獣医疫学雑誌
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12 巻, 2 号
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第26回獣医疫学会学術集会 教育講演
  • 寺嶋 淳, 伊豫田 淳, 泉谷 秀昌, 三戸部 治郎, 石原 朋子, 渡辺 治雄
    2008 年 12 巻 2 号 p. 89-92
    発行日: 2008/12/20
    公開日: 2010/07/20
    ジャーナル フリー
    PulseNet Japan is a network system for utilizing epidemiological information and the results of laboratory investigations of foodborne illness outbreaks. We have been analyzing DNA pattern of foodborne pathogens such as enterohemorrhagic Escherichia coli (EHEC) isolates by the use of pulsed-field gel electrophoresis (PFGE). The method, capable of discriminating genotypical difference of the isolates, enabled us to find the contaminated food such as salmon roe which was the causative agent for the multiprefectual outbreaks in Japan. PFGE results of the isolates and other epidemiological information have been accumulated to construct database for foodborne bacterial pathogens for sharing and making use of the information among municipal public health institutes, National Institute of Infectious Diseases and the Ministry of Health, Labor and Welfare.
  • 浅井 鉄夫
    2008 年 12 巻 2 号 p. 93-98
    発行日: 2008/12/20
    公開日: 2010/07/20
    ジャーナル フリー
    Antimicrobial agents are essential for human and animal health and welfare, but antimicrobial use can lead to antimicrobial resistance. The resistance arising from antimicrobial use in food-producing animals represents a potential hazard to human medicine through foodborne infection caused by resistant bacteria. In Japan, the Japanese Veterinary Antimicrobial Resistance Monitoring System (JVARM) was formed in 1999 in response to international concern about the impact of antimicrobial resistance on public health. In the JVARM program, initial monitoring for antimicrobial-resistant bacteria was carried out in 1999 and then the first and second stages of the JVARM program were completed in 2000-2003 and 2004-2007, respectively.
    Veterinary antimicrobial use is a selective force for appearance and prevalence of antimicrobial-resistant bacteria in food-producing animals. However, antimicrobial-resistant bacteria are found in the absence of antimicrobial selective pressure. We show here the relationship between antimicrobial usage and prevalence of resistant bacteria under the JVARM from 1999 to 2007.
原著
  • 関口 知典, 纐纈 雄三
    2008 年 12 巻 2 号 p. 99-104
    発行日: 2008/12/20
    公開日: 2010/07/20
    ジャーナル フリー
    この研究の目的は,ストール飼育の妊娠豚の産歴による行動の変化,行動と生涯繁殖成績の関連,偽咀嚼と唾液中コルチゾールの関係を調べることであった。300頭一貫経営を行っている生産農場を3年間で8回訪問した。毎回の訪問時にポイントサンプリングを使い,6時間を15分間隔で妊娠豚の姿勢行動と偽咀嚼を記録した。6時間25回の観察で,行動の観察された回数が割合として計算記録された。観察した1,570頭のうち,1,285頭が分娩し,427頭は淘汰された。最後の2回の農場訪問で,偽咀嚼の割合で,偽咀嚼なし群と偽咀嚼多数群の2群に分けられた。そして2群の妊娠豚から唾液が採取され,唾液サンプルは放射線免疫法キットでコルチゾール濃度が測定された。連続する産歴での行動ごとの相関の分析には,ピアソン相関分析法を使用した。行動と生涯繁殖成績の関連は産歴ごとに分析した。産歴が0から3に上がると,偽咀嚼割合は8.14から13.1%に多くなった。産歴0から5まで,偽咀嚼は連続する産歴間で相関があった(P<0.05)。唾液中コルチゾール濃度は,2つの群での差はなかった。産歴4と5で,偽咀嚼の低い割合は,多い生涯平均の分娩時総子豚数と生存子豚数に関連があった(P<0.05)。
  • 星野 侑子, 田中 祐樹, 纐纈 雄三
    2008 年 12 巻 2 号 p. 105-109
    発行日: 2008/12/20
    公開日: 2010/07/20
    ジャーナル フリー
    動物の常同行動とは,意味なく同じ行動を繰り返すことと定義され,常同行動の回数の増加は,動物福祉上の懸念を増加させると考えられている。母豚において犬座姿勢は常同行動の一つである考えられている。本研究の目的は,母豚の長期生存性と犬座姿勢の関連性を調べること,四肢障害またはその他の理由で淘汰された母豚の犬座姿勢を比較することであった。繁殖豚300頭一貫経営農場に3年間で11回訪問し,授乳時の母豚の行動を24時間録画した。犬座姿勢は24時間当たり総犬座姿勢時間と平均一回当たり犬座姿勢時間を指標とした。各母豚の生涯繁殖成績は生産ソフトで記録した。淘汰産歴が6産以上かつ淘汰理由が高産歴であった母豚を「長期生存した」,その他の母豚を「長期生存しなかった」として2グループに分類した。観察時の産歴で淘汰された母豚は,淘汰理由で「四肢障害」と「その他」の2グループにした。観察された205頭の母豚における24時間当たり総犬座姿勢時間,平均一回当たり犬座姿勢時間の平均は,それぞれ80.7±3.44分,2.6±0.11分であった。2つの犬座姿勢は長期生存に関するグループ間で違いはなかった。また,2つの犬座姿勢は導入から淘汰までの日数と生涯生存産子数に関連性はなかった。2つの犬座姿勢は淘汰理由グループ間で差はなかった。この研究は授乳豚の犬座姿勢は長期生存性や生涯繁殖成績に関連性がないことを示唆した。
解説
  • 小澤 義博
    2008 年 12 巻 2 号 p. 110-119
    発行日: 2008/12/20
    公開日: 2010/09/10
    ジャーナル フリー
    Since September 2001, Japan has reported 35 BSE cases to the OIE including a few atypical cases. There were at least two major exposures in Japan. The first exposure to BSE occurred between 1995 and 1996, and 13 Holstein cows (Group A) have been detected in different parts of Japan due mainly to imported contaminated feed ingredients.
