日本農村医学会学術総会抄録集
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第55回日本農村医学会学術総会
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一般演題
  • 浦田 輝夫, 菊池 充, 平沢 博, 太田 正康
    セッションID: 1G401
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
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    <緒言> 今日わが国において分離される黄色ブドウ球菌は,その60%をメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が占めている。
     当院のMRSA陽性率(定着例も含む)は培養依頼検体数の約10%前後を保っているが突発的に感染率が上がることがある。
     今回我々は約半年間のうちに新生児集中治療室(NICU)で発生したMRSAをパルスフィールドゲル電気泳動によって解析する機会を得たので感染対策の一貫として行なった。
    <対象菌株> 2005年9月から2006年2月までに当院NICU(6床)に入院した患児から検出されたMRSA8株(同一患児は除く)を対象とした。
     対象菌株は一患児一検体とし,主に鼻腔粘膜より検出された株を用いた。
     MRSAの判定はWalkAway96(DADE BEHRING社)にて微量液体希釈法で行なった。
    <対象患児> 対象患児はのべ8人で主に脳内出血,脳梗塞,無呼吸発作,早産,低体重,ダウン症,無脳症,新生児仮死などの疾患であった。入院期間は概ね1ヶ月から4ヶ月ほどで全員退院もしくは転院している。
    <MRSAの遺伝子解析> 遺伝子解析はGene Path(BIO-RAD社)システムを用いて行い,制限酵素はSmaIで切断したものでパルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)を行なった。泳動時間は20時間で行なった。
    <NICUでの感染対策> 当院ではNICUでMRSAが検出された場合、担当医とNICUに連絡をいれている。
     連絡を受けたNICUでは環境の清掃を行い手洗いの再確認とともに,患児をカーテン隔離し手袋・マスクを用いて看護に当たる。
     多数検出された場合はスタッフの鼻腔培養を施行し,陽性の場合はムピロシンの塗布を行なうなどの対応をしている。
    <結果> EFGE法の結果は8株とも全て同一の泳動パターンを示した。このことはNICU内には少なくとも半年に渡り同じ菌が存在したことを意味している。
     しかし,この期間中に入院していた患児8名のうちMRSA感染症と思われる症状を起こしたのは2例のみであり,あとはコロナイゼーションもしくは通過菌であったと思われる。
    <考察> 同じ空間から同じタイプの菌が長期にわたり検出されることは過去の文献にも散見されているが,当院でも同一の菌が施設内に蔓延していることが今回のPFGE法によって分かった。この様に一度菌が定着してしまうと除菌することは容易なことではない。
     しかしMRSAを環境菌と同様に考え,スタンダードプリコーションの徹底を図ることにより感染の拡大を抑えることは難しいことではないと考える。
    <結語> PFGE法と聞き取り調査でNICUのMRSAは最初に入院した患児が他院から持ち込んだものが伝播して広がったと推測された。
     この感染を最小限に抑えることが出来たのはNICUスタッフの努力によるものであるが,通過菌にしろ患児に菌を接触させたのは医師を含めた医療スタッフや面会の家族であると思われ,今後は面会者や我々スタッフのよりいっそうの接触防止策の徹底が望まれる。
     またこの様にPFGE法は疫学的調査に有用であるが設備や手間・コストなどを考えれば一般病院では安易に出来ない。今後はもっと簡便な方法が開発されるのを期待したい。
  • 巽 則雄, 亀井 純子, 堀江 邦夫, 生川 睦子, 内藤 淳, 高橋 喜久代, 種村 陽子, 犬塚 和久
    セッションID: 1G402
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
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    <緒言>メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は院内感染対策上重要な菌として広く知られている。また治療面においてもMRSAであるか否かの検査結果は、治療薬剤の選択に重要な意味をもつため、判定は正確でなければならない。当院の臨床検体において検出されたCLSIガイドラインに基づいたMRSA判定基準であるoxacillin のMIC値(4μg/ml)前後の成績を示したボーダーライン上の黄色ブドウ球菌に対し、各薬剤に対する微量液体希釈法およびディスク拡散法、PBP2’産生性およびgold standardとされているPCR法によるmecA遺伝子検出法との比較を行い、検査法別によるMRSA判定成績について解析を行った。
    <対象>2002年5月から2006年1月に各種臨床検体から分離された菌株を用い、MRSAスクリーニング培地であるMRSA1-A(日研生物)またはクロモアガーMRSA分離培地(関東化学)上に発育かつ陽性シグナルを示し、oxacillin MIC値≧4μg/mlの判定と乖離したStaphylococcus aureus 51株を対象とした。
    <方法>MIC法:MIC2000ドライプレート栄研(DPD2)耐性菌検出用を用いてoxacillin、cefoxitin(シグマ)、 ceftizoxime (アステラス製薬)等、抗菌薬のMIC値測定をCLSIに準拠した微量液体希釈法にて実施した。ディスク拡散法:CLSIに準拠したミューラーヒントンII(日本ベクトンディッキンソン)を用いoxacillin 、 cefoxitin 、ceftizoximeのセンシディスク(日本ベクトンディッキンソン)の阻止円径を測定した。PBP2’産生性:MRSA-LA「生研」(デンカ生研)およびウサギ抗血清を用いたウェスタンブロッティング法を用いて実施した。mecA遺伝子の検出:プライマー(5’-CTCAGGTACTGCTATACCACC-3’と5’-CACTTGGTATATCTTCACC-3’、Hedin et.al. 1993)PCR法を用いmecA遺伝子を検出した。PBP2’産生性の誘導:mecA遺伝子を保有しているにもかかわらずPBP2’産生性の発現がほとんど見られない菌株については、ampcillin の添加による発現量の変化を観察した。
    <結果>検査法間での乖離例ではoxacillinのMIC値が≦0.25から2 μg/mlを示した株でmecA遺伝子陽性株は11株、4μg/mlを示した中では10株存在した。また、4μg/mlを示した中にはmecA遺伝子陰性株が2株存在した。mecA遺伝子保有株とMRSA-LA(PBP2’)試験陽性株は共に38株検出され、すべて同一菌株であった。ディスク拡散法(CLSI準拠法)ではoxacillinディスクをcefoxitinディスクに変えて耐性ブドウ球菌の推定検査を行う必要性があった。
    <考察>ボーダーラインMRSAの薬剤感受性成績は、一見MSSAと誤判定しかねない感受性パターンを示す。しかし、β‐lactam剤によりPBP2’の産生性が増強されることから、どの検査法を選択した場合においても正確な判定を臨床にフィードバックしなければ治療を誤ることにつながりかねず、注意が必要である。
  • 小俣 芳彦, 相原 乃理子, 鍛代 久美子, 佐藤 嘉洋, 熊木 伸枝, 飯尾 宏, 中安 邦夫, 篠田 政幸, 別所 隆
    セッションID: 1G403
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
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    <緒言>近年,乳癌はわが国における女性の癌罹患率1位となり,今後さらに増加すると考えられる.検診等のスクリーニングによる早期発見に加え,早い段階での確定診断が望まれる.
     細胞診は,乳腺疾患においては,乳頭分泌物や腫瘤の穿刺吸引により,採取された細胞を顕微鏡下で直接判定する為,確定診断となり得る.また,生検に比べ被験者に対する侵襲も少ない.しかし従来の細胞診報告様式は,「検体の適正・不適正を判断する項目がない」, 「判定基準が明確にされていない」等の問題を抱えていた.そこで,日本乳癌学会では「乳癌取り扱い規約第15版」から新たな細胞診の報告様式を記載することになった.
     第53回の本学術総会で,平成15年より導入した乳腺穿刺吸引細胞診新報告様式の約1年間の統計結果について考察と併せて報告をした.今回われわれは,その後の統計結果を加え導入時との比較検討や伝票の記載,履歴の有無,病変の性状による変化等も併せて報告する.
