土木学会論文集B2(海岸工学)
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75 巻, 2 号
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論文
  • 浜野 竜太朗, 二宮 順一, Josko TROSELJ , 森 信人
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1201-I_1206
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     日本を取り巻く海洋の環境,防災,資源開発を考える上で,日本近海の海洋環境を把握し,流動構造・水温変動などの海況の変動解析を行うことは重要な課題である.そこで本研究では,長期間で高解像度の再解析データFORA-WNP30を使用して,日本海を対象とした極前線及び熱環境の解析を行った.水深帯毎の水温EOF解析結果では,日本海は水深100m付近まで日本沿岸に高水温の空間分布が支配的であり,対馬暖流影響が示唆された.極前線南北の熱量解析では南北で熱量の鉛直変動が異なることが分かり,南北での暖流影響の違いが確認された.その後,日本海の熱輸送経路を把握するために4Boxモデル積分計算を行い,日本海では対馬暖流域から低層上部を経由して極前線北側海域の表層への経路をとることが示唆された.また4Box計算に温暖化条件を設定し,その応答を調べた.

  • Adrean WEBB, Tomoya SHIMURA, Nobuhito MORI
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1207-I_1212
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     A tropical cyclone (TC) dataset has been created for the d4PDF climate dataset. It contains 11,400 years of TC tracks (historic and future), which makes it possible to estimate 100 year or longer return values. The detection method uses wind speed and pressure difference threshold parameters and is tuned to optimize annual TC count and genesis latitude distributions. Tuning and validation of the method is conducted using 30-year IBTrACS observation and JRA-55 reanalysis data. An excessive number of TCs are detected in the d4PDF dataset in the Southern Hemisphere at higher poleward latitudes. However, the latitude distributions of decay location are improved and more TCs decay at higher poleward latitudes (a shortcoming of previous studies), making it possible to use the data for climate change impact assessments of coastal areas.

  • Josko TROSELJ, Yuki IMAI, Junichi NINOMIYA, Nobuhito MORI
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1213-I_1218
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     Downscaling coarse scale global climate models to fine coastal scales is needed to realistically reproduce natural variabilities of coastal current systems and processes subject to expected increases in global mean sea level, surface temperatures and extreme precipitation in the 21st century due to climate change. The objective of this study is to provide a fine scale (222 m resolution using COAWST model) ocean circulation reanalysis (2001-2006) and assessment of seasonal variabilities of sea surface temperature (SST) and sea surface salinity (SSS) of the coastal ocean around Ibaraki prefecture, Japan, with particular emphasis on the freshwater impact. Model results are validated against SST data observed in-situ at Hasaki point and satellite data from MGDSST for all seasons in the analyzed period by comparing modelled and observed SST mean and variabilities in shallow and deep waters. We also analyzed SSS seasonal variabilities in shallow waters for 2005 and found that they are the biggest in summer and the smallest in autumn.

  • M. R. BADRIANA, H.S. LEE
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1219-I_1224
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     For over years, fundamental component and dataset in climate projection had been covered by general circulation models (GCMs) output mainly from the Coupled Model Inter-comparison Project (CMIP). Marine surface winds are an important output of GCMs and they provide input to marine forecasts and warning systems. Their accuracy have direct implications for marine safety, air-sea fluxes, wave and ocean models. Western North Pacific (WNP) is known as a highly vulnerable region to oceanic and atmospheric hazards, such as storm surges, waves and typhoons. Therefore, it is necessary to examine the quality of surface winds from CMIP6 GCMs in comparison with obserations or reference data. The ERA-Interim reanalysis is considered as the reference data. Monthly surface winds in WNP and its four sub-regions over 30 years (1979-2008) are retrieved from 32 ensembles of CMIP6 and the ERA-Interim reanalysis. The surface winds are evaluated by using five statistics, bias, correlation coefficient (R), root mean square deviation (RMSD), standard deviation (σ) and Index of Agreement (IoA). In general, overestimation over sea and underestimation in land are found with approximately 1 m/s variance in wind speed. RMSD and standard deviation on average is relatively similar for each GCM and ensemble. Distinctive seasonal characteristics of surface winds are found in each sub-region. Based on the findings, it can be concluded that the use of individual ensemble result from CMIP6 GCMs could result in serious bias. Therefore, it is recommended to use multi model ensemble-averaged values for the application of CMIP6 surface winds such as wave climate projections.

