Japanese Journal of Acute Care Surgery
Online ISSN : 2436-102X
12 巻, 1 号
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特集
  • 伊良部 真一郎, 山本 博崇, 吉岡 義朗, 粕川 宗太郎, 河西 怜, 中野 雄介, 斎藤 隆介, 齋藤 麻里菜, 鈴木 一史
    原稿種別: 原著
    2022 年 12 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/29
    [早期公開] 公開日: 2022/09/23
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕【はじめに】ER型救命救急センターのacute care surgery(ACS)体制改善のため,外科内にACSチームを立ち上げ,トラウマコード(trauma code;TC)を策定した。その効果を検証した。【方法】2017年1月~2021年10月に手術かinterventional radiology(IVR)を要した体幹部外傷において,IVRまたは外科治療介入までの所要時間,preventable trauma death(PTD)を,ACSチーム立ち上げおよびTC運用前後で比較した。【結果】対象症例は54件で,ACSチーム稼働後増加していた。IVRまたは外科治療介入までの所要時間はACSチーム稼働後に有意に短縮し,とくにTC適応となる重症例で顕著であった。PTD割合も有意に減少した。【結論】外科内ACSチームとTCは,ER型救命救急センターのIVRまたは外科治療介入所要時間短縮とPTD減少に有用と考えられた。
  • 齋藤 麻里菜, 伊良部 真一郎, 齋藤 隆介, 杉浦 定世, 山本 博崇
    原稿種別: 原著論文
    2022 年 12 巻 1 号 p. 7-12
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/29
    [早期公開] 公開日: 2022/12/22
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕当院では2020年3月からトラウマ・コードの運用が開始され,手術室看護師が救急外来と手術室での緊急手術に参加している。しかし,手術室看護師の多くは外傷手術に関する知識と経験が少なく,不安が強い。そこで,外傷手術のoff-the-job training を実施し,参加した手術室看護師の意識がどのように変化したかを調査した。対象は消化器外科を専門とする手術室看護師4名である。学習前は全員が外傷手術にかかわることに対して強い不安があったが,学習後は全員の不安が軽減し,外傷診療に対してより前向きな気持ちとなっていた。重症外傷診療に対する座学と動物を使用した実習は手術室看護師の不安を軽減し,意識を改善させうる。手術室看護師が抱く不安の軽減,意識の改善はチーム医療に良い影響を及ぼすと期待される。
  • 天野 浩司, 臼井 章浩, 橋本 優, 犬飼 公一, 茅田 洋之, 加藤 文崇, 向井 信貴, 晋山 直樹, 森田 正則, 中田 康城
    原稿種別: その他
    2022 年 12 巻 1 号 p. 13-17
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/29
    [早期公開] 公開日: 2022/11/10
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕2015年7月から堺市立総合医療センター(以下,当院)は,acute care surgery(以下,ACS)領域に対しacute care surgeon(以下,ACS医)が対応する診療システムを開始した。われわれがこのシステムを構築し運用するために行った,手術症例数を確保するための工夫,各臓器別専門外科との協力関係の構築,診療や教育体制,ACSチームを発展・維持させるための取り組み等について紹介する。ACSは新しい臨床医学の領域であり,ACSが対象とすべき領域やACS医の育成システムをどうするかなど今後も考えるべき課題が多数ある。ACS医に求められる業務は地域医療の状況や所属する施設の設備・人的資源の充実度などによって異なるが,ACS診療を行うチームを構築するうえで重視すべきは,当該医療機関においてACS診療を24時間365日維持できる診療体制とACS医が外科医として成長し続けられるシステムである。
  • 木村 純子, 臼井 章浩, 犬飼 公一, 茅田 洋之, 向井 信貴, 天野 浩司, 松本 光史, 茂刈 洋介, 藤原 麻美子
    原稿種別: その他