    <方法>前回と同様で,当院の外科医と病理医,細胞検査士で細胞診の新報告様式についてガイドラインに則って説明,協議し導入した.判定は,「検体不適正(inadequate) 」と「適正(adequate) 」に大別し,さらに適正であれば,「正常あるいは良性(normal or benign)」,「鑑別困難(indeterminate)」,「悪性の疑い(suspicious for malignancy)」,「悪性(malignant)」の4種類に分類して報告した.
    <結果>導入当初(症例数162件)の成績は,「検体不適正例」45件(27.8%),「検体適正例」117件(72.2%)であった.詳細は,「正常あるいは良性」が89件(55.0%),「鑑別困難」が8件(4.9%),「悪性の疑い」1件(0.6%),「悪性」19件(11.7%)であった.
     その後,症例数266件の時点で,「検体不適正例」51件(19.1%),「検体適正例」215件(80.8%)であった.詳細は,「正常あるいは良性」が165件(62%),「鑑別困難」が21件(7.9%),「悪性の疑い」2件(0.7%),「悪性」27件(10.1%)となった.
     さらに最近の症例272件では,「検体不適正例」47件(17.2%),「検体適正例」225件(82.7%)であった.詳細は,「正常あるいは良性」が137件(50.3%),「鑑別困難」が28件(10.2%),「悪性の疑い」10件(3.6%),「悪性」50件(18.3%)であった.
     以上のように「検体不適正例」については基準には満たないものの,減少傾向にあるが,「鑑別困難」については,基準内であったものが,徐々に増加し最近の統計では僅かではあるが,基準を超えてしまった.また,「悪性の疑い」は増加傾向に,「正常あるいは良性」,「悪性」については,ほぼ横ばいの状態であった.
     「検体不適正例」を検証したところ,間質結合織が多くの部位を占める病変は,上皮細胞成分が採取されにくく,再検を繰り返すため,この区分の占める割合を上昇させてしまう.「鑑別困難」については,異型細胞は認められるが少数のもの,硬化性腺腫等の良悪の判定が困難なもの等があげられる.
     今後さらに詳細な分析を行い,臨床側との連携を強化することでより正確で迅速な情報提供をしていきたい.
  • 山邉 暁子, 平沢 博, 下門 美智子, 鈴木 恵美子, 野崎 千恵子, 小泉 淳子, 福岡 俊彦
    セッションID: 1G404
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに> 睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome:SAS)は,激しいいびき,昼間の眠気を主症状とし,様々な心血管系疾患を高率に合併するとされ,また,社会的にも問題となってきている。当院では2004年5月より,睡眠時無呼吸の検査(polysomnography:PSG)を開始した。今回我々は,当院のPSG検査の被検者のBMI値,血圧,総コレステロール値,NCPAP(鼻マスク式持続陽圧呼吸)による治療状況,検査結果などを報告する。
    <方法>
    【測定方法】患者は個室に入院し, 19時より生理検査室技師2名で電極の取り付けにいく。測定開始後から終了まではトイレなどのときはナースコールで病棟看護師を呼んで対応してもらう。
     翌朝,7時半に技師1名がはずしにゆく。
    (測定時間は12時間)その後,マニュアル解析を行った。
    【重症度分類】:
    睡眠1時間あたりの無呼吸や低呼吸の回数(AHI)
       AHI30回以上:陽性(重度)
       AHI15回以上:陽性(中度)
       AHI 5回以上:陽性(軽度)
       AHI 5回未満:陰性
            〔AASM(米国睡眠学会)より〕
    【対象】2004年5月_-_2006年3月までの50症例,男性38名(17から83歳平均59歳)女性12名(43から75歳平均63歳)を対象とした。
    【使用機器】アプノモニター(チェスト)
     検査結果より,重症度別にBMI値,総コレステロール,中性脂肪,血糖,血圧を比較した。
    <結果>
     陽性41名(重症17:中度13:軽度11)
     陰性9名
     NCPAP使用率:41%(41人中17名)
     (但し、途中で中止したものも含む)
     陽性者の平均         
      T-cho:205mg/dl   TG:205mg/dl
      GLU:117mg/dl  BP:143/86mmHg
     陰性者の平均
      T-cho:182mg/dl   TG:179mg/dl
      GLU:113mg/dl  BP:130/78mmHg
    <考察> 今回検討ではSAS陽性では肥満傾向が高い結果となったが,重度陽性の中にもBMI値の低い患者もいることから,必ずしも太っている人だけの病気ではないことがわかった。また血圧,血糖,脂質系の値では陽性者のほうが少し高い値であった。
    <今後の課題> SASはメタボリック症候群,高血圧,心不全などと関係が深いとされており,検査の需要は多くなってきている。一方、当院のPSG検査は週に一回の予約枠しか設けていない。PSG検査一件のデータを解析するのに約5時間ほどの時間を要してしまうからである。需要に対応するためには、解析技術の向上はもちろんのこと、人員の確保もこれからの課題である。
  • 長期間続いたせん妄状態への対策
    栗山 千秋, 横田 由加里, 山田 瞳, 伊藤 香菜子, 馬場 百合子, 倉益 直子
    セッションID: 1G405
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに> せん妄は意識障害のひとつであり、幻覚、妄想、不安、興奮などの精神症状や異常行動を起こす。今回、頭部外傷で意識障害(せん妄)をきたした患者とのかかわりを通して、様々な対策を実施し、患者を無事自宅へと促すことが出来たので報告する。
    <症例紹介>
     患者:50代女性。診断名:多発外傷_丸1_重症頭部外傷_丸2_肋骨骨折血胸。入院期間:平成17年3月上旬_から_6月中旬。家族構成:夫、子供2人(高校生、中学生)の4人家族。現病歴:平成17年3月 車と電車の衝突事故で入院。入院4日目 血胸のため転院、胸腔ドレナージ治療にて症状改善。同年3月中旬 当病棟再入院(遷延性意識障害治療目的)
    <入院後の経過・看護介入>
     _丸1_せん妄期:JCSI-3、左片麻痺。入院2週目頃より独語出現し、体動活発。抑制を外し、柵も乗り越え、全裸になるなどで日中は看護室で過ごした。家族の面会はほとんどない。転倒転落のリスクを考え、低ベッド、4点柵、セーフティーコール、四肢抑制、車椅子乗車時のシートベルトの使用で、事故なく経過。しかし、患者の大声には解決策がないまま見守るしかなかった。
     _丸2_睡眠療法期(睡眠期):主治医より家族へ睡眠療法の提案があり、家族の同意を得て睡眠療法開始するも、効果は薄く、胃管自己抜去頻回。身体損傷リスク、薬物による悪性症状の出現、廃用症候群を考え、せん妄期同様の抑制、体位変換、口腔ケア、経腸栄養管理を行なった。転倒転落、褥瘡形成なく経過した。しかし、薬剤性肝機能障害を起こして睡眠療法は中止となった。
     _丸3_覚醒期:感情失禁が悪化し、他患者からの苦情もあり、個室へ移動した。転倒転落のリスクはあったが、ベッドの使用、抑制はせず、マットとセーフティーコールで対応した。また、夫に付き添いを促し、徐々に夫の面会も増え、せん妄状態が軽減した。身体可動性の障害、セルフケア不足によるADLの向上にも努めた。その結果、トイレで排泄可能になり、転倒転落なく経過し、自宅退院となった。