  • 高 裕也, 二宮 順一, 森 信人, 金 洙列
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1225-I_1230
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     観測値および非線形長波モデルの計算値に基づいて係数決定した高潮簡易推定式を用いて,現在気候実験3,000年(60年×50メンバ)および将来気候実験5,400年(60年×90メンバ)の大規模アンサンブル気候予測データ(d4PDF)領域モデル実験から抽出された爆弾低気圧時の根室における高潮の将来変化予測を実施した.根室における高潮偏差の平均値ではほぼ将来変化がみられなかったが,上限値で7.2%の増加がみられた.また,再現期間60年に相当する大きな高潮偏差は,爆弾低気圧が根室の右側に位置することで発生しやすく,さらには,将来的にその中心位置の分布が広範囲になり,数も増加する傾向にあることがわかった.

  • 田所 壮也, 矢野 真一郎
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1231-I_1236
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     気候変動に伴う沿岸域水環境への影響として,貧酸素水塊の消長への影響が危惧されている.予測される気温・河川水温・海水温の上昇や出水時の河川流量の増加が与える海水温,水温・塩淡成層構造の変化がもたらす溶存酸素濃度分布への影響について,有明海を対象として準3次元流動モデルと3次元低次生態系モデルにより疑似温暖化実験することで評価を試みた.その結果,温暖化により気温上昇が進んだ場合には底層の貧酸素水塊の発達を助長することが分かった.加えて,河川流量が増加した場合,気温・水温上昇による影響に加えて貧酸素水塊の発達が促進されるが,有明海の中でも海域によって流量規模が貧酸素水塊の消長に与える影響が異なることが示された.

  • 宇野 宏司, 柿木 哲哉
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1237-I_1242
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     気候変動に伴う海水準上昇が,沿岸域に様々な影響を及ぼすことが懸念されている.我が国では古くから人家への飛砂の流入防止や防風を目的とした海岸林が整備されてきた経緯があり,現在も全国各地に残存している.近年,グリーンインフラ整備による防災減災対策が注目される中,海岸林をはじめとする海岸植生は沿岸環境の保全と防災・減災,そして景観保護の観点からも非常に重要で,適切な管理が求められる.海水準上昇に伴う沿岸域への影響については,砂浜消失の将来予測に関する研究や都市部での経済リスク評価などが行われているが,全国スケールでの海浜植生及び海岸林の消失将来予測を検討した事例はほとんど見られない.そこで本研究では,オープンデータを活用した空間情報解析等により,将来の海水準上昇に伴う海浜植生及び海岸林の「場」と「種」の消失リスクについて検討した.

  • 笹 健児, 青木 伸一, 藤田 知宏, 陳 辰
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1243-I_1248
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     外洋性港湾における係留問題について,本研究ではある外洋性港湾の石炭船パースを対象に過去3年聞にわたる波浪予報,沖待ち,増取り係留の実態を整理分析した.港内外の長周期波を含む波浪特性についてもデータ分析し,港内において港外の長周期波高が約1.6倍に増幅すること,類似した波浪条件にもかかわらず長周期波高の発生パターンが異なり,予報を困難にしていることがわかった.このため係留システムの設備増強による沖待ち日数の変化と予報失敗時の安全性について過去3年間における32ケースの荒天条件について船体動揺を数値シミュレーションにて再現した.この結果,係留システムの設備増強にて沖待ち日数を半分以下に削減することが可能と考えられる.従来の港内静穏度に対し,沖待ち日数の変化による荷主の負担削減と設備増強および整備費用の差額としての安全設備収支関数を新たに定義した.