    2022 年 12 巻 1 号 p. 18-21
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/29
    [早期公開] 公開日: 2022/11/10
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕堺市立総合医療センターでは,救命救急センター開設時よりintensive care unit(ICU)専任の理学療法士(physical therapist;PT)と言語聴覚士(speech therapist;ST)を配置している。acute care surgery(ACS)領域でのPTの主な役割は,①人工呼吸器管理中および離脱後の呼吸理学療法の実施や,医師・看護師と協議しながらの呼吸器ウィーニングや抜管の可否についての検討,②多発外傷患者のポジショニングを実施する際の創外固定器具の調整,③open abdominal management(OAM)を行っている患者への呼吸理学療法や早期離床の実施,④多発肋骨骨折患者に対する疼痛評価と鎮痛法や手術の要否について医師と検討を行っている。ACS領域においても,ICUでの早期リハビリテーションは,各職種が互いに理解し合うことでチームとしての視点やチームとしてのリハビリ実践を通して,早期離床や合併症の予防が可能になると考える。
総説
  • 大村 健史
    原稿種別: 総説
    2022 年 12 巻 1 号 p. 22-27
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/29
    [早期公開] 公開日: 2022/12/20
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕Acute Care Surgery(ACS)領域において,緊急手術が必要となった場合の患者意思決定支援について,これまで問題点が指摘されつつも,ガイドラインの策定等の整備が進んでいない現状がある。緊急手術であっても医療者はできるかぎりの意思決定支援を行うべきであるが,さまざまな制約のため限界がある。意思決定に必要な要素,informed consent(IC)とsurgical quality and safety(SQS)について,限界と今後改善可能な点について文献を用い研究調査を行った。ACS手術のICには,定期手術とは違った問題が存在する。患者側,医療者側それぞれに多くの問題が存在し,介入・改善が困難なものが多い。時に,患者自身の判断力が失われている場合があり,IC自体が成り立たないこともある。ICに関してだけの改善では表面的・形式的な手術同意書への署名にしかつながらず,これでは患者意思決定支援が十分行われているとは言い難い。改善すべきは,手術に関する病院システム全体を見直すことであり,ICはSQSの一部とし,事前に施設内で医療安全と手術の質が保障されるよう整備されていることが,IC困難なACS領域手術での意思決定支援ではとくに必要なことであると考えられる。海外でのSQSに関する取り組みをレビューし,今後ACS領域での患者意思決定支援に関して改善すべき点について報告する。
原著
  • 伊良部 真一郎, 山本 博崇, 吉岡 義朗, 粕川 宗太郎, 河西 怜, 中野 雄介, 鈴木 一史
    原稿種別: 原著論文
    2022 年 12 巻 1 号 p. 28-34
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/29
    [早期公開] 公開日: 2022/04/20
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕【はじめに】全国の外科専門領域研修プログラム(以下,外科プログラム)のAcute Care Surgery(以下,ACS)研修の現状を調査した。【方法】2020年度外科プログラムの基幹施設の施設背景,プログラム中のACSにかかわる記載内容を評価した。また,各基幹施設のACS認定外科医在籍状況とACS研修の関連を評価した。【結果】全231件のうち,ACSにかかわる記載は88件(38.1%),ACSコースの設置は7件(3.0%)に認めた。多変量解析では,基幹施設が大学本院であること,救命救急センターでないことが外科プログラムのACSにかかわる記載の欠如に関連していた。ACS認定外科医の在籍する外科プログラムはACSコースの設置が多かったが,ACSにかかわる記載には有意差はなかった。【結論】現在の外科プログラムの多くはACS研修が不十分なことが示唆され,現状改善のためACS認定外科医が外科プログラムに関与していく必要があると考えられた。
  • 山本 博崇, 伊良部 真一郎, 吉岡 義朗, 粕川 宗太郎, 河西 怜, 有松 優行, 齋藤 隆介, 渥美 生弘, 鈴木 一史