    <考察> 当病棟では、毎週抑制カンファレンスを実施している。カンファレンスで、抑制によって症状が悪化しているのでは、という意見もあったが、どの時期においても抑制は必要不可欠であり、解除することはできなかった。そのため、抑制の方法を検討し、せん妄期、睡眠療法期では、安全を第一に、覚醒期では、ADLの自立を考慮した。結果、身体損傷を回避することができた。このように、抑制カンファレンスを毎週実施し、患者の段階にあった身体拘束を行い、ケアしたことで自己損傷が回避できたと考える。また、家族からの相談や不満に対し、医師や師長から現在の治療法、今後の方針など、その都度説明することで家族の理解を得た。また、感情失禁が家族の面会で緩和すると、家族も含めたかかわりの必要性についての説明もした。せん妄状態の患者家族に対して、医療者と家族との綿密な連携が必要なことがわかった。主治医から看護スタッフへ、患者の現状、治療、今後の経過について、段階を追うごとに説明があったことで、状態を少しずつ理解できていき、将来の患者像を考えられるようになり、余裕をもって患者を看ることができた。
    <まとめ> 今回、意識障害をきたした患者の看護を3つの時期に分け、振り返り、自己損傷のリスク、看護、対応について学べ、せん妄はある時期がくれば沈静化するということも理解できた。
  • ゴールデンウィーク中の調査より
    水野 光規, 鈴木 和広, 田渕 昭彦, 八田 誠, 山本 昌弘
    セッションID: 1G406
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
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    <はじめに>当院(安城更生病院)は2002年5月に新築移転に伴い、救命救急センターを開設した。愛知県西三河地区の救命救急センターとして一次から三次までの救急患者受入を行い、2004年度では年間総受診者数42128名(うち救急車来院6699名)となっている。徒歩来院・救急車来院とも毎年増加を続け、特に年末年始・ゴールデンウィークにおいては患者集中により普段の約1.5倍ほどの受診者数となる。今回我々は、コールデンウィーク中に関して調査することにより、混雑時における徒歩来院患者の動向把握と分析・検討を試みた。
    <目的>救命救急センターを徒歩受診する患者の診療所要時間を分析することにより、一次から三次救急医療を担う当院救命救急センターの実態を把握するとともに改善の余地のある問題点を検討する。
    <方法>2005年5月3日8:00から5月5日8:00に当院救命救急センターを受診した513名のうち、救急車来院53名を除く徒歩来院460名を対象とした。そのうち、入院となった24名を除く診察後帰宅許可を得た患者436名に関して、受付から会計までの時間経過の分析・検討を行った。
    <結果>受付から診察開始までは348名に関し記録でき、平均22分(±21分)、最大値104分、最小値0分であった。受付から会計までは360名に関し記録でき、平均70分(±54分)、最大値357分、最小値10分であった。受付から会計まで120分以上を要した44名のうち、受付から診察開始までが60分以上を要していたのは3名のみであった。
    <考察>受付から診察開始までの時間は平均22分と、混雑時としては許容範囲と考えられた。また受付時のトリアージにより緊急を要すると判断された場合(喘息発作、胸痛等)は迅速な対応ができていた。受付から会計まで時間を要する主な要素を検討した結果、受診待ち時間ではなく治療時間による要素が大きかった。今回の結果を生かし、今後の改善の検討をしていきたい。
  • 仲山 剛史, 田中 史朗
    セッションID: 1G407
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>近年MDCTの普及により、CTによる心臓領域の検査が可能になった。当院でも平成17年2月に東芝社製16列MDCTが導入され、心臓領域での活用が検討されている。当院では症例数がまだ少ないが、今後の活用方法と展望について検討したので報告する。
    <使用機器>
    MDCT:東芝社製 Aquilion16
    造影剤自動注入器:根本杏林堂社製 Dual shot
    ワークステーション:アミン社製Zio M900
    <対象>
     年齢45から85歳 性別 男性14名、女性6名
    <方法>
     前処置:患者への十分な説明を行い、息止めの練習をする。またミオコールスプレーを使用する。
     撮影:120kv、400mA、16×0.5mmヘリカルスキャン、HP3.2
     使用造影剤:イオパミロン370
     注入方法:造影剤60mlを3.0ml/sにて注入後、造影剤30ml+生食30mlを1.5ml/sにて注入する。
     撮影タイミング:HRの値を確認後、ターゲットトラッキング法を使用し、目視にて撮影開始。
     平均息止め時間:28s
    <まとめ>当院ではMDCT導入によりVR、冠動脈解析の評価を行った。冠動脈領域においては、カテーテル検査と比較して患者の肉体的負担、コスト的な負担が低いという利点があるが、血管拡張剤を使用しても患者の状態、冠動脈の石灰化、装置の問題に左右されることもあり、全てにおいて十分な結果が得られない例があった。
     心機能評価においては、心エコーのように患者の体形に左右されず解析が可能であった。また心室瘤など心臓の形態異常において十分な画像が提供できたと思われる。今後は血管拡張剤の併用を行うなど医師と検討を行い、より血管の描出能を高めて冠動脈疾患のフォローアップや心臓のルーチン検査一環として活用していきたい。
  • 中村 光一, 西野 聡, 内海 眞
    セッションID: 1G408
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
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    <はじめに>入院患者で肺炎が疑われた場合の胸部X線撮影は診断上必須であり、当院ではポータブル胸部X線撮影(以下、病室撮影)には従来グリッドを使用してきた。今回、一般撮影用CRシステム導入に伴い、その画像処理機能を利用しグリッドを使用しない病室撮影に切り替えた。従来のグリッドを使用したスクリーン・フィルム(以下、S・F)画像と、グリッドを使用しないCR画像を同一患者の臨床写真で視覚的評価を行い、グリッドを使用しない病室撮影の有用性を検討した。
    <対象>平成14年12月-平成18年4月までの期間中、S・F及びCR両方の病室撮影を実施し比較検討可能な患者12名。(平均年齢78.7歳)
    <使用機器及び撮影条件>
    ・システム
     S・F コニカ KM-250/SR-G
     CR FCR XG-1 DI-HL
    ・移動型X線撮影装置(日立メディコ)
     シリウス125MX,シリウス130H
    ・自動現像機
     コニカ TCX-701S(34℃、45秒処理)
     富士DRYPIX7000
    ・グリッド グリッド比6:1、グリッド密度34本/cm、集束距離150cm
    ・撮影条件
     S・F 84-94kv 2mAs 120cm
     CR 70-75kv 2-2.5mAs 120cm
    <方法>S・F法、CR法で実際に撮影された病室撮影写真を、解剖学的指標:骨系(上部胸部肋骨縁・鎖骨骨梁)、縦隔系(心陰影部・胸椎)、気道系(気管・主気管支)、肺血管系1(右横隔膜重複部)、肺血管系2(肺野血管末梢側枝)について、評価項目を「よく見える-見えない」の4段階に分け評価した。また、物理学的要素では肺野濃度、コントラスト、鮮鋭度、粒状性について「最適-不適」の4段階で評価を行った。
    <結果>骨系、縦隔系、気道系の描出性においてはS・F法がやや優れていたが、肺血管系においては両者に差はなかった。物理学的要素による比較では、肺野濃度(双方とも1.7-1.8)他、視覚的には大差はなかった。
    <考察>今回の視覚的評価では、肺血管系の描出性はグリッドなしCR法でも、グリッドありS・F法同等の評価が得られ、肺炎浸潤影の存在及び大きさ、拡がりの診断に適用できると思われる。しかし、今回の対象患者は12人中9名がS・F法で撮影管電圧が84-88kvであり、当院の同法での標準体撮影管電圧が90-94kvであることから、痩身傾向の体型が多かったことが、グリッドなしCR画像の評価を高めた一因であったと推測される。
    <まとめ>グリッドを使用しない病室撮影は、ポジショニングが極めて容易かつ短時間に行え、患者・介助者の身体的負担が軽減されると共に、グリッドが要因となるカットオフの問題も完全解消された。この点は高齢者の割合が多く、意思疎通が困難な患者も多い当院のような療養型病院においては、医療サービスの向上につながったと考える。
