有機農業研究
Online ISSN : 2434-6217
Print ISSN : 1884-5665
9 巻, 2 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
【特集】有機農業推進法施行から10年をふり返る
  • 谷口 吉光
    2017 年9 巻2 号 p. 2-5
    発行日: 2017/12/25
    公開日: 2019/05/21
    ジャーナル フリー
  • 本城 昇
    2017 年9 巻2 号 p. 6-18
    発行日: 2017/12/25
    公開日: 2019/05/21
    ジャーナル フリー
  • 本城 昇
    2017 年9 巻2 号 p. 19-28
    発行日: 2017/12/25
    公開日: 2019/05/21
    ジャーナル フリー

    学会において2005年に法案検討タスクフォースが設置され,筆者を含むそのメンバー注29)は,「生産者と消費者の分断」,「人間生活と自然の分断」という市場経済の構造的問題を見据えたバランスある総合的な施策の束を打ち出すことができる法律の試案をつくる起草作業に着手した.

    この「生産者と消費者の分断」,「人間生活と自然の分断」を見据えた総合的な施策の束を打ち出すという考え方は,2001年の「有機農業と緑の消費者運動政策フォーラム」の提言をつくるときに辿り着いたものであるが,筆者は,この考えた方に基づけば,これまでの日本の有機農業やその運動の成果を尊重し,進展させる優れた試案がきっとつくれるであろうと思った.勿論,そのような総合性のある有機農業法制は,外国には存在しない.

    起草に着手したときは,うまくつくれるか心配であった.しかし,法案検討タスクフォースの構成メンバーで力を合わせ,2005年8月18日,「有機農業の基本法」にふさわしい試案を完成させることができた.そして,この試案が踏まえられて,有機農業推進法が成立した.有機農業関係者の方々からは,歓迎され,大変喜んでいただいた.

    今もそのときの光景と熱気が忘れられない.上記の考え方に辿り着き,試案を完成することができたのは,外ならぬ,日本の有機農家や有機農業関係者の地道なそれまでの取組の積み重ねと優れた日本の有機農業思想,それと有機農業やその運動に寄り添う研究者の方々の存在があったからこそである.有機農業推進法は,その成果である.

    今後も,一層充実した有機農業法制が積極的に構想され,その実現により,有機農家が安心して楽しんで有機農業に取り組むことができ,有機農業の持つ魅力が遺憾なく発揮され,地域の自然や社会がいのち輝く持続性のあるものとなっていくことを切に願っている.

  • 中島 紀一
    2017 年9 巻2 号 p. 29-32
    発行日: 2017/12/25
    公開日: 2019/05/21
    ジャーナル フリー
【特集】有機農業推進法施行のインパクト:山梨県内の動向
【論文】
  • 髙山 耕二, 宮下 雅代, 大島 一郎, 萬田 正治, 野口 愛子, 中西 良孝
    2017 年9 巻2 号 p. 43-47
    発行日: 2017/12/25
    公開日: 2019/05/21
    ジャーナル フリー

    舎飼条件下での薩摩黒鴨TM(Satsuma Black Aigamo duckTM:以下,SBA)の産肉性を南九州のアイガモ農法で広く使用されている薩摩鴨TM(Satsuma Aigamo duckTM:以下,SA)との比較から明らかにした.17週齢時の体重はSAで1,954gおよびSBAで3,114gとなり,両者の間に有意差が認められた(P<0.05).飼料要求率はSAに比べ,SBAで低かった.解体時のムネ肉重量はSBAで671gとなり,SAの363gに比べ,有意に大きかった(P<0.05).ムネ肉の官能評価では,うま味でSBAがSAに比べ,劣っていた(P<0.05)ものの,他の項目に両者で差がみられなかった.ムネ肉中のグルタミン酸含量はSBAで7.1mg/100gとなり,SAの10.5mg/100gに比べ,有意に低く(P<0.05),官能評価の結果を裏付けるものであった.以上より,SBAはムネ肉のうま味ではSAに劣るものの,高い産肉能力(肉量や飼料利用性)を有しており,アイガモ農法における新たな肉用アイガモになり得る可能性が示された.

【調査論文】
  • Priyanka MITRA, 金子 信博, 渡邊 芳倫
    2017 年9 巻2 号 p. 48-52
    発行日: 2017/12/25
    公開日: 2019/05/21
    ジャーナル フリー

    奈良県桜井市で不耕起・草生栽培で長年管理されている水田からのメタン放出速度を,隣接する慣行栽培の水田と比較した.不耕起・草生水田では4cmの厚さで土壌表層に細根が集積し,土壌炭素濃度が高かったが,鉱物質土壌層の全炭素,窒素濃度は慣行のほうがやや高かった.メタン放出は5月にはほとんど観測されなかったが7月から9月にかけて多くなった.慣行に比べ,不耕起・草生の水田からはきわめてわずかしかメタンが放出されていなかった.メタンを酸化するメタン分解菌の土壌中でのバイオマス量をリン脂質脂肪酸量で推定したところ,慣行で少なく,不耕起・草生で多く,メタン放出速度と負の関係を示した.不耕起・草生水田では土壌有機物が土壌表面に多く堆積しているにもかかわらず,メタン排出が少なかった.不耕起・草生による水田管理はメタン放出抑制の点で,生態系サービスを評価出来る可能性がある.

  • 藤田 正雄, 波夛野 豪
    2017 年9 巻2 号 p. 53-63
    発行日: 2017/12/25
    公開日: 2019/05/21
    ジャーナル フリー

    有機農業への新規および転換参入者を対象とするアンケート調査を2013年9月から12月に実施した.新規および転換参入ともに,参入のきっかけは「安全・安心な農産物を作りたい」が最も多く,販路を自分で開拓し,農業粗収益,実施面積も,参入時に比べ増加していた.しかし,栽培技術の未熟さが,新規,転換参入ともに経営安定の課題であった.また,有機農業の実施面積率では,新規参入者は開始時より100%実施しているという回答が多く,転換参入者は部分実施が多かった.販売先では,参入時において新規が消費者への直接販売,転換は農協・生協が多かったが,現在ではともに流通業者の割合が増加していた.

    有機農業者を増やすには,栽培技術の確立と地域の条件に応じた普及体制の整備が求められる.

【書評】
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