産業精神保健
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大会長講演 メンタルヘルスと職場環境改善
  • ―産業精神保健におけるAgilityとSustainabilityに注目して―
    吉川 徹
    原稿種別: 大会長講演
    2024 年 32 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2024/02/20
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル オープンアクセス

    労働安全衛生は労働者の人権の一つである.働く人の心の健康(メンタルヘルス)は,安全で健康的な労働条件で働く権利を支えるために欠かせない.職場のメンタルヘルス対策のためには個人と組織へのアプローチが共に重要で,その一つに職場環境改善がある.「職場ドック」に代表される参加型職場環境改善プログラムは,包括的アプローチを軸足に,良好事例とアクションチェックリスト(職場環境改善ヒント集),職場での対話場面を活用し,アジャイル(都度,修正する)に進めて成果を確認する点に特徴がある.また,過労死・過労自殺の予防における職場環境改善は,長時間労働対策の進展と共に,事故・災害の防止と発生後の対応,人間関係支援,ハラスメント予防も含めることができる.国連Sustainable Development GoalsのGoal 3: Good Health and Well-being(全ての人が健康と福祉を)として,AgilityとSustainabilityの視点から職場環境改善の実践経験を積み上げて,産業精神保健分野で推進してゆくことが期待される.

30周年記念シンポジウム 日本の産業精神保健の歩みと未来~日本産業精神保健学会の歴史から考える
  • ~日本産業精神保健学会の歴史から考える
    黒木 宣夫, 荒井 稔
    原稿種別: 30周年記念シンポジウム
    2024 年 32 巻 1 号 p. 7-12
    発行日: 2024/02/20
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル オープンアクセス

    本学会の設立目的は,職場におけるメンタルヘルスに関係した多職種スタッフやメンタルヘルスの専門家・研究者が一致協力して働く者のメンタルヘルスの保持増進を図ることを目的として1995年11月に加藤正明先生を理事長として設立された.島悟事務局長が設立趣旨の原案を作られましたが,多職種からなる企業内外のメンタルヘルス担当者間の有機的連携を図りながら,勤労者のメンタルヘルスの底上げを図ることが設立趣旨であった.今回,本学会が30回記念を迎えるにあたり,記念シンポジウムとして5人のシンポジストからそれぞれの立場で報告をして頂いた.1)日本産業精神保健学会の歩み,2)日本産業精神保健学会への提言~あり方検討委員会から,3)他職種連携から多職種協働へ,4)法人設立時理事からの提言,5)若手代議員からの提言等を報告,その上で日本医師会,日本精神神経学会,本学会在り方委員会の各立場から指定発言を頂き,総合討論を行った.

  • ~日本産業精神保健学会の歴史から考える
    吉村 靖司
    原稿種別: 30周年記念シンポジウム
    2024 年 32 巻 1 号 p. 13-17
    発行日: 2024/02/20
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル オープンアクセス

    日本産業精神保健学会は,平成1年に組織された前身の組織から発展し,平成5年に初代理事長に加藤正明が就任して発足した.同年に学会誌「産業精神保健」が創刊,翌平成6年には第1回学術集会が開催され,本格的な活動を開始した.職種を越えた産業精神保健にかかわるさまざまな職種の会員で組織されているのが特徴である.学術総会の毎年度開催,学会誌の定期刊行,厚生労働省の委託研究,学会編集書籍の出版,専門職制度の制定などを行い,順調な発展を遂げていった.平成15年には髙田勗が第二代理事長に就任,本領域における主要な学術団体に成長した.事務局長として学会を牽引していた島悟の死去という大きな出来事を乗り越え,学会としてより一層の社会的責任と貢献を果たすため,平成28年4月より「一般社団法人 日本産業精神保健学会」として新たなスタートを切り,黒木宣夫が第三代理事長に就任した第30回大会を迎えるまでに学会が発展している.

  • ―草創期メンバーからの提言―
    大西 守
    原稿種別: 30周年記念シンポジウム
    2024 年 32 巻 1 号 p. 18-22
    発行日: 2024/02/20
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル オープンアクセス

    1980年頃から認識されたのが「他職種連携」である.一方で,精神科医と産業医,精神科医と心療内科医,医師と心理職・看護職との対立化が顕在化した.次に2000年頃から認識されたのが「多職種連携」である.職場では,産業医を頂点とするピラミッド型の構築が始まる一方で,常勤職と非常勤職員の対立構造が生じる.また,健康管理センター方式が主となり,疾病予防効果が強化される.そして,2015年頃から認識されたのが「多職種協働」である.お互いの役割を尊重しながら,産業精神保健活動を推進しようとするものである.理念は優れているが,実際には十分機能していない現状がある.背景には,各職種の使用言語,活動方法,目的・目標に相違があるからと考える.そこで演者は,以下の4つの視点を推奨したい.1つ目の視点は「事例性」と「疾病性」で,職域では「疾病性」が優先される.2つ目の視点は「こころ」と「からだ」の一元性である.3つ目の視点は「リワークプログラム」の積極活用である.コロナ禍の影響もあって,「リモートリワーク」の可能性が模索されている.4つ目の視点は「障害者雇用」である.法定雇用率が上がるなか,その達成には精神障害者雇用が不可欠である.

