学校ソーシャルワーク研究
Online ISSN : 2758-5018
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13 巻
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特集
特集論文
  • ―災害ソーシャルワークとこども支援の視点も踏まえて―
    遠藤 洋二
    2018 年 13 巻 p. 7-19
    発行日: 2018年
    公開日: 2023/04/03
    ジャーナル フリー
    東日本大震災以降,大規模自然災害時の特徴的なソーシャルワークの機能・役割を,「災害ソーシャルワーク」として理論化していこうとする動きが出てきたソーシャルワーカーによる災害支援活動の記述を分析したところ,これまでは機能していなかったとされる「災害直後」においても,ソーシャルワーカーはその専門性を生かした支援活動を行っていたことを垣間見ることができた.本論は,特に災害直後に焦点を当て,そこにおけるソーシャルワークを抽象化・一般化する試みについて述べたものである. 災害において,要配慮者および放置すれば要配慮者になりうる個人,あるいは機能不全をきたしているシステムにソーシャルワーカーが災害直後から介入し,支援のシステムが回復するまでの「時間稼ぎ」をすることは可能でありそのことが災害関連死を最小化する一助になるのではないだろうか.
  • ―スクールソーシャルワークの災害への役割―
    野尻 紀恵
    2018 年 13 巻 p. 20-34
    発行日: 2018年
    公開日: 2023/04/03
    ジャーナル フリー
    災害立国といわれる日本では,学校は災害発生後に「避難所機能」「教育機能」の両者を併せ持つ特殊な場となる.学校の教職員は自らの家族や自宅も被災しながらも,自校の避難所に関わるとともに教育機能再開を目指すプロセスを経験することになる.本稿は,このプロセスにおいてどのような状況が起こるのかを過去の災害から検証し,そのような状況においてスクールソーシャルワーカーが学校でどのようなソーシャルワークを行うことが必要なのかを検討するとともに,災害への備えについても検討することを目的とした. 過去の災害における学校や福祉施設等の状況の検証から,SSWerは学校でソーシャルワークを実践する福祉の専門職として,災害時に学校が併せ持つ機能の特殊性を勘案し,SSWerとして災害が発生する前の防災・減災に取り組むこと,および.災害が発生した後にハード面の回復と人の心の回復にソーシャルワークの力を発揮することの重要性が示唆された.
論文
  • ―子ども家庭支援における対話活動の場―
    梶原 浩介
    2018 年 13 巻 p. 35-46
    発行日: 2018年
    公開日: 2023/04/03
    ジャーナル フリー
    本研究は,実務者1人ひとりの専門性と限界性を捉えることを目的として,要保護児童対策地域協議会(以下「要対協」と記載)の実務者27人を対象にインタビュー調査を実施した.調査結果23人の回答を得た(回収率85.2%).データから捉えられる専門性は,ハイリスク家族に対する支援について協議するための「対話を創る場」の必要性があげられる一方で「事実の把握」「地域から集積される情報の整合性を図る」が抽出され,「確かな情報を取り扱う」ことの限界性を捉えた家族支援において「確かな情報を取り扱う」ために,要対協は「公正で中立的な場」であり,「対話を創る場」が求められる. つまり,要対協は地域の支援者による知識・技術の積み重ねによって,家族の実情に合った子ども家庭支援やサービスを創造し実施できる場となる.そのため実務者同士の対話活動の必要性があると本調査を通して捉えることができた.
  • ―養護教諭へのアンケート調査からの考察―
    寺田 千栄子
    2018 年 13 巻 p. 47-57
    発行日: 2018年
    公開日: 2023/04/03
    ジャーナル フリー
    本研究の目的はLGBTQの子どもたちが学校においてどのような相談を行なっているのか,実際にどのような対応がなされているのかを明らかにしたうえで,今後の学校ソーシャルワークによる支援の有効性について検討することである.そのために,本研究では実際にLGBTQの子どもから相談を受ける可能性が高いと考えられる養護教諭を対象に実施したアンケート調査の分析を行った.単純集計と内容分析を行った結果,子どもたちは学校生活の諸場面や心理面,恋愛や異性への感情に関することを多く相談しており,学校教育現場では相談内容に対して個別的に対応していることが明らかになった.また,養護教諭は物理的な配慮に止まらず校内の体制づくりや教職員の理解促進・意識統一が必要であると考えていた.本稿ではこれらの解決において「個と環境の交互作用」に働きかけていくことが重要であり,スクールソーシャルワーカーの活用の可能性について示した.
