土木学会論文集B2(海岸工学)
Online ISSN : 1883-8944
Print ISSN : 1884-2399
ISSN-L : 1883-8944
75 巻, 2 号
選択された号の論文の234件中151~200を表示しています
論文
  • 池内 正俊, 細山田 得三, 鈴木 高二朗, 鶴田 修己
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_901-I_906
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     津波越流による防波堤裏マウンド洗堀を防ぐ被覆工の施工の重要性が認識されつつある中で,通常の高波越波により被覆工が被災する事例が確認されている.津波襲来以前の平時にも構造物の機能が損なわれることになり,津波襲来時に防波堤が本来有すべき性能を満たしていない可能性がある.そのため,通常の高波浪時にも安定性が失われない防波堤の構造を検討しなければならない.本研究ではケーソンの後端部を延長する構造物を提案する.この機構により落水先を岸側に延長し,被覆工被害軽減を図る構造を提案した.検証を行うため,津波越流水理模型実験により被災の有無を確認し提案構造物の有用性,および被覆工の被災条件を明らかにした.また,併せて高精度粒子法を用いてその妥当性と流況の確認を行った.

  • 太田 隆夫, 高砂 伸平, 金 洙列
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_907-I_912
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     本研究では,消波ブロック被覆堤の消波工を対象に,断面変形量に対応したモデル断面を用い,うねり性波浪の条件を含む波を作用させて防波堤前面における波圧を計測する実験を行い,断面変形とうねり性波浪が作用波圧・波力に及ぼす影響を評価した.さらに,実験結果を用いて,ニューラルネットワークに基づく水平波力の予測モデルを構築し,その適用性を検討した.消波工の断面変形が大きくなると,作用する波圧・波力が大きく増加し,また,うねり性波浪程度に周期が長くなると,設計波周期の場合よりも小さな入射(沖波)波高で同程度の水平波力を生じる可能性のあることが示された.構築したモデルによる水平波力の予測結果は,実験結果に対して±30%の誤差範囲にほぼ収まっており,ニューラルネットワークによる予測モデルの適用性が確認された.

  • 司宮 智洋, 辰巳 晃, 飯島 一博, 東 良慶, 菅野 高弘, 伊藤 忠男
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_913-I_918
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     常時には海底に倒伏し,津波の来襲時に電気的動力や人的操作なしに津波の流体力により起立する流起式可動防波堤が提案された.耐津波用防波堤には,いわゆる「粘り強さ」が求められる.すなわち,津波により防波堤の一部に破損を生じたとしても,津波減勢効果を発揮することが求められる.粘り強さの評価のためには,設計津波を超過する過大な荷重が働いた場合の崩壊挙動を知る必要がある.本研究では,非線形有限要素法を用いて流起式可動防波堤の扉体の崩壊挙動を解析し,局部構造の最終強度と全体構造の最終強度を調べた.また,崩壊挙動解析から得た知見をもとに,扉体全体の最終強度を簡易的に推定する手法を提案した.提案法は初期降伏判定に基づいた最終強度推定式であり,非線形有限要素法よりも安全側に最終強度を推定した.

  • 杉 栄一郎, 吉村 藤謙, 栫 浩太, 榎本 葵, 森川 高徳, 池尾 進
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_919-I_924
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     本研究は,防波堤が施工途中の段階で堤幹部の一部に低天端消波工が存在するケーソンに60度強の急角度入射波が来襲した場合の波力特性を平面水理模型実験により検討したものである.その主要な結論は以下のとおりである.(1) 低天端消波工による衝撃砕波圧は発生しない.一方で,1)消波工の無い上手区間からの沿い波の発達による波高増大,2)低天端消波工際でのブロックとケーソン壁間の空隙での波の集中,により直立部のほとんどの部位で合田値を超える波圧が発生する.(2) 波の作用時刻は上手から下手に向けて遅れるためケーソン全体に作用するピーク波力が抑制される.(3) ケーソン前面波と背面に回り込む回折波が同様な位相となるため押し波時にピーク水平波力が抑制される.(4) 押し波時に越波による下向き波力が上部工に作用するためピーク鉛直波力が抑制される.

  • 酒井 大樹, 金澤 剛, 辻本 剛三
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_925-I_930
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     高波浪が捨石護岸の施工途中に来襲することで起こる捨石堤の被災が問題となっている.しかし,波浪条件に対して施工途中の捨石堤の被災過程に関する知見は少ない.そこで本研究では施工途中に着目し,水理模型実験で高波浪条件下における捨石堤の被災過程について検討した.

     全実験ケースにおいて,現地スケールで1時間から3時間後頃までは,急速な天端の低下が見られた.被災断面形状は,沖側の変化は小さく,岸側法尻は時間とともに発達した.天端高は,入射波高が高く,天端幅が狭いケースで初期天端高の約4割まで低下した.被害率は,入射波高に強く依存し,入射波高が大きいケースでは被害率40%前後,小さいケースでは20~30%程度であった.また,天端幅の広いケースでは,被災速度が遅くなることが分かり,捨石堤の被災対策を検討するうえで重要であることが分かった.

  • 冨永 剛史, 岡林 福好, 岡﨑 聡, 久保 宜之, 中道 誠, 岩佐 隆広, 伊藤 禎和
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_931-I_936
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     高知海岸南国工区では,人工リーフが有する漂砂制御機能を増強させるため,既設人工リーフの天端上に消波ブロックを設置して離岸堤化する極めて例が少ない構造への改良を計画している.そのため,本研究では,施設設計に当たり必要となる消波ブロックの重量や位置などの基本的な断面形状について決定することを目的として,施設の安定性を評価するための水理模型実験を実施した.これより,既設人工リーフを消波ブロックにより離岸堤に改良する場合の高知海岸南国工区の地形及び計画波浪の条件下における波の挙動と被災メカニズムを明らかにした.また,消波ブロックの配置について,岸側配置が最も経済的に施設の安定性を確保できることがわかった.以上の結果を踏まえ,既設人工リーフの岸側法面の補強を含め,当該施設の基本的な断面形状を決定した.

