北海道では天然林を対象に広く択伐施業(天然林施業)が行われてきた。しかし期待した更新成果が得られず,その結果天然林資源の減少と質の劣化をもたらした。その解決策として更新の阻害要因であるササ類を重機で剥ぎ取る更新補助作業(かき起こし)の有効性が確かめられている。しかし伐採後,林内に散在する施工地(択伐跡地)にアプローチすることは技術的コスト的に困難であるとともに,必要以上の攪乱を森林に与える危険性があり広く実施されるには至っていない。そこで本研究では積雪期の伐採時に行われる立木周囲の除雪作業の際に,林床のかき起こしを同時に行う手法(立木除雪かき起こし)を試みた。その作業コストと天然更新の成績を無施工対照区および無雪期かき起こし区と比較した。立木除雪かき起こしは更新作業のみで比較すると無雪期かき起こしの1/3のコストで実施することができた。6年生の高木性稚樹の更新はダケカンバを中心に約90%の施工区で周囲のササの高さ(平均145 cm)を超え,約70%の施工区で1,000本/haの成績を達成した。立木除雪かき起こしは北海道の天然林択伐施業を再構築するうえで重要な作業の一つとなりうると考えられた。
令和8年(2026年)日本森林学会誌論文賞
本論文は、北海道における天然林の択伐施業を再構築するために、地に足のついた問題設定と新規性の高い発想に基づいている。北海道で行われてきた天然林施業では、択伐実施後に林床のササの繁茂が問題となっており、ササを除去し樹木の更新を促すために「かき起こし」が実施されてきた。しかし、かき起こしは林地や残存木・更新稚樹に与える負荷が大きく、コストも要する。これを現実的なものとなるよう検討し、①択伐により伐採された樹木・樹群の下にだけ積雪期かき起こし処理を施し、他の場所は積雪の保護により林床の攪乱を与えないこと、②積雪期かき起こしが時間的にも費用的にも実用性を持つこと、③更新本数は無雪期施工と比べて遜色なく、更新樹種の多様性が高いことを明らかにしている。また、コスト計算を丁寧に行い、作業の合理性を数量的に示した点は、単なる技術報告にとどまらず、現場運営の意思決定に資する知見として高い社会的波及性を有している。
このような形でかき起こし作業を改善するという考えは、著者の他には誰も着想しなかったもので、高い独創性を有しこれまで研究例がない。新しいアイデアを実施し、その経済面・労力面における有効性を明瞭な証拠によって示しており、施業技術の実践的な改良の好例として、また現場の実情に即した優れた提案として、社会的貢献度も極めて高い。
さらに、大学研究林の技術開発課題として実施されたものであるが、その成果は、大学研究林が有する組織的・人的な厚みが社会的課題の解決に直結しうることを明確に示している。その意味でも、本論文は大学研究林の存在意義を社会に示す好例である。
人口統計分析を集落単位で行うことの必要性はたびたび指摘されてきたが,資料の不足により,研究事例が少ない。本稿の目的は,集落人口を対象にしてコーホート分析を行うことで,集落合併を集落人口の観点から考察するとともに,国勢調査を用いた集落人口分析の可能性を探ることである。新潟県上越市不動地区で2020年に行われた3集落の合併を分析対象として,以下の3点の結果を得た。(1)1965年から1995年の集落人口は国勢調査区を集落と読み替えることで把握できたが,2000年以降の集落人口は抽出できなかった。(2)1950年代に拡充された小学校に通った「独立校世代」は人口が多く,2000年代以降,少子化や小学校の閉校に対応した新たな結びつきを作ることを求められた。(3)地区の役員を務める60~70歳代の人口が2015年をピークに減少すると予想された。これらのことから,2020年の集落合併は,役員年代となった独立校世代が今後の人口減少を見越して敢行したことであると解釈された。今後の課題は,世代を形成する個人の具体的な履歴を紐解くことや,男女別の動向や社会移動を考慮に入れた集落人口分析の改良である。
令和7年(2025年)日本森林学会誌論文賞
集落人口分析のために、国勢調査の市区町村より小さな範域の集計の利用可能性は論じられてきたものの、具体的実証研究は多くない。本
論文は、これまで十分に分析されてこなかった集落単位の人口統計分析を、国勢調査の調査区別集計と自身のフィールド調査を組み合わせたことで、先行研究に比べてはるかに高い精度での分析を可能とし、一歩踏み込んだ新規性がある。これらの手法により、2020年の集落合併の要因を明らかにした点に高い独創性が認められる。また、本論文は統計資料の利用可能性を再認識させ、本論文で提案された方法は国内の同様の地域の分析にもあてはまる普遍性を有しており、当該分野の研究の進展を期待させる内容といえる。
