日本食物繊維研究会誌
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1 巻, 2 号
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  • 山田 和彦
    1998 年1 巻2 号 p. 1-6
    発行日: 1998/01/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     食物繊維は1970年代当初に期待されていたような退行性疾病の万病薬とはならないが,四半世紀の間に生理的役割と疾病予防への応用性が科学的に解明されてきた。1976年での定義は人の小腸で消化されない植物性多糖類とリグニンという単純なものであったが,水溶性・不溶性を分別する化学的測定法の開発と生体への影響が理解されるにしたがい,統一的な定義がされにくい状態になった。食物繊維は,小腸での消化吸収を遅らせ,血糖とインスリン濃度の上昇を緩慢にしたり,脂肪や胆汁酸代謝を介して血液中コレステロール濃度を低下させる。大腸では糞便量を増大させ,通過時間を短縮させるように作用する。大腸内代謝を介して心臓疾患の危険性を低下させることも解明されてきている。現在では,レジスタントスターチや難消化性オリゴ糖など部分的に食物繊維と同様の生理作用を持つ食品部分についての研究も世界的に進行している。食物繊維は考えられている以上に摂る必要があるものであり,これを摂るための新しい食品の開発も望まれる。
  • 山中 なつみ, 小川 宣子, 片山 (須川)洋子
    1998 年1 巻2 号 p. 7-14
    発行日: 1998/01/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     メカブ粘性物質の摂取が消化管組織や血漿脂質に与える影響についてラットを用いた動物実験によって検討した。メカブ粘性物質を3%添加することにより飼料効率は有意に低下し,メカブ粘性物質の摂取が他の栄養素の消化吸収を阻害する可能性がある。胃と盲腸の組織重量はメカブ粘性物質の摂取により増加したが,内容物重量に有意差は認められなかった。胃や盲腸の組織重量が増加した原因として,内容物の増加に伴う容積の増大ではなく,組織が厚くなっている可能性が示された。盲腸組織の顕微鏡写真では,メカブ粘性物質を摂取したラットの方が対照群に比べ筋層が厚くなっているのが観察された。また,盲腸内容物中の水分はすべて結合水として存在し,メカブ粘性物質の摂取は盲腸内容物の保水力を高める効果のあることが示唆された。メカブ粘性物質を3%添加した飼料で5週間飼育したラットにおいて血漿脂質濃度に変化は見られなかった。
  • 森本 聡尚, 伊藤 輝子, 中嶋 洋子, 田中 美和子, 永山 スミ子
    1998 年1 巻2 号 p. 15-22
    発行日: 1998/01/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     健康な青年期女性46名を被験者の自覚等から便秘群及び非便秘群に分け,排便状況調査ならびに食事調査を実施した。その結果,両群とも食事量が少なく,食物繊維ならびに他の栄養素の摂取量不足が確認された。被験者の自覚通り,便秘群は非便秘群より排便回数,排便量ともに有意に少なかったが,排便量は両群とも不足傾向が認められた。このような状況下で1日当たり約5gの食物繊維が摂取できるように小麦ふすまを配合・加工したシリアル食品(WB)ならびにプラセボシリアル(P)を1週間ずつクロスオーバーで摂取させたところ,小麦ふすまシリアルの摂取により排便回数は両群とも有意に増加し(p<0.05),排便量は便秘群において有意に増加(p<0.05),非便秘群においては増加傾向が見られた。排便回数,排便量ともにWB摂取による改善は非便秘群よりも便秘群においてより顕著であった。WB摂取期間とP摂取期間のエネルギー,糖質,脂質,タンパク質,ナトリウム,カルシウム及び鉄の摂取量にはほとんど差がなく,食物繊維,特に不溶性食物繊維の摂取量が有意に増加した。以上の結果は,小麦ふすまシリアルにより,他の栄養素摂取量を減少させることなく,自然に食物繊維が補給でき,その結果排便状況の改善が図れることを示唆していた。
  • 太田 篤胤, 大槻 雅子, 平山 匡男, 足立 堯
    1998 年1 巻2 号 p. 23-30
    発行日: 1998/01/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     難消化性糖質であるフラクトオリゴ糖の生理作用の一部は,その腸内醗酵産物である有機酸によるものと推定されている。本研究では,ラットにおける難消化性糖質の主な醗酵部位である盲腸から内容物を経時的に採取できるように盲腸フィステルを装着したラットを用い,盲腸内容物のpHおよび有機酸組成を経時的に測定することにより,腸内醗酵環境の経時的,経日的変動を観察した。5週令のSprague-Dawley系雄性ラットに盲腸フィステルチューブを装着し,対照飼料ないし5%フラクトオリゴ糖含有飼料を6日間,10:00-16:00の時間制限給餌した。飼育開始後初日,3日目,6日目に盲腸内容物を3時間ごとに24時間まで採取し,pHおよび有機酸量を測定した。三元配置分散分析の結果,盲腸内容物のpHおよび乳酸濃度は,フラクトオリゴ糖摂取の有無,サンプリングの時刻,試験開始後の経過日数の3つの主要因全てに有意な影響を受け,盲腸内醗酵環境は経時的および経日的変動があることが示唆された。
  • 中村 尚夫, 長田 浩志, 吉澤 みな子
    1998 年1 巻2 号 p. 31-35
    発行日: 1998/01/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     この研究はラットの胃ストレス潰瘍に対する大麦とカラス麦の抑制効果を明らかにするために行った。 水溶性食物繊維β-(1→4),(1→3)-グルカン素材として,加温・加湿しないで得られたドラフト分級大麦粉末(歩留り75%)およびカナダ産カラス麦粉末(歩留り57%)を用い,ラットのストレス潰瘍に対する抑制の比較実験を行った。 水浸ストレス潰瘍抑制実験は14日間給飼の後,24時間絶食,23℃ の水槽内で21時間ストレス負荷し,潰瘍抑制率を求めた。その結果:1.使用した大麦粉末およびカラス麦粉末のProsky法によるSDF含量は夫々4.60%と5.54%でMcCleary法によるβ-(1→3)-グルカン含量は夫々3.40%と4.75%であった。2.大麦およびカラス麦粉末は実験に用いた10%飼料群,5%飼料群すべて5群ともにコントロール群と比較して強い潰瘍抑制を示し。3.大麦およびカラス麦粉末のβ-(1→3)-グルカン含有量に差があったが,両飼料群のストレス潰瘍抑制率に大差はなかった。4.大麦およびカラス麦粉末5%添加群のストレス潰瘍抑制率は,10%飼料群の約2分の1であった。
  • 1998 年1 巻2 号 p. 42-66
    発行日: 1998/01/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
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