  • 山本 浩一, 朝隈 友晴, 香川 拓輝, Sigit SUTIKNO , Noerdin BASIR , 神野 有生
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1249-I_1254
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     泥炭地海岸がみられるインドネシア共和国リアウ州ブンカリス島において,沿岸で確認されていた陸域面積の拡張現象の実態を衛星画像の解析と現地調査で明らかにした.陸域拡張現象の実態は泥炭地崩壊の一形態であるボグバーストに伴う一時泥炭扇状地の発生であった.さらに,この一時泥炭扇状地の面積は発生初期に大きく減少した.さらに一時泥炭扇状地の発生個数と期間降水量を比較したところ,一時泥炭扇状地の発生数が増加した場合,降水量に応じて発生数が増加することが確認された.従ってボグバーストは降雨が要因となって引き起こされ,降水量の増加とともに発生箇所が増加することが明らかになった.

  • 小橋 乃子, 安達 貴浩
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1255-I_1260
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     現場観測用センサーである多波長励起蛍光光度計の有効活用を目的とし,本研究では比較的簡便な分析手法によって,藻類組成の検出精度をどこまで向上できるのかについて検討を行った.具体的には,Multi-Exciterにより,DCOM分画と微小植物プランクトン分画の基本スペクトルを作成する手法を新たに提案し,その有効性を検討した.得られた基本スペクトルをデフォルトの基本スペクトル(藍藻,緑藻,珪藻)に加えることで,Microcystis(藍藻類)の検出精度を改善することが可能となった.さらに,同センサーを用いてDOCとCh.a濃度の微小植物プランクトン分画を推定した結果,前者についてはサンプルごとに推定精度がばらついたが,後者については比較的良好に推定できることが確認された.

  • 柴田 涼太郎, 佐藤 愼司, 山中 悠資
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1261-I_1266
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     海岸を覆う砂や礫,植生,漂着物等の分布情報は海岸管理のためになくてはならない情報であり,海岸の土砂動態を把握するうえでも重要であるが,現地踏査を行うには大きな費用や労力がかかり,大規模な調査や高頻度な調査は困難である.本研究ではUAVにより海岸を撮影することで広範囲の情報を短時間で取得し,画像の分析により海岸の情報をマッピングした.マッピング結果からは海岸を覆う植生,漂着物,海浜礫などの分布といった情報を得ることができ,分類基準を調整することにより様々な海岸に適用できることを確認した.また,同手法を宮崎海岸に適用し,漂着物や海浜礫の分布特性について考察した.

  • 福原 直樹, 竹下 哲也, 加藤 史訓, 寺西 琢矢, 秋田 雄大, 橋本 孝治
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1267-I_1272
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     波のうちあげ高は,海岸堤防等の天端高を検討するための指標の一つとして用いられており,施設設計において把握すべき重要な指標の一つであるが,現地観測の手法は確立されていない.本検討では安価に実施可能なうちあげ高の観測手法としてビデオカメラ映像からの画像解析に着目し,現地海岸における観測を実施するとともに,観測されたビデオカメラ映像に画像処理技術を適用し,波の飛沫を自動処理させる手法及びうちあげ高算出精度を向上させる手法について検討した.その結果,本検討で提案する波のうちあげ高算出手法では,波の飛沫は完全には除去できなかったものの,一定の精度は確保された上で,目視による読取りに比して波のうちあげ高の算出精度が向上したことが確認された.