  • 島津 明人
    原稿種別: 30周年記念シンポジウム
    2024 年 32 巻 1 号 p. 23-26
    発行日: 2024/02/20
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル オープンアクセス

    本稿では,日本産業精神保健学会の法人設立前後の社会経済状況を踏まえ,今後の方向性について,3つの提言を行った.

    第1は,こころのポジティブな側面への注目である.これまでの職場のメンタルヘルス対策は,メンタルヘルス不調に関する第1次~第3次予防を中心に展開されてきた.現在進行している働き方改革,健康経営,人的資本の開示などの動きを踏まえ,一人ひとりの強み,成長も視野に入れた活動を展開する必要がある.

    第2は,仕事外の要因への注目である.製造業からサービス業への移行,情報技術の進歩,リモートワークに代表される働く場所と時間の多様化を踏まえ,ワーク・ライフ・バランスや休み方など,仕事外の要因も視野に入れた支援を強化する必要がある.

    第3は,研究の学際化である.雇用・労働環境の変化,価値観や働き方の多様化,デジタル化が進展する中,職場のメンタルヘルス研究のさらなる学際化が望まれる.

  • 鎌田 直樹
    原稿種別: 30周年記念シンポジウム
    2024 年 32 巻 1 号 p. 27-29
    発行日: 2024/02/20
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル オープンアクセス

    現在,企業と産業保健職が協働で取り組むべき課題は健康経営である.実際に,健康経営度の評価構造を見てみると,産業保健職が日々関与する領域の割合は大きい.健康経営を叶えていくために,実務レベルで身の回りを振り返ってみると産業精神保健には4つの課題・問題点が存在すると思われる.それは,「1.企業の学習素材の不足」「2.増加の一途をたどる精神障害者数」「3.産業看護職の勤務環境のばらつき」「4.健康経営実現のための職種を超えた協働の難しさ」である.これらの課題・問題点に対応する形で次の4つの提言をさせていただきたい.「1.企業が学習できる素材の提供」「2.精神障害の効果的な予防・支援の提供」「3.様々な立場の産業看護職の学びの支援」「4.産業保健職を超えたネットワークづくり」これらは健康経営を叶えるために,実務において重要と考える.

  • ―会員アンケート調査に基づく今後への提言―
    小山 文彦, 神山 昭男
    原稿種別: 30周年記念シンポジウム
    2024 年 32 巻 1 号 p. 30-33
    発行日: 2024/02/20
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル オープンアクセス

    「学会在り方検討委員会」は,今後の学会運営等について,学会員の意見をアンケート調査により回収し,分析結果を取りまとめ,報告した.アンケート調査は,2023年1月から2月上旬に全学会員を対象に,無記名,インターネット経由で行われ,有効送信数は1,323通,回答数は490通,回答率は37.1%であった.会員の多くは,より魅力的な学会へ向けて,若い世代の活躍,メンタルヘルス対策の実務に役立つ情報共有,専門職の協働,学術総会のガイドライン化,全国規模の展開,等へ期待を寄せている.これらは,本学会の従来路線を軸とした改訂案を構成する大切な素材である.さらに,本学会との関わりを通じて,学会員が自らを振り返り,新たな気付きとフレッシュな活力を得ていきたいと願っているようにうかがわれた.

教育講演1 災害時における産業精神保健上の課題と対策
  • 立石 清一郎
    原稿種別: 教育講演1
    2024 年 32 巻 1 号 p. 34-38
    発行日: 2024/02/20
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル オープンアクセス

    災害時に労働者は危機体験に直面することにより様々な生理的・心理的反応が発生する.災害特有の産業精神保健上のリスクとして,心的外傷後ストレス障害やうつなどが知られているがその発症率は報告によりさまざまである.災害後のメンタルヘルス上の課題は,家屋被災,ご遺体を見る,住民クレームの対応,長時間労働などで増強される.災害時に専門職として必要なコンピテンシーは組織調整力,実践力,産業保健職としての一貫性であり,教育機会の提供や啓発活動が必要である.産業保健ニーズリストの適合率は80%程度で有用性が示されており,その後の産業保健ニーズ発生の予見をも助ける.災害時の産業保健活動を実践するためには,企業の事業継続計画に関与するとともに,産業保健分野の事業継続計画を作成しておくことが望ましい.災害時の産業保健職を支援するための災害産業保健外部支援チームが結成され今後の活躍が期待される.

