学校ソーシャルワーク研究
Online ISSN : 2758-5018
Print ISSN : 1881-9788
11 巻
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論文
  • ガイダンス論導入期をめぐって
    鈴木 庫裕
    2016 年 11 巻 p. 2-14
    発行日: 2016年
    公開日: 2023/04/03
    ジャーナル フリー
    今日,学校教育活動においてソーシャルワーク実践を明示するものに文部科学省の『生徒指導提要』(学校・教職員向けの基本書)がある.本書には,「学校だけでは対応しきれない児童生徒の問題行動」をめぐる協働・連携の職種とする「スクールソーシャルワーカー」とその職務が記載されている.しかし,学校における「ソーシャルワーク」の目的や機能は明確には論じられておらず,いじめや不登校,家庭養育間題などへの対応や対策に有効であるという予定調和的な位置づけになっている.
    また,近年、いじめ防止対策や「子どもの貧困」対策が学校での喫緊の課題となる中で,学校教育における生徒指導にも大きな転換が迫られ,学校ソーシャルワークがこの生徒指導といかなる局面で結びつくのかという点に関心が高まっている.子どもの教育権や学習権の保障と学校ソーシャルワークの関係把握は深まりを見せつつも,他方でこれからの学校ソーシャルワークの実践論の構築において,もっともその実践上の活動領域となる生徒指導との関係把握は曖昧なままである.
    そこで,本研究では,学校における生徒指導と学校ソーシャルワークとの関係について,戦後新教育期(敗戦~ 1950年代半ば)のガイダンス論導入期における生徒指導の形成とその同時期の学校福祉事業の諸論との関係をめぐる問題史的検討から明らかにしていきたい.
  • ―子ども家庭支援の在り方と促進者としての援助技術―
    梶原 浩介
    2016 年 11 巻 p. 15-29
    発行日: 2016年
    公開日: 2023/04/03
    ジャーナル フリー
    本研究はハイリスク家族に対する家族保全を視点においた学校ソーシャルワークを行った.その結果,子どもの学校生活における問題行動の減少や養育者の子どもに対する関わり方等に変化が確認できた.
    特に専門的な知識や技術についての話し合いを,家族の実情に合った取り組み方や助言へと普遍的な知識や技術についての話し合いへと変換することが子ども家庭支援に求められる重要な視点と考える.その点でSSWerのコンサルテーション機能が今後もより重要なものになる.この取り組みから親の育ちを支えることが子どもの育ちに繋がるため,子どもが育つ生活環境には多面的な視点から支援の取り組みが必要であることが明らかになった.
    したがって,学校ソーシャルワークにおける子ども家庭支援の取り組みは,家族の力を保全するとともに,生活課題を抱える家族を支える地域つくり,ひいては子どもにとっての居場所つくりに繋がるため有効な実践であると考える.
  • 中川 靖彦, 小泉 隆平
    2016 年 11 巻 p. 30-40
    発行日: 2016年
    公開日: 2023/04/03
    ジャーナル フリー
    教職員が児童虐待に関する知識と理解を深め,適切に対応できる力量を身に付けることは,児童虐待の早期発見と早期対応において栖めて重要であり,その力量向上に教職員研修は欠かせない. しかし,教職員が児童虐待について研修する機会は決して多いとはいえず,その在り方についても十分検討されているとはいえない.
    本研究は,小・中学校の教職員を対象に児童虐待の早期発見・早期対応に向けた教職員研修の実施とその効果測定を行い,研修の有効性を検証するとともに,今後の教職員研修の枠組みを探る実践的且つ基礎的な研究を行った.
    その結果,研修後に教職員の児童虐待対応自己効力感の下位尺度得点が上昇し,実施した研修の有効性が確認された.また,校種別,職階別,児童虐待の研修歴別の分析結果から研修効果に特徴がみられ,管理職と教諭等ではその職能に応じた研修を行う必要性や複数回の研修を継続的に受講することの必要性などが明らかとなった.
実践報告
  • ―ストレングスの視点を活用した学校ソーシャルワーク・コンサルテーション―
    池田 敏
    2016 年 11 巻 p. 41-53
    発行日: 2016年
    公開日: 2023/04/03
    ジャーナル フリー
    本報告の目的は,スクールソーシャルワーカーが学校ソーシャルワーク・コンサルテーションを展開する場合に,ストレングスの視点を活用したケースコンサルテーションを行うことで,①校内協働を促進することに有効であること,そして,②校内協働が促進されたことにより,不登校傾向の児童が不登校となるのを予防することにつながることを明らかにしていくことである.
    そのために,本報告では,Rappand Goscha (2012) のストレングスの視点を活用しケースコンサルテーションを展開した不登校傾向の児童への学校ソーシャルワーク実践事例を対象として,事例研究を行った.
    その結果,教職員間で対象児童に関する情報が共有されるようになり,校内協働が促進されたまた,校内協働が促進されたことも影響し,対象児童が安定して登校するようになり,主体的な言動も見られるようになった.
研究動向
  • 実証的研究に着目して
    大友 秀治
    2016 年 11 巻 p. 54-68
    発行日: 2016年
    公開日: 2023/04/03
    ジャーナル フリー
    本稿は,拙稿(大友2015) に続き,スクールソーシャルワーク(以下, SSW) を含む国内外のソーシャルワークのスーパービジョン(以下, SV) における近年の研究動向と課題を,実証的研究に着目して明確化することを目的とする.「国立国会図書館サーチ」と「CiNii」にて過去10年分の薯籍及び学術論文14本を,Academic Search Premierにて過去10年間の学術論文25本を研究対象として選定した.それらを,領域や目的,研究方法,主な結論などに分類,整理した.
    その結果,量的・質的研究よるSVの手順と様式の検証・見直しなどの実証的研究が見られ,SVに活用できる実施マニュアルやツールの開発研究もなされていることが明らかとなった.特に,国外の研究では,各実践領域や文化に即し,マクロ領域を含むSVモデルの開発も進められていることが確認できた.しかし,拙稿も含めてSSW領域におけるSV研究は少なく,SSW領域におけるマクロなSV研究は確認できなかった.
    今後は,これまでのレビュー研究の知見と課題に基づき,SSW領域においても,学校組織や地域社会に働きかけてシステム変革を促進するSV研究を実証的に進めていくことが必要であると考える.
第10回研究大会シンポジウム
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