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 12 巻 1 号 p. 35-40
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/29
    [早期公開] 公開日: 2022/05/24
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕近年,肝損傷後の胆道関連合併症の頻度が増加傾向にある。当院で経験した鈍的肝損傷に対するnon-operative management後に胆汁漏を合併した症例を提示し,その診断と改善策について考察した。症例はⅢb型鈍的肝損傷3例である。症例1と2は経過中にそれぞれ炎症反応と腹部症状の悪化を認め,CT検査でbilomaと診断,内視鏡的胆道ドレナージで軽快した。症例3はスクリーニングDIC-CT検査で胆汁漏と診断した。内視鏡的胆道ドレナージを施行したが,ドレナージ不良によりbilomaが増悪し,穿刺ドレナージを要した。この3症例中,早期ドレナージを行った症例2でドレナージ期間と抗菌薬による治療期間がもっとも短かった。肝損傷後の胆汁漏ハイリスク症例に関しては,早期検査と治療介入が望ましい。
  • 岩瀬 史明, 萩原 一樹, 井上 潤一, 渡邉 紗耶香, 宮﨑 善史, 松本 学, 柳沢 政彦, 笹本 将継, 釘宮 愛子, 吉野 匠, 伊 ...
    原稿種別: 原著論文
    2022 年 12 巻 1 号 p. 41-47
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/29
    [早期公開] 公開日: 2022/04/20
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕【背景】防ぎえた外傷死亡の原因の多くは出血と報告されている。大量出血が予想される患者に対して大量輸血プロトコール(massive transfusion protocol;MTP)が取り入れられるようになったが,MTP発動時の輸血製剤の破棄の実態は不明である。【方法】2015~2019年に山梨県立中央病院高度救命救急センターに搬送され,MTPが発動された外傷患者の輸血製剤の破棄の状況について調査した。【結果】320例にMTPが発動され,23例(7.2%)で輸血製剤の破棄を認めた。大量輸血症例で10例,赤血球輸血を実施しなかった症例においても9例の破棄を認めた。もっとも多かった製剤は新鮮凍結血漿(fresh frozen plasma;FFP)であり,解凍後に不要となり破棄されていた。MTP中止が遅れ,保管・認証方法の不備や破損によるものも認めた。【結語】MTPにおいて輸血製剤の破棄を減らすためには,FFPの解凍後の使用期限の延長による他の患者への転用や凝固因子の補充のためにFFP以外の製剤の運用,製剤の取り扱いに関するスタッフの教育が必要である。
  • 上田 太一朗, 益子 一樹, 安松 比呂志, 川口 祐香理, 船木 裕, 山本 真梨子, 利光 靖子, 原 義明, 横堀 將司
    原稿種別: 原著
    2022 年 12 巻 1 号 p. 48-53
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/29
    [早期公開] 公開日: 2022/09/23
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕【目的】高齢者急性腹症に対するopen abdomen management(OAM)の有用性を明らかにする。【方法】2011年4月~2021年3月の間に緊急手術を行った75歳以上の急性腹症について,OAMを行った18例(OAM群)と一期的手術39例〔SO(single-stage operation)群〕に分け,背景,在院死亡率、合併症率等を比較した。portsmouth-physiological and operative severity score for the enumeration of mortality and morbidity(P-POSSUM)スコアより予測死亡率を算出し,実死亡率と比較した。【結果】OAM群の重症度は高く,在院死亡率(OAM群66.7%,SO群2.6%,p<0.05),合併症率(OAM群55.6%,SO群30.8%)とも高かった。OAM群では予測死亡率70%以上の症例で実死亡率が下回ったが,40~70%の6症例は全例死亡した。【結論】予測死亡率がきわめて高い最重症例にOAMは有用な可能性があるが,適用には症例ごとに熟考を要する。
  • 森下 幸治, 安部 隆三, 松島 一英, 鈴木 崇根, 中田 孝明, 佐藤 格夫, 室野井 智博, 渡部 広明, 大友 康裕