  • 山中 徹二
    2018 年 13 巻 p. 58-71
    発行日: 2018年
    公開日: 2023/04/03
    ジャーナル フリー
    本研究は,学校での子どもの障害の気づきから,スクールソーシャルワーカー(SSW)が親や子どもの障害受容の状況を把握する中で, どのような支援が求められるのかを捉え,それに対応するSSWのあり方を検討するSSWへのインタビュー調査の結果,第1に学校で子どもの障害に気づき,支援を開始するまでに,家庭の生活状況や親の障害受容のあり方によって時間を要する場合があることから,小中高等学校それぞれの年限内で子どもへの十分な支援が困難な状況がある.第2に子どもの障害の気づきを親に伝える上では,その親だけではなく,伝える側の教員へのサポートが求められるまた,学校では障害の有無が判断できない状況であっても子どものニーズに応じた対応は求められる.これらのことからSSWは特別支援との系統的な連携を可能とする組織体制への働きかけや教職員へのサポート体制を整える必要がある.
  • ―スクールソーシャルワーカー間の連携・協働関係に焦点を当てて―
    渡邊 隆文
    2018 年 13 巻 p. 72-82
    発行日: 2018年
    公開日: 2023/04/03
    ジャーナル フリー
    本研究は,学校現場におけるスクールソーシャルワーカー同士の関係に焦点を当て,スクールソーシャルワーカーが抱える困難を精査し,影響要因について明らかにすることを目的とした.東京都内で複数配置されている自治体で活動しているSSWer10名にインタビュー調査を行い,テキストマイニング法で分析を行ったその結果,7つのクラスターが抽出された.抽出されたクラスターをもとに考察を行い,①子ども家庭支援を行うスクールソーシャルワークの特殊性が与える影響②SSWer自身の持つ経験が専門性の発揮に及ぼす影響,③SSWer同士の情報共有・相談の機会の有無が与える影響,④SSWerの配置状況がSSWerのイメージ・他機関連携に及ぼす影響という4つの影響要因が明らかとなった.
  • ―スクールソーシャルワーク実践における子ども・家庭・学校の変化
    酉野 緑
    2018 年 13 巻 p. 83-96
    発行日: 2018年
    公開日: 2023/04/03
    ジャーナル フリー
    本研究は,A市の子ども虐待防止ネットワークに登録されている要保護・要支援児童のうち小中学校の事例について,①子どもの生活課題(養育環境・保護者の状況・子どもの状況),②チーム学校の支援およびスクールソーシャルワーカーの援助,③子ども,保護者,学校の変化について明らかにした. スクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラーを含めたチーム学校の支援の結果,半数以上のケースで「親と学校との繋がりができる」「教職員と子どもとの繋がりができる」等の成果があった.「学校に居場所ができる」「生活環境の改善」も4割,「行動上の問題が落ち着く」「登校できる」「友だちとの繋がりができる」等も3割以上の成果があったチーム学校の支援やスクールソーシャルワーカーの援助が子ども,家庭,学校に変化を起こす事,市町村全体を視野に入れたシステム作りが不可欠であることが明らかとなった.
研究動向
  • 8本における研究・実践への示唆
    馬場 幸子
    2018 年 13 巻 p. 97-108
    発行日: 2018年
    公開日: 2023/04/03
    ジャーナル フリー
    本稿では,研究動向についてはChildren & Schools を,実践動向についてはSchool Social Work Association of Americaのカンファレンスセッションプログラムを主な情報源として用い,1.研究方法,2.研究と実践の連続性,3.理論基盤及びアプローチ,4.マクロ実践とソーシャルアクションに焦点を当て,米国のスクールソーシャルワーク(SSW)研究及び実践を概観し,日本のSSW研究及び実践への示唆を述べる.研究と実践は連続性を持って行われるべきであり,また研究者と実践家が協働で実践研究を行うことが近年ますます求められている.本稿では,SSWAAカンファレンスの内容とChildren & Schoolsに掲載されている論文を合わせて提示することで,米国におけるSSW研究及び実践の連続性,深みと広がりをより鮮明に照らし出す.
第12回大会シンポジウム
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