土木学会論文集B
Online ISSN : 1880-6031
ISSN-L : 1880-6031
64 巻, 1 号
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和文論文
  • 堀 智晴, 古川 整治, 藤田 暁, 稲津 謙治, 池淵 周一
    2008 年64 巻1 号 p. 1-12
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/01/21
    ジャーナル フリー
     氾濫原(堤内地)における減災対策を組み込み,地先の安全度を基準とした新しい治水計画の策定手法を提案した.まず,ソフト対策の効果も考慮に入れ,人的・物的両方の被害を評価するため,地先の安全度を表す指標として「被害レベル」の概念を導入し,氾濫流の諸特性から導かれる外力レベルと,地先の被害防止・軽減能力として定義される耐水力レベルとの組み合わせによって被害レベルを算定する枠組みを示した.次いで,計画期間を明示し,投入する資金の効果を直接把握するため,治水計画問題を,財政制約の下での被害レベル最小化問題として定式化した.複雑なシミュレーションを含む順列最適化問題となる治水計画問題の解をシステマティックに探索するため,遺伝的アルゴリズムを導入し,効果的な治水計画代替案を探し出すアルゴリズムを提示した.
  • 堀 智晴, 古川 整治, 藤田 暁, 稲津 謙治, 池淵 周一
    2008 年64 巻1 号 p. 13-23
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/01/21
    ジャーナル フリー
     氾濫原(堤内地)における減災対策を組み込み,地先の安全度を基準とした治水計画の策定手法を由良川流域に適用し,複数のシナリオ下での最適解を求め,手法の適用性と問題点について考察した.具体的には,防御対象地域を38個のブロックに分割するとともに,ダムの嵩上げ,連続堤,輪中堤の建設,家屋・宅地嵩上げを中心とする施策から,対象地域全体の被害レベルを最小化する施策の組み合わせ,ならびに実施順序を遺伝的アルゴリズムを用いて決定した.その結果,洪水被害を人的被害,家屋等の被害,重要施設の被害の3つの側面からレベル化し,それらを総合して治水対策を評価する方法を用いることで,各施策オプションの持つ効果を反映した解が求められることが確認できた.
  • 中川 啓, 齋藤 雅彦
    2008 年64 巻1 号 p. 30-40
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/02/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,まず透水係数が不均一に分布する場において,散水条件および段階的湛水条件の鉛直浸透実験を行った.実験では,土壌水分の変化を測定するためにプリント基板製のプローブ(PCBP)を用いたTDR法による測定と,実験装置の全体的な水分分布を把握するためにデジタルカメラ写真を用いた画像解析を行った.続いて室内実験の水と空気の詳細な挙動を把握するため,飽和-不飽和浸透流解析と気液2 相流解析による数値シミュレーションを行った.その結果,段階的湛水実験においては,湛水のタイミングに対応した土壌水分の鋭敏な反応が確認された.また数値解析では,2つの解析手法の明確な違いは表れなかったが,ヒステリシスを考慮することによって,段階的湛水実験の特徴をより正しく再現可能であることを明らかにした.
  • 吉川 景子, 大久保 賢治
    2008 年64 巻1 号 p. 41-48
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/21
    ジャーナル フリー
     琵琶湖北湖の定期観測値から浮力及び溶存酸素フラックス鉛直分布を評価した.初冬の貯水池でみられる冷却性対流循環の密度流発生時と共通の特徴が認められ下層密度流による深水層への酸素輸送機構とその輸送速度が示された.湖心の酸素サイクルをみると水温による飽和度変化に伴って冷却期は大気から湖水に向かう湖面での酸素輸送があるが,これは安定度長で近似される各月の水温躍層深度までに限定され,全循環直前まで水温躍層は擬似湖底として酸素の鉛直フラックスを最小化し,躍層下方に潜りこむ唯一の流系が密度流である.一方,加熱期は光合成による酸素過飽和が水温上昇に伴う酸素濃度低下を補うため湖面の酸素放出は小さく評価され,通年の酸素交換は物理現象のみで説明できないことが示された.