教育講演2 現代社会における多様な依存症とは
  • 松﨑 尊信
    原稿種別: 教育講演2
    2024 年 32 巻 1 号 p. 39-43
    発行日: 2024/02/20
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル オープンアクセス

    インターネットは2000年頃から急速に普及し,スマートフォン(スマホ)の登場とともに身近で社会に欠かせないインフラとなった.日本においてもスマホの普及が年々進むとともに,若年層のインターネット利用が増加している.さらに,2020年COVID-19禍から,インターネット利用時間の増大が加速している.依存とは,物質の摂取や行動がコントロールできず,それによって様々な問題が生じる病態を指す.インターネット依存の概念は1990年代に初めて提唱されたが,インターネットコンテンツのうち,ゲームへの依存が,2019年WHO(世界保健機関)によって精神疾患の一つとして承認された.ゲーム依存は精神的・身体的な問題を引き起こす可能性があるため,今後の対策が喫緊の課題である.私たちができる予防策として,適切なメディアリテラシーを身につけるとともに,家庭内でのルール設定や家族間のコミュニケーションをとることが推奨される.

教育講演3 医療機関・介護施設・在宅における暴力・ハラスメント対策
  • 三木 明子
    原稿種別: 教育講演3
    2024 年 32 巻 1 号 p. 44-46
    発行日: 2024/02/20
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル オープンアクセス

    平成30年版過労死等防止対策白書にて,看護師,准看護師及び看護助手が精神障害となる事案の割合が高く,これらの事案においては,患者からの暴言・暴力を受けたことが精神障害と関連していた事案が一定数存在していた.すでに,医療従事者の勤務環境改善マネジメントシステムが導入され,その中で暴力・ハラスメントへの組織的な対応が取り上げられている.また,各医療機関が適切な対応策を組織的に講じることができるよう,研修や個人学習等で活用できるものとしてYouTubeが公開されている.同様に,介護現場のハラスメント対策マニュアルや研修の手引きも公開されている.これまでの医療機関・介護施設・在宅における暴力・ハラスメントの被害状況を概観し,最新の患者・家族による在宅医療提供者に対する暴力・ハラスメントの事例や対策のデータを踏まえて,取り組むべき暴力・ハラスメント対策について解説した.

教育講演5 改正自殺総合対策大綱にみる産業精神保健の重要性
  • 張 賢徳
    原稿種別: 教育講演5
    2024 年 32 巻 1 号 p. 47-50
    発行日: 2024/02/20
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル オープンアクセス

    1998年から14年間も続いた「年間自殺者3万人」時代の中,2006年に自殺対策基本法ができ,2007年にはその法律に基づいた自殺総合対策大綱が策定された.この法律が誕生した時には,自殺は社会全体の問題であるというスタンスが重視され,精神保健の視点が後景に配された.2007年の大綱の重点課題には産業精神保健は取り上げられていない.その後,5年ごとの大綱改定の際に,日本精神神経学会が中心になって精神保健の視点を組み入れるよう提言を行ってきた.産業精神保健は2017年の改定時から重点課題に取り上げられている.自殺予防にとって,産業精神保健は重要である.産業医を始め,産業精神保健に携わる人はストレスチェック結果の活用を含め,職場のメンタルヘルス対策について考える機会を持つ必要がある.

理事長賞受賞記念講演 産業精神保健の現状と展望~労働環境の変化とそれぞれに求められる課題~
  • ~労働環境の変化とそれぞれに求められる課題~
    渡辺 洋一郎
    原稿種別: 理事長賞受賞記念講演
    2024 年 32 巻 1 号 p. 51-59
    発行日: 2024/02/20
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル オープンアクセス

    労働人口の減少を補うために提唱され,新型コロナウイルス感染症の拡大のために急速に推し進められた働き方改革のターゲットアイテムは日本文化に深く根ざしている.改革を進めるためには日本社会や企業の文化的風土,労働者と企業との関係性,さらにはコミュニケーション様式など深いレベルでの考察を十分に行い,それらを踏まえた上での推進を図ることが極めて重要である.日本が今後目指すべき職場の在り方として,日本的文化と欧米的文化の適切なバランス,融合が重要であり,そのためには,企業,労働者,精神科主治医,そして産業保健スタッフそれぞれの立場において様々な課題がある.産業保健スタッフには人間関係を含む職場環境改善,多様な労働者を活かすための支援が求められる.このような理念を進めていくためのキーワードは「一人ひとりを活かす」ことであり,一人ひとりを活かすための支援が今後求められる職場メンタルヘルス支援活動と考える.

