学校ソーシャルワーク研究
Online ISSN : 2758-5018
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3 巻
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論文
  • ―児童相談所と小学校との連携に注目して―
    高良 麻子
    2008 年 3 巻 p. 2-13
    発行日: 2008年
    公開日: 2023/05/12
    ジャーナル フリー
    近年,児童虐待は日本における深刻な社会問題のひとつであるが,虐待相談が最も多い小学生の生活の場である小学校と児童虐待の主要な対応機関である児童相談所との連携に焦点をあてた研究はほとんど進んでいない.また,児童虐待におけるスクールソーシャルワーカーの役割について検討した研究も数少ない.
    そこで,本研究では全国の児童相談所に勤務する児童福祉司を対象とした質問紙調査を実施し,児童虐待に関する児童相談所と小学校の連携の現状,連携における困難要因,小学校およびスクールソーシャルワーカーに望む活動などを把握した.そして,教職員に対する先行調査結果も加えて分析した.これらの結果から,児童虐待におけるスクールソーシャルワーカーが果たすべき役割として,①児童虐待の発見および通告,②被虐待児への支援③家族への支援,④教職員への支援,⑤教職員の意見調整および連携担当,⑥地域住民とのネットワーク構築について検討した.
  • 和田 俊人
    2008 年 3 巻 p. 14-24
    発行日: 2008年
    公開日: 2023/05/12
    ジャーナル フリー
    本研究は,特別支援教育コーディネーターの設置に到る経緯と役割の変遷を明らかにした.研究の方法は,特別支援教育の成立に関わる文部科学省等のモデル事業の実施要項や報告,審議会の報告,通知等の文献の記述を比較した.特別支援教育コーディネーターの役割に関する記述は,次第に変遷をし,役割の内容は拡大をしてきていることが明らかになった.その背最には,特別支援教育の校内の体制作りのための推進役が必要とされていることを指摘した.また,盲・聾・養護学校(特別支援学校)のコーディネーターの役割についても,役割の拡大がみられたが,校外の関係機関との連携や小中学校等への支援という,対外的な役割が中心であった.特別支援教育コーディネーターの在り方については,引き続き検討され,役割や位置付けも変化していくことが予想されることを示唆した.
  • ―社会福祉と学校教育の結節点をめぐって―
    鈴木 庸裕
    2008 年 3 巻 p. 25-40
    発行日: 2008年
    公開日: 2023/05/12
    ジャーナル フリー
    今後,学校におけるソーシャルワーカーの専門職化には,その資格認定や大学等での養成課程システム,現任者研修のプログラム,採用や任用の資格,業務指針等の明示化が欠かせない.その作業を進めるには,今日の社会福祉と学校教育の結節点がどこにあるのか,そしてそれを人材養成のプロセスにいかに措定していくのかが大切になる.
    本稿では,まずその結節点の現状を検討し,先進地・アメリカにおける大学院教育のカリキュラムや実習およびそれらの実施環境を踏まえ,また筆者の大学教育実践(福島大学での試行的実習)の反省的課題を考察しつつ,人材養成をめぐる基本骨子について考える.
  • ―韓国における学校社会福祉士資格制度を通して―
    大門 俊樹
    2008 年 3 巻 p. 41-53
    発行日: 2008年
    公開日: 2023/05/12
    ジャーナル フリー
    国の2008年度当初予算の財務省原案には, 15億円をかけスクールソーシャルワーカーを141地域に配置する計画がされている.学校ソーシャルワークヘの需要が一段と高まるなか,人材養成についての議論を十分に尽くしていく必要がある.
    韓国においては, 1990年代になり学校社会福祉活動(〓〓〓〓〓〓〓〓)が活発な動きを見せ始めた.現在では2つの国家的事業が中心に行われ,法制化の識論も進んでいる. また,学校社会福祉士の資格制度についてもすでに確立しており,国家資格である社会福祉士1級資格の取得を基本とし,実習や関連科目の取得を義務づけるとともに,学校ソーシャルワーカー独自の資格試験や資格取得後の研修やスーパービジョンなども義務づけている.
    本稿では,韓国学校社会福祉士協会発行の韓国学校社会福祉士資格制度案内をもとに,韓国における資格認定システムについて紹介しながら,日本における学校ソーシャルワーカーの資格認定システムに関する鏃論に生かしたい.
  • ―J.デューイの『ソーシャル・センターとしての学校』論より―
    宮地 さつき
    2008 年 3 巻 p. 54-66
    発行日: 2008年
    公開日: 2023/05/12
    ジャーナル フリー
    家庭一学校一地域の協働を促進することは,学校ソーシャルワーク(以下, SSW)の目的の1つである. 2008年度より実施されるスクールソーシャルワーカー活用事業では,学校等の教育機関への人的配置が進められている.現段階ではこのような基盤整備を通じて,学校が教育と福祉のinterface (相互接触面)となり,学校に家庭と地域を結びつける役割が求められている.ではその際, SSWにおいては学校が教育と福祉のinterfaceとしてどのような存在になるのか.この問いに対し本稿では,教育哲学者であるJ.デューイ(1859~1952) の『ソーシャル・センターとしての学校』論を手がかりとして,今後, SSWが捉えるべき学校論について一考察を行なった.
  • ―学校ソーシャルワークにおける環境的アプローチの一過程―
    米川 和雄
    2008 年 3 巻 p. 67-80
    発行日: 2008年
    公開日: 2023/05/12
    ジャーナル フリー
    本研究は,中学生を支援するシステム構築を目指した学校ソーシャルワークの環境的アプローチの一過程である.その目的は,高校生に実施したピアコーチ養成プログラム(週1回3.5時間を3回)の効果検討である.ピアコーチとは,エンパワーコーチングの基礎技術(基本的なカウンセリング,コーチング,ティーチング,アドバイスの技術)を用い,中学生を援助する高校生のことである.対象者は高校生で,実験群44名と統制群介入前25名・介入後27名である.対象者には,自己受容測定尺度,学校生活スキル尺度,健康度,生活満足度,そしてサポート数の回答を求めた.結果として,実験群のみ学校生活スキルの合計,その下位尺度である進路決定スキル,集団活動スキルとコミュニケーションスキルの向上が認められた.今後は,プログラムのさらなる精査とピアコーチが中学生に関わった効果を検討していく必要がある.
実践報告
  • ―困難事例への対応を中心として―
    土屋 佳子
    2008 年 3 巻 p. 81-90
    発行日: 2008年
    公開日: 2023/05/12
    ジャーナル フリー
    近年の地方分権の流れの中で,地方公共団体では機構改革が積極的に行われている.中でも,少子化問題や幼・保の一元化に対応するために,児童福祉部門での組織改変を改革の目玉として,「こども課」「こどもみらい課」といった新しい課を立ち上げる自治体が増えてきた.筆者がスクールカウンセラー(以下SC) として所属する教育委員会学校教育課(当時)も,平成19年度の行政機構改革により健康福祉課内の児童福祉部門と統合し,「こどもみらい課」へと改称されたが,従来から庁内の健康福祉課や健康増進室(保健センター), さらには外部機関との連携を図りながら対応してきたケースが多々あった.
    本稿では,学校を含む地域の社会資源を活用しながらソーシャルサービスを展開した実践事例(困難事例)をたどり,児童福祉と学校教育が融合した新たな行政システム上での学校ソーシャルワーグの有用性や今後の課題についても言及する.
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