  • 三戸部 佑太, 新道 健人, 鈴木 彰容, 田中 仁
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1273-I_1278
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     近年開発が進められてきているUAVによる波浪モニタリング手法の主な対象は波速や波向きであり,波高を含む波浪場観測手法は検討が進んでいない.2台のUAVによる動画像ペアからステレオ画像計測法により波浪水面形状を観測する手法の基礎的検討を行った.一般的な3次元形状計測技術を参考に画像解析手法の検討を行い,以下の結果が得られた.SURF特徴量を用いることで砕波により生じる複雑な水面変形や気泡群による画像輝度パターンを特徴点として検出・マッチングできた.前後複数フレームの特徴点マッチング結果を用いることで比較的安定してカメラの相対的位置関係を推定できた.一次元位相限定相関法に基づく領域ベースのマッチングにより,砕波により画像輝度パターンが明瞭に生じる領域では良好に3次元水面形状を取得することができた.

  • 鈴木 彰容, 三戸部 佑太, 田中 仁
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1279-I_1284
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     近年UAVを用いた波浪モニタリング手法の開発や適用が行われているが,いくつかの技術的課題を抱えている.本研究では撮影した動画像の自動幾何補正手法の検討,数値実験によるUAVの撮影位置と波の写り方の調査,反射波と入射波が干渉する波浪場に対する波浪場解析手法の検討を行った.画像相関法に基づき地上基準点を追跡することで時々刻々と変化するUAVの姿勢に対して自動で幾何補正を行うことができた.また,UAVで撮影される海面の輝度は大気の散乱光の反射光が支配的であり,フレネルの法則に基づき波浪により生じる撮影輝度分布が説明可能であることを示した.これに基づき入射波と反射波が重畳する領域においてはそのスペクトル振幅の空間分布に凹凸線が生じ,その発生範囲および方向から反射波の影響範囲および合成波の波向きを取得可能である.

  • 渡邊 国広, 加藤 史訓, 佐野 滝雄
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1285-I_1290
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     国内の代表的な18海岸を対象に衛星SAR画像からの海岸線自動抽出を試行し,海岸線モニタリングにおける適用性を検証した.同じ海岸であっても画像によって抽出の成功率と精度は大きく異なり,観測時のオフナディア角が40度を超えると抽出が難しいこと,前浜を構成する砂礫の中央粒径が大きいほど抽出の成功率と精度が高くなることが確認された.富士海岸においては,実際の汀線から20mの範囲で陸寄りに抽出される傾向にあること,植生帯の前縁や消波ブロックが誤抽出される場合があることなどが確認された.波長が短いXバンドのSAR画像からの抽出を5海岸で実施したが,抽出精度の向上は軽微であり,波長の違いは海岸線の抽出にあまり影響を与えないことが示唆された.これらの結果を踏まえて,SAR画像を海岸線モニタリングに活用する際の留意点を整理した.

  • Trong Hieu LUU, Tsuyoshi IKEYA, Akio OKAYASU, Daisuke INAZU
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1291-I_1296
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     The Airborne lidar bathymetry (ALB) has recently attracted attention because it can simultaneously survey land and water areas in a short time. However, it is known that the absence of measurement may occur when the turbidity is high. In this study, we developed a method to compensate the water depth from the output of an aerial photogrammetry camera and a near infrared laser scanner attached to the ALB system. A series of ortho-images obtained from a camera was extracted, a long wavelength component image was prepared by applying a 2D Fourier transform and a low-pass filter, and wavelength and wave celerity were obtained by a lag correlation method. Simultaneous wave profile data on elliptic circle were prepared by applying a spatio-temporal binning method for the output of a laser scanner, and the wave direction and wavelength were obtained. From the propagation characteristics of these waves, the water depth was estimated from the dispersion relationship. As a result of applying it to the data acquired in the Niigata coast, it was found out that in the shallow sea area, though the water depth could be analyzed with high accuracy, the measurement accuracy greatly lowered as the water depth deepened.

  • 川口 真吾, 鈴木 高二朗, 鶴田 修己
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1297-I_1302
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     高潮や津波による浸水の深さや面積のUAVによる測量の可能性を明らかにするため台風1721号により浸水被害を受けた場所で被害状況を調査するとともに,UAVによる写真測量を実施した.被災直後に撮影した浸水の痕跡とRTK-GNSS受信機を搭載したUAVにより求めた地盤高さを比較し,浸水深と浸水面積を推定した結果,浸水時の状況とほぼ一致した.また,地盤高さの測量誤差は舗装された浸水箇所で平均2.7cm,別途測量した砂浜では平均2.5cmだった.