    原稿種別: 原著
    2022 年 12 巻 1 号 p. 54-59
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/29
    [早期公開] 公開日: 2022/09/23
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕目的:Advanced Surgical Skills for Exposure in Trauma(ASSET)コースは米国外科学会が開発したご遺体を用いた外傷トレーニングコースの1つである。世界各国で開催されており,わが国では2016年に初開催された。本コースでは,外傷症例のディスカッションを行い,手術手技を1日で学ぶ。わが国における本コースの有用性が明らかでないため,アンケート調査結果を分析した。方法:過去9回,76名の受講者に対してアンケートを行い,以下の各項目(全体評価,プログラムのトピックスと内容,必要性との合致性,教育の形式,実際の臨床への有用性,新しい知識/技術の習得,満足度など)を分析した。さらに解剖学的に役立った部位も調査した。結果:5段階評価にて平均4.3~4.8と高評価であった。役立った部位は,頸部や上肢を選ぶ受講生が多かった。結論:ASSTコースにも長所,短所があるものの,アンケート調査結果は高評価であり,今後も継続的な普及が望まれる。
  • 宮地 洋介, 海道 利実
    原稿種別: 原著
    2022 年 12 巻 1 号 p. 60-65
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/29
    [早期公開] 公開日: 2022/10/15
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕【はじめに】緊急/準緊急手術術前に深部静脈血栓症(deep venous thrombosis;DVT)および肺血栓塞栓症(pulmonary embolism;PE)が発見された場合の治療戦略について報告する。【対象と方法】2016年5月~2021年5月に,聖路加国際病院にて緊急あるいは準緊急手術が施行された症例のうち,術前に新規のDVT/PEを認めた4症例を後方視的に検討した。【結果】年齢は60~80代。原疾患は大腸癌による腸閉塞2例,盲腸癌による虫垂炎1例,肝囊胞自然破裂1例。診断契機は術前CT検査にて偶然にDVT/PEを発見された症例が3例,下腿腫脹を契機にエコー検査で診断された症例が1例。緊急手術となった肝囊胞自然破裂症例以外の3例で診断時から手術4時間前まで全身ヘパリン化が施行され,1例で術前に下大静脈フィルターが挿入された。術後入院期間中にPEの新規発症は認めなかった。【結語】緊急/準緊急手術を要する症例で術前に新規DVT/PEが発見された場合,最小限の待機期間内に血栓の安定化を図ることで安全に手術を施行することが可能であった。
  • 原 貴信, 日高 匡章, 井上 悠介, 猪熊 孝実, 曽山 明彦, 松本 亮, 今村 一歩, 松島 肇, 足立 智彦, 伊藤 信一郎, 金高 ...
    原稿種別: 原著
    2022 年 12 巻 1 号 p. 66-70
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/29
    [早期公開] 公開日: 2022/11/10
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕長崎大学病院では,腹部外傷手術を消化器外科医が担当している。以前は腹部外傷の診断がついた後で連絡を受け,診療を開始していたが,2014年以降は患者搬入時から救急医と協力して初期診療にあたるようになった。また,院内勉強会や若手医師を対象としたカンファレンスの定期開催,他施設との症例検討会により経験症例を広く共有しているほか,外傷手術修練として年2回のcadaverトレーニングを行っている。これらの取り組みの成果を検証した結果,2014年以降のシステム導入後は来院から手術までの時間が短縮傾向となり,ダメージコントロール戦略の浸透とともにopen abdomen managementの件数も有意に増加していた。診療科が細分化された地方の大学病院において,われわれの構築した診療・教育体制は診療科間の連携に効果的に機能し,院内外傷チームの構築と成熟に寄与していると考えられた。
  • 加藤 淳一郎, 谷口 嘉毅, 山口 英治, 深田 唯史, 橘高 弘忠, 伊藤 裕介, 林 靖之, 真貝 竜史, 澤野 宏隆, 福﨑 孝幸
    原稿種別: 原著
    2022 年 12 巻 1 号 p. 71-75