開花ステージ判定の精度は人工交配の成否に関わるため重要である。従来は目視判定するのが一般的であるが,習熟が必要であり,判定に個人差があるなどの課題が存在する。今回,クロマツ雌花について,調査者の目によらない簡易な開花ステージ判定手法を構築するため,深層学習を用いた分類モデルを作成し,モデルを組込んだWebアプリケーションを開発した。習熟した複数の調査者が様々なクロマツ雌花の画像をステージⅠ,ⅡおよびⅢに分類し,全員の判定が一致した画像合計3,074枚の画像を使用して,MobileNetV2の転移学習によってモデルを作成した。雌花が画面全体に対して小さい画像や,雌花と関係のない物体が写りこんでいる画像,雌花が黄緑色をしている画像などでモデルの予測が正しくないものがあったが,正解率は0.974,適合率と再現率をバランスよく評価するFスコアは0.949とともに非常に高かったため,実際の野外での形質評価における使用も期待できると考えた。
令和7年(2025年)日本森林学会誌論文賞
従来、クロマツの開花ステージ判定は目視によって行われ、習熟や経験が必要であった。深層学習モデルとそれを組み込んだアプリを用いてそれを判定する本研究の試みは、新しい技術を応用するという点で、新規性・独創性がみられる。本技術は経験が少ない技術者・研究者でも簡単に人工授粉に適した開花ステージを判定できるため、社会的波及性は極めて高い。研究における当該技術の適用箇所が秀逸であり、深層学習を適用し成功した事例研究としての価値だけでなく、林木育種をはじめとする森林科学全体そして林業・林産業分野にも応用できる発展性を有している。
森林変化や土地被覆変化マップなどの主題図には現実との相違がある程度含まれる。主題図を効果的に利用するためには,マップ分類がどの程度正しいかを表す精度を評価することが重要になる。本総説では,衛星データを用いて作成した森林変化マップの面積推定と精度評価における基本的な原則を整理し,精度評価の構成要素をSampling design,Response design,Analysisにわけ,それぞれで基準と推奨される手法を示した。また,精度評価を実施する上での留意点についても記述した。統計的に厳密な精度評価では,無作為抽出を基本とした確率抽出によりサンプルを抽出し,リファレンスデータとの相違を解析して,マップ分類の精度を推定する。精度評価と面積推定では,母集団誤差行列が中心的な役割を担う。サンプル抽出に対応した不偏推定量もしくは一致推定量を利用することで,精度と面積の推定値と信頼区間を算出し不確実性を示すことができる。精度評価の基本的な手法は確立されているが,より新しい手法も提案されている。精度評価では全てに対応する単一の手法はなく,目的に応じて適切かつ基準を満たす手法を選択する必要がある。
令和6年(2024年)日本森林学会誌論文賞
リモートセンシングにおける解析精度の判定方法の適否は重要な問題であり古くから議論が重ねられてきたものの、日本では精度の評価方法についての学術的な論文・総説がこれまでなかった。志水会員の論文は、精度評価に関する数多くの国際誌を参照して、その問題点と国際的に標準とされる精度評価方法について体系的にまとめ、森林リモートセンシング分野における学術的発展性への貢献が非常に大きい、完成度の高い総説である。
海外では違法伐採の監視、国内では伐採届等との突合といった目的でその技術の需要が高まりつつあることを踏まえ、評価に利用したRのモデルを公開することでリモートセンシングの解析において適切な精度評価方法の普及に貢献しうること、森林変化マップを作成する場面で本論を参考に適切な精度評価が実施されるようになることが期待されることなどの波及性が期待される。さらには、和文誌での発表により国内における技術水準の向上に寄与した点はおおいに評価される。
本州以南の食肉目3種による木本果実利用の文献調査
公開日: 2008/10/15 | 90 巻 1 号 p. 26-35
小池 伸介, 正木 隆
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戦後の家庭料理に見られるマツタケ高級化の過程
公開日: 2021/05/07 | 103 巻 1 号 p. 1-12
泉 桂子, 佐々木 理沙
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キクイムシ関連ダニの系統と生態
公開日: 2010/03/12 | 91 巻 6 号 p. 461-468
岡部 貴美子
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カミキリムシ類の飼育技術
公開日: 2008/10/15 | 90 巻 1 号 p. 61-69
北島 博
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戦後の山村における食用野生植物資源利用の変遷
公開日: 2024/04/26 | 106 巻 4 号 p. 77-87
小柳 知代, 松浦 俊也, 古川 拓哉, 小山 明日香
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