  • 小原 一哉, 堺 茂樹
    2008 年64 巻1 号 p. 49-61
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/21
    ジャーナル フリー
     融雪量は積雪層に作用する熱収支量から物理的に予測が可能である.熱収支法を用いて河川融雪流出量を予測するためには,流域全体で熱収支量の空間分布を評価する必要がある.しかし,熱収支量を求めるために必要な気象要素が流域内で十分に観測されている例は少なく,また,気象要素の多くは観測代表地点からの予測が難しい.従って,熱収支法は,現在の気象観測網では実用性に欠ける.そこで,本研究では気温のみで熱収支量を経験的に表すDegree-Day法を用いることで実用性の向上を図った.また,同モデルと降水量,気温,流出量予測モデルとを一体化したメッシュ型分布モデルを構築した結果,流域内の降水量,積雪深,融雪量及び河川融雪流出量の日単位の空間時間分布を良好な精度で予測することができた.
  • 関 克己, 水口 優
    2008 年64 巻1 号 p. 62-70
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/21
    ジャーナル フリー
     浅海域から砕波帯内において波動現象を扱う時,2次オーダの現象である長周期波が無視できなくなる.波形勾配が小さく,砕波帯内でも非砕波で存在する長周期波は,遡上現象や越波などの支配的要因になり得る.その際,長周期波の振幅も重要であるが,短周期波(包絡波)との位相関係も重要になる.
     本研究では,強制項付波動方程式を基礎方程式として,一様勾配斜面上での波群性入射波に起因する長周期波の挙動について検討を試み,また位相関係も含めた長周期波予測モデルを提案する.その結果として,一様勾配上の長周期波の挙動に関して,拘束長周期波と自由長周期波の位相関係に着目し,数値実験および断面水槽実験によりモデルの妥当性について検討した.
  • 横山 勝英, 山本 浩一, 金子 祐
    2008 年64 巻1 号 p. 71-82
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/21
    ジャーナル フリー
     筑後川の感潮河道において洪水時の底泥浸食過程と土砂輸送状況を現地観測し,以下の結論を得た.(1) 温度計を連接した浸食計測装置を考案して感潮河道の底泥に設置し,洪水時の底泥浸食過程を精度よく捉えることに成功した.(2) 流速データから底面剪断応力を推定したところ,1.8N/m2を越える状況で浸食が顕著に進行する様子が見られた.(3) 浸食速度Esと摩擦速度u*の関係を整理し,Esu*の3乗に概ね比例することを示した.ただし,浸食係数はカオリン粘土などを用いた既往の実験値よりも1オーダー低く,現地底泥は凝結作用により粘着性が高いと推測された.(4) 洪水時に筑後川河口から有明海へ供給される懸濁土砂の内訳として,流域で生産されるシルト・粘土よりも感潮河道で浸食される底泥の方が数倍多いことが判明した.
和文ノート
  • 渡部 要一, 佐々 真志
    2008 年64 巻1 号 p. 24-29
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/02/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,任意時刻に低空で自律飛行できる小型のUAV(無人飛行機)を活用し,搭載した小型デジタルカメラで撮影した航空写真により干潟微地形を効率的に時空間評価する手法を開発し,その適用性を検討した.干潟の水際近傍の水面は,波浪の影響が極めて小さく穏やかであることが特徴である.このような特徴を活かし,高分解能な低空からの航空写真撮影で潮位とともに変化する水際線を捉えることにより,きわめて平坦な干潟地盤の微地形を効率的かつ精密に把握できることがわかった.高分解能な航空写真が得られれば底生生物の巣穴やその密度等をも捉えることができ,干潟微地形と干潟の動植物とを関連づけるような研究においても今後の活用が期待できる.
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