島悟賞受賞記念講演 中小企業の産業精神保健向上を目指して
  • 森口 次郎
    原稿種別: 島悟賞受賞記念講演
    2024 年 32 巻 1 号 p. 60-65
    発行日: 2024/02/20
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル オープンアクセス

    筆者は中小企業の産業精神保健を目指した取組みを実施してきました.研究では,中小企業の産業精神保健活動の実態および希望に関する調査を行い,零細企業では経営者向けの教育への希望が高いことを示し,経営者に役立つツールを開発しました.また別の研究では,従業員8名のA事業場で労働者参加型の職場環境改善を施行し,改善目標を達成し,目標達成に寄与する要因の検討を行いました.さらに最新研究では,小規模事業場へのインタビュー調査で得た情報を参考に,「好事例集」を作成し,同研究のウェブサイトで無料利用できるよう整備しました.京都府医師会の理事としては,会員産業医の資質向上のために産業医科大学と連携して良質の実地研修を提供しています.また,会員産業医の意識調査で示されたメンタルヘルスへの負担感に対応すべくメンタルヘルス事例検討を継続実施し,その軽減に一定の成果を上げています.

特別講演 白鵬のこころ ~過去から現在,そして未来へ~
  • ~過去から現在,そして未来へ~
    宮城野 翔, 内藤 堅志, 吉川 徹
    原稿種別: 特別講演
    2024 年 32 巻 1 号 p. 66-70
    発行日: 2024/02/20
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル オープンアクセス

    第30回日本産業精神保健学会で第69代横綱白鵬の宮城野親方をお迎えして「特別講演会:白鵬のこころ~過去から現在,そして未来へ~」を企画した.健康で安心して元気に働くことを支援している産業精神保健に関わる保健医療職が宮城野親方のご経験から学ぶ機会となった.アジリティ:めまぐるしくかわる状況に,どのように対応していくか,変わらないもの,大切なものはなにか.サステナビリティ:継続性のある組織・伝統,若手の育成,次世代に何を伝えるか.当日は吉川徹大会長がインタビュアーとなり,元同僚で白鵬が日本に来た時からトレーニングや所作を見ている内藤堅志氏の特別司会のもと,宮城野親方の来日のきっかけ,若手時代の稽古の様子,現役「白鵬」時代の過去の取組(白鵬-正代戦,2021年7月名古屋場所),今の若手育成での思いをお伺いした.時代や状況に機敏に柔軟に対応し,持続性のある組織や人作りについて考える機会となった.

特別シンポジウム1 精神障害の新労災認定基準
  • 黒木 宣夫, 丸山 総一郎
    原稿種別: 特別シンポジウム1
    2024 年 32 巻 1 号 p. 71-74
    発行日: 2024/02/20
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル オープンアクセス
  • 西川 聡子
    原稿種別: 特別シンポジウム1
    2024 年 32 巻 1 号 p. 75-78
    発行日: 2024/02/20
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル オープンアクセス

    精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会報告書は,精神医学,法律学等の専門家が,精神障害の労災認定基準について最新の知見を踏まえて検討し取りまとめたものである.

    報告書のポイントの1点目は,認定基準に定める「業務による心理的負荷評価表」について,「顧客や取引先,施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」(いわゆるカスタマーハラスメント)及び「感染症等の病気や事故の危険性が高い業務に従事した」の出来事を追加する等の見直しを行うことである.2点目は,精神障害の悪化前おおむね6か月以内に「特別な出来事」がない場合でも,「業務による強い心理的負荷」により悪化したときには,悪化した部分について業務起因性を新たに認めること,3点目は,医学意見の収集方法を効率化することである.

    厚生労働省では,この報告書を受けて認定基準を改正し,業務により精神障害を発病された方に対して,一層迅速適正な労災補償を行う.

  • 田中 克俊
    原稿種別: 特別シンポジウム1
    2024 年 32 巻 1 号 p. 79-81
    発行日: 2024/02/20
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル オープンアクセス

    精神障害の労災認定における心理的負荷(ストレス)の評価は心理的負荷評価表を用いて行われる.心理的負荷評価表は,業務上の出来事に対して労働者がどの程度の心理的負荷を感じるかについて疫学調査の結果をもとに作成したものである.今回の改正においても,年齢や性別,業種などをわが国の実態に合わせた30,000人の労働者を対象に大規模な調査研究が行われ,既存の負荷評価表の出来事の他に新たな出来事を追加した上で,その出来事の頻度と心理的負担の強さを,項目反応理論などを用いて解析した.今回の改正では,「顧客や取引先,施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」,「感染症等の病気や事故の危険性が高い業務に従事した」が新たに出来事として追加されたが,上記研究によりその心理的負荷の強度をそれぞれ「中」とすることが妥当であることが示されている.