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/29
    [早期公開] 公開日: 2022/11/10
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕【目的】下部消化管穿孔の緊急開腹術後の開腹創に遷延一時縫合(delayed primary closure;DPC)と局所陰圧療法(negative pressure wound therapy;NPWT)を併用する治療法の有用性を検討する。【対象と方法】緊急開腹術を要した下部消化管穿孔のうち,Hinchey分類StageⅢまたはⅣに該当する37例を,一期的縫合群と,DPCとNPWTを併用する群に分け,後方視的に調査した。【結果】2群間の術後手術部位感染症(surgical site infection;SSI)発症率は31.6% vs 27.8%(P=0.80)と統計学的有意差を認めなかったが,深部SSI発症率にかぎると21.1% vs 0.0%(P<0.05)と統計学的有意差を認めた。【結論】下部消化管穿孔の緊急開腹手術後にDPCとNPWTを併用し,深部切開創SSI発生率を減少させる可能性が考えられた。
  • 三宅 亮, 奥川 郁, 山下 さくら, 梅田 滉弥, 久保 佑樹, 松岡 俊, 香川 正樹, 松山 純子, 古城 都
    原稿種別: 原著
    2022 年 12 巻 1 号 p. 76-80
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/29
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕Failure to rescue(FTR)は病院の質の指標として広がりつつあるが,acute care surgery領域では報告が少ない。今回,高齢者緊急手術のFTRの検討を行った。6年間に当院で経験した腹部緊急手術(abdominal emergency general surgery: AEGS)のうち,術後集中治療を行った65歳以上の231例の後方視的検討を行った。術後合併症発生率は62.3%であり,FTRは32.6%であった。FTRの有意なリスク因子は「年齢≧80歳」「Charlson Comorbidity Index≧4」「発生合併症2つ以上」「合併症発見時心肺停止」「合併症発生後集中治療管理」であった。併存疾患が多い高齢者はFTR率が高く,またFTR減少に向けて早期発見や集中治療管理の重要性が示唆された。
症例報告
  • 中山 文彦, 石木 義人, 福田 令雄
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 12 巻 1 号 p. 81-85
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/29
    [早期公開] 公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕症例は40歳台の男性。自動二輪車同士の衝突事故により受傷した。ドクターカーの医師が接触時、患者はショック状態であった。来院後直ちに開腹し,脾臓を摘出,続いて骨盤骨折・左腎損傷に対して動脈塞栓術(transcatheter arterial embolization;TAE)を施行した。その後,右胸腔ドレーンからの血性排液が急激に増加し,再びショック状態に陥ったため右開胸した。肺穿通創を開窓し縫合止血するも肺裂傷部からの出血が持続し,ガーゼパッキング・仮閉胸状態で手術を終了した。集中治療,予定的再手術,整形外科的治療を経て受傷3カ月後に転院となった。腹部のダメージコントロール手術(damage control surgery;DCS)とTAE後に胸部のDCSも施行して救命できた症例を,胸部DCS手技についての考察と併せて報告する。
  • 間山 泰晃, 西村 裕隆, 林 圭吾, 米丸 裕樹, 仲村 尚司, 卸川 智史, 大森 敬太, 砂川 宏樹
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 12 巻 1 号 p. 86-89
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/29
    [早期公開] 公開日: 2022/04/20
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕症例40歳台男性。既往歴に,慢性膵炎による結腸狭窄に対し,結腸部分切除を施行されている。腹壁瘢痕ヘルニア増大のため外来受診したが手術をせず,保存的治療を継続していた。今回,誘因なく腹壁破裂による腸管脱出を認め,救急外来を受診した。汚染創であることから感染を危惧し,組織修復法である腹直筋鞘前葉反転法を施行したが,術後3日目に再発した。初回手術からの観察期間が短く感染のリスクがあると判断し,吸収性メッシュで補強した。巨大腹壁瘢痕ヘルニア破裂症例では再発リスクが高いため,非吸収性メッシュを使用できるように,初回手術時から二期的治療法を企画し対応することが望ましい。