  • 工代 健太, 佐々 真志, 梁 順普, 後藤 翔矢
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_937-I_942
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     港湾施設における吸い出し抑止対策に資することを目的に,様々な水理外力下における地盤内の空洞形成・陥没の進行過程について大型水理模型実験により検討した.水理外力の繰り返し作用により,地盤内で空洞が徐々に拡大し,陥没に至る吸い出しの一連の進行過程に水理外力の作用方向が大きく影響することが明らかになった.さらに,空洞の陥没のタイミングには地盤内への水の浸透によるサクションの低下が関係していることが分かった.また,フィルター材を用いた吸い出し抑止法の高度化を図るため,フィルター材の吸い出し抑止機能について系統的に検討した.その結果,均等係数3.0以上のフィルター材を中央粒径比20以下で設置した場合,強い水理外力下においても十分な吸い出し抑止効果を発揮することが実証された.

  • 渡辺 友哉, 中條 壮大, 重松 孝昌
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_943-I_948
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     多孔質体で構成される構造物通過流れの流動や構造物の安定性を定量的に評価するために,これまでにさまざまなモデルが提案されている.またモデルの検証を目的として,詳細な間隙部流動の計測や数値解析も行われている.しかし,その検討の多くでは多孔質体が球群で構成されており,構成部材の非等方性のもたらす影響についてはあまり知られていない.本研究では楕円体を面心立方状に配置した多孔質体通過流れの微細流動計算を行い,楕円体のアスペクト比が多孔質体通過流れに及ぼす影響について,圧力降下量などの巨視的作用,構成部材に作用する流体力などの微視的作用の両面から調べた.

  • 松田 達也, 三浦 均也
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_949-I_954
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     本研究は構造物周りの洗堀対策として砂質地盤表層を砕石等により置換する工法を対象に,波浪による液状化対策としての効果を検討するため,砂質地盤の水圧応答に関する基礎的実験を行い,そのメカニズムを明らかにすることを目的とした.重力場での造波水路実験の結果,砂層の上部に透水性の高い砕石を敷設することによる,波浪作用時の砂層地盤内の過剰間隙水圧の発生を抑制する効果はみられず,過剰な波浪外力が作用した際には砂地盤で液状化を生じされる危険性があることが示唆された.よって,砕石置換による対策効果としては,初期有効応力が増加することで液状化抵抗が増し,地盤の不安定化を抑制する原理であると考える.

  • 松田 達也, 三浦 均也, 髙柳 林太郎, 穴井 啓太
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_955-I_960
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     本研究は重力場の造波水路実験により,支持地盤条件が異なる単純な矩形ブロックの波浪応答を把握することを目的とした.本実験は波によりブロックが滑動しない条件であったが,透水移動床上のブロックでは沖向き方向の水平加速度が生じた.簡易漸増載荷実験から沖向き水平力と沖側への回転モーメントが作用する際に得られる加速度応答であることがわかった.ブロック隅角部で洗掘が発生したが,洗掘規模が小さく,影響が少ないことを確認した.移動現象を詳細に考察すると,波の進行方向とは逆向きの水平波圧が最大となる位相角で上向きの揚圧力が発生し,さらに,同位相角時において地盤内の過剰間隙水圧が増加するため,地盤の有効応力が低下していることがわかった.このことから,ブロックが沖向きに移動しやすい可能性があることが示唆された.

  • 小林 豪毅, 小山 英夫, 阿部 翔太, 高木 利光
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_961-I_966
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     ふた山型人工リーフの水理特性について,現地観測データを基に検討を行った.人工リーフの基本性能である波浪低減効果を評価したところ,換算沖波波高4m以上の波に対して波高伝達率0.5未満であった.水位上昇量は通常の人工リーフの断面実験結果の1/4~1/3であり,ふた山型人工リーフが防護上必要な機能を有していることが確認された.人工リーフ背後の流況は入射波高によって変化し,高波浪時は砕波に伴うサーフェスローラーの補償流として沖向きの流れが発生する.また,ADCPの反射強度から高波浪時には海底の土砂が巻き上げられていると推定される.これらの結果から,人工リーフの整備途中で生じた人工リーフ背後での洗掘は,高波浪時に巻き上げられた土砂が沖向きの流れで未施工区間から流出したことが原因と考えられる.

  • 宮本 順司, 佐々 真志, 鶴ヶ崎 和博, 角田 紘子
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_967-I_972
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     本研究では,砂地盤―パイプ系の遠心力場の波浪実験により,地盤液状化とパイプの沈込み挙動との関わりを詳しく調べている.実験は遠心力場70g場で行った.地盤の飽和密度に対するパイプ密度の比をパイプ比重と定義し,パイプ比重の異なる6種類のパイプを用いて4ケースの実験を行った.実験の結果,パイプはその比重によらず液状化の発生直後に動き始めること,パイプ比重が1より小さい軽いパイプは液状化に伴い浮上し,1より大きい重いパイプは沈むこと,比重の大きいものほど沈込み深度が大きくなることが得られた.特に,パイプ密度が地盤の飽和密度に近い場合は僅かなパイプ密度の違いでもパイプ挙動が大きく異なることを示した.さらに,パイプの沈込み開始と沈込みの停止,水平搖動の完全停止等のパイプ挙動が,液状化の発生,拡大,液状化土の凝固等の液状化過程と密接に関わることを詳細に捉えた.