  • ―精神科医の立場から―
    荒井 稔
    原稿種別: 特別シンポジウム1
    2024 年 32 巻 1 号 p. 82-84
    発行日: 2024/02/20
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル オープンアクセス

    昭和59年にはじめて精神障害の労災認定が行われ,平成11年9月に「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針について」が策定され,平成23年12月には,「心理的負荷による精神障害の認定基準について」が策定された.この間に,ハラスメント等について法的改正が行われた.今回,令和5年9月に新しい精神障害の労災基準が策定されたが,この間およそ40年が経とうとしている.本稿では,一精神科医が補償行政に関与した経験から,診断,Life Event研究等について若干の考察を加えた.

  • 品田 充儀
    原稿種別: 特別シンポジウム1
    2024 年 32 巻 1 号 p. 85-87
    発行日: 2024/02/20
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル オープンアクセス
特別シンポジウム2 次世代が語るAgilityとSustainability:若手が提案する産業精神保健の未来
  • 吉川 悦子, 森口 次郎
    原稿種別: 特別シンポジウム2
    2024 年 32 巻 1 号 p. 88-91
    発行日: 2024/02/20
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル オープンアクセス

    日本産業精神保健学会は5つの専門領域ごとの部会(産業看護職部会,産業医部会,精神科医・心療内科医部会,心理職部会,精神保健福祉士部会)があり,それぞれ専門性の向上や職種内外のネットワーク化を進めている.本特別シンポジウムは,学会設立30年の節目に,これからの産業精神保健の30年を構築していく若手に焦点を当て,それぞれの立場から産業精神保健の未来について自由に語り,提案していただいた.専門職という立場のみならず,職業人として,また産業精神保健分野での研究者としての研鑽,部会での貢献,多職種連携,家庭との両立等,幅広い視点からの提案と議論がなされた.

  • ―産業看護職の考える工夫や心がけ―
    春日 美穂
    原稿種別: 特別シンポジウム2
    2024 年 32 巻 1 号 p. 92-94
    発行日: 2024/02/20
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル オープンアクセス
  • 後藤 剛
    原稿種別: 特別シンポジウム2
    2024 年 32 巻 1 号 p. 95-98
    発行日: 2024/02/20
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル オープンアクセス

    私は精神科単科病院で救急医療に取り組んでいたが,医療リワークプログラムを院内で立ち上げ,現在は職場のメンタルヘルス体制構築と実践に取り組んでいる.自身の働き方の変遷において,先達との出会いと学びから大きな影響を受けた.医療リワークでは,利用対象者の範囲がメランコリー親和型うつ病から双極性障害,発達障害等に拡大している.精神医療の高度化や多様化,オーダーメイド化の流れはあるものの,対面実施や集団内でのつながりはリワークの重要な要素であり続けるだろう.職場のメンタルヘルス対策において,精神科医は二次予防・三次予防に主に関わっている現状だが,今後は一次予防そしてゼロ次予防へと活躍の場が拡がるだろう.本大会で立ち上がった「若手の会(仮称)」の活動は,多職種間の新たなネットワークづくりや年代を超えた学会の活性化に貢献できうる.本格的な活動はこれからであり,多くの会員からの協力を期待する.

  • 井上 嶺子
    原稿種別: 特別シンポジウム2
    2024 年 32 巻 1 号 p. 99-100
    発行日: 2024/02/20
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル オープンアクセス
  • ―私生活と仕事との両立の観点でAgilityとSustainabilityについて考える―
    山田 博貴
    原稿種別: 特別シンポジウム2
    2024 年 32 巻 1 号 p. 101-104
    発行日: 2024/02/20
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル オープンアクセス

    産業精神保健の未来に起きうることとして,生産年齢人口の減少による人的資源の減少と,高齢化により家族の介護が生じる人口の増加がある.そのことに伴い,私生活と仕事との両立に悩む個人,会社・組織が増えると考える.

    個人のSustainabilityを支えることで個人のAgilityを発揮できるようにすることが,結果的に個人の集合体である組織・会社のAgilityとSustainabilityの維持・向上につながると考える.産業精神保健における心理職は,心理学の専門的知識や技術を用いて心身ともに健康で働くことを支援し,個人と組織・会社の心理面をつなげる役割である.個人のSustainabilityを支える支援をしていき,個人が資源を有効活用して,私生活と仕事を両立しながらいきいきと働くことができること,両立の視点を持ちながらメンタルヘルス対策の提案・職場環境づくりを支援し,組織・会社が的確で素早く対応ができることを多職種と協働・連携しながら共に考えることが大事である.