  • 谷口 寛人, 鈴木 直弥, Gustavo GARCIA , 池田 篤俊
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1303-I_1308
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     大気・海洋間運動量の正確な計測・評価は,気候変動の予測などに必要な基礎技術の1つである.海面応力の計算には,洋上での高精度な風速計測が必要であるが,風速計の動揺が計測精度に与える影響は十分に評価されていない.本研究では,複数のIMUセンサを風速計に取り付けて高精度な動揺補正を行う手法を提案し,数値シミュレーションとロボットアームを用いた室内実験にて動揺補正効果の定量的な評価を行う.提案手法では,洋上での風速計の瞬間的な運動を任意球面上の運動であると仮定し,IMUセンサ特有の問題である計測誤差の蓄積の影響を減少させる.また,2つのIMUセンサを用いて計測値を統合することで計測誤差の影響を減少させる.無風状態の室内にて実験を行い,提案手法によって動揺の影響が風速計の公称精度以内に収まることを示す.

  • 尾方 浩平, 小田切 祐樹, 藤 良太郎, 日向 博文
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1309-I_1314
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     短波海洋レーダによる津波検知性能の季節変化について,和歌山県美浜局の2014年の受信波と南海トラフ地震津波ケース3の数値シミュレーション結果を使った仮想津波観測実験に基づいて調べた.その結果,陸棚上では低波浪(Hs ≤ 1m,及びHs ≤ 2m)の出現割合に依らずいずれの月も高確率で検知可能であること,陸棚縁〜陸棚斜面上での検知確率と有義波高1m以下の割合,及び陸棚縁と有義波高2m以下の割合には,高い正の相関が認められ,遠距離での検知には低波浪の状態が好ましいことが確認できた.一方,陸棚斜面上での検知確率と2m以下の有義波高との関係には高い相関が認められなかった.その要因として,電離層電子密度の季節変動によって外来ノイズの伝搬経路が変化することが考えられた.

  • 入江 政安, 日下部 包, 山西 悟史, 日向 博文
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1315-I_1320
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     南海・東南海地震が発生した場合の,直後の数日間の漂流物予測にHFレーダーで観測される津波流速を活用することを目的として,流速データの適切な同化方法の基礎的検討を行った.流動モデルには準3次元流動モデルのROMS(Regional Ocean Modeling System)を使用した.観測流速に含まれる風,潮汐,河川流入に起因する流れを分離し,津波成分のみを同化するために,離散ウェーブレット変換を用いて疑似観測データから高周波成分を抽出し,ナッジングによって同化計算を行った.高周波成分をそのまま同化する場合,成分の強度に応じて同化強度を変化させた場合,ソースとして追加する場合について比較した結果,高周波成分をソースとして追加した場合で,津波第一波の到達,津波収束後の良好な同化計算結果が得られた.

  • 大竹 拓郎, Anawat SUPPASRI , 今村 文彦
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1321-I_1326
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     全世界の港湾を結ぶ船舶海上輸送網は,人々の生活や産業の基盤となっている.そのため,既往研究で着目されてきた港湾単体の津波リスクだけでなく,船舶海上輸送網全体が保有する津波リスクや被災していない港湾が受ける影響を事前に把握し,対策しておくことが重要である.本研究では,はじめに,船舶海上輸送網をネットワークでモデル化を行った.次に,地球全域を対象とした津波の数値解析を実施し,全世界に点在する港湾を出力点として津波の最高水位を算出した.さらに,2011年東北津波における検潮記録と被害報告を基に,港湾の被災判定基準を決定した.以上の結果から,被災港湾が船舶海上輸送網全体へ与える影響と被災していない港湾が受ける影響の考察を行った.