  • 三浦 弘, 藤原 誠, 土谷 龍彦, 大賀 正俊, 鈴木 浩司, 財前 博文
    セッションID: 1G409
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>本邦において食文化の欧米化や高齢化社会、生活習慣病の増加により閉塞性動脈硬化症(以下ASO)は急速に増加している疾患である。ASOの治療には、血管の狭窄もしくは閉塞部の診断にとどまらず、末梢血管の状態を把握する必要がある。近年、マルチスライスCT(以下MSCT)の多列化とワークステーションの性能の向上により、CTアンギオ(以下CTA)は血管造影法にかわる検査になりつつある。また、CTAは、血管造影に比べて侵襲性が低く、検査も簡便かつ短時間であり、閉塞病変の形や大きさだけでなく、プラークの性状評価も可能である。今回、64列MSCTによるCTAがASOの術前検査として有用であった2症例を報告する。
    <症例1>76歳 男性
     主訴:右下肢痛,間欠性跛行
     既往歴:脳梗塞,胃潰瘍,高血圧
     経過:平成14年頃より間欠性跛行を自覚、次第に症状悪化し50m歩行で右足が痛くなるため、平成17年7月当院受診。造影CTにてASOを疑い、精査目的にて入院。血管造影で右総腸骨動脈(以下Rt CIA)は完全閉塞であり右下腿の末梢血管は造影されなかった。一方、左総腸骨動脈(以下Lt CIA)と左浅大腿動脈(以下Lt SFA)に90%狭窄を認めたが、経皮的動脈形成術により改善した。バイパス手術の適応を判定する為、下肢末梢血管のrun off評価目的で64列MSCTによるCTAを施行。CTAにおいてもRt CIAの完全閉塞を認めたが、Rt SFAは側副血行路によって描出され、膝窩動脈や下腿動脈に明らかな狭窄や閉塞は認めなかった。平成17年11月、左大腿動脈から右大腿動脈間バイパス術と右大腿動脈から膝窩動脈間バイパス術を施行。
    <症例2>66歳 男性
     主訴:心窩部痛
     既往歴:狭心症,高血圧,高脂血症
     経過:平成17年3月心窩部痛発現、4月に狭心症の精査目的で入院。左足ABI低値(0.76)のため、冠動脈造影時に下肢血管造影を施行すると、Lt CIAで完全閉塞であった。しかしながら、閉塞部以下の末梢血管が造影されなかった為、血行再建術は不能と判断し保存的加療となる。
     腹部エコーにて腹部大動脈瘤が認められたため、平成18年4月に大動脈から下肢動脈までを64列MSCTにてCTA施行したところ、側副血行路によりLt SFA及び膝窩動脈、下腿動脈が明瞭に描出された。これにより血行再建術が適応となり平成18年5月バイパス手術予定。
    <考察>今回の症例はいずれもCIAで完全閉塞であり、SFA以下は内胸動脈や肋間動脈からの側副血行路を受けていた為、閉塞部の中枢側からカテーテルで造影を行なっても、閉塞部以下の末梢血管の描出は不可能であった。それに対して64列MSCTでは造影剤を経静脈的に全身投与する為、側副血行路と末梢血管を描出する事が可能であった。この事により2症例ともバイパス手術が適応となり、64列MSCTによるCTAが非常に有用であった。また、CTAにはボリュームレンダリングや最大値投影法、multiplanar reformation(MPR)等の多彩な画像処理法があり、その特徴を活かす事により術前検査として大きな役割を果たせると思われる。
  • 佐々 英也, 前田 健晴, 冨田 敦和, 前田 直希, 羽田 清, 沖 健次, 本多 鋭孝
    セッションID: 1G410
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言>塩酸バンコマイシン(以下VCM)は腎機能障害患者・透析患者等の腎不全患者や高齢者等では投与量・投与間隔の調節が必要であり、TDMにより有効性・安全性をチェックすることが望まれている。当院では、全患者を対象としたチェックと患者情報・処方情報等を基にチェック内容の標準化を目指しVCM管理システム(以下管理システム)を2005年7月に構築し運用してきた。今回は、管理システムの導入後のシステム変更やTDM業務・TDM解析の追跡調査を行ったので報告する。
    <運用と調査方法>管理システムは、Microsoft社のAccessを用いて作成した。
     当院では、オーダリングシステム(NEC Mega-Oak)を導入しており、オーダリングシステムからVCM投与患者とその基本情報・検査データ・VCM投与履歴(予定入力も含む)を抽出する。これらの情報を基に得たCcr値から、VCM添付文書上にある1日投与量の設定のためのMoelleringらのノモグラムを利用し目安投与量を計算するようにした。
     運用後において、患者情報(氏名・体重・性別・年齢・SCr値・Ccr値・BUN・CRP・透析情報)、処方情報(1回投与量・1日投与回数・病棟・科名・処方医師名)、算出した目安投与量、過去の処方履歴を表示させることによって情報を収集し、TDMを迅速かつ簡便に行えるように改良した。
     TDMは管理システムにリンクしてある塩野義製薬株式会社の解析ソフト(SHIONOGI-VCM S_edition Ver1.00 for Windows)を用いて解析を行い、医師に上申する方法をとることにした。
     また、調査期間は運用を開始した2005年7月まで遡って、チェック人数や投与量に問題があった症例・血中濃度測定症例数・処方変更になった症例を調査した。また、シミュレーションと実測値の誤差についてやSCr値補正方法によるシミュレーションの有用性についても検討を行った。
    <結果・考察>管理システムを構築して運用したことにより、VCMにおいては全患者を管理し、患者抽出からシミュレーションまで管理システム上で実施することができ、より簡便で迅速なTDM解析を行えるようになった。投与量に問題があった症例は管理した症例の半数近くあり、そのうち半数以上は処方変更となった。
     シミュレーションと実測値は、クレアチニン低値の症例を除いては誤差がほとんどなく、またSCr値補正によるシミュレーションは一部を除いては実測値に近い値が算出され、有用性が高いと思われた。
     今後は、他のTDMが必要とされている薬剤についても検討していきたい。また、より信頼性の高い情報提供を行えるようにし、薬剤の有効性・安全性の向上に努めていきたい。
  • 小磯 雄一, 岩野 弘法, 高崎 茂雄
    セッションID: 1G411
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに> 近年広い抗菌スペクトルを有する抗菌薬が登場し、感染症治療に大きく貢献している。一方、抗菌薬の安易な使用はMRSAを代表する耐性菌を増加させる要因となり、各医療施設で抗菌薬の適正使用の推進は重要な課題となっている。当院では感染対策委員会で、薬剤選択、使用量、使用方法について、診療科ごとにガイドラインを作成、また、毎月抗菌薬の使用状況、分離菌について検討し情報提供している。今回の調査では、抗菌薬の安易な使用を抑え、経済的効果も得られたので報告する。
    <方法> 2004、2005年度の分離菌の件数を調査、また、抗菌薬の使用状況を系列別に分類し併せて比較検討した。
    <結果> 分離菌件数は、2004年度でMSSA 602、肺炎球菌601、インフルエンザ菌483件であった。2005年度はインフルエンザ菌760、MSSA751、PISP365件であった。MRSAは404件から229件に減少した。系別使用量比率では、セフェム第1世代2%、第3世代3%、カルバペネムが2%増加していた。減少はペニシリン3%、セフェム第4世代と抗MRSA薬でそれぞれ1%、アミノグリコシド2%であった。使用量比較はセフェム第1世代、第3世代、カルバペネム系の使用本数が増加したが、他の系別薬はすべて減少していた。金額比率においては、ペニシリンで4%の減少、ほかの系別抗菌薬の変動は、変わらないか2%以内の増減に留り、分布割合はほぼ一定であった。系別同士の金額比較ではカルバペネムが4%増、セフェム第1世代の微増に対し、ペニシリンで20.8%、セフェム系第4世代で29.7%、他すべての系で減少した。全使用金額は前年度比で8.2%の経済効果を得た。
