個人投資家の世界において近年、資産運用の在り方に関し本人以外の第三者が介入・誘導するパターナリズムが広がっている。金融庁は2024年、少額投資非課税制度(NISA)を大幅に変更、制度の恒久化と投資限度額の引き上げに踏み切る一方、運用対象商品についてその手法や分配などの設計面から多様な規制を定めている。一連の対応は議論を呼びながらも安定的な証券投資を促すものとして前向きに受け入れられており、同じく税の優遇措置を伴った制度である確定拠出年金(DC)についても、類似した改革論議が高まる可能性がある。 とはいえ、DC法の目的規定である第1条では、個人が自己責任において運用の指図を行うとしたうえで、自主的な努力を支援すると明記している。こうした制度の基本設計に立てば、個人の運用に対する介入・誘導という行為には慎重さやバランス感覚が問われてくる。 企業型DCでは、例えば加入者自らが運用の指図を行わない場合、株式を含むリスク性商品へ自動的に掛け金投入するよう国が強く方向づける案が燻り続けている。仮に、こうした自動化の仕組みを導入するとすれば、DC法が掲げる自己責任に基づく自己決定のあり方にも係るだけに、運営上の指針も新たに求められよう。一方で、企業型DCの継続的な論点といえる、個人の自主的な努力に向けた支援をいかに実効性の伴った形で実現し得るか。専門機関である運営管理機関の機能改善を軸に、各事業主はガバナンスを構築することが肝要であるが、運営の実態面から複数の課題も指摘されており、民間における任意の活動に委ねるだけではなく、国によるチェックやコントロールの機能も働かせる必要があるだろう。
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