  • 蛯子 翼, 宮武 誠, 猿渡亜由未 !
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_973-I_978
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     津軽海峡におけるつば付き漸拡型ディフューザによる小規模潮海流発電の実現可能性を探るにあたり,現地の流況に特化したディフューザ形状の最適化を図るため,ディフューザのつば長さh,開き角θ及びディフューザ長さLに着目し,それぞれの値を変化させたつば付き漸拡型ディフューザの増速メカニズムを,定常循環流条件下での 2次元断面模型実験及び3次元形状に拡張した数値シミュレーションを実施することで検証した.結果,実験ではh, Lに関してはつば背後の渦輪生成による負圧領域の牽引が増速メカニズムの要因となるのに対し,θはディフューザ外縁方向に働く揚力が重要な役割を果たす傾向があることがわかった.一方,解析において増速域の発達を阻害する要因は,h, θの寸法を大きくした場合に生じる背後の渦スケール及び乱れの増大であること,Lの寸法を大きくした場合では背後域の圧力低減効果の低下であることがわかった.

  • 高浦 育, 内山 雄介, Nizamani ZAFARULLAH , 中山 昭彦
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_979-I_984
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     HYCOM-ROMS海洋モデルと気象庁GPV-GSMによる海象気象再解析値を用いて,南シナ海沿岸に偏在する海洋構造物に作用する外力の予測可能性に着目した研究を行なった.極値統計を用いて構造物に作用する数十年確率表面流速・風応力を求めた結果,風応力はマレー半島東沖,表面流速はボルネオ島北沖で大きくなる傾向があった.マレー半島東沖の風応力は冬季モンスーンの影響を,ボルネオ島北沖の流れはボルネオ海峡を介したスールー海への流入の影響を受けて形成されていた.通過流量収支解析の結果,ボルネオ沖流動は黒潮流量変動と連動したルソン海峡からの流入,ミンダナオ海流変動と連動したセレベス海峡からの流入の影響を間接的に,しかし強く受けていることが示された.

  • 嶋田 陽一, 大和田 真紀, 高木 省吾
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_985-I_989
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     天皇海山列の東方に漂流ブイを放流し,風圧流の影響を受けやすい漂流ブイの移動を観測することによって東日本大震災の津波で流出した漁船等の漂流事例の一部を明らかにする.放流された漂流ブイは蛇行しながら東方へ移動し,放流後155日以降カナダ西海岸のバンクーバー島沖合において概ね周回した.漂流ブイは放流後175日にバンクーバー島に最も近くに位置し,漁船等の漂流事例を概ね支持する.過去に観測した岩手県沖合から天皇海山列までの漂流ブイの移動時間等を参考にすると,岩手県沖合からカナダ西海岸までの漂流ブイの移動時間は概ね1年程度であり,漁船等の漂流事例を概ね支持する.漂流ブイ移動速度は海上風速度と高い相関があり,天皇海山列以東の漂流ブイの移動は海上風速度から推定できる可能性を示す.

  • 南浦 修也, 山口 創一
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_991-I_996
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     秋冬季の有明海奥部ではノリの養殖が活発に行われ,赤潮に起因する色落ち被害が問題となっており,特に奥西部海域で深刻である.本研究では,現地観測データと数値シミュレーションによりノリ色落ち原因藻Skeletonema spp., Eucampia zodiacus, Asteroplanus karianusの増殖と物理環境特性について検討を行った.赤潮指数RI(細胞密度×経過日数)は奥西部を中心に高い傾向を示した.養殖施設を考慮した数値シミュレーションにより求めた滞留時間の空間分布と比較すると,RIと滞留時間は強い相関関係にあり,海水交換の強弱がRIの空間分布に大きく寄与していることが分かった.海水交換の強弱は残差流の強弱と関係しており,空間的な淡水流入量の違いが密度流の強弱を決定していた.海苔養殖は滞留傾向を強める方向に働いており,RI値を増加させていた.

  • 岡田 輝久, 今村 正裕
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_997-I_1002
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     東京湾湾奥部における中層高濁度水塊および青潮を対象に,湧昇イベント時を含む再現計算を実施した.海底堆積物内および無酸素水塊中における有機物の嫌気的分解,硫化物・単体硫黄の酸化反応をモデル化し,中層における高濁度水塊の出現・消滅のタイミングを計算結果の単体硫黄がよく再現し,単体硫黄の生成が中層濁度の上昇要因であることを支持する結果を得た.既往研究で示される湧昇域の移動と上層水の水平移動から,内部ケルビン波が無酸素―酸素の境界面での混合を促進させ,急激な濁度上昇を伴う可能性が示された.また千葉航路における青潮の中層流出現象の影響範囲は限定的で,中層高濁度のほとんどが無酸素水塊上部での混合により生成されていることが示唆された.さらに夏季の東京湾湾奥部では面積比50%以上が貧酸素状態に陥ることが試算された.

  • Muhammad Ali HAFEEZ, Yoshiyuki NAKAMURA, Tetsunori INOUE, Shinya HOSOK ...
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1003-I_1008
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     The age of bottom water which indicates the period in which oceanic water stays at the bottom of the inner bay basin after intrusion from the bay mouth was calculated to verify whether the age is a good index for the development of bottom water hypoxia. The spatially distributed water quality data was utilized in this study for three consecutive year in 2012, 2013 and 2014. The data was observed monthly on sixteen monitoring stations by Suzuka fisheries laboratory of Mie prefectural government. To calculate the age of bottom water, a temperature-based age index model was used, the model based on the assumption that bottom water in the Ise Bay originates from the bay mouth (Lower strait water) in the predominate stratified period, i.e., summer season and age of the bottom water is the elapsed time from the beginning of intrusion from the bay mouth. From the analysis of age index model, it was found that the age of bottom water was higher in the center of the bay and water can be of 60 days old whereas near the bay mouth it was much younger and its age varied from 0 to 10 days. In September 2014, the entire basin accounted for younger water mass with a maximum age of 10 days at the center as compared to other years. Overall bottom water age in Ise Bay has also been calculated by taking an average of all stations, and it was found that the maximum average age occurred in June 2013 while the minimum one occurred in September 2014. The bottom water oxygen concentration indicated a high average correlation coefficient (R2 >0·70) with bottom water age in June, July, and August, whereas low average correlation coefficient (R2 <0·30) in September.