    <考察> 系別使用量比率では、各世代の分布割合で増減はあったが全体としてほぼ変化が観られず、耐性菌が増加していないことが伺えた。また、抗MRSA薬の使用量やMRSAの検出についても減少していることから、抗菌薬の適正な使用が要因と考えられた。カルバペネムが比率、金額、使用量共に増加傾向にあるのは好ましいとは言えない。今後は現在行っている情報提供が職員全体にいきわたるように職員掲示板で月別の情報を共有するようにして行きたい。ペニシリン系の使用量、比率は減少していたが、依然として20%を占めており、第一選択薬として使用されている傾向が推測できた。第3世代では比率、使用量が増加したにも関らず金額は減少していた。このことは、どの系にも言えることであるが薬の選択によってある程度金額を抑えられることが示唆された。今回の調査で経済効果の約半分はペニシリンが要因となっていた。しかし、全体的に観ても減少傾向であり、抗菌薬の適正使用に感染対策委員会が主体となって取り組んだことが結果として金額の減少に反映されたと考えられた。
    <まとめ> 今回、当院では、抗菌薬の適正使用に取り組んだことで安易な抗菌薬の使用を抑え、経済的効果も得ることができた。
  • 牛山 理佳, 井上 博文, 大倉 輝明
    セッションID: 1G412
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言>近年、感染症治療においてより強力かつ広範なスペクトルを有する抗菌薬の多用による耐性菌の発現が問題となっており、その防止対策として抗菌薬の適正使用の指針が求められている。富士見高原病院では感染対策委員会や Infection Control Team(以下ICTと略す)を中心とした取り組みの中で、薬剤科主導に市販データベースを用いた「抗菌薬適正使用支援システム」を構築した。これに基づき院内での抗菌薬使用に関する問題点を調べ、同システムの抗菌薬適正使用の指標としての有用性を検討した。
    <方法>抗菌薬適正使用支援システムは、市販のデータベース(以下DBと略す)ソフト「ファイルメーカーPro5.0」を用いて2つのDBファイルを作成した。「抗菌薬選択システムDB」では、適応菌種と適応疾患等より薬剤を検索する機能を持つレイアウトと、検索結果や薬価を比較検討するための「一覧」のレイアウトを作成した。さらに体内動態や安定性、配合変化等の情報を持つ「DI情報」レイアウトも作成し、抗菌薬の分類別に情報を持つ「抗菌薬副作用情報DB」とリレーションを設定、副作用の検索が可能とした。また感受性の比較検討が出来るよう「MIC一覧」のレイアウトを作成した。以上のDBを使用することにより、主として抗菌薬を10日間以上投与している患者について薬剤師がその使用状況の検討を開始し、さらに院内LANにより医師も各病棟で情報検索が可能な仕様とした。
     抗菌薬適正使用を検討するための院内報告システムは、同一抗菌薬使用が10日を超える場合やこれ以上長期の抗菌薬投与時に、各病棟のリンクナースよりICTの薬剤師に患者名を連絡、薬剤科において、支援システム、インタビューフォーム、文献等を用いて問題点の有無を検討し、その結果を医師に報告することにした。この中で抗菌薬の使用方法に問題点が見られる場合には、感染対策委員会やICTに報告し検討、臨床に反映するようにした。
    <結果および考察>2003年9月より2004年10月までに抗菌薬長期使用報告が3例あり、抗菌薬適正使用支援システムによる評価で全例に使用上の問題点があると判断された。その内訳は適応菌種に問題のあるもの1例、臓器移行に問題のあるもの1例、MIC高値(耐性菌)や投与量に問題のあるもの1例であった。
     抗菌薬を長期使用後に感染が再燃した症例について抗菌薬適正使用支援システムを用いて評価した結果、細菌検査による薬剤感受性だけでなく、薬剤の組織移行性や薬物動態学(PK : pharmacokinetics)的指標と薬力学(PD : pharmacodynamics)的指標を踏まえたPK/PDパラメータを評価に加味することが抗菌薬使用上重要であると考えられた。また、この支援システムを感染症治療の初期から積極的に用いることにより、適性かつ効果的な抗菌薬使用が可能になると思われた。
  • 大藪 宏樹, 水藤 博章
    セッションID: 1G413
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言>近年医療の質向上に役立てようとベンチマーキングが取り上げられる事が多い。このベンチマーキングは、診療結果など自院と他病院とのパフォーマンスの比較を通して改善を図る方法である。 愛知県厚生連は9病院を擁しており、各病院の規模及び診療機能は異なっている。異なる病院間を比較する場合に、各病院からのデータをそのまま使うことは合理的ではない。それは得られるデータには診療機能、患者の属性などを通じた背景やプロセスが伴うため共通化が求められるからである。しかし、他病院の状況を分析・活用する前段階として総合的に把握することは意味があると考えた。
     今回多施設を有する利点を背景に、抗菌薬について調査して比較を行った。
    <方法>9病院(A_-_I)の16年度医薬品購入実績より薬効区分(611:主としてグラム陽性菌に作用するもの-624:合成抗菌剤)の抽出を行い、その規格、数量、薬価額を基礎データとした。
     そのデータを成分、分類、MRSA薬、セフェム薬毎に分類し比較を行った。また、病床数、薬価額、一般細菌検査数との比較を試みた。
     病床数:203-692床
     規格数:112品目<9病院合計>(各病院の規格数 33-51)
     成分種:49種<9病院合計>(各病院の成分種 27-34)
     薬価金額:967百万円<9病院合計>   一般細菌検査件数:4180-74434件
    〈結果〉「使用本数」9病院全体で第2世代セフェム(17.8%)ペニシリン(17.0%)の順であった。
     「薬価額」多い順に第4世代、第2世代、第3世代とセフェム系が中心であり、これを1ベッド当たりの薬価額にすると303-171千円と1.78倍の開きとなった。
     「MRSA薬」3種類の薬剤のうち、どの病院もバンコマイシンが主となっているが、その使用割合は病院毎で異なっている。1ベッド当たりの本数にすると、12.57-2.31本と5.44倍の開きとなった。
     「セフェム系」第2世代の使用が多いが、第3世代が多い病院もあった。
     検査数/ベッド数」一般細菌検査数(培養・同定・感受性)を1ベッド当たりにすると、185.6-20.6件と9.00倍の開きがあった。
     「薬価額/ベッド数」薬価額を1ベッド当たりにすると、300-172千円となった。
     「薬価額/検査数」薬価額を検査件数で割ると、9441-1628円 5.80倍の開きがあった。
  • 白井 勝, 五十嵐 加弥乃, 土田 悦司, 大久保 淳, 雨宮 聡, 小久保 雅代, 梶野 真弓, 高瀬 雅史, 坂田 宏, 沖 潤一
    セッションID: 1G501
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <目的>旭川厚生病院NICUは北海道の道北地域の新生児医療の中核をなし、新生児搬送および母体搬送の受け入れを積極的に行って来た。過去の搬送依頼地域の総面積は21,400平方キロメートル(東京都の10倍)に及び、母体搬送のみならず新生児救急車による新生児搬送の距離は、出生体重1000g未満の超低出生体重児においても片道200キロメートルを越える。昭和63年4月の現在の新病院移転から新生児救急車が導入され、NICU総病床数は20床で運営されて来た。平成7年6月にはNICU施設基準承認病床6床の認定を受け、さらに平成8年3月には9床に増床となった。平成13年には北海道の新生児医療3次施設として総合周産期母子医療センターの認定を受け、平成18年4月からはさらに増床されNICU12床とGCU(後方病床)16床の合計28床となり総合周産期母子医療センター指定申請に向けての運営上必要なハード面での体制が整った。今回はその間の平成1年から17年までの新生児および母体搬送入院の変遷と生存率について報告する。
    <方法>検討期間を前期(平成1‐6年)、中期(平成7‐11年)、後期(平成12‐17年)の3期に分け検討した。
