐介, 柳 新太郎, 大橋 景子, 山川 潤, 大倉 淑寛, 杉山 和宏
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 13 巻 p. 125-130
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/27
    [早期公開] 公開日: 2023/12/16
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕気管切開術は救急領域で頻用されるが,動脈損傷や気管動脈瘻など致死的合併症も報告され,注意を要する。今回,近接する頸部血管への直接の接触を避けるため甲状腺頭側から背側を剝離し,アジャストフィット®を経皮的気管切開術キットBLUパーク®で留置するハイブリッド法(以下,本法)を3症例で実施し,良好な経過を得た。いずれも甲状腺尾側に腕頭動脈や総頸動脈が近接するため,甲状腺の頭側から背側を剝離し尾側に下げて展開し,第2-3気管軟骨間を穿刺し気管切開カニューレを留置した。皮膚切開は20mmと小切開で合併症はなかった。本法は近接血管との間に甲状腺を介してカニューレを留置する気管切開法であり,頸部血管近接例に対し有用な一手法となり得る。
  • 香川 倖二, 三浦 巧, 阿部島 滋樹
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 13 巻 p. 131-136
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/27
    [早期公開] 公開日: 2023/12/16
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕症例は80歳代,男性。腹痛を主訴に救急搬送された。腹腔鏡下胃全摘術,Roux-en-Y再建の既往があり,造影CT検査所見から内ヘルニアによる絞扼性腸閉塞と診断し,緊急手術となった。Petersen窩付近で小腸が嵌頓し,著明に鬱血していた。整復後もTreitz靭帯付近からY脚吻合部まで鬱血は残存していた。同部位の切除・再建は手技の煩雑化や挙上空腸の血流障害を惹起する可能性があり,Petersen窩を縫合閉鎖し経鼻減圧チューブをY脚から十二指腸水平部に留置し終了した。翌日,second look operationにて小腸の血流改善を確認し,非切除で終了した。Petersenヘルニアによる絞扼性腸閉塞において,腸管の鬱血が顕著な場合は,減圧チューブ留置とsecond look operationでの血流の評価が治療の選択肢となり得る。
  • 前川 夏穂, 風巻 拓, 眞戸原 尚輝, 仲澤 寿輝, 隈本 雄大, 川合 良尭, 保武 雄真, 土屋 亜由美, 廣江 成欧, 松本 松圭, ...
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 13 巻 p. 137-141
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/27
    [早期公開] 公開日: 2023/12/16
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕消化管異物は,小児や高齢者の誤飲,精神疾患を背景とした異食症によるものが多い。胃内異物はほとんどの症例で内視鏡的摘除が可能で,十二指腸より肛門側に移動した異物の多くは自然排泄されることも多く,外科的治療の対象となるものはまれであるが,ときに重大な合併症を招くことがあり,軽視されるべきではない。今回われわれは,内視鏡的摘除が困難だったため外科的摘除が必要となり,さらに術後3カ月で異物によりS状結腸穿孔をきたした症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。
  • 明利 里彩, 石井 廣人, 谷口 智明, 川越 勝也, 阪口 修平, 古川 貢之
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 13 巻 p. 142-146
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/27
    [早期公開] 公開日: 2023/12/21
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕症例は84歳,男性。自動釘打機での自傷行為で,頭部,前胸部に釘を打ち込み受傷した。CTで頭部と前胸部に釘の残存と,心損傷,肺損傷,脳損傷を認めたため,緊急で開胸止血術と開頭異物除去術を施行した。胸部の術中所見として,心膜に明らかな鋭的損傷を認めず,心尖部近くの心筋にoozingを伴う暗赤色変化を認めるのみだったことから,自動釘打機の衝撃による鈍的心損傷と診断した。自動釘打機による四肢以外の臓器損傷はまれであり,無症状から血行動態の破綻までさまざまな経過を呈する。胸部に創部がある場合,鋭的損傷だけでなく鈍的損傷でも全身状態が増悪する可能性があるため,迅速な評価,治療介入が救命に重要と考えられる。
その他
  • 七島 篤志, 河野 文彰, 落合 秀信, 長野 健彦
    原稿種別: その他
    2023 年 13 巻 p. 147-150
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/27
    [早期公開] 公開日: 2023/04/10
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕2022年9月30日から10月1日まで宮崎市青島で行われた第14回日本Acute Care Surgery学会学術集会報告を行う。
  • 江口 大樹, 朝沼 杏子, 倉田 秀明, 葉山 雄大, 徳丸 哲平, 梅澤 耕学, 榮福 亮三, 冨岡 譲二, 米盛 公治
    原稿種別: その他
    2023 年 13 巻 p. 151-156
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/27
    [早期公開] 公開日: 2023/10/02