  • 遠藤 雅実, 佐々木 淳, 管原 庄吾
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1009-I_1014
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     東京湾三番瀬における青潮水塊の動態を明らかにするため,船上観測と海水面のインターバル撮影を実施し,幕張沖から茜浜沖,船橋航路および市川航路,三番瀬内の浅場漁場,また,浦安沖に現れる青潮の発生状況を捉えた.青潮は幕張沖から船橋航路で先行して生じ,市川航路や浦安沖では遅れて生じる傾向にあった.その後は北偏風の継続により,浅場漁場内へと分布が拡大していく様子や,解消へ向かうまでの時々刻々の変化を明らかにした.船橋航路と市川航路における青潮発生状況に関する時間差は,各々の寄与は明らかでないが,船橋航路底層における硫化物を含む無酸素水塊が,沖合平場底層水塊の湧昇時に先行して湧昇したためと示唆された.また,三番瀬で想定される水質によるホンビノスガイへの影響を検討し,硫化水素環境下では貝殻に変色が生じ,35℃の高水温では2日以内で死に至ることが分かった.

  • 大谷 壮介, 上月 康則, 松重 摩耶, 山中 亮一
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1015-I_1020
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     本研究では兵庫県西宮市に位置する大阪湾湾奥の御前浜において渦相関法を用いたCO2フラックスの時間変動およびCO2フラックスと水質の関連性を明らかにすることを目的に調査を行った.観測期間中のCO2フラックスは-0.90~0.67mgCO2/m2/sで変動しており,すべての小潮で吸収,大潮の3回の内,2回は放出を示した.また,小潮における昼間のCO2フラックスは夜間の約2.8倍の吸収を示した.CO2フラックスと表層の水質の関係性について,相関係数が0.5以上のCO2フラックスと関係性の強い変数はなかった.大阪湾湾奥におけるCO2フラックスは小潮で吸収傾向,大潮で放出傾向であり,貧酸素・無酸素状態,成層の緩和や硫化水素の発生といったイベントとの関連性は認められず,CO2フラックスは時間変動していることが考えられた.

  • 永尾 謙太郎, 中村 由行, 鶴島 大樹, 小山 悠人
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1021-I_1026
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     海域の生物生産性を向上させる施策として着目されている下水処理場における栄養塩の管理運転について,漁獲量の減少が著しい伊勢湾を対象として,その有効性や留意点について数値シミュレーションモデルを用いて検証した.

     予測結果として,下水処理場における栄養塩の管理運転により湾内の一次生産・二次生産・二枚貝類資源を増加させることができると試算された.しかしながら伊勢湾では栄養塩の放流先が湾奥や港湾区域内に集中しているため,窒素・リン濃度が低い海域に栄養塩を必ずしも効率的に供給できるわけではないことが明らかとなった.このような状況下において,栄養塩の管理運転に伴う貧酸素水塊の拡大や湾内の栄養塩の偏在化を避けつつ生物生産性の回復を図るためには,放流先の海域において浅場・干潟・藻場等の生息場の維持・保全・再生を併せて検討し,生物の食物連鎖を通じた有機物の無機化機能の強化を図る必要があると考えられた.

  • Kyeongmin KIM , 西村 海知, 吉村 一輝, 日比野 忠史
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1027-I_1032
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     沿岸域に堆積する有機泥から電力を回収し底泥を浄化(還元化抑制)する手法に,堆積泥を燃料とした微生物燃料電池(Sediment microbial fuel cell: SMFC)がある.これまでの研究により,SMFC性能はアノード層から回収した電子をカソード電極で消費する効率(性能)に強く依存することが明らかになっている.本研究では,十分なカソード電極性能を持つSMFCにおいて獲得電流と電子回収に伴うアノード層電位の上昇量を現地スケールで評価するとともに,現地で使用されたカソード電極の性能変化を室内試験により明らかにして,バイオカソード開発の可能性について検討した.これらの結果,性能の高いアノード電極では電子のカソード層への拡散を抑え,効率よく電子回収が可能になること,現地ではカソード電極への藻類等の付着物質が電極劣化を低減することがわかった.

  • 岡部 麻菜香, 野原 秀彰, 中下 慎也, 日比野 忠史
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1033-I_1038
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     ミネラルが不足する沿岸域では堆積泥が酸性化,還元化し,生物の生息を阻害すると言われている.燃焼灰から溶出するミネラルは生物の活性に極めて重要な働きを持っており,酸性化,還元化した土壌に石炭灰造粒物を散布して底生生物の再生を確認できた.SiO2,Al2O3,CaO,Fe2O3等の酸化物で構成される石炭灰とK+,Mg2+を溶出する竹灰は沿岸生態系の再生を促進することが期待される.石炭灰に竹灰を混合して造粒(水和固化)した竹灰混合した石炭灰造粒物の溶出特性を水和固化体の溶出試験,燃焼試験等により実験的に評価し,還元化土壌の浄化に向けた環境再生材の開発に関する基礎的事項を明らかにした.

  • 西田 修三, 中谷 祐介, 広瀬 太芽
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1039-I_1044
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     港湾など高い閉鎖性を有する都市沿岸海域の水環境再生には,流入負荷の削減だけでなく,浚渫・覆砂などの底質改善や人為的な流動制御による水交換の促進が必要と考えられる.本研究では,高閉鎖性海域である堺旧港を対象に,水質・底質特性の把握と外部擾乱による水質変動の解析を行った.

     港内では夏季には密度成層が形成され,表層で過飽和,底層で貧酸素化が生じていた.表層ではCSOの影響により高濃度の有機態窒素・リンが,底層では底泥からの溶出の影響による高濃度の無機態栄養塩が検出された.台風21号来襲時には港内容量に相当する港外水の流入が生じ,暴風と高潮に襲われたにも拘わらず,港内水質の完全混合には至らなかった.この港域の水環境は底質に強く依存しており,水質改善には浚渫や覆砂などの底質改善が最も効果的であると考えられた.

