失語症をもって生活する人々に対して言語聴覚士が果たす役割のひとつは,彼らが多くの人々とよい人間関係を結ぶことができるよう援助することである.本講演では演者が行ってきたそのような援助活動の中から,「家庭訪問」,「グループでの遊び」,「ボランティアと行う会話グループ」,「失語症友の会の国内・海外旅行」,「失語症者が働く共同作業所」という5つの例を紹介する.このような活動を基礎として,失語症者が安心して通うことのできる場所として,介護保険による「失語症デイケア」の構想が生まれてきた.この活動は個人訓練の対象とはならない慢性期失語症者,全失語などの重症者,痴呆など全般的精神活動低下を伴う者,80代~90代以上の後期高齢者を,言語聴覚士を含む常駐のスタッフが迎え入れ,同じ障害をもつ者やボランティアとの交流の中で,長期間にわたってケアしていくものである.その意義や財源につき解説するとともに,活動の普及のための提言を行う.
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