  • 金戸 俊道, 木村 達人, 山下 恭平, 増子 雅洋
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1327-I_1332
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     データ同化手法に基づき,柏崎刈羽原子力発電所に設置した単一の海洋レーダによって観測された視線方向流速観測値を用いた津波即時予測について検討した.検討にあたって,津波発生時における視線方向流速観測値を模擬するため,発電所に設置した海洋レーダで観測された視線方向流速に,津波解析による視線方向流速を合成した仮想津波観測値を用いて,データ同化による津波予測の検討を行った.津波の数値解析としては非線形長波理論を用い,データ同化の手法としては最適内挿法を用いた.仮想津波観測値を用いたデータ同化津波予測結果と発電所における津波数値解析結果を比較した結果,精度よく津波予測できることが示され,実務における単一の海洋レーダによる津波予測の適用性を確認した.

  • 山田 哲太郎, 石川 博章, 小柳 智之, 有岡 俊彦, 亀田 洋志
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1333-I_1338
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     海洋レーダでは空間的な海表面の流速を計測することができるが,風等の影響によりドップラースペクトルが広がるため観測流速の計測精度が劣化する.このため海洋レーダを用いた津波検出において誤警報が発生するという課題がある.そこで,誤警報の低減を目的として,津波の空間的な特性を利用した津波波面検出方式を提案する.提案方式は,津波の波面を覆域内で複数仮定し,波面上の流速を積分して最大の積分流速を持つ波面を津波波面として検出する.提案方式では海洋レーダの特徴を利用して流速観測値の空間方向の平均化効果により流速の観測誤差を低減し,誤警報を低減させることができる.シミュレーション評価の結果,南海トラフの津波シミュレーションに対して,従来方式と比較して検出確率を維持しつつ誤警報を低減しつつ津波を検出できることを確認した.

  • 松本 浩幸, 木村 俊則, 荒木 英一郎, 西田 周平, 町田 祐弥
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1339-I_1344
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     本研究では,重錘形圧力天びんによる室内実験で得られた知見から,海底現場の水圧式津波計に残された振動特性とドリフト特性に関する技術検討課題について考察した.室内実験では,地震時に重錘形圧力天びんの10kgの重錘が振動して海底での圧力変動を再現した.このとき水圧式津波計は機械的振動を記録しなかったことから,水圧式津波計が記録する大振幅の水圧変動は,水塊に作用する地動の加速度に相関する海底現場の圧力変動であることが分かった.重錘形圧力天びんで水深2000mに相当する圧力を生成し,水圧式津波計に連続印加したところ,水圧式津波計に重畳されるドリフト現象を再現した.連続印加の前後で校正曲線全体が変化したことから,海底設置前の連続印加が海底設置後のドリフトを低減できる有効な手段であることを示唆する.

  • 森田 格, 小園 裕司, 櫻庭 雅明
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1345-I_1350
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     我が国では,地球温暖化によって甚大な高潮被害が発生することが懸念されていることに加え,地震による地盤沈降や建物倒壊が高潮被害を更に拡大することも予想される.本研究では,地震による建物倒壊の影響を考慮した高潮浸水予測を行い,最大クラスの地震後に最大規模の台風が大阪市を直撃した場合のマルチハザードのリスク評価を行った.広域地盤の沈降と水門機能を停止させたうえで,建物の耐震化の違いによって高潮被害が増減し,大阪市のマルチハザードの被害額は,規模は大きくなるが,発生確率が低くなるため年間期待被害額は減少するという結果を得た.

  • 宇野 喜之, 岡安 章夫
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1351-I_1356
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     津波による人的被害推定は,リスク評価や対策の選定を行う際に重要であるが,津波浸水や避難行動に係る変数が多くあり容易ではない.本研究では,群衆避難モデルを用いて,津波人的被害に影響を与える,波源や潮位,発生時刻の偶発的要素と,海岸防護施設や避難路などの人のコントロール可能な要素を複数変化させたケーススタディ地域の津波被害推定を行い,各変数の影響度や変数間の干渉について分析した.

