産業精神保健
Online ISSN : 2758-1101
Print ISSN : 1340-2862
31 巻, 1 号
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特集 働く女性の悩みとメンタルヘルス
  • 加藤 憲忠
    原稿種別: 特集
    2023 年 31 巻 1 号 p. 1-2
    発行日: 2023/03/30
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー
  • 江川 美保
    原稿種別: 特集
    2023 年 31 巻 1 号 p. 3-6
    発行日: 2023/03/30
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

    有経女性に比較的高頻度に認められる月経前症候群の症状は精神面,身体面に多岐にわたるためメンタルヘルスにも影響を及ぼし,働く女性にとっても職場の管理者にとってもインパクトの大きい困り事の一つになっている.PMSは日々の症状記録によって診断され,生活やスケジュールの調整や生活改善などのセルフケアが大切である.月経困難症とPMS双方の月経随伴症状に有効である低用量ピルなどの薬物療法の選択肢があるにもかかわらず,PMSを自覚する女性たちの多くが適切な対処をとっておらず仕事のパフォーマンスの低下を招いていることも報告されている.月経コントロールにかかわるヘルスリテラシーを向上する教育的アプローチや適切な受診勧奨・医療連携の体制づくりが求められる.

  • ~復職DC利用者データからの検討~
    林 果林, 前田 隆光, 松田 由美江, 海保 知宏, 松崎 淳人, 小山 文彦, 桂川 修一
    原稿種別: 特集
    2023 年 31 巻 1 号 p. 7-14
    発行日: 2023/03/30
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

    明治維新の後,職業婦人や戦時中の女性労働力など,働く女性の力は日本を支えていたが,高度成長期には,外で働く夫を支え,家を守る「主婦」の役割が期待された.その後,若年労働者不足,家電普及による家事労働の軽減,就業意識の変化等によって,再び女性は労働力として進出し,「男女雇用機会均等法」「女性活躍推進法」が制定されたが,「主婦」の役割への期待は持続し,妊娠,出産,育児に伴う身体・環境変化の影響を強く受けるため,ワークライフコンフリクトが生じやすい可能性がある.今回,復職DC利用者データをもとに,働く女性のライフサイクル上の変化がどのように休職や復職に影響しているかを検討した.対象は2017年10月~2022年3月31日復職DC利用終了者(男性640名41.7 ± 9.6歳 女性184名35.6 ± 10.2歳)である.結果は,復職DC女性利用者は有意に若く未婚者が多かった.精神疾患に有意差はなかったが,復職率は女性で有意に低く,症状悪化例や家庭の事情等にて復職DCに来られなくなる者が有意に多かった.ワークライフコンフリクトから,ポジティブなスピルオーバー/クロスオーバーに変換していくためには,男性も女性もお互いのライフサイクル上の特徴を理解しポジティブに影響しあうことが求められる.

  • ~更年期ロスを減らすためのメンタルケア~
    小川 真里子
    原稿種別: 特集
    2023 年 31 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 2023/03/30
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

    近年,更年期障害による労働損失が莫大なものであることが明らかになり,“更年期ロス”と呼ばれている.更年期ロスとしては離職や昇進の辞退が多いとされ,そこに至った原因としては,更年期によくみられる精神的症状が関与している可能性がある.更年期障害は,更年期に現れる症状の中で,器質的変化に起因せず,日常生活に支障をきたす病態と定義される.その症状は,血管運動神経症状に加え,精神的症状,泌尿生殖器症状,その他に大別される.また,女性において更年期はうつ病の好発時期でもある.更年期障害に対する薬物療法としては,漢方療法,ホルモン補充療法(HRT),抗うつ薬が用いられる.更年期障害では一人の女性が同時に多くの症状を訴えることが多く,漢方薬やHRTの有効性も高い.当事者だけでなく周囲も含めて更年期障害についての理解を深め,適切に治療を行える環境を作ることが,更年期ロスを減らす足がかりになると考えられる.

  • 佐々木 那津
    原稿種別: 特集
    2023 年 31 巻 1 号 p. 21-24
    発行日: 2023/03/30
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

    妊娠・出産後も就労を継続する女性の割合は増えており,子育てをしながら働く女性労働者への健康支援は職場において重要な課題となっている.本稿では,子育てをしながら働く母親のメンタルヘルスの状況およびストレス要因を国内外の研究をもとに整理した.働く母親が他の属性をもつ労働者と比較してメンタルヘルスが特に悪い集団であるという根拠には乏しいが,ウェルビーイングが低い集団であることが指摘されている.また,メンタルヘルス悪化に対する複数のリスク要因が指摘されており,職場での予防的なメンタルヘルス対策が求められる.ストレス要因は,仕事と,仕事以外の要因に分類し,職場での支援の方策について考察した.

  • 辻 奈津子
    原稿種別: 特集
    2023 年 31 巻 1 号 p. 25-29
    発行日: 2023/03/30
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

    1999年に社会人になって以来,産前産後休業(産休),育児休業(育休),時間短縮(時短)勤務などを経て,これまで約24年間,休暇以外のブランクなく働き続けることができました.ある時,特に仕事の負荷が高く,呼吸が浅くなっていることを自覚し,会議の間に数分間時間を確保できることがあれば,自宅のソファに横になって深呼吸をしないと苦しいと感じていた時期がありました.その時に私を救ってくれたのは,同僚のEmpathy(エンパシー)をもって話を聞いてくれたことでした.サステイナブルに働き続けるためには,バランスの取れた食事,十分な睡眠,適度な運動による体調管理はもちろんのこと,様々な制度,仕事に直接関わる方々の理解,家事育児支援サービス,家族の協力,テクノロジーの活用は必要不可欠ですが,周囲の方々の気持ちや言動も大きな要因だと考えます.