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕当院は2014年9月にHybrid ER(HER)の運用を開始した。当院の特色に合うHER system(HERS)を構築する必要があり,院内HERS研究会を立ちあげ,多職種でシステム構築に関して議論してきた。まずトラウマコードを策定し,病院前情報が基準に合う場合,院内外のスタッフ参集を開始した。次に,受け入れ時の物品と薬剤のセット化を行い,スタッフの配置や役割分担を明確化した。患者到着後は,primary surveyのAのみ確認しpan-scan CTを撮像し,損傷部位を確認しB移行の方針を決定している。月に一度の院内HERS研究会で症例の振り返りを行い,適切な初期対応ができていたか各職種で共有している。HERで受け入れを行った症例のデータベースを作成し,日本外傷データバンクとひもづけている。今後は「防ぎ得た外傷死」の回避を行えているかの検証と,明らかになった問題点をHERSに組み込み,よりよい外傷診療を目指したい。
  • 岡田 一郎, 井上 和成, 関 聡志
    原稿種別: その他
    2023 年 13 巻 p. 157-161
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/27
    [早期公開] 公開日: 2023/09/19
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕災害時には,しばしば大量の外傷患者が発生する。外傷の専門家であるACS医(acute care surgeon)は災害医療においても重要な役割を担う。災害時にacute care surgeonは外傷手術を行う高度技能医としての役割と,現場の外傷診療をマネジメントする外傷リーダーとしての役割の二つが大きく求められる。これまで実災害時には四肢外傷手術が多いことが報告されており,acute care surgeonは高度技能医として,体幹部外傷手術だけでなく,血管損傷を伴うような四肢外傷の初期治療にも慣れておく必要がある。また,外傷リーダーの適切なマネジメントが災害初期対応の成否に重要であるといわれており,初療室,手術室,集中治療室を仕事場とするacute care surgeonは外傷リーダーに適任と考えられる。災害時の対応能力の向上には,平時からの災害医療への参画が重要であり,一般外科医や各科専門外科も含めた外傷診療体制の構築にacute care surgeonの果たす役割は大きい。
  • 益子 一樹, 松本 尚, 安松 比呂志, 上田 太一朗, 山本 真梨子, 船木 裕, 川口 祐香理, 坂野 高大, 原 義明
    原稿種別: その他
    2023 年 13 巻 p. 162-167
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/27
    [早期公開] 公開日: 2023/10/02
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕【はじめに】Acute Care Surgery(ACS)の診療範囲は5本柱と認識されているが,担うべき役割はほかにも存在する。【われわれの試み】地域外科的危機管理部門として以下の活動を行ってきた。①県警特殊部隊とIMAT協定,②サミット時に自衛隊と合同の外傷外科チームを展開,③医療圏多数傷病者対応計画を策定,多機関訓練を反復。【考察】外科が専門分化した現在,ACSは,院内外の外科的リスクに対応するための外科的危機管理部門として最適の存在である。外科的危機管理とそのマネジメントを担うには,外傷外科,とくに穿通性外傷への即応力を有し,災害時医療,メディカルコントロールに精通したディレクターを核とした成熟したACSチームでなければならず,消防,行政,警察,自衛隊等との密な連携が重要となる。このような医師,チームを養成していくには,外科的危機管理部門の役割を明確にし,ACS領域の上位として位置づけ,必要な経験に曝露されるよう環境を創出する必要がある。
  • 清水 正幸, 土屋 亜由美, 河西 浩人, 風巻 拓, 廣江 成欧, 松本 松圭, 江川 智久
    原稿種別: その他
    2023 年 13 巻 p. 168-172
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/27
    [早期公開] 公開日: 2023/10/06
    ジャーナル フリー

    〔要旨〕Acute Care Surgery(以下,ACS)は,以前より長時間労働が問題視されている外科と救急に関連する診療領域である。2024年4月から開始される医師の働き方改革は,時間外労働時間の適正化であるが,各地域におけるACSの診療レベルを維持しつつ,この領域の働き方改革を進めることは困難が予想される。当院のACSチームの診療体制上の特徴は,①ACSは外科の一専門領域に構成される,②ACSの5分野をカバーする,③ACSチームはシフト制で勤務する,である。これらを実践することによりACSの診療レベルを落とすことなく働き方改革を進めることは可能であると考えられる。実際に当院のACSチームは,2024年4月より開始される医師の働き方改革においてA水準(時間外労働時間が年960時間/月100時間未満)を申請する予定である。当院のACS診療体制の特徴を医師の働き方改革の観点より紹介する。

  • 菅原 元, 北川 喜己
    原稿種別: その他
    2023 年 13 巻 p. 173-178
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/27
    [早期公開] 公開日: 2023/10/02
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕南海トラフ地震が発災した場合,愛知県では甚大な被害が発生することが想定されており,患者搬送支援が必要になると考えられる。愛知県の救急医と外科医で構成される愛知Acute Care Surgeryフォーラムでは,南海トラフ地震を想定した災害時の手術患者搬送支援について検討を重ねている。外傷手術を頭部・心大血管・呼吸器・消化器・肝胆膵・骨盤・四肢・血管塞栓術に分類し,愛知県下35の災害拠点病院で施行可能な外傷手術を調査した。発災時,愛知県下33の災害拠点病院でいずれかの外傷手術が施行可能であり,18の災害拠点病院では8領域すべての外傷手術が対応可能という結果であった。われわれはこの結果をまとめたものを愛知県災害時外傷外科連絡網と称している。発災時に,愛知県DMAT調整本部と連絡網を共有することで,搬送先や搬送手段を判断する資料として利用可能であると考えた。
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