  • 作野 裕司
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1045-I_1050
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,2018年7月初旬に発生した西日本豪雨における広島県沖の瀬戸内海における光環境への影響を調べることである.具体的には,災害前後における実測の透明度データ,鉛直濁度データ,衛星データを使って,瀬戸内海の透明度分布特性やその回復状況の把握が試みられた.その結果,以下のような主要な結果が得られた.まず,実測データから,広島県沖では,全体として平年値の68%の透明度の低下があった.また,災害後の約1か月間(2018年8月)で透明度は平年値に回復した.さらにLandsat-8の反射率プロダクトの「バンド3とバンド4の比率」(オフセット補正済み)と透明度には,有意な高い相関(R2=0.90,p<0.01)が得られた.またLandsat-8データから導かれた広島県沖の透明度分布から,災害直後には黒瀬川と芦田川の河口において数kmにおよぶ大規模な透明度低下が生じていたことがわかった.

  • 阿保 勝之, 鬼塚 剛
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1051-I_1056
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     西日本を中心に甚大な被害が発生した平成30年7月豪雨に伴う淡水流入が広島湾の流動特性に及ぼした影響を係留観測および数値計算により明らかにした.観測結果と既往知見により数値計算の再現性を検討した結果,潮汐流と残差流を概ね再現できていた.また,豪雨時における表層塩分分布の計算値は衛星画像の海色分布とよく一致していた.計算結果によると,豪雨に伴い広島湾に流入した大量の淡水によって湾の北部・西部海域を中心に低塩分化し,その影響は10日以上続いた.豪雨直後には表層で北部から西側沿岸寄りに強い南下流だったが,塩分躍層以深では湾北部で北東方向の流れが生じていたことから,湾北部に流入した淡水は表層のみから流出したと考えられる.また,豪雨に伴う海水流動や海洋環境の変化がカキ採苗に及ぼした影響についても考察した.

  • 比嘉 紘士, 中村 航, 管原 庄吾, 中村 由行, 鈴木 崇之
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1057-I_1062
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     本研究では静止海色衛星GOCIのデータを利用し,青潮の空間分布を硫黄濃度として推定する手法を開発した.硫黄濃度推定モデルを開発するため,東京湾における現地観測及び室内実験を実施し,青潮発生時のRrs及び硫黄の光吸収係数,後方散乱係数を測定した.これらの硫黄の光学特性に基づき,硫黄濃度を変数として組み込んだBio-opticalモデルを構築し,硫黄濃度の変化に対するRrsを計算することが可能になった.青潮時のRrsの計算結果を用いて,QAA_v6を改良し,硫黄濃度推定モデルを開発した.衛星データと現地観測による硫黄濃度の推定値と実測値を比較した結果,観測時間と衛星データ取得時間の差が小さい場合,高い精度で推定可能であることが確認できた.さらに,本手法により硫黄濃度の空間分布が風況の変化に伴って1時間おきに変化する過程を捉えることができた.

  • Narong TOUCH , 吉村 一輝, 西村 海知, 日比野 忠史
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1063-I_1068
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     電気化学手法(電子制御)による堆積泥の処理は,有機物の消化過程に準じた浄化法である.本論文では,電気化学手法による堆積泥内の硫化水素と栄養塩類の除去機構,および性能に及ぼす要因についてレビューした.さらに,これまで著者らが開発してきた太陽電池を併用した電気化学手法による硫化水素と栄養塩類の除去効果について現地実験結果を示した.1.5Vの太陽電池を通電システムに組み入れることで堆積泥の電極電位を1.5Vを超える振幅まで変動させることができた.さらに,電極での日周期変動は酸化反応を活発化し,硫化水素と栄養塩類の除去効果を劇的に向上させることを確認した.現地実験により,沿岸域に過剰堆積した汚泥の処理技術として本システムは,堆積泥の処理効果が安定して高く得られることから実用性が高まった.

  • 矢内 栄二, 橋本 香保子, 藤原 誠司, 田賀 利輝, 池田 伸幸, 望月 健志郎
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1069-I_1074
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     東京湾奥部に位置する谷津干潟は,さまざまな渡り鳥が飛来することからラムサール条約登録湿地となっているが,1995年からアオサの異常繁殖であるグリーンタイドの発生が問題となっていた.しかし,2017年に突然グリーンタイドが消滅し,翌2018年にも消滅が継続した.本研究では,谷津干潟におけるグリーンタイドの消滅原因について現地観測データをもとに検討した.その結果,2017年は赤潮・青潮による照度不足により,2018年は高水温によりそれぞれグリーンタイドが消滅した原因であることが示唆された.

  • 赤塚 真依子, 高山 百合子, 伊藤 一教, 渡辺 謙太, 桑江 朝比呂, 大澤 亮介, 森本 哲平, 源 利文
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1075-I_1080
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     環境DNAを活用した海草場のモニタリング手法の開発に向けて,海草から放出される環境DNAに関する基礎的特性を把握することを目的に,定期的に海水を交換している水槽に生育するアマモを対象として8か月間,週2日の採水とDNA分析を行った.アマモは,夏場に枯死期となり生物量(草丈,密度)が減少し,冬場の発芽期以降に生長するが,環境DNA分析においても枯死期にDNA量が減少し,発芽期以降にDNA量が増加した.また,実海域における調査では,1年前のアマモ場調査と生育状況(草丈,密度)が異なり生育の遅れを確認し,環境DNA分析結果において低いDNA量となり1年前との差が得られた.eDNAを活用した海草場モニタリングによる広範囲の海草場の経過観察によって,海草の消失や分布変化等の速やかな情報入手を実現できる可能性が明らかとなった.

  • 梁 順普, 佐々 真志
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1081-I_1086
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     本研究では,沿岸環境の整備,維持管理及び沿岸生態系環境の保全に活用しうる基盤として,沿岸底生生態-地盤環境動態統合評価予測プラットフォームを構築し,現地への適用を行った.その結果,当該プラットフォームは高波イベントに伴う砂浜地形の大変化に伴う3種の底生生物分布域の移動・拡大を整合的に予測・再現し,その有効性を実証した.

