本稿では,日本産業精神保健学会の法人設立前後の社会経済状況を踏まえ,今後の方向性について,3つの提言を行った.
第1は,こころのポジティブな側面への注目である.これまでの職場のメンタルヘルス対策は,メンタルヘルス不調に関する第1次~第3次予防を中心に展開されてきた.現在進行している働き方改革,健康経営,人的資本の開示などの動きを踏まえ,一人ひとりの強み,成長も視野に入れた活動を展開する必要がある.
第2は,仕事外の要因への注目である.製造業からサービス業への移行,情報技術の進歩,リモートワークに代表される働く場所と時間の多様化を踏まえ,ワーク・ライフ・バランスや休み方など,仕事外の要因も視野に入れた支援を強化する必要がある.
第3は,研究の学際化である.雇用・労働環境の変化,価値観や働き方の多様化,デジタル化が進展する中,職場のメンタルヘルス研究のさらなる学際化が望まれる.
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