  • 今関 あやね
    原稿種別: 特別シンポジウム2
    2024 年 32 巻 1 号 p. 105-108
    発行日: 2024/02/20
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル オープンアクセス

    COVID-19流行により急速なデジタル化が進んだことで,テレワークが拡大した.業務効率化や柔軟なコミュニケーションの利点はありつつ,急速な変化の中で,迅速な対応や,オンライン環境特有の問題やストレスも浮き彫りになった.例えば,人間関係の希薄化や業務時間の増加,個々のリテラシー差異による課題などもある.テレワーク中の部下の対処や事例から,早期介入の重要性も再認識できた.デジタル技術の進化により,オンラインでの相談窓口やカウンセリングも増え,自宅から気軽に相談ができる機会が広がり,早期のサポートが得られる可能性もある.技術進展による効率化や相談窓口の拡大にもつながったが,最新技術への依存の問題点や,忘れてはならない人との温かさの必要性も示された.ヒトとテクノロジーのバランスを保ちながら,アジリティとサステナビリティを実現することが労働環境や働く人のメンタルヘルスに貢献する鍵ではないかと考察した.

シンポジウム1 産業保健スタッフの持続可能性
  • 種市 康太郎, 西 賢一郎, 白田 千佳子, 小林 由佳, 大田 由佳, 内田 詩織
    原稿種別: シンポジウム1
    2024 年 32 巻 1 号 p. 109-112
    発行日: 2024/02/20
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル オープンアクセス

    このシンポジウムでは「産業保健スタッフの持続可能性」に焦点を当て,5人の登壇者がそれぞれの視点から議論を展開した.西は産業医の歴史と現在の役割を振り返り,変化への対応と個別対応の重要性を強調した.白田は保健師としてのキャリアを通じ,自己成長と後輩サポートの重要性を述べた.小林は多様な働き方とニーズ変化に対応する心理職の能力形成と持続的な学びの重要性を述べた.大田は産業保健スタッフの企業での役割とニーズのギャップに焦点を当てた.内田は若手心理職の視点から現状の課題を述べ,他の4者に若手の立場から問いかけた.質疑応答では産業保健スタッフのキャリア持続可能性について,キャリアの多様性と柔軟性,過去の経験からの学び,自己の興味や情熱の追求,次世代への伝承が重要であることが指摘された.会場からも積極的な意見が出され,活発な議論が展開された.

シンポジウム2 海外派遣の標準化をめざして
  • ―人選から,派遣前メディカルクリアランス,派遣中ケア,帰任後キャリアパスまで―
    鈴木 満, 大西 守, 山澤 文裕, 岩崎 明夫
    原稿種別: シンポジウム2
    2024 年 32 巻 1 号 p. 113-116
    発行日: 2024/02/20
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル オープンアクセス

    激動する海外情勢の中,海外派遣労働者の勤務生活ストレス要因が多様化しており,パンデミックに伴うオンラインワークの普及により海外勤務のスタイルも変化している.一部の大規模事業場を対象にした調査では,メンタルヘルスケアを含む海外派遣体制は事業場により大きく異なることが判明した.このことから約8万社の海外進出日系企業の多数を占める中小規模事業場の海外派遣体制は整備途上にあることが想定され,安全配慮義務履行のためには健康管理体制標準化の検討が必要である.本シンポジウムでは,大規模事業場での取組み実例をもとに今後の海外派遣体制の標準化について議論した.派遣前は帯同家族を含む心身のメディカルクリアランスと派遣前研修参加,派遣中はストレスチェック・定期健康診断の施行および不調時のオンライン対応を標準化の目標とすること,そして自社対応が困難である場合の連携協働案や外部委託案が示された.

シンポジウム3 誰もが活躍できるサステナブルな働き方を目指して
  • 佐藤 恵美, 真船 浩介, 田村 三太, 内間 裕美子, 藤田 真也
    原稿種別: シンポジウム3
    2024 年 32 巻 1 号 p. 117-119
    発行日: 2024/02/20
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル オープンアクセス

    精神保健福祉士部会では,大会テーマのSustainabilityを踏まえ,「多様な人々がその人らしさを失わず積極的に働き続けることができるための労働者支援のあり方を検討すること」を目的としてシンポジウムを企画した.事業場内外の精神保健福祉士,産業保健師,キャリアコンサルタントそれぞれから現状の支援活動を紹介しつつ,自分らしく健康に働く事とは何かを問う内容となった.特に,個人が追求するウェルビーイングと,組織や社会が実現すべきウェルビーイングの接点を見いだし支援するのかなど,個の観点のみならず集団や社会といった視点でも捉えた有意義な議論が展開された.

シンポジウム4 産業保健における若年労働者の適応支援について―テレワーク時代のコミュニケーションのあり方―
  • ―テレワーク時代のコミュニケーションのあり方―
    佐倉 健史, 松井 知子
    原稿種別: シンポジウム4
    2024 年 32 巻 1 号 p. 120-122
    発行日: 2024/02/20
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル オープンアクセス

    コロナ禍により,職場のコミュニケーションの在り方が様変わりした.本シンポジウムでは,テレワーク時代において若年労働者がスムースに組織に適応するにあたっての課題を踏まえ,産業保健としてどのような支援が可能なのか,有用なアプローチを示した.外部EAPからはオンラインでのカウンセリングや研修等により本人の孤独感・不安感を軽減したり上司やメンターがサポートしやすいよう支援したりすることで若年労働者の適応に貢献した例を,社内の心理職からは人事・職場と連携することで会社全体の取り組みを支援しかつその中に効果的に産業保健のケアを位置付けた例を,リワークからはオンラインでのロールプレイ等のグループワークによるテレワークでのコミュニケーションスキルの向上等の例を,アカデミアの立場からは雑談によるポジティブ感情や創造性の向上などの肯定的な効果の示唆を,それぞれの実践や研究の立場から報告した.