  • 高山 百合子, 赤塚 真依子, 伊藤 一教, 源 利文
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1087-I_1092
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     環境DNAを活用したアマモ場モニタリング手法は,定点で採水し環境DNA量を取得したとき,特定の個所を出発した環境DNAが出発点の異なる環境DNAと同時刻に混在しない場合に成立する手法である.本研究では,単純な湾形状と実海域モデルを用いた粒子追跡計算によりこの成立性について検討した.全国のアマモ場海域形状を単純モデル化した10タイプについて,特定エリア出発の粒子が,流れとの組み合わせによっては独占的に出現するケースを確認した.次に実海域モデルを用いて同様の傾向が得られる可能性を示したことから,アマモ場分布と流れの組合せによってはこの手法が成立する場合があることが確認できた.

  • 守田 悠究, 永間 健太郎, 正岡 孝, 日比野 忠史
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1093-I_1098
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     広島市中心部を流れる京橋川河岸干潟に堆積した有機泥上に石炭灰造粒物(GCA)が散布されている.GCA層には底生動物の餌となる藻類が繁茂し,生態系の改善が進んでいる.珪藻の減少が懸念される海域において珪藻ファームの構築の可能性を検討するため,河岸干潟GCA層に繁茂する主要な微細藻類を特定し,その量を定量化するための調査,および沿岸域での微細藻類繁茂実験を行なった.本研究の目的は様々な水質環境下におけるGCAの微細藻類生産効果,機構を明らかにすることである.繁茂実験では,SiO2,栄養塩とGCAに付着する微細藻類,クロロフィル-a量との関係に注目し,経時的な変化を分析した.この結果,GCAの効果(シリカ溶出,栄養塩固定)が付着珪藻,浮遊植物の増殖を助長することが明らかにされた.

  • 寺田 一美, 角田 圭, 佐藤 秀哉
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1099-I_1104
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     本研究では沖縄県石垣島吹通川マングローブ河口で水温,塩分,DO,濁度の鉛直分布測定ならびにADCPを用いた流量測定,河川水,地下水の栄養塩濃度測定を行い,多年度で計測したデータを比較検証することで,河川水および地下水質の潮汐変動,物質輸送量(フラックス)を精査することを目的とした.

     2007~2018年に計測したデータを比較検証した結果,吹通川河口では下げ潮~干潮時に貧酸素状態に陥るが上げ潮時に解消すること,栄養塩濃度は調査時期によって最大9倍もの変化がみられたこと,NH4-N,PO4-Pは地下水含有量が多く河川表層水の16~18倍高濃度であったこと,SSフラックスは日変動が大きいもののTNフラックスは沖合流出傾向にあり,また両者ともに降雨時(87 mm/day)に流出量が最大3.8倍増加すること等が明らかになった.

  • Che-Wei CHANG, Nobuhito MORI, Naoki TSURUTA, Kojiro SUZUKI
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1105-I_1110
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     An experimental study of water waves through a model mangrove forest is presented in this paper. Instead of using idealized or artificial tree models, 3D-printed mangrove models whose geometric structure was based on a typical mature tree (Rhizophora apiculata) at a scale of 1/7 were adopted in the laboratory experiments. During the experiments, the fluid velocity and forces on the tree model were directly measured, which provided a comprehensive investigation of the wave-induced forces on mangroves under various wave conditions. Comparing the predicted forces by Morison-type formula1) with the experimentally-measured forces, good agreements were observed, indicating the proper estimations of drag and inertia coefficients. To provide a useful tool for the estimation of wave dissipation in the future model developments, the relationships between force (drag/inertia) coefficients and the flow parameters (i.e. Reynolds/Keulegan-Carpenter numbers) are presented.

  • 鶴島 大樹, 永尾 謙太郎, 中田 喜三郎
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1111-I_1116
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     伊勢湾では2010年以降アサリ漁獲量の急激な減少が確認されており,その要因の一つに餌料不足の可能性が議論されている.本研究では,伊勢湾のアサリが餌料不足に陥っているか否かを検証するため,アサリの栄養状態の指標である肥満度を予測できる数値モデルを構築した.さらに,構築したモデルを知多半島沿いのアサリ漁場である小鈴谷に適用し,1990年代後半から2010年代にかけての長期的な予測計算を実施した結果,2010年ごろを境にアサリの肥満度が低迷し,産卵数が減少する傾向が予測された.即ち,2010年以降は餌料不足によるアサリ成貝の疲弊や斃死のリスクが増大し,かつ再生産を通じた資源量の維持が困難となりつつあると考えられ,これらの傾向は近年の漁獲量の急激な減少傾向に符合していた.

  • 永間 健太郎, 中下 慎也, 濱本 隆之, 日比野 忠史
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1117-I_1122
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     人間活動によって生じた地球温暖化,富栄養化や食物に対する社会的ニーズの変化は,マガキの養殖環境を様々に変化させてきた.養殖技術はマガキの品質と増産を重点に発達してきたため,環境変化に対応した各種の調査が行われず,大量斃死要因の解明には至っていない.本研究では既存の文献で検討されてきた斃死要因をまとめ,カキ斃死機構を作成した.この斃死機構を考慮し,餌料不足(低Chl-a量),貧酸素とマガキの生態との関連を中心に,養殖環境調査およびマガキ生息実験からカキの斃死条件について推論した.さらに,養殖マガキの斃死調査結果と推論されたカキ斃死機構との整合性を検討し,推論の妥当性を確認した.