  • 菅原 元, 蟹江 恭和, 南 貴之, 久留宮 康浩, 水野 敬輔, 世古口 英, 井上 昌也, 加藤 健宏, 秋田 直宏
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 12 巻 1 号 p. 90-94
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/29
    [早期公開] 公開日: 2022/04/20
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕症例は47歳女性。慢性膵炎による仮性囊胞に対し超音波内視鏡下膵囊胞ドレナージを2回施行している。最終ドレナージから3カ月後,左腰背部痛と高熱を主訴に救急外来を受診した。血液検査でWBC 19,000/μLと炎症反応は高値を示し,血液培養検査でStreptococcus salivariusが検出された。CT検査では膵尾部に長径18cmの囊胞を認めた。仮性囊胞の囊胞内感染と診断し,経皮的ドレナージを施行した。逆行性膵管造影で主膵管は膵尾部で限局性に狭窄していた。入院後38日目に尾側膵切除+脾摘出術を施行し,膵断端と空腸を端側吻合するDuVal手術を施行し,術後17日目に退院した。敗血症を併発した感染性仮性膵囊胞に対し,経皮的ドレナージとDuVal手術を組み合わせることで安全に治療を遂行することができた。
  • 内勢 由佳子, 田代 耕盛, 宗像 駿, 北村 英嗣, 濱田 朗子, 河野 文彰, 武野 慎祐, 森 晃佑, 阪口 修平, 石井 廣人, 古 ...
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 12 巻 1 号 p. 95-99
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/29
    [早期公開] 公開日: 2022/04/20
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕患者は73歳,男性。急性A型大動脈解離に対する弓部大動脈人工血管置換術後2年目のCT検査で人工血管より末梢側の胸部大動脈瘤破裂を認め,緊急ステントグラフト内挿術が施行された。術後5日目のCT検査と上部消化管内視鏡検査で大動脈食道瘻(aorto-esophageal fistula;AEF)が確認され,同日に右開胸下に食道切除,食道切除後12日目に人工血管周囲のデブリドマン,大網被覆・充填術および食道再建術を施行した。AEFの救命には,迅速な出血と感染のコントロールが必要である。食道切除と感染人工血管置換が望ましいが,耐術能を考慮した術式の選択が現実的である。大網被覆・充填は感染コントロールに有効であり,ICG蛍光法を用いた大網の血流評価はその利点を向上させる。
  • 辻 泉穂, 天野 浩司, 安原 裕美子, 橋本 優, 茅田 洋之, 加藤 文崇, 向井 信貴, 薬師寺 秀明, 中村 純寿, 晋山 直樹, ...
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 12 巻 1 号 p. 100-105
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/29
    [早期公開] 公開日: 2022/10/01
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕症例は38歳女性。急激な左下腹部痛のため救急搬送された。腹部造影CT検査にて,左内腸骨動脈からの造影剤漏出を認め,血管内治療で止血した。経過は良好であり,術後14日目に退院した。退院後,神経線維腫症1型 (neurofibromatosis type 1;NF-1)と診断された。退院の1年後,2~3日前からの腹痛が増強し救急搬送された。搬送時のバイタルは安定していたが診察中にショック状態に陥り,緊急開腹手術の方針となった。上直腸動脈破綻を認め, 異常血管を切除し結紮止血した。術後経過は良好であり,術後11日目に退院となった。NF1を既往とする患者は,致死的な血管破綻をきたす可能性があると認識する重要性を示唆する1例であった。
  • 植田 典子, 天野 浩司, 向井 信貴, 安原 裕美子, 茅田 洋之, 中江 信明, 橋本 優, 加藤 文崇, 晋山 直樹, 臼井 章浩, ...