    The second exposure occurred in Hokkaido between 1999 and 2001. As of April 2008 17 BES cases have been found there among the same cohort animals (Group B). Almost all positive cases of Groups A and B were Holstein cows. The remaining 5 cases (Group C) were of various ages including two native beef cattle. Two young (21and 23-month-old) Holstein steers are also included in Group C, but the transmissibility of these two cases has not been reported. Additional data on these 2 cases are needed to confirm that these were genuine BSE cases.
    There were 4 cases in native Wagyu breed. Two were in Hokkaido among Group B cases, and the other two were old Wagyu (13 and 15 years of age) of Group C. It will be possible that future surveillance of BSE in Japan could be focused mainly in Hokkaido where a large number of Group B cohort cattle still remain. It will be also possible that Japan is divided into two zones, Hokkaido zone and the rest. Since the youngest typical BSE case confirmed in Japan was a 48-month-old cow of Group B, it is considered that the age of the cattle to be tested at abattoirs could be raised from 20 months to 36 months or older with negligible risks.
    Three atypical cases of BSE have been found in Japan, but it is considered necessary to demonstrate the transmissibility of these cases in order to confirm that they are indeed TSE cases. So far only one case (No. 24) could be transmitted to mice. The author considers that it is necessary to review the surveillance systems in Japan with reference to the OIE standard for BSE surveillance. It is also considered necessary that more countries to look for atypical BSE cases in order to obtain enough data necessary for the OIE to define international rules dealing with atypical BSE cases.
  • 青木 博史
    2008 年 12 巻 2 号 p. 120-124
    発行日: 2008/12/20
    公開日: 2010/09/10
    ジャーナル フリー
    平成19年4月1日に,我が国は国際獣疫事務局(OIE)の規約により豚コレラ清浄国となった。すなわち,明治21年の初発生から約120年を経て,養豚分野に大きな被害をもたらした豚コレラが完全に排除されたわけである。この「豚コレラ撲滅達成」という日本の家畜衛生史に残る偉業は,他国に類をみない優れた予防・診断技術の開発や改良,それらを取り入れた撲滅計画が個々に優れているのはもちろん,過程における,生産者,各民間団体,行政機関,研究・検査機関及びワクチン製造所など関係者が一体となって取り組んできた結果によるものであり,世界的にも高く評価される。そして,豚コレラの撲滅を達成した後も「豚コレラ防疫史」をさらに築き綴らねばならない。「清浄化」は免疫のない高感受性の豚集団の再汚染・拡散のリスクを有していることと表裏一体であり,従って,豚コレラウイルスの侵入と拡散を防止するための迅速かつ円滑な豚コレラ発生予防及びまん延防止措置を継続し,清浄化を維持することが重要となる。豚コレラ清浄化から間もなく2年を迎える現在,関係者の不断の努力により野外ウイルスの侵入を許していない。この監視体制をもって豚コレラ清浄化を継続・維持しなければならない。
資料
  • 牧野 ゆき
    2008 年 12 巻 2 号 p. 125-127
    発行日: 2008/12/20
    公開日: 2010/09/10
