メソドロジー研究部会報告論集
Online ISSN : 2759-5684
3 巻
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
  • 東 淳一
    2013 年3 巻 p. 1-13
    発行日: 2013年
    公開日: 2024/07/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    日本語(東京方言,関西方言)の発話を音声分析し,文節のみの単独発話長を基準にして,フルセンテンス発話での各文節の伸長度を分析した。その結果,深い統語境界の文節は相対的に長く発話され,文末の文節は最も引伸し度が大きい傾向にあることがわかった。ただし,引伸しが顕著な文節の直前では,統語構造に関係なく文節長が相対的に短くなる傾向があり,統語構造とは関係なく文節長の相対的な長さが「短長短長」のパタンをなす文もあった。一方,軽快なクラシック音楽演奏の音響分析からも,4小節からなる小楽節最後の小節で顕著な継続長の引伸しが観察され,逆にその前の小節ではテンポが早まる傾向が見られた。小楽節中で「短長短長」のパタンを見せるケースもあった。日本語発話,音楽演奏の両者に見られる,このようなテンポの揺れ現象のメカニズムは不明であるが,人間の基本的なタイミング制御の特質に根ざす可能性がある。
  • 亘理 陽一
    2013 年3 巻 p. 129-141
    発行日: 2013年
    公開日: 2024/07/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    言語学的研究成果に基づき授業での指導を目的として構成された文法を「教育文法」と呼ぶ。本稿の目的は,この教育文法の質と効果を実証的に研究するための予備的考察として,文法指導における明示的介入,特に与える問いや説明の操作的定義を探ることである。第二言語習得・外国語教育研究で提示されてきた分類に,本稿の構想する指導内容を当てはめながらその妥当性を吟味することで,教育文法の実証的研究に求められる要件を整理し試案的分類を提示する。
  • 水本 篤
    2013 年3 巻 p. 141-150
    発行日: 2013年
    公開日: 2024/07/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本稿では,従来から使われているリーダビリティー指標に加えて,英文解析プログラムから得られる各種指標を使いテキスト難易度の推定を試みた。その結果,Coh-Metrixのような新しい指標を用いることにより,精緻な分析を行い,教材開発にも適用可能であることが示された。
  • 今尾 康裕
    2013 年3 巻 p. 14-35
    発行日: 2013年
    公開日: 2024/07/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    R は無料で高機能な統計環境であるが,ある程度プログラミングを理解していなければ 使いこなすのは難しい。その橋渡しをするために,Mac 上で R を手軽に使うための GUI アプリケーション MacR の開発を始めた。本稿では,その MacR を開発するにあたっての基本的な考え方を説明し,今後の課題を検討する。
  • 浦野 研
    2013 年3 巻 p. 36-45
    発行日: 2013年
    公開日: 2024/07/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    第二言語習得研究で重要となるのは学習者の暗示的知識の正確な測定であり,近年その手法として時間制限つきの文法性判断課題 (timed grammaticality judgment task: T-GJT) の有用性が注目されている。本稿の目的は,T-GJT が実際に何を測定しているか,その構成概念妥当性を考察し,T-GJT が明示的知識の干渉を十分には排除できていない可能性を指摘することである。あわせて,T-GJT の問題点を回避するデータ収集法として,自己ペース読み課題 (self-paced reading task: SPRT) の可能性について考察する。
  • 草薙 邦広
    2013 年3 巻 p. 46-67
    発行日: 2013年
    公開日: 2024/07/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本稿の目的は,外国語教育研究,及び第二言語習得研究にてしばしば用いられる,時間制限を設けた文法性判断課題に関して,その手法としての理論背景,手法の特徴,及び諸問題を概観した上で,より望ましい時間制限の設定方法についての検討を行うことである。特に,文法性判断課題における認知的プロセスのモデル,そしてそのモデルから仮定される文法性判断課題における反応時間の分布についての知見から,二つの時間制限設定方法;並行集団における事前実験の反応時間に基づく設定法,対象集団における実験後の反応時間に基づく設定法を提案する。