     津波人的被害における潮位の影響は津波規模の変化に比べて有意であること,夜間発生時は日中の1.5倍程度までになり,津波発生時刻の影響は津波規模や海岸防護整備と同程度になる可能性があることが分かった.また,3階建て以上の建物への避難や避難路整備による効果が期待できることが分かった.

  • 坂田 祐介, 山本 雅人, 有川 太郎
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1357-I_1362
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     避難施設まで円滑な避難を行うために,避難開始前に得られる津波浸水情報とGIS情報に着目した.そこで本研究では,津波到達時間や道路閉塞の事前情報が避難行動へ及ぼす影響について検証を行う.また,使用度の高い経路や,初期位置における死亡率から,津波に対する脆弱性を評価する.津波浸水情報とGIS情報を事前予測情報として避難者に与えることで,津波による死亡や,道路閉塞による再経路探索を行うことなく,避難することを可能とした.この手法を用いて、高知県中土佐町を対象にシミュレーションを行い,津波到達時間直後に避難を開始する避難者の死亡率が低下したことを確認した.また本手法により,避難経路の使用度に違いが見られ,道路閉塞が多い箇所において,死亡率が高く津波脆弱性のある地区が確認できた.

  • 芹川 智紀, Anawat SUPPASRI , 門廻 充侍, 今村 文彦
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1363-I_1368
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     今後の巨大津波災害において人的被害を軽減するためには,過去の巨大津波災害におけるハザードマップの活用評価が不可欠である.特に,想定を上回る災害に対する有効性と限界性の検討が必要である.本研究では,東日本大震災時の宮城県のハザードマップの整備および利用状況を整理し,想定浸水域外におけるハザードマップの認知と避難行動を検討した.津波への時間的意識変化を用いて避難状況を整理した結果,ハザードマップの認知は避難行動と有意な関連はなく,津波リスク認知と関連することが定量的に示された.また,気仙沼では「災害イメージの固定化」が発生し,石巻では津波への意識と避難行動が結びつかないという課題が明らかになった.本分析より,外力条件の不確かさを考慮したマルチシナリオ型ハザードマップが有効であると考えられた.

  • 安田 誠宏, 吉田 京香, 河野 達仁
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1369-I_1374
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     津波防護施設には,住民の避難時間を稼ぐという減災効果が期待される.東北地方太平洋沖地震後,防潮堤への信頼や安心感という防潮堤に対する住民の認識が,津波からの避難意思決定に影響を与えた可能性についての指摘があった.現在,今後30年以内に高い確率で南海トラフ地震が発生すると公表されており,甚大な被害が想定されている.本研究では,防潮堤整備が進む地域における住民を対象とし,津波防災意識と防潮堤に関するアンケート調査を実施した.防災知識,避難意識,津波防護施設への認識等の集計結果を用い,共分散構造分析により津波防護施設に対する認識を考慮した住民の避難意思決定プロセスを分析した.その結果,津波のリスク認知が下がると,津波防護施設への信頼度や防潮堤が整備されることへの安心感は増大するものの,その認識が避難意思決定へ直接与える影響度は小さいことがわかった.

  • 北村 福太郎, 稲津 大祐, 池谷 毅, 岡安 章夫
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1375-I_1380
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     著者は前報で避難中に津波に遭遇しない条件で移動開始までの時間的猶予が最大となる経路選択により被災者を最小化できることを示した.しかしこれは選択経路が地震で閉塞されないことが前提であるが,地域の道路すべての地震対策には時間を要する.本研究では経路閉塞の影響を定量的に評価し,影響が大きい個所を優先的に対策する効果を示す.検討の結果,斜面沿いの道路や電柱やブロック塀があることから地震による閉塞が危惧される道路で閉塞の影響が大きい個所があることが分かった.この閉塞の影響が大きい道路を優先的に対策することによる被災者減少効果は対策開始後すぐに発現することが分かった.発生日時が予測できない津波に対して閉塞の影響が大きい個所から地震対策することで,経路閉塞に起因する被災者を最小化できる.