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 12 巻 1 号 p. 106-111
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/29
    [早期公開] 公開日: 2022/09/29
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕外傷性横隔膜損傷は比較的まれな外傷であり,初期には気づかれずに診断が遅れ,腹腔内臓器のヘルニアや嵌頓をきたして致死的となる場合がある。症例1は7年前に胸部外傷の受傷歴があり,6年前に画像上で左横隔膜ヘルニアを指摘されていた。無治療で経過していたところ,その後腹腔内臓器の嵌頓をきたした。症例2は50年以上前の交通事故を契機に横隔膜損傷が生じたと推察され,腹腔内臓器の嵌頓をきたした。また,嵌頓解除後の臓器を腹腔内に還納したところ,腹部コンパートメント症候群を呈した。いずれも嵌頓臓器の切除と集学的治療を必要とした。ヘルニアを伴わない横隔膜損傷は画像診断が困難であるが,胸腹部移行部の手術歴や外傷歴がある患者では横隔膜損傷の可能性を考慮し,指摘し得た場合には早期に修復するべきである。
  • 三浦 巧, 市之川 一臣, 山田 秀久, 小西 和哉, 敷島 裕之
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 12 巻 1 号 p. 112-116
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/29
    [早期公開] 公開日: 2022/10/15
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕症例は50歳代,女性。右乳癌術後の補助化学療法導入後6日目に,便秘と腹痛を主訴に当院を受診した。腹部全体に腹膜刺激症状を伴う圧痛と,CT検査においてfree airとS状結腸憩室周囲の腸管外に糞便を疑う所見を認めた。S状結腸憩室穿孔と診断し,S状結腸切除と人工肛門造設を施行した。術後に化学療法後の骨髄抑制が重なったが,集学的治療により救命し得た。憩室穿孔の原因は,病理学的に化学療法に伴う粘膜変化を切除したS状結腸に認めなかった点と術前のCT検査で全大腸に糞便が充満していた点から,支持療法で併用した5-HT3(5-hydroxytryptamine-3)受容体拮抗薬の副作用による便秘が原因と考えた。
  • 大島 綾乃, 金子 直之, 柚木 良介
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 12 巻 1 号 p. 117-121
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/29
    [早期公開] 公開日: 2022/12/20
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕【症例】72歳女性。自転車走行中に乗用車に追突され,来院時ショック状態で低体温と代謝性アシドーシス(metabolic acidosis;MA)を呈し,肛門深部の活動性出血を伴い坐骨が露出する開放創を認めた。ガーゼ充填止血・輸血・加温でMAの改善後にCT検査と根治術を行った。開脚ジャックナイフ体位で直腸・膣・会陰の止血と修復,仰臥位で人工肛門造設を行い,良好に経過した。【考察】まれな外傷である自転車サドルによる肛門直腸損傷を経験した。出血性ショックに対しMAの改善後に根治術を行い(short-term damage control strategy),手術では体位と3D(diversion, debridement, drainage)に留意した。
  • 堀川 大介, 萩原 正弘, 高橋 裕之, 今井 浩二, 大谷 将秀, 谷 誓良, 長谷川 公治, 松野 直徒, 横尾 英樹
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 12 巻 1 号 p. 122-126
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/29
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕66歳女性。腹痛で前医を受診し,CT検査で門脈ガス血症,腹腔動脈(celiac artery:CA)閉塞,上腸間膜動脈(superior mesenteric artery;SMA)狭窄,下腸間膜動脈(inferior mesenteric artery;IMA)経由の側副血行路を認めた。腸管壊死が疑われ当院へ搬送されたが,軽度の腹痛のみであり,経過観察となった。入院後CT検査で腸管壁肥厚,腹水増加につき試験開腹を行ったが,腸管壊死はなかった。術後5日目,急激な腹痛とCT検査で回腸造影不良を認め,ふたたび試験開腹を行い,腸管虚血を認めたため,結腸右半切除術を施行した。虚血進行を考慮し,腸管吻合を行わずopen abdomen managementを施行した。翌日,second look laparotomyをHybrid手術室で行った。IMAに狭窄がありステントを留置し,その後腸管吻合と回腸人工肛門造設術を施行した。慢性腸間膜虚血(chronic mesenteric ischemia;CMI)急性増悪に対し,ハイブリッド治療が有用であると考えられた。