    <結果>年間の平均入院数は前期183名、中期198名、後期199名であった。出生体重2500g未満の低出生体重児はそれぞれ47.5%、54.0%、57.3%であった。院内出生率は44.4%、47.2%、59.9%で、母体搬送率が14.2%、19.8%、25.1%であった。新生児救急者搬送率は12.8%、24.2%、12.5%であった。全体の生存率は、96.8%、98.7%、98.8%で、出生体重1500g未満の生存率は、86.8%、95.4%、95.1%で、1000g未満では、73.5%、90.2%、90.7%であった。
    <結論>入院数は中・後期で増加し、低出生体重児の割合が増加した。院内出生は50%を越え、特に母体搬送による入院児が全体の1/4に達した。生存率も改善し出生体重1500g未満の児においても95%を越えた。
    <結語>院内出生さらに母体搬送入院の増加は地域産科施設の協力体制が整備されて来た証と考えられる。広域医療圏をカバーする上で今後の更なる医療成績の改善には、新生児のみならず母体・胎児管理が必要なハイリスク分娩の周産期センターへの集中化と管理体制の向上が必要であり、当院においては総合周産期母子医療センター化による施設の充実と医療体制の改善が急務と考える。
  • -早期退院調整-
    近藤 辰則, 吉田 ミツエ, 遠藤 寛子, 福田 玲子, 下重 勝江, 嶋田 冨枝
    セッションID: 1G502
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>国の医療費抑制策としての長期入院減算方式は、病院の経営として、患者の入院期間短縮に向かわざるを得ない。この期間短縮へ私たちが関われることを考えたとき、当院に多い「主治医の退院許可が出ても、すぐに退院に至らないケース」に思い至った。このような例では、退院許可の出た後に、家族より「帰宅後の看護介護への不安」の言葉がでてから初めてその相談に乗っていたのが普通であった。私たちは、この「退院をためらっている時間」を入院期間延長の主原因と解釈し、退院直前ではなく、入院当初より帰宅後の不安解消を目的としての退院支援を行うことで、大幅な入院期間の短縮に成功したので、「自宅看護介護の不安の内容」と併せてここに報告する。
    <研究方法>過去に帰宅後の看護介護不安を訴えることの多かった疾患名を持つ、新規入院者40名およびその家族を対象として、「帰宅後の不安の内容について」のアンケート調査を行った。次に、これを元にしての支援計画書を作成して、看護職員に配布し、入院当初からの相談に応じられる環境を整備して、活動を行った。そして、この支援開始前の入院所用日数との比較を行い、さらに、このような支援を受けた後の「帰宅後の実際の不安」についても本人、家族に追跡アンケート調査を行った。
    <結果>入院当初の調査で、帰宅後の不安を訴えたのは対象者の80%占め、「介護の仕方がわからない(28%)」「病気に対し不安(16%)」などが多かった。
     主治医の退院許可後の入院日数(退院ためらい時間)は支援以前の平均30日から、支援活動開始後は、同じ疾患名の患者で、在宅へは12日間、介護施設へは14日間、療養型病院へは21日間となった。
     退院後の追跡結果では不安が依然あるのは30%と大きく減ったが、その内容は「家人の留守中に一人にしておく不安とか高齢とか(42%)」や「住宅の構造上の問題や仕事の関係(25%)」が主であった。但し、入院延長を望んでいた人(33%)も多かった(全対象者で換算すると約1割を占めた)。
    <考察>退院までの日数が大幅に減ったのは、入院当初より支援を行うことで退院後の家族の不安を解消したためと考えられるが、「話を聞いて貰った」という安心感の要素が大きかったとも考えられる。その理由は、当院及び私たちの看護体制に家族が「退院後の不安」を表出できるような機会が制度として存在しなかった(入院相談はある)事実がある。
     勿論、この不安に対応するだけの知識を看護職員に徹底させたことで、支援内容を統一でき、家族の理解を得られた点はもっと大きいと思われた。
     又、相談後の不安内容が、最初は患者本人の健康問題が多かったのが、相談後は家族を含めた生活全般の不安に変化したのは、実際の在宅生活になると病気そのものよりは介護体制そのものに困難があることに気づいたたためと思われる。
     今後、医学的なことだけではなく地域社会との連携で在宅での生活を主とした退院支援を進めていきたい。
  • 白鳥 未知, 堀江 祐子, 西広 美幸, 中村 みゆき, 金井 珠美, 大井 真澄
    セッションID: 1G503
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>近年、教育や職場における男女の機会均等が進む中で家庭内での役割も性差が少なくなってきている。出産・育児に対して協力的な父親が増えてきており、出産準備教育にも夫婦で参加する傾向がみられる。父性は、わが子との関わりのうちに経験的に生成するものである。そして、妻のみならず夫自身が胎児に愛着をもち父性を成長させていくことは妻の母性も成長させ、夫婦にとっての出産、親としての準備性に強く影響するとの報告もある。しかし、母性に比べると父性についての発達過程等の研究は少ない。
     そこで今回、父親になる気持ちが高まる時にはどのような因子が影響しているのかを明らかにするため、この研究に取り組んだ。
    <研究方法>対象は初産の経腟分娩の褥婦の夫31名、帝王切開分娩の褥婦の夫20名、計51名。“父親になる気持ちを感じた時期や事柄”を問う独自に作成した25項目の自記式質問用紙と児に対する感情をあらわす花沢氏の48項目の対児感情評定尺度を分娩後2時間値観察時に配布し、妻の入院中、記入できしだい回収。それをもとに調査・分析を行った。実施については倫理的配慮を厳守のうえ行った。
    <研究結果・考察>夫の年齢分布は、19歳から47歳と幅があり、平均年齢は30.6才であった。
     父親になる気持ちが高まる時期をみると、妊娠前や妊娠中には低く、分娩から出産後にかけての時期に高くなっていた。このことから実際に子どもが出生し産声を聞いたり、見たり、触れたりすることで父親になる気持ちが高くなったと考える。また、分娩前においても胎児の姿を見たり、心拍を聞いたり、胎動を感じたことなど、夫が体験した時に父親になる気持ちが高まっていた。このことから父性を高めるために、妊娠中より胎児に関わり、接触する場を増やしていくことが重要である。
     母親学級などの教育の場では父親になる気持ちを感じる人は少なかった。それに比べ育児雑誌を読んだ時や、出産・育児用品を準備している時は多い傾向にあった。
    また、早い時期より父親になる気持ちを強く感じている夫には、今までに子どもの世話の経験がある、児に対しての接近感情が回避感情より上回っている、子どもを育てたいという感情が高い傾向があるということが分かった。
     世話経験の有無と対児感情評定尺度の平均点を比較したところ、双方有意差は見られなかった。
     また、立会いを経験した夫は拮抗指数が低い結果となった。このことは、児への否定感情が抑えられていることを示し、立ち会い分娩を経験することは、父親になる気持ちをより高める要因となることがわかった。
    <結論>
    1.子どもの世話経験の有無と夫自身が持っている対児感情が父親になる気持ちの発達を促す因子であることがわかった。
    2.夫自身が、妻の妊娠中より実際に胎児を見たり感じたりすることが父親になる気持ちの成長を高める要因となる。
    3.早い時期に父親となる気持ちが強くなると、育児行動が高まるという結果から、妊娠中から父と胎児が関わりをもてるように働きかけていくことが必要である。
  • 宇野 郁子, 秋本 信子
    セッションID: 1G504
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー

    〈はじめに〉
    24時間継続してケアにあたり患者の擁護者としてその役割を果たそうとしている看護師は治療や療養生活をめぐって生じる倫理的ジレンマに陥りやすい。3年前から倫理的感性を高めようと「看護倫理」の講演を全看護職対象に院内研修の一環として行っている。今回看護師が、日常看護場面で「悩んだり」「直面する」倫理的問題を明らかにし、今後の対処方法を具体化しようと現状調査を行った。その結果を報告する。

    〈調査・対象方法〉
