本研究の目的は,過去10年間(2003年~ 2012年)のChildren& Schoolsに掲載された研究論文202編の研究課題や研究アプローチ,研究対象を分析することで,アメリカにおける学校でのソーシャルワーク実践の研究動向を明らかにすることである.分析結果では,研究課題においては「学力問題」が一番多く,続いて「スクールソーシャルワーカー(以下, SSWと記す)の役割業務」「学校暴力」「教育制度」「学校規律・風士」であった.また,研究アプローチでは,「協働」が圧倒的に多かった。研究対象では,「攻撃的暴力的生徒」であった.この研究課題の動向としては,過去の一連のSSWに対する調査研究では,常に実践の中心がカウンセリングであるため,学校施策・改革といったマクロレベルにSSWが役割業務として関わっていく必要性を指摘する研究背景があること.そして,学力格差是正のための連邦教育法「No Child Left Behind Act of 2001」にて,学校は具体的な対策を求められることになり, SSWも学校施策・改革に関わっていく必要性が増してきたことによる.
本論では,さらに学校暴力,いじめ,出席問題, Evidence-Based Practice, SSWの役割業務に関する研究課題の内容動向について考察していった.今回の研究動向から見えてきた点は,アメリカの教育施策の焦点は学力格差の是正と,低経済層でマイノリティ生徒の学力を増していくこと,そして学力に悪影響を及ぼす要因を減らしていくことである.そのための取り組みとして, SSWがどのような役割を担えるのかが今Hの研究課題といえる.そして,今回の研究動向から,わが国での学校におけるソーシャルワーク実践研究に際して得られたいくつかの示唆を指摘した.
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