  • 和田 大和, 高須 惟人, 永嶋 太, 小林 誠人
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 12 巻 1 号 p. 127-132
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/29
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕症例は,53歳,女性。目撃ありの心肺停止にて救急要請され,難治性の心室細動で公立豊岡病院但馬救命救急センターに搬送された。体外式膜型人工肺(extracorporeal membrane oxygenation;ECMO)による体外循環式心肺蘇生(extracorporeal cardiopulmonary resuscitation;ECPR)が導入された。しかし胸骨圧迫に伴う肝損傷のため出血性ショックに陥り,肝周囲ガーゼパッキング(perihepatic gauze packing;PHP)によるdamage control surgery(DCS)を行ったが,出血の制御は困難であった。可吸収性止血剤を充填し再度PHPを行い,止血が得られた。胸骨圧迫の合併症としての肝損傷はECPRおよび抗凝固薬の使用などで顕在化する。循環動態が不安定な場合,戦略はDCS,戦術はPHPであるが,損傷部位および抗凝固状態によっては損傷部位へ止血剤の直接充填+PHPを考慮してもよいと考えられた。
その他
  • 北川 喜己, 萩原 康友, 小川 健一朗, 水谷 文俊, 船曵 知弘
    原稿種別: その他
    2022 年 12 巻 1 号 p. 133-139
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/29
    [早期公開] 公開日: 2022/10/15
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕名古屋掖済会病院は1978年に東海地区初の救命救急センターを設置し,受診患者の増加を受けて2006年に新救命救急センターを竣工した。竣工後に課題となっていた救命救急センター外来(ER)における部屋移動,搬送や移し替えに要する時間のロスと患者負担を解決するため,ERの中心部分にある放射線部門のCT室と血管造影室を合体させ,2ルーム型のハイブリッドER(IVR-CT)システムを設置することとした。2020年9月より工事を開始し,約3カ月の工程を経て同12月より稼働し,患者の移動なく診察,CT撮影,IVR(interventional radiology),手術を実施できるようになった。ハイブリッドERシステムは,重症外傷や脳梗塞,CPA(cardiopulmonary arrest,心肺停止)治療はもとより整形外科疾患をはじめ透視とCT検査を併用する多くの救急疾患の診断治療に有用であり,今後はER型救急施設への普及が望まれる。
  • 長尾 剛至, 藤田 尚
    原稿種別: その他
    2022 年 12 巻 1 号 p. 140-144
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/29
    [早期公開] 公開日: 2022/10/15
    ジャーナル フリー
    〔要旨〕Definitive Surgical Trauma Careコースは万国外科学会によるoff-the-jobトレーニングコースである。講義,症例検討,スキルラボの要素で構成され,国内外のfacultyとの臨床決断に関する議論や生体モデルでの手術手技実践が特長である。一方,3日間にわたる日程や受講料などの課題,COVID-19蔓延により開催中止を余儀なくされている現状がある。そのようななか,シンガポールの現地とオンラインのハイブリッドコースに参加の機会を得た。講義と症例検討は国外のfacultyを含む全員でのWeb会議形式とし,スキルラボは現地のfacultyにより対面式に実施された。今後の新たな開催形式としてハイブリッド形式は有用であり,さらにeラーニング併用や各要素の分割受講を可とすることで,COVID-19蔓延下での再開を可能とするのみでなく日程や費用など各種課題も解決できる可能性がある。
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