  • 今野 勝幸
    2013 年3 巻 p. 68-74
    発行日: 2013年
    公開日: 2024/07/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    構造方程式モデリングは、仮説として提案した変数間の関係性をモデル化し、その妥当性を検証するという点において非常に有用な統計的分析ツールである。特に動機づけの構造を明らかにするという観点から、近年、英語学習動機づけ研究において使用例が増えている。一方で、なぜその仮説を立てたのか不明な研究も多く、「検証的」という本来構造方程式モデリングが持つ特性から離れているケースも見られる。紙面や時間が限られるからとは言え、構造方程式モデリングでは仮説が最も重要な要素である。従って、本論では、構造方程式モデリングを行う際の仮説の重要性について述べる。
  • 菅井 康祐
    2013 年3 巻 p. 75-82
    発行日: 2013年
    公開日: 2024/07/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    言語を対象とする研究でもERP(事象関連電位)を用いたものが多く見られるようになり,言語研究者にとっても有益な調査結果は多い。しかし,その実験手法や解釈法などに馴染みが薄いために敬遠されることも多いように思われる。そこで本稿では,ERP調査の基本的な手法を概観するとともに,他の実証研究と同様に調査結果の解釈をするための一つの基準を紹介する。
  • 住 政二郎
    2013 年3 巻 p. 83-101
    発行日: 2013年
    公開日: 2024/07/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本稿の目的は,靜哲人(2007).『基礎から深く理解するラッシュモデリング:項目応答理論とは似て非なる測定のパラダイム』関西大学出版部. をもとにラッシュモデルの導出について解説することである。靜(2007)はラッシュモデルについて日本語で読める数少ない貴重な書籍である。前半の5つの章を数学的予備知識の準備に当て,文系読者でもラッシュモデルを文字通り深く理解することができる。より重要なことは,ラッシュモデルの概説にとどまらず,教育測定の客観性について深い考察を加え,ラッシュモデルに到達する必然性が述べられている点である。しかし,「第7章ラッシュモデルの導出」にはほんの一部だが重要な誤りがある。そこで著者の許可を得て,本稿でその誤りを修正し,靜(2007)をもとにラッシュモデルの導出について解説することにした。その意図は誤りを指摘することではない。初学者が,靜(2007)をどのように読み,どのように理解したのかを紙面で再現し,次の読者の伴走をすることである。身の丈を上回る課題ではあるが,著者が情熱を込めてまとめたこの本を,これからラッシュモデルについて学ぶ院生,そして教育測定に関わる人に読んでもらいたい一心である。
  • 田中 博晃
    2013 年3 巻 p. 102-106
    発行日: 2013年
    公開日: 2024/07/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本論ではKJ法の手順を簡便にまとめた「KJ法クイックマニュアル(2013年版)」の提示を行う。KJ法にはいくつかの流派やバージョンが存在するが,本論のマニュアルは川喜田(1997)の1997年版のKJ法を基にしている。このクイックマニュアルでは,KJ法のプロセスである,下準備,ラベル作り,ラベル拡げ,ラベル集め,表札作り,図解化,叙述化の流れにそって,各段階の手順と注意事項,KJ法のコツの提示を行う。
  • 中西 のりこ
    2013 年3 巻 p. 107-128
    発行日: 2013年
    公開日: 2024/07/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    オノマトペや音象徴に代表される研究が示すように,言語音には何らかのイメージが存在すると考えられる。このイメージを英語発音指導へ結びつけるため,中西・中川(2012)では,英語分節音を10のイメージグループに分けて説明する方法を試みた。本研究では,これら各グループに属する分節音が多く含まれるジャズ・スタンダード楽曲について2種類の調査を行い,この方法の妥当性を検証した。音楽関係者が楽曲自体に対して持つイメージと,学習者が楽曲を聴いたときに持つイメージについての2種類の調査の結果,さらなる精査が必要ではあるものの大枠において,上記の分節音グループごとに特定のイメージが存在することが明らかとなった。英語の発音を指導する際に,それぞれの音がどのようにして調音されるかといった音声学的な説明と同時に,どのようなイメージで発音するかといった認知的な説明を加えることで,英語の音に対する学習者の理解を促すことができると考えられるため,本研究結果は,従来の指導法とは視点を変えた英語発音指導の足掛かりとなるだろう。
feedback
Top