シンポジウム5 労災認定された精神障害からの社会復帰
  • 吉村 靖司, 田中 克俊
    原稿種別: シンポジウム5
    2024 年 32 巻 1 号 p. 123-126
    発行日: 2024/02/20
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル オープンアクセス

    精神障害による労働災害は,請求件数・認定件数ともに増加を続けており,令和4年度は過去最高を更新した.そのなかで,精神障害にて長期療養者の社会復帰がなかなか進まないケースが増加しており,課題となっている.本シンポジウムでは4名のシンポジストにご登壇を依頼し,それぞれの専門的な切り口でこのテーマについてご講演をいただき討論を深めることができた.黒木宣夫先生には労災認定後の長期療養に関する調査のデータをもとに施策提言をいただいた.西脇巧先生には弁護士の立場から裁判例の提示とともに長期療養の影響や問題点,給付のありかたについての提言をいただいた.津久井要先生には長期療養となった労働者への臨床経験から個人的要因背景などから考察をいただいた.最後に桂川修一先生には長期療養者に対する効果的な社会復帰支援に関する研究について研究成果の紹介と提言をいただいた.

シンポジウム6 産業精神保健領域におけるアジリティ:有用性と課題について
  • 有用性と課題について
    渡辺 洋一郎, 芦原 睦, 山本 晴義, 橋本 和明, 高野 知樹
    原稿種別: シンポジウム6
    2024 年 32 巻 1 号 p. 127-130
    発行日: 2024/02/20
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル オープンアクセス

    新型コロナウイルス感染症が契機となり,オンライン面接などITを利用したコミュニケーションが一般化した.さらにAIの発達にともない,チャットGTPなどの活用が飛躍的に発展している.産業精神保健の場においてこれら新たなツールの有用性と課題について経験の深い演者の講演を基に議論した.オンラインの方が話しやすい者,AI相手の方が相談しやすい者も少なくないと思われ,今後は産業医側の視点のみではなく対象者の視点からの検討が必要である.また,セルフケアとしてインターネットから情報を得ることは一般化しており,セルフケアと位置づければ情報技術の活用は大いに有用と考える.今後,「AI」と「人間」の特性,対象者がどのように認知するかといった視点など柔軟で多角的な検証を十分に行い,それぞれの役割分担,限界などを明らかにして,結果的に労働者にとって有用な活用方法を作り出していくことが重要と考える.

シンポジウム7 アジャイルでサステナブルな職場づくりをどう支援するのか~中間管理職のミカタに焦点をあてて~
シンポジウム8 産業精神保健におけるダイバーシティとインクルージョン ~その課題と障壁~
  • ~その課題と障壁~
    佐藤 恵美, 錦戸 典子, 山本 和儀, ソルト , 生越 照幸, 渡辺 洋一郎
    原稿種別: シンポジウム8
    2024 年 32 巻 1 号 p. 135-138
    発行日: 2024/02/20
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル オープンアクセス

    本学会における「ダイバーシティとインクルージョン推進に関する委員会」は2022年に発足し,本大会で初のシンポジウムを企画した.あらゆる人々が生きがいを持ってその能力を最大限発揮することができる企業文化や職場風土,産業保健システムの創造などに貢献したいと考えているが,現実にはそこには多くの課題や障壁があると思われる.初回企画である本シンポジウムでは,ダイバーシティ総論,当事者経験,法的観点,そして日本文化を踏まえたダイバーシティとインクルージョンの本質的な課題や障壁について多角的に議論した.

シンポジウム9 芸能従事者のメンタルヘルス
  • 湯淺 晶子, 森崎 めぐみ, 岩城 保, 深田 晃司
    原稿種別: シンポジウム9
    2024 年 32 巻 1 号 p. 139-142
    発行日: 2024/02/20
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル オープンアクセス

    ここ数年,芸能従事者の多くがフリーランスであるが故の社会保障の脆弱性,安全とメンタルヘルスの危機が社会にも認識されるようになってきた.芸能従事者は,複雑な産業構造,フリーランスなどから生じる様々な要因にさらされ,過重労働,睡眠不足,自殺,ハラスメント,事故などの健康問題が発生している.芸能従事者の職業特性を理解した上で,解決に向けた課題の整理と対策について議論した.また,日本芸能従事者協会のメンタルヘルス相談窓口の開設,産業医を配置するなどの芸能従事者の安全衛生ニーズを踏まえた予防的な取り組みについても情報提供がなされた.

