脛骨高平部水平化骨切り術(TPLO)は脛骨前方引き出し兆候(TCDS)を除去することを目的としていないが、術後に消失する症例がいる。これは関節周囲の線維化の関与が疑われているが、確認されていない。前十字靱帯断裂(CCLR)に罹患し、TPLOを行った犬の35膝関節について術前、術直後、および術後3ヶ月まで毎月評価を行った。TCDSが消失した症例(消失群、13膝関節)とTCDSが残存した症例(残存群、22膝関節)に分類した。術後各時点における骨関節炎(OA)スコアを術前のOAスコアから差し引き、OAスコアの変化量を求めた。術前のOAスコア(消失群で高値)を除き、両群間に差は認められなかった。OAスコアの変化量は、両群共に経時的に有意な増加が見られ、残存群に比較して消失群で有意に高値を示した。TPLO後のTCDSの消失はOAの進行度合いと関連していることから、OAを進行させる要因が関節周囲の線維化に関与していると考えられた。
第7頸椎頭側成長板骨折を受傷した幼猫2頭に対して、頸部腹側正中アプローチを行い、骨折整復およびチタンスクリューとポリメチルメタクリレートを使用した椎体固定術を実施した。2症例ともに術後徐々に、第5頸椎腹側部に骨棘形成の進行を認め、1症例では、胸郭および胸椎頭側部の変形所見が認められた。骨折の発症要因は不詳であるが、術後、インプラントの折損や緩みは認められず、臨床症状は改善し、歩行可能となったことから、本研究で用いられた手法は有効な治療選択肢の一つになりうる可能性が示唆された。
中等度大動脈弁逆流(AR)、軽度僧帽弁逆流および動的左室流出路閉塞を併発する雑種犬に肛門嚢腫瘍摘出術を全身麻酔下で実施した。麻酔中は観血的動脈血圧(IABP)測定を実施し、平均および拡張期血圧低値を特徴とする低血圧からARの関与を疑い、アトロピン投与による積極的な心拍数上昇およびドパミン投与で対応した。ARを伴う犬の麻酔中循環管理で、IABPによる評価と人医学の知見に基づいたAR関連性低血圧の治療法は有用と考えられた。
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