    対象:平成17年8月在職看護職員416名中看護倫理の講演を聴講した380名調査方法:自己記入式調査票(1997年日本看護協会で実施した看護職者が直面する看護倫理上の悩み調査票を使用)を配布、記入後所属長を通して回収

    〈結果〉
    有効回収枚数は352枚で、回収率は92.6%であった。設定された看護場面で全対象者の50%以上が「直面した」と答えた項目は4項目であった。最も多かったのは「自分の能力を超える仕事をしなければならず、自分の知識や技術に自信がもてないがやらねばならない時」の58%であった。次に「医師の指示が対象者にとって最善ではないと感じるが、指示に従わなくてはならない時」56%「同僚の判断やケアが適切でないと感じるが、その事実を指摘できなかったり、黙認しなくてはならない時」が52%であった。「自分の能力を超える・・・」と回答したのは20代59%、30代66%、40代48%、50代19%と30代に「直面した」と回答した割合が高かった。

    〈考察〉
    日常業務で看護師が直面する倫理的問題は、看護師自身の能力と業務の困難さとのバランスの問題、医師との関係で起こる問題、看護師間の関係で起こる問題と他の多くの研究結果と同じであった。今回の調査では30代の看護師ほど「自分の能力を超える仕事をしなければならない時」に「直面した」と答えている。学生指導やリーダー業務、看護研究など様々な役割期待がこの年代に課せられている現場の状況が関係しているものと思われる。また、医師との関係、同僚との関係の問題も多くの看護師が直面している。このことは誰とでも対等に話し合い、患者にとってより良い解決方法を見つけ出すというチーム医療やカンファレンスの定着が当院ではまだ十分ではないこと、看護専門職として患者を擁護する立場に十分立ちきれていない現状のあらわれだと思われる。患者の擁護者として行動化するため、また多くの職種とカンファレンスを行いより良い看護を提供するために患者ケアへの責任を明確にすることは倫理上極めて重要なことであり、教育の充実が求められる。

    〈おわりに〉
    今回の調査で、当院看護師が感じている倫理的問題について把握することができた。自身の能力と現場の期待のアンバランスでは、役割期待の大きさと病棟における各年代が協働できる体制、屋根瓦方式の育成方法などが定着しきれていない現状が見えた。また、医師や同僚との関係では今の医療の現状を反映しているとも言えるが、誰とでも対等に患者の問題について話し合える環境の育成や、看護師自らが看護倫理に関して認識を深め、看護師としての責任についてもっと意識を高めさせていくためにも看護倫理教育を更に充実させていく必要性があることが解った。
  • 鈴木 悦子, 永井 さと, 須賀野 幸恵, 小林 美幸, 中沢 京子
    セッションID: 1G505
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>電子カルテ化が進む近年、当院においても業務改善や看護の質の向上をめざし、看護支援システムが2006年2月より本稼動した。事前に院内での電子カルテに関する説明会や訓練、NANDA-NOC-NICに関する勉強会が進められてきた。しかし、本稼動してからいくつかの問題点も出現したため、カンファレンスにおいて問題点を検討してきた。そこで2ヶ月が経過した現在、看護支援システム導入後の課題が明確となったため報告する。
    <目的>看護支援システムにおける現在の問題点を明確にし、今後の課題を見出す。
    <方法>
    (1)ケアカンファレンスの時間帯を電子カルテに関する検討会とし、自由討議した。発生した問題点、検討内容を全スタッフが把握できるよう議事録にし、看護支援システムの統一が図れるようにした。
    (2)(1)の結果より看護支援システム導入後に発生した問題点の内容を分析する。
    (3)倫理的配慮:全スタッフに研究の趣旨について説明し、承諾を得た。
    <結果>電子カルテ自体の取り扱いについては、院内の24時間体制で設けている相談窓口を利用し解決していた。NICUにおける看護支援システム導入後の問題点について分析した結果、3つにカテゴリー分類できた。(表1)
    <考察>看護支援システムが本稼動してから電子カルテにも徐々に慣れつつあるが、事前に訓練や勉強会をしても実践で困難をきたした。記録に費やす時間や看護診断の妥当性の判断、両親との情報共有化の問題が発生した。安野ら1)は「導入後しばらくは、日々の業務が効率よく行えているのかをスタッフ同士で話し合い、業務整備に不備はなかったかを確認し、むだな業務があれば改善する」と述べている。記録に関する時間外勤務も電子カルテに慣れるに従い減少できたことは業務量の短縮につながったと考える。しかし、スタッフは電子カルテ自体にストレスを感じていたため、重荷にならないような精神的な配慮も重要であった。両親に対して、平岡ら2)は「家族の知りたい情報を提供するにあたっては、電子カルテを使用した視覚的で理解しやすい情報提供を考えていく必要がある」と述べており、今後は家族との看護計画の共有化が円滑に実施できるよう情報提供のあり方について早期に対応していく必要性がある。
    <まとめ>
    (1)カンファレンスで業務中に発生した問題を日々スタッフ全体で検討したことは、看護支援システムの統一化や記録時間の短縮に有効であった。
    (2)NICUにおいて両親への情報提供のあり方や看護計画の共有化は今後の課題である。
    <引用文献
    (1)安野洋一.根本大介:ナースのための電子カルテ導入・活用ガイド、学研、2005
    (2)平岡翠:電子化・家族との共有・情報開示 変わるNICU看護記録、Neonatal Care、1200から236、2005
  • 室 美香, 望月 剛, 窪田 薫, 片山 訓道
    セッションID: 1G506
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>
    平成18年4月1日厚生労働省から地域がん診療連携拠点病院としての整備指針が施行された。当院は平成15年から地域がん診療拠点病院として認定され、様々な院内の体制作りを行なってきている。指針の名称が診療拠点病院から診療連携拠点病院へ変わったことにより、情報提供体制の強化を強調した内容となった。今回はこの整備指針の中から特に院内がん登録に着目して運用方法等を報告する。
    <地域がん診療連携拠点病院としてのあり方>
    地域がん診療連携拠点病院とは、厚労省の第3次対がん10年総合戦略において、質の高いがん医療の全国的な均てん化のための医療体制を確保するとともに、地域の医療機関との診療連携を推進し、患者様に対する相談支援機能についても強化するため二次医療圏単位で設置される。
    整備指針の三大体制
    1.診療体制 …専門的ながん医療に携わる医療従事者を配置し、集学的治療や診療ガイドラインに準ずる標準的治療等の実施、クリティカルパスの整備、地域の医療機関との医療連携体制、セカンドオピニオン提供体制の構築を行う。
    2.研修体制 …主に地域のかかりつけ医等とともに公開カンファレンスや研修を開催する。
    3.情報提供体制 …1)相談支援センターを設置し、院内外の患者、家族、地域の医療機関からの医療相談に対応する。2)国立がんセンターに設置されるがん対策情報センターと連携して様々な関連情報の提供を行う。3)標準登録様式に基づく院内がん登録を実施し、都道府県が行う地域がん登録事業に積極的に協力する。
    <院内がん登録>
    院内がん登録とは、当該施設でがんの診断、治療を受けた全患者(腫瘍)を対象に、がんの診断、治療予後に関する情報を集約し、整理・保管、集計・解析、報告・公表する仕組みであり、地域がん診療連携拠点病院の必須要件となっている。当院では、平成17年10月1日以降に“がん”と確定診断された患者を対象に登録を開始した。
    <運用方法>
    主治医 …対象患者の電子カルテ内のがん登録エリアに必要項目を入力する。
    事務 …“がん”確定から6ヵ月後を目途に、電子カルテより条件を設定し、抽出したデータを基に内容確認を行い、未記入があるものは依頼リストを作成し主治医に入力依頼を行う。依頼リストには、個人情報保護法などの問題から氏名、病名は省き、患者IDと未記入項目を明示し一定期間後に回収を行なう。そのリストと電子カルテ内のがん登録画面を基に標準登録様式に基づいたがん登録専用システムに登録を行なう。