  • 国分 秀樹
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1123-I_1128
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     伊勢湾における栄養塩類と水産生物の長期変動を整理し,海域の栄養塩類の変化が水産生物に与える影響について検討した.湾内の窒素リン濃度は1980年代をピークに以降減少を続け,2015年以降では湾内の大部分が指定されているII類型の環境基準(TN:0.3mg/L, TP:0.03mg/L)を下回るまで減少し,リン制限から窒素制限に変化していた.水産生物の重要な餌料の指標となるクロロフィルa濃度も湾南部で低濃度域が発生していた.湾南部の保護水面におけるアサリの肥満度と成熟度の解析の結果,海域の栄養塩類の低下に伴い,アサリの肥満度の低下と成熟期間の短縮が確認された.さらに湾内のスサビノリの生産量と水質の解析の結果,湾中南部のノリ漁場では,近年スサビノリの生育に十分な濃度である100µg/Lを下回ることによる生育不良が発生している可能性が示唆され,低品質のスサビノリの割合が増加していることが明らかになった.

  • 濱田 孝治, 吉田 司, 岡村 寛, 原 武史, 鈴木 輝明
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1129-I_1134
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     浮魚類群集(イワシ類)は内湾における主要な漁獲対象種であり,自然的,人為的な環境変動に伴う漁獲量の変動や漁場形成の変化は大きな関心事である.本研究では機械学習の一つであるGradient Boostingを用いて内湾の浮魚群集の分布量を推定する統計モデルを構築し,伊勢・三河湾のカタクチイワシ漁獲量の時空間的分布の推定を行った.モデルは標本漁船による実測結果をよく再現した.

  • 呉 青栩, 土山 美樹, 鈴木 準平, 藤田 昌史
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1135-I_1139
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     汽水域の人為的な水質汚濁要因として都市下水およびその成分に着目し,ヤマトシジミの成長力および脱水素酵素活性に及ぼす影響を調べた.その結果,5倍希釈した都市下水中の溶存態成分は,ヤマトシジミの成長力を低下させる一方で,懸濁態成分は餌源として機能し,成長力に寄与することが示された.また,溶存態成分に曝されると,脱水素酵素活性が高くなり,個体数密度が高い方が成長力が低くなることが明らかとなった.ヤマトシジミの成長力と脱水素酵素活性の対応を調べたところ,両者には概ね負の相関が見られた.

  • 安田 誠宏, 濵 明日香, 中西 敬, 松下 紘資, 長田 紀晃
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1141-I_1146
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     沿岸部では高潮・高波や津波に対する安全・安心確保のため,防波堤や護岸の新設,既設構造物の強靭化が図られてきた.これまで「防災」と「環境」は往々にして対立関係として位置づけられてきたが,今後の海岸保全事業においては共存関係にあることが望ましい.本研究では,沖縄県本部町浜崎海岸に整備された人工リーフに着目し,サンゴの生育状況が近接する構造物に比べて良好な要因を絞り込むことを目的に,水質およびサンゴ被度の調査を実施した.その結果,水温と塩分については,測線,潮汐による顕著な違いは得られなかったが,DOについては,人工リーフに近い表層で高くなる傾向が得られた.サンゴの形態別被度を定量分析した結果,場所によって違いがあり,沖側・南側の被度が高いことがわかった.

  • 棚谷 灯子, 金城 信之, 岩村 俊平, 青山 宗平, 長谷川 巌, 鈴木 高二朗, 桑江 朝比呂
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1147-I_1152
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     高水温等の影響でサンゴが世界的に減少する中,人工的にサンゴの着生を促進する取り組みの意義が高まっている.本研究では,サンゴが適度な流れや乱れがある場に着生しやすいことに着目し,港内側のケーソン目地部の物理環境とサンゴの着生の関係を調べた.その結果,那覇港のケーソン目地部は,目地から離れた直立部よりもサンゴの総被度が高かった.特に成長が速く,立体的な構造を作り生態系機能上重要なミドリイシ属の着生を高める効果があった.また,サンゴ総被度は目地幅1m前後で最大化した.現地観測,水理模型実験結果と合わせて目地幅約1mまで目地幅が広いほど港内側出口流速が速くなり,それによってサンゴの着生が促進されることが示唆された.ケーソンの目地幅を意図的に広く設けることでサンゴの着生を促進する効果が期待できる.

  • 中村 文則, 山口 貴幸, 神田 佳一, 下村 匠
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1153-I_1158
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     コンクリート橋梁の塩害劣化による耐久性の低下は,コンクリート表面から内部に塩分が浸透することによって引き起こされる.そのため,海水飛沫の発生・輸送過程ととともに,その表面への到達過程の解明が重要となる.本研究では,汀線近傍の大気中における海水飛沫粒子を再現した模型実験を実施し,沿岸域の自然環境を想定した海水飛沫粒子の橋桁表面への到達量と到達粒径について検討を行った.その結果,汀線近傍の海水飛沫粒子を実験施設内で再現できること,風が直接吹き付けるような橋桁壁面には粒径の大きい飛沫粒子が到達しており,橋桁下部の壁面では微小な粒子の到達が卓越していることが明らかになった.さらに,橋桁形状の違いにより,橋桁下部で飛沫粒子の到達量の分布が変化することが示された.

  • 野原 秀彰, 西浦 潤, 及川 隆仁, 日比野 忠史
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1159-I_1164
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     石炭灰造粒物により造成された干潟場では,堆積した泥性状が改善する効果が確認されており,それら効果には微生物の関与が示唆されている.石炭灰造粒物に出現する微生物属と干潟場の底質環境との関係性が明らかになれば,石炭灰造粒物による効果のうち生物による関与を裏付けれる可能性があると考え,本研究では,干潟場に散布された石炭灰造粒物および河川底泥に生息する微生物属を微生物菌叢解析により同定・比較することで,その関係性を検証した.石炭灰造粒物敷設区は,好気的な干潟底質環境を示し,石炭灰造粒物表面,内部には光合成細菌等が選択的に生息することから,石炭灰造粒物内部までの水循環が示唆された.また,石炭灰造粒物干潟が光や酸素等を供給しやすい構造(微生物が生息しやすい環境)であることの裏付けとなる可能性がある.