    ジャーナル フリー
  • 山本 茂貴
    2008 年 12 巻 2 号 p. 128
    発行日: 2008/12/20
    公開日: 2010/09/10
    ジャーナル フリー
    第15回アジア獣医師会大会が2008年10月27日から30日にかけてタイのバンコクで開催された。今回はOIEと合同のシンポジウムも開催され,約600名(うち外国人116名)の参加があった。日本人は約11名で,例年より少なかった。
    大会はタイ国王室のチュラブホン王女(Princess Chulabhorn)の開会宣言(写真1)で始まった。
    多くの招待講演があったが,まず,基調講演として今回はOIEとの共催ということから事務局長のVallat氏(代理で副事務局長)がOIEのポリシーをはなし,トピックとしては食品安全に関して「コーデックスとOIEの協力」「細菌性食中毒」「ウイルス性食中毒」,食品安全管理手法としてトレーサビリティシステム,耐性菌問題,動物福祉,タイの獣医検査室診断,豚,小動物,野生動物が取り上げられた。動物福祉は来年以降OIEが獣医学教育の中に取り入れるべく力を入れていく分野の一つとして考えているものである。
    口頭発表は全部で33題,ポスター発表はグループA獣医公衆衛生と食品安全34題,B新興の感染症及び人獣共通感染症25題,C食用動物臨床70題,D小動物臨床28題,E実験動物18題であった。
    今回は獣医師会の大会であったが,食品安全を主体に取り上げていたのが特徴的であった。また,やはりアジア地域の特徴である家畜衛生関連の発表が最も多かった。
トピック
  • 小西 良子
    2008 年 12 巻 2 号 p. 129-130
    発行日: 2008/12/20
    公開日: 2010/09/10
    ジャーナル フリー
    カビ毒とは,カビの産生する2次代謝物質のうち,ヒトや動物に健康被害を引き起こすものをいうが,天然化合物の中で最強の発がん物質といわれるアフラトキシン(AF)もカビ毒の一つである。アフラトキシンに関しては,発がん機序に関する数多くの毒性研究とヒトにおける疫学研究がなされており,それらの結果から国際機関においては,いくつかの発がんリスクの推定がされているので紹介したい。
    アフラトキシン(AF)は,1960年にイギリスで10万羽以上の七面鳥が死亡する事例が発生し(turky“X”disease),その原因物質として飼料中のピーナッツミールから発見された。AF類縁体として10種類以上が報告されているが,そのうち食品を汚染するAFはAFB1, AFB2, AFG1, AFG2およびAFB1の代謝物であるAFM1の5種類である。AFB1, AFG1およびAFM1は,体内に摂取された後肝臓の薬物代謝酵素などで活性化されDNAに結合し,癌抑制遺伝子などに変異を起こすことが明らかになっている。5種類のAFのうち,RATを用いた発がん実験などでAFB1が最も発がん性が高いことが実証されている。ヒトにおける疫学調査では,1960年代初頭から主にアフリカとアジアを対象に,AFB1の摂取量と肝癌のリスクに関係について調査が進められた。1980年代半ばには原発性肝細胞癌の発生率が世界で最も高い地域の一つである中国の南部広西チワン族自治区の25~64歳の男性7,917人を対象に,原発性肝細胞癌の発生におけるB型肝炎ウイルスとAFB1の役割について検討するコホート研究が行われた。これらの結果を受けて国際癌研究機構(IARC)では,AFB1の発がん性は十分な証拠があるとしており,自然界で生じるアフラトキシン混合物は総合的に評価してヒトに対して発がん性がある(グループ1)としている。(表1)。
    ヒトへの発がんリスクの推定はFAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)や欧州食品安全機構(EFSA)により検討されている。JECFAでは,体重1kgあたり1ng/日の用量で生涯にわたりAFB1に経口暴露した時の肝臓癌が生じるリスクは,B型肝炎キャリアの場合0.3人/10万人/年(不確実性の範囲0.05~0.5人/10万人/年),健常人の場合0.01人/10万人/年(不確実性の範囲0.002~0.03人/10万人/年)と推定した。表2にその推定の根拠となったモデルを挙げた。一方欧州食品安全機構(EFSA)では,用量反応をベンチマーク用量(BMD)モデルにより,ラットではBMDL10 : 0.17・g/kg体重/日,ヒトではBMDL10 : 870ng/kg体重/日BMDL1 : 78ng/kg体重/日と推定している。
    しかし,AFの摂取量と原発性肝臓癌の発生については,民族の多様性,性別による影響,年齢による影響など,不明な点が多く残されていることも事実である。幸いにしてAFのバイオマーカーについての研究は日進月歩に進んでおり,DNAとの付加体のバイオマーカとしてAFB1-N7-グアニンが高感度で検出できるようになってきている。今後,バイオマーカーを用いた疫学研究が飛躍的に進むと思われる。
    本稿では獣医学の分野でのカビ毒の問題には紙面の関係で触れられなかったが,飼料中のカビ毒に関する分析法は確立されているが,動物体のバイオマーカーについてはほとんど研究が行われていない。ヒト疫学分野で培った技術を使って,獣医学の分野でもカビ毒汚染と疾病との相関が明らかになることを願っている。
  • 山本 茂貴
    2008 年 12 巻 2 号 p. 131
    発行日: 2008/12/20
    公開日: 2010/09/10
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