有機農業研究
Online ISSN : 2434-6217
Print ISSN : 1884-5665
10 巻, 2 号
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【特集】埼玉県における有機農業の取り組み
  • 大江 正章
    2018 年10 巻2 号 p. 2-10
    発行日: 2018/09/30
    公開日: 2019/05/21
    ジャーナル フリー
  • 平塚 靖永
    2018 年10 巻2 号 p. 11-13
    発行日: 2018/09/30
    公開日: 2019/05/21
    ジャーナル フリー
  • 本城 昇
    2018 年10 巻2 号 p. 14-24
    発行日: 2018/09/30
    公開日: 2019/05/21
    ジャーナル フリー

    埼玉大学の有機農業関係授業や埼大有機農研の活動は,まだまだ課題が多い.栽培の分野についてみると,授業では,栽培体験の提供がほとんどできていない状況にある.また,埼大有機農研の活動においても,ほ場がかなり大きくなって,有機農業を体験するにふさわしい状況になってきているとはいえ,それに応じた栽培のスキルアップが伴っていないという問題がある.こうした状況は,基本的に,埼大有機農研の会員が初めて農作業を経験する者によって占められており,せいぜい大学1年から3年夏頃までの大学生活2年半程度のクラブ活動での体験では,本人の意欲も関係するが,有機農業の栽培技術の習得はおぼつかないことによる.学生会員ではなく,有機農業による栽培の経験を積んだOB会員や社会人会員で,ほ場の運営・管理の指導ができるような人材が揃えられれば,授業での栽培体験の提供を支援できるスタッフとしても活用できるので,こうしたスキル面の問題は解決できると考えられるが,その道のりは遠いと言わざるを得ない.

    とはいえ,現段階でも,紙芝居や語り,踊等の交流スキルの取組は,かなりの成果を上げているといえる.地域の自然と社会が持続するためには,前にも述べたように,伝え語りや踊,祭など,地域の自然と結びついた暮らしから醸し出される地域の文化的な表現がなければ,その地域に暮らす人々にとって,その地域に対する愛着や魅力が生じにくく,また,その地域の自然と社会を存続させるようとする精神的な支えに欠くことになるといえる.そうした課題に着目し,地域の人達に学びながら,暮らしの中の芸術的な表現を活性化していく方法や手段を探っていき,目に見える形で実現していくことは重要であると考えられる.これは,なかなか通常の発想では気づきにくく,また,普通の人達には容易に取り組めないことである.しかし,地域に立脚する・立脚しようとする大学であれば,取り組むのは難しいことではなく,その知的総合力を活かして精力を傾けて取り組めば,大きな成果も期待できるであろう.

    現代社会は,「今だけ,金だけ,自分だけ」と揶揄されているように,長い時間軸・広い空間軸から地球を越えて宇宙にまで及ぶような深い促しから物事を総合的にその本質を捉えようとする視点に欠ける面がある.目先の利益に踊らされているような短絡的な発想では,自然や社会の持続性を本質的に考えていくことはできない.そうした短絡的な発想の下では,人気とりの客寄せ主義に陥り,地域の人達にとって,その表現・発信がその内心の深いところから納得してわき出る内発的なものとはならないであろう.

    自然,歴史,文化を長大な時間軸・空間軸から捉え直し,地域の自然や社会の魅力を把握し直し,そこでの農的暮らしといのち響き合う関係性をとり戻し,自分自身と地域に誇りと自信をとり戻し,暮らしの中の人柄がにじみ出る文化的に質の高いものをつくり出し,人々の出会いとつながりを確かなものとすることが必要である.そうしたことによってこそ,地域の自然と社会の持続性も確かなものとなると思われる.

    大学は,地域の大きな文化センターであり,地域の魅力を新鮮な視点で発見し,目先の利益に走ることなく,地域の自然と社会を保全する取組みを展開し,地域の自然にも社会にも思慮深い心優しい人材を送り出し,地域社会を生き生きとした楽しさに輝くものにしていく重要な役割を果たすべきだと思う.

【技術論文】
  • 髙山 耕二, 東原 大, 中村 南美子, 大島 一郎, 中西 良孝
    2018 年10 巻2 号 p. 25-30
    発行日: 2018/09/30
    公開日: 2019/05/21
    ジャーナル フリー

    本研究では,粉砕した玄米を主体とした自給飼料の給与が林内放牧豚の産肉性に及ぼす影響について検討した.2013年5〜12月にかけて鹿児島大学農学部附属演習林唐湊林園で放牧試験を行った.18週齢の去勢バークシャー種8頭(平均体重28kg)を市販配合飼料(TDN77〜78%,CP14〜15%)を給与した対照区と発酵させた自給飼料(2mm以下の破砕玄米60%,クズ芋20%および米ヌカ20%で配合:TDN69%,CP8%)を給与した試験区に分け,電気柵で囲った各10aの林地に4頭ずつ放牧した.両区とも日本飼養標準のTDN要求量を満たす計画で飼料給与を行い,行動,増体,飼料利用性および枝肉成績について調査した.放牧したブタの休息や飼料採食時間は対照区に比べて,試験区で短く(P<0.05),ルーティングに費やす時間が多かった(P<0.05).対照区では37週齢で体重が109kgに達し,飼料要求率は4.6であった.一方,試験区では46週齢で目標出荷体重に達し,体重が98kg,飼料要求率は8.4であった.両区の枝肉重量や歩留まりに差がなく,ロース芯厚およびバラ厚は対照区に比べ,試験区で低い値を示した(P<0.05).以上より,粉砕玄米を含む自給飼料を林内放牧豚に給与した場合,肥育前期における米の嗜好性やCP不足が問題として挙げられるものの,肥育後期では発育や飼料利用性に差がなく,粉砕玄米給与による林内放牧養豚の可能性が示唆された.

【書評】
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