    <問題点>
    1.事務によるがん登録の際、各種がん取り扱い規約からUICCのTNM悪性腫瘍の分類への変換作業が困難である。
    2.主治医によるがん登録が徹底されていない。
    3.予後調査の方法が確立されていない。
    <今後の目標>
    西三河医療圏の地域がん診療連携拠点病院として、院内がん登録が迅速に行えるように、上記問題点の検討・対策及び、腫瘍登録士の育成等、病院全体の協力体制を整えていく必要があると考える。
  • 院内LANの有効活用
    酒井 義法, 坂本 由美子, 井坂 信之, 田沢 潤一, 藤原 秀臣, 藤沢 忠光, 江幡 惠子
    セッションID: 1G507
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>当院では病院情報システムを院内LANとして位置付け、情報端末をオーダーリング専用とせず個人宛メールの送信が可能な連絡網、インシデント・アクシデント報告システム、サマリー作成システムなどを組み込んで活用しているが、職員向け院内ホームページ(HP)も内容の充実をはかっている。
     HPへのアクセスはデスクトップ上のアイコンをクリックまたは電子カルテ上のWebボタンを起動することにより可能となる。電子カルテを操作中であっても、カルテ画面を閉じることなくHPへアクセスが可能であり、HPの内容を参照しながら電子カルテを入力することが可能である。HPの内容や各種のマニュアル類は必要に応じて情報端末に接続されたプリンターから印刷が可能である。HPの数が増え内容が増加してもWeb上で稼働しているので、電子カルテ本体のパーフォーマンスには影響が無い。
    薬剤部、放射線部門などの各部門、褥瘡対策委員会、感染管理委員会、各種委員会、クリニカルパス委員会などの各委員会が院内HPを立ち上げているが今回は臨床検査部門と感染管理委員会のHPを紹介したい。
    1)臨床検査部ホームページ
     検査部オーダーリング虎の巻は生理、検体、細菌の操作方法を網羅しており新任の医師、看護師、検査技師の必読の内容となっている。検査関連のトピックスも充実しており、各種検体の提出方法、採血の注意点も簡潔にまとめられている。項目別保険点数の一覧や各検査項目の結果報告までの期間も役に立つ。腫瘍マーカーの疾患別の陽性率も有用性が高い。検査関連でよくある質問もQ&A集の形にまとめられている。HPのレイアウトも非常に優れており、かな、alphabet別の索引もつけられており、検索が容易で検査部のHPをみれば大抵の疑問は解決するほどの内容になっている。また臨床検査部で一番アクセス件数の多いのは検査部の旅・写真館のコーナーで月に1から2度更新されており、職員に憩いを提供している。
    2)感染症委員会ホームページ
     院内感染を予防するうえで重要な、MRSA、HIV、結核等の感染防止マニュアルやSARS受け入れ、感染防止マニュアル等がすぐに閲覧できる。血液体液汚染自己マニュアルやスタンダードプレコーションの手順もマニュアル化されている。抗生剤適正使用ガイドライン、除毛ガイドライン、手袋着用ガイドラインも整備されている。各種マニュアル、ガイドラインはPDAファイル化されており印刷も容易である。感染症の症届出用紙も以前は病棟に用紙を配布していたが、現在ではHP上から印刷して提出する運用に変更している。感染管理に関する問題が発生しても情報端末の感染症委員会のHPにアクセスすれば初期対応には困らない状況である。院内の細菌検出状況も月ごとに報告されている。
     両HPも有用性が高く、院内にある450台の情報端末から容易にアクセスが可能であり、日常診療に大きく貢献していると考えられる。
     <おわりに>以上院内向けHPは大変有力な情報伝達手段であるが、扱う情報は日々刻々変化するものであり、担当職員の熱意とたゆまぬ努力により高い有用性が維持されている。
  • 角谷 礼子, 近藤 順子, 滝川 美春, 駒田 律子, 太田 由美子, 速水 一夫, 岩崎 誠一, 永里 優枝, 鈴木 理美子, 菅沼 みち ...
    セッションID: 1G508
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言> 電子カルテシステム操作は、日常で使用するパソコン操作と診療録としてのツールとでは画面構成などに大きな違いがある。このツールが使えなければ業務ができないこと、特に看護職は多機能の操作をマスターしなければならない。そして何よりも診療録として守るべきモラルがあり、職員の教育は必要不可欠である。当院は、2002年5月に電子カルテを導入した。導入期における全職員教育には3ヵ月間を要した。2003年の新採用者には画面説明のみを行ったが、「電子カルテを使ってみないと分からない」という意見から実際に操作できる環境が必要であるという結論に至った。2004年から不安なく操作ができることを目的に、新採用者オリエンテーションの一環として1人1台の端末を使って実際の操作を行なっている。また中途採用者も操作の説明後、配属している。当院における教育の実際を報告する。
    <方法>
     1. 全職種の新採用者は電子カルテに触れる前に、医療情報室から電子カルテの概要、セキュリティ対応、個人情報における注意点等講義・グループワークに参加する。看護職の操作日程は対象者を2日間に分け7時間を1日コースとする。その内容は利用者認証、ベッドコントロール、移動・食事オーダ、看護計画・指示、フローシート等である。システム委員は教育環境にテスト患者のオーダを入力し、医療情報室と人数分の電子カルテ端末を設置する。操作教育当日は操作マニュアルに基づきその手本を見せ、新人は実際に入力する。傍にはシステム委員を配置し指導を行なう。最後に習熟度テストと、勤務1ヵ月後には自己評価チェックも行なう。
     2.中途採用者には新人とは異なり操作方法を2時間で説明し、後は配属先で指導を行なっている。
    <結果・考察> 新採用者から実際に操作したいと希望が多いことから始め今年度で4回目となる。システム委員のインストラクターは1名あたり新人4名を担当している。回数を重ねるごとに操作状況を把握し、進行を待つなどの配慮ができるようになっている。新採用者からも、システム委員がいつも傍にいてくれるので質問し易いという意見からインストラクターは必要不可欠である。時期は勤務に慣れてから行なうことで効果が上がり、熱心に受けている。アンケートからも基本的操作と看護過程の一連は分かりやすいこと、職場で生かすことができるなどである。反面、想像していたよりは難しい、集中してできたが1回では覚えきれないなどの意見もあり、操作訓練では50_から_60%が理解できたと回答している。難しい項目は、看護計画・指示、看護プロファイル、患者スケジュール・看護カーデックス等で、入力には時間をかけて操作することが必要である。また1ヵ月後の自己評価では難しいと回答した項目にも80_から_90%操作できるようになっている。操作日程と時間、内容も適切と考える。中途採用者は2時間かけて電子カルテの概要、セキュリティ対応、個人情報における注意点等と画面説明であるため、新採用者と同様な操作訓練を希望している。中途採用の教育環境においては今後の課題である。
    <まとめ> 操作教育だけで電子カルテに慣れ不安なく操作ができることを望むのは無理なことであるが、日常業務での操作に慣れ電子カルテへの不安、抵抗は少なく操作にも早く慣れている。システム委員としても自己評価100%を目標にフォローしたい。また、操作教育の事前データの準備は大変であるが、教育に関わることで後輩指導に役立つと考え今後も継続していく。
  • 高橋 佐智子, 松原 弘子, 須場 今朝子
    セッションID: 1G509
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言>当院で、新人看護師のニーズやペースが的確に把握でき、固定したペアで適切な指導ができるという利点を持つプリセプターシップが導入され3年が過ぎる。しかし指導する側のプリセプター自身も、十分な支援や助言を得られないと、負担を感じてしまうという欠点もある。当病棟でも過去にプリセプティの個性の理解に悩み、人間関係構築や指導に苦しむプリセプターが何人か見られた。
     そこで今回、プリセプターのアソシエイトナースとしての役割を考え、1.プリセプターとプリセプティが良好な関係を築けること、2.勉