有機農業研究
Online ISSN : 2434-6217
Print ISSN : 1884-5665
10 巻, 1 号
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【巻頭言】
【特集】農の本質と有機農業─いま,有機農業から農業を考える(第18回大会全体セッション,2017年12月埼玉大学)
【総説】
  • 小松﨑 将一
    2018 年 10 巻 1 号 p. 56-64
    発行日: 2018/09/30
    公開日: 2019/05/21
    ジャーナル フリー

    農業の化学化へのアンチテーゼから始まった有機農業運動もその価値が広く認識されるようになり,市場において一定のマーケットを占める位置まで発展してきた.Organic 3.0の議論は,有機農業がメインストリームの農業となるべき新たな技術開発および流通革命を模索している.この中で,日本の有機農業技術の中には不耕起・草生やもみ殻燻炭,ボカシ技術など特筆すべきユニークな取り組みがある.現在多様な有機農業が展開される中で,より環境への負荷の少ない有機農業の実現は一つの大きな課題である.その意味で,自然農法など省資源型の有機農業技術は改めて注目されるが,これらの農法が果たして経済的に実現可能なものか?どう改善すれば経済的に実現可能か?などの課題解決が求められる.その意味で,自然共生型の有機農業技術の新しい展開と再評価が求められるものと考える.

【論文】
  • 胡 柏
    2018 年 10 巻 1 号 p. 65-77
    発行日: 2018/09/30
    公開日: 2019/05/21
    ジャーナル フリー

    本論文はGAP認証取得の条件と効果を実証的に考察した.近年,GAP認証取得は急増してきたが,著しい地域偏在性を有し,北海道型,静岡・鹿児島型,愛媛型の3つのタイプに分かれる.認証取得を規定する外部環境要素としてGAPの認知度,地域条件,きっかけの有無,農業経営構造,組織条件の5つが検出された.生産者の主体的要因として市場または価格条件,希少資源の技術効率,所得条件の3つが重要であることを比較静学的考察より明らかにした.実態分析では,GAP取得は生産者意識向上や生産管理の面で顕著な効果を挙げたのに対して,販売や所得の面で必ずしも明確でないことを明らかにした.これらの結果を踏まえて,多様なGAPの信頼性,業者牽引への不安,農協牽引型取組の不安定性,有機JAS認証への影響の4つの課題を提起した.

  • 佐藤 忠恭
    2018 年 10 巻 1 号 p. 78-86
    発行日: 2018/09/30
    公開日: 2019/05/21
    ジャーナル フリー

    これまで,情愛や無意識がどのようなしくみで農業において作用しているのか,特に暗黙知の観点から詳細に整理した研究はない.ゆえに,近年のICT等を活用した急進的な農業近代化に潜む問題は明確化しておらず,是正策は明らかとなっていない.

    本稿では,情愛と無意識による感知が農業における技能の構成要素となっていること,及び,情愛が暗黙知の獲得に果たしている役割について論じた.その上で,情報科学の過度な適用が,農業者による対象の客観化の傾向を強めることにつながり,農業者個々人を暗黙知の獲得から遠ざける課題について指摘した.熟練農業者の技能継承を支援するにあたっては,形式知化に偏らず,暗黙知の獲得による継承と,それを支える徒弟制度,習俗,思想,文化,それらを維持する村落共同体をも視野にいれた,総合的なアプローチが必要である.

【書評】
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