シンポジウム10 過労死等事案の医学研究
  • 高橋 正也, 北島 洋樹
    原稿種別: シンポジウム10
    2024 年 32 巻 1 号 p. 143-146
    発行日: 2024/02/20
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル オープンアクセス

    平成26年11月に施行された過労死等防止対策推進法は過労死等に関する調査研究を通じて実態を明らかにし,適切な対策を講ずることを定めている.その元資料となるのが過労死等として労災申請された事案である.この事案解析は労働安全衛生総合研究所の過労死等防止調査研究センターが担っている.本シンポジウムでは,精神障害事案について以下の解析結果を報告し議論した:①精神障害の過労死等事案における業種別経年変化,②過労自殺事案における長時間労働や医療機関への受診状況,③長時間労働等の過重労働と精神障害.総合討論では,過労死等事案の持つ限界,通勤時間の影響,ストレスチェック結果の利活用,長時間労働の新たな定義案などについて質疑応答があった.過労死等は労働者と職場との相互作用の望ましくない結末であるとすれば,その関係性を最適にする努力がこれから更に求められると確認できた.

シンポジウム11 不妊治療等・女性の健康問題との仕事の両立支援~Agilityのある組織風土を考える~
  • ~Agilityのある組織風土を考える~
    重山 三香子, 小山 文彦, 佐藤 高輝, 角田 夕香里, 勝又 由美
    原稿種別: シンポジウム11
    2024 年 32 巻 1 号 p. 147-150
    発行日: 2024/02/20
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル オープンアクセス

    「不妊治療と仕事の両立支援」は,一般的には理解されているものの,身近に起きていることとして体感されていない実態がある.自身の実情を「伝えたいのに伝えられない人」と「伝えることはできるが伝えたくない人」,いずれにおいても患者であることを職場に開示していない割合が高いことから,具体的な施策の必要性を実感できていない職場がある.「不妊治療と仕事の両立支援」は,企業側が支援の実態や必要性を認識していないこと,患者側も治療の開示をしていないことの両面から,取り組みが広がらない状況がある.職場の支援について,企業等の雇用者側,患者側,医療機関側,それぞれの立場で「不妊治療と仕事の両立支援」を行っている3名のシンポジストが登壇し,それぞれの支援の概要を述べた.

国際交流特別企画 ICOH-WOPS & APA-PFAW連携企画シンポジウム
  • 島津 明人, 中田 光紀
    原稿種別: 国際交流特別企画
    2024 年 32 巻 1 号 p. 151-153
    発行日: 2024/02/20
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル オープンアクセス

    本企画は,2023年9月19日–22日に東京で開催されたICOH-WOPS & APA-PFAW2023合同学会(国際産業保健学会職場の組織と心理社会的要因科学委員会&アジア太平洋仕事の心理社会的要因に関する学会の合同学会:https://hp3.jp/icoh-wops_apa-pfaw2023/)と連携し,本学会の国際化推進に貢献することを目的に企画された.シンポジウムの前半では,海外で学んだ経験のある若手3名の先生方に,渡航前のつながり,現地での経験(良かったこと,苦労したこと),海外での学びが帰国後にどのように役立ったか,などの話題を提供いただいた.後半では,国際学会(ICOH-WOPS & APA-PFAW)の概要を紹介した.プログラムの概要や見どころ,ポイントなどを紹介し,世界における産業精神保健の最先端の情報に触れることの意義を参加者と共有した.

ワールドカフェ開催報告
  • 田島 佐登史, 中嶋 義文, 吉田 麻美, 近藤 智, 湯沢 由美, 太田 由紀, 林 幹浩, 松浦 健伸, 後藤 剛
    原稿種別: ワールドカフェ開催報告
    2024 年 32 巻 1 号 p. 154-159
    発行日: 2024/02/20
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル オープンアクセス

    第30回日本産業精神保健学会において,Agilityの要求される参加型学習の機会としてワールドカフェを企画・開催した.当学会の各委員会・部会等が用意した個別対応事例または組織取組事例に関して,参加者が席を移動しながら20分 × 4ラウンド(第4ラウンドはまとめ)で討議する形にて実施し,午前の部は33人,午後の部は50人,延べ計83人が参加した.終了時アンケート(回答数延べ43件,回答率51.8%)の結果,「今後も開催されるとしたら他の人に参加を勧めたいか」旨の設問に,「とてもそう思う」との回答が91%となるなど,参加者等から高い評価を得た.本報告は,開催にあたっての事前準備,当日運営を含め,著者ら企画者・ファシリテーターのワークショップデザインについての実践報告であり,今後の学会における参加型学習のSustainabilityに寄与することを期待している.

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