  • 大石 裕介, 古村 孝志, 今村 文彦, 三原 宜輝, 牧野嶋 文泰, 山下 啓, 東山 孝生, 後藤 知範, 大村 誠, 永山 実幸
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1381-I_1386
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     安全な津波避難に向けて,スマートフォンアプリによるリアルタイム災害情報提供の有効性を評価する実証実験を行った.実験では,地震被害による通行不可地点を設定し,参加者はそれらの地点情報をアプリで他の参加者と共有しながら避難を行った.アプリによる情報有りと無しの班に分けて避難行動を比較した結果,情報有りの場合に効率的な避難経路を選択する傾向が確認できた.一方で,共有された情報精度の低さにより,アプリ操作と避難路検討のための立止まりが長引き,避難時間は必ずしも改善しなかった.今後のリアルタイム情報活用に向けては,情報の不確実性を考慮し信頼度に応じた情報表示を行うなど情報提供手段の工夫が必要である.

  • 川崎 順二, 原田 英治, 広瀬 将真, 後藤 仁志, 水口 尚司
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1387-I_1392
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     津波や高潮による浸水被害軽減のための避難計画の検討には,数値シミュレーションが有効である.浸水域避難では,避難者に作用する流体力を適切に評価するため,二足歩行のモデル化と自由水面を扱う流体計算が不可欠であるが,著者らが水中歩行実験に基づいて開発した二足歩行モデルによる水中避難過程の数値シミュレーションでは,二足歩行がもたらす自由水面の変動を考慮しておらず課題を残していた.

     本研究では,自由水面変動を考慮した流体計算と二足歩行モデルによって表現した水中避難者の相互作用を考慮した数値シミュレーションを実施する.さらに,流体計算から得られる流況指標に基づいて避難方向を選択する新しい歩行者モデルを提案し,モデル導入が避難行動に与える影響を検討する.

  • 新家 杏奈, 佐藤 翔輔, 今村 文彦
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1393-I_1398
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     本研究では,東日本大震災発災時における津波情報の受信状況と津波避難行動の関係について質問紙調査結果を用いて分析・考察した.分析の結果,次の4つの結果・結論が得られた.1)警察・消防より津波情報を得た回答者の避難開始時間は,情報を得なかった回答者より遅くなった.2)津波の推定襲来時間を情報の内容とした群の平均避難開始時間は早くなり,津波報道における推定襲来時間に関する情報発信の重要性が示された.3)情報源が広報車やラジオのみであった場合,早期に避難を開始した回答者が多かった.4)発表のタイミングが比較的早期の津波情報を受容していた群では避難開始時間が早くなり,発表が比較的遅い情報を受容していた群では避難開始時間が遅くなる傾向が見られた.

  • 馬場 亮太, 佐藤 翔輔, 今村 文彦
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1399-I_1404
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     本稿では,東日本大震災で被災した宮城県の沿岸観光地である名取市のゆりあげ港朝市メイプル館と七ヶ浜町の菖蒲田海水浴場における来訪者を対象として質問紙調査を実施することで,津波被災後の沿岸観光地を来訪した人の津波に対する意識や備えの実態を定量的に明らかにした.その結果,以下の主要な結果が得られた.1)以上の来訪者は,津波リスク認知の程度はある程度高く,地震・津波災害について興味や関心を強く持っているものの,積極的な知識の獲得や具体的な対策をとるには至っていない.2)被災から10年未満と間もない沿岸部にも関わらず,来訪者は津波に対する備えを行っていない人が約6割と大半であり,指定津波避難場所を約8割の人が認知していなかった.3)閖上地区の来訪者は,津波発生を想定した避難場所について漠然と考えており,具体的なプランを持っていない傾向にあった.

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