  • 遠藤 徹, 今吉 紘頌, 原田 範子
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1165-I_1170
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     河口域におけるCO2の交換特性を把握するため,大和川の河口域で水質モニタリング調査を季節毎に実施した.また,水中のCO2分圧:pCO2wの計算に必要な全アルカリ度:TAを自動計測が可能な電気伝導度:ECから推定するため,河川水のTAとECの関係を整理し,大和川河口域に適用可能な回帰式を求めた.

     夏と秋のpCO2wは日内変動が大きかったのに対し,冬のpCO2wは日内変動とともに値も小さかった.また,pCO2wと観測項目の重回帰分析の結果,河口域のCO2交換は潮汐変動に伴う海水交換と昼夜における光合成と呼吸によるpH変化の影響を受けていることが分かった.さらに,大和川河口域のCO2フラックスは,春:7.9 ± 0.6 CO2/m2/hr,夏:2.9 ± 0.7 CO2/m2/hr,秋:16.2 ± 1.3 CO2/m2/hr,冬:−4.2 ± 0.5 CO2/m2/hrで,既往研究では大阪湾の沿岸部はCO2の吸収源であったが,河口域は干潟域と同様,冬を除いてCO2の放出源であった.

  • 上村 了美, 大谷 壮介, 岩見 和樹, 上月 康則, 田辺 尚暉, 山中 亮一
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1171-I_1176
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     大阪湾奥に位置する尼崎運河において,環境DNA調査と捕獲調査を比較して運河内スケールにおける環境DNAの有効性と問題点を検討し,各調査地点の魚類相の比較および環境条件との関連を明らかにした.東堀では1月の表層のORPやDOが回復し,同時期の環境DNAにより検出された種数が最も多かった.このことから,この場所が水質の回復によって魚類の利用場所となるポテンシャルを持っている可能性が示唆された.環境DNA調査はより環境の異なる港湾との比較や季節変化については差の検出が可能であった.環境DNA調査は検出は不安定で,検出できない種もあるが,採捕調査よりも多くの魚種を検出する傾向にあり,直接採捕の調査と合わせると互いの調査方法の結果を補い,魚類相全体の把握に有効な手法であると考えられる.

  • 志村 智也, 森 信人
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1177-I_1182
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     将来気候変動条件下における日本沿岸の高解像度波候予測を実施した.将来気候における有義波高と平均周期の気候値は,現在気候と比較してそれぞれ10%および3%程度の減少を示した.有義波高と平均周期の統計量に加えて,期間平均方向スペクトルの将来変化を解析した.日本沿岸で,平均方向スペクトルの全帯域でエネルギーが減少することにより,有義波高および平均周期の減少につながる.平均波向きは,日本海側では,その時計周りの角度でエネルギーの減少量が大きいため反時計回りに3.5◦程度,東日本太平洋側では,平均波向きの反時計回りの角度に位置するピークのエネルギーの減少量が大きいため,時計回りに4.5◦程度の変化を示した.平均方向スペクトルを解析することにより,波高・周期・波向きの将来変化を統一的に論じることができた.

  • 園田 彩乃, 井手 喜彦, 山城 賢, 橋本 典明, 鈴山 勝之
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1183-I_1188
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     周防灘は高潮の危険性が高い海域であるが,他の海域に比べ検討例が少ない.しかし,地球温暖化に伴う台風の強大化等によって高潮災害の甚大化が懸念されており,将来の周防灘において妥当性の高い高潮推算が望まれる.本研究では非構造格子海洋流動モデルを用いて高潮推算を行い,まず周防灘の高潮推算に最適な計算領域や台風の外力データおよび台風経路の特徴の違いによる推算精度の変化を調べた.次いで大規模アンサンブル気候予測データを用いて周防灘周辺の台風特性の将来変化を評価した.さらに将来気候における最大規模の台風に対して,陸域による台風の減衰を考慮した高潮推算を実施し,将来の高潮について定量的に検討した.その結果,周防灘湾奥部では将来的に高潮が現行の計画堤防高を容易に上回るほど大きくなる危険性があることが分かった.

  • 吉野 純, 山本 康平, 村田 昭彦, 小林 智尚
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1189-I_1194
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     本研究では,全球気候モデルから領域気候モデルによる直接ダウンスケーリングに基づいて,現在気候および将来気候における伊勢湾に接近する最大規模台風の進路アンサンブル実験を行い,伊勢湾における可能最大高潮の将来変化を評価した.現在気候における名古屋港の可能最大高潮は4.1mとなるのに対して,将来気候における名古屋港の可能最大高潮は4.5mとなり,先行研究の擬似温暖化ダウンスケーリングの結果(6.9m)に比べて大幅に下回る結果となった.将来気候下の台風の移動速度(約20km/h)は現在気候下の移動速度(約40km/h)に比べて小さく,伊勢湾の固有振動周期と台風の進行波周期に大きな差が生じたために,伊勢湾湾奧での可能最大高潮の増大が抑制された.その一方で,伊勢湾西岸の三重県沿岸部での高潮リスクがより増大することが明らかとなった.

  • 梅田 尋慈, 中條 壮大, 森 信人
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1195-I_1200
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

     全球スケールにおける熱帯低気圧(TC)の観測資料の不足を補うために,大規模アンサンブルGCMデータ(d4PDF)のTC資料から時系列相関型の全球確率台風モデル(GSTM)を構築した.まず,d4PDFには固有のモデルバイアスが存在することから,緯度帯,海域別にバイアス補正を行うことで良好に補正することができた.次いで,補正したTC資料で構築したGSTMでは,観測資料が不足している領域において中心気圧および進行方位とその時間変化率からなる同時確率密度関数が変化することでその再現性が向上することを明らかにした.さらにd4PDFの将来予測結果を利用したGSTMの将来予測では,全球的なTC発生数の減少に伴って日本付近の北西太平洋を通過するTC数は減少するが,強いTCが現在よりも増加する傾向にあることを明らかにした.

feedback
Top