筑後川の感潮河道において洪水時の底泥浸食過程と土砂輸送状況を現地観測し,以下の結論を得た.(1) 温度計を連接した浸食計測装置を考案して感潮河道の底泥に設置し,洪水時の底泥浸食過程を精度よく捉えることに成功した.(2) 流速データから底面剪断応力を推定したところ,1.8N/m
2を越える状況で浸食が顕著に進行する様子が見られた.(3) 浸食速度
Esと摩擦速度
u*の関係を整理し,
Esは
u*の3乗に概ね比例することを示した.ただし,浸食係数はカオリン粘土などを用いた既往の実験値よりも1オーダー低く,現地底泥は凝結作用により粘着性が高いと推測された.(4) 洪水時に筑後川河口から有明海へ供給される懸濁土砂の内訳として,流域で生産されるシルト・粘土よりも感潮河道で浸食される底泥の方が数倍多いことが判明した.
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