  • 重山 三香子
    原稿種別: 特集
    2023 年 31 巻 1 号 p. 30-35
    発行日: 2023/03/30
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

    「女性の健康」は女性特定の病気に加え,各年代の健康課題があり,月経,性,メンタルヘルス,がんのみならず,妊娠・出産・育児を包括した広範なものを意味する.2018年からの健康経営の取り組みに盛り込まれたことにより「女性の健康支援」に取り組む企業も増えたが,今だ「月経関連」「更年期障害」などのプレゼンティーズム関連の支援が足りない状況である.治療と仕事の両立支援の観点からは,「女性特有の疾病による治療」「妊娠」「産後ケア」「育児」は一連の支援として考える必要があるが,2022年からは「不妊治療」の保険適用により,「不妊」治療と仕事の両立支援の課題も加わっている.「女性の健康」は女性のみの問題ではなく,根幹には性・生殖やライフイベントなどの課題が存在する.不妊治療の予防的取り組みとして「プレコンセプションケア」の体制整備も始まり,今後は「少子化対策」も包括した「女性の健康」の諸課題を,職場や社会で支援することが重要である.

  • ―自殺率上昇の地域差および性差の把握,要因に関する考察
    岡 檀
    原稿種別: 特集
    2023 年 31 巻 1 号 p. 36-41
    発行日: 2023/03/30
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

    コロナ感染拡大の2020年に日本の自殺率が上昇し,特に女性の自殺率上昇が顕著となった.自殺率上昇の地域差および性差を把握するために,全国の1,735市区町村の自殺統計を参照し,2020年前後の自殺率の変化を推定する指標「自殺率上昇度」と産業構造に関するデータを連結して分析を行った.全国市区町村の自殺率上昇は内需型サービス業の就業率と有意な正の関係があり,コロナ禍の経済的ひっ迫が自殺リスクを高めている可能性が示唆された.宿泊・飲食業について精査した結果,女性の自殺率上昇度は男性よりもはるかに大きいことが明らかとなった.また,同じ県内であっても自殺率が上昇した市町としなかった市町が混在し,地域差が生じていた.女性であることは必ずしも自殺リスクを高めるわけではないものの,コロナ禍により打撃を受けた産業と関連のある女性のリスクが高まっており,女性は男性よりも不利な雇用条件下に置かれやすいことから,リスクがさらに高まる可能性が示唆された.

活動報告
  • ―セルフヘルプ・ストレスマネジメント冊子による介入の試み―
    早木 千絵, 川見 綾子, 野崎 剛弘, 前原 葉子, 中島 美里, 十川 博, 河田 浩
    原稿種別: 活動報告
    2023 年 31 巻 1 号 p. 42-49
    発行日: 2023/03/30
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

    近年,教員のメンタルヘルス不調は深刻な問題となっている.教職は情緒的負担の大きい職業であり,海外では,教員の情緒的ストレスに対する介入に関心が高まりつつあるが,日本における教員の感情に注目した対策の報告は少ない.今回,教員を対象とした感情に焦点を当てたストレスマネジメント冊子を作成したので,その内容を紹介するとともに,同冊子を用いた介入結果を報告する.冊子は,絵本形式で作成され,思考や感情といった内的体験との関わり方をイラストと言葉を用いて可視化したのが特徴である.当科受診中の教員の外来患者39名を対象に,本冊子を用いたセルフケアを行い,介入前後で心理的評価を行った.介入後,抑うつ,不安,自尊感情,レジリエンス,精神健康度が有意に改善した.教員のメンタルヘルス対策として,感情に焦点を当てた冊子によるセルフヘルプ・ストレスマネジメントについて考察する.

  • 井原 祐子, 中嶋 義文
    原稿種別: 活動報告
    2023 年 31 巻 1 号 p. 50-56
    発行日: 2023/03/30
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

    医師が精神的に健康であることは,医師個人が1人の職業人としてキャリアを充実させるだけでなく,患者に質の高い医療を提供する上でも欠かせない.欧米では以前より,医師に特化したメンタルヘルス支援が提供されてきている.新型コロナウィルス感染症の拡大を機に,医師のメンタルヘルス問題が以前にも増して注目されるようになってきたが,日本においては医師への支援がまだ不十分な可能性がある.医師の健康を維持するために必要な3要素としては,病院組織の健康風土,臨床現場の効率化,個人のレジリエンスが挙げられている.本報告では,医師個人のレジリエンスを高めることに着目したセルフケア研修プログラム開発の過程及び,実際の試行を経て得た知見をもとに,今後の活動方針を述べる.

文献レビュー
  • 大うつ病性障害と抑うつに焦点をあてて
    大島 裕子
    原稿種別: 文献レビュー
    2023 年 31 巻 1 号 p. 57-61
    発行日: 2023/03/30
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

    REBT(Rational Emotive Behavior Therapy)は認知行動療法の主要な心理療法として有名であるが,治療効果はあまり知られていない.そこで本論では,大うつ病性障害(MDD: Major Depression Disorder)に関する代表的な介入研究,介入研究のメタ分析,さらにビリーフと抑うつの関係についてのメタ分析の概要を紹介する.REBTはMDDのマニュアルが作成され,第1選択の治療である抗うつ薬及びベック派認知療法を対照群にした研究が行われ,第1選択の治療と同等以上の効果があることが確証されている.本論では成人とティーンエイジャーのMDDを対象にした介入研究,さらには最新のメタ分析を中心に概説する.

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