油圧システムは小型で高出力であるため,産業界では大型加工機械や土木機械として様々な現場で広く用いられている。本研究では,近年著しく広帯域化が進んでいるネットワークバックボーンインフラを利用し,TCP/IPによる高速通信を油圧シリンダの遠隔制御に適用することで,現場での作業を想定した遠隔操作技術の確立を目指すことを目的とする。IPネットワークを使った遠隔操作技術において,通信中におけるパケットの遅延,揺らぎ,損失などが発生した場合,遠隔制御システムに対して制御性能の悪化を引き起こす。本研究では,反力提示を組み込んだ遠隔用油圧制御システムを開発し,通信時に発生する遅延,揺らぎ,欠損に対しパケット補償法をネットワークのエミュレーションツールであるNIST Netを用い検証した。また,オペレータの精神的作業負荷を数値化できるNASA Task Load Index (NASA-TLX)を用い精神的負担度の主観的評価を行った。以上の結果より,パケット補償の適用はNASA-TLXによるWWL得点を減少させ,かつ総合的にオペレータの精神的作業負荷の軽減に有効であることを明らかにした。