今日,学校教育活動においてソーシャルワーク実践を明示するものに文部科学省の『生徒指導提要』(学校・教職員向けの基本書)がある.本書には,「学校だけでは対応しきれない児童生徒の問題行動」をめぐる協働・連携の職種とする「スクールソーシャルワーカー」とその職務が記載されている.しかし,学校における「ソーシャルワーク」の目的や機能は明確には論じられておらず,いじめや不登校,家庭養育間題などへの対応や対策に有効であるという予定調和的な位置づけになっている.
また,近年、いじめ防止対策や「子どもの貧困」対策が学校での喫緊の課題となる中で,学校教育における生徒指導にも大きな転換が迫られ,学校ソーシャルワークがこの生徒指導といかなる局面で結びつくのかという点に関心が高まっている.子どもの教育権や学習権の保障と学校ソーシャルワークの関係把握は深まりを見せつつも,他方でこれからの学校ソーシャルワークの実践論の構築において,もっともその実践上の活動領域となる生徒指導との関係把握は曖昧なままである.
そこで,本研究では,学校における生徒指導と学校ソーシャルワークとの関係について,戦後新教育期(敗戦~ 1950年代半ば)のガイダンス論導入期における生徒指導の形成とその同時期の学校福祉事業の諸論との関係をめぐる問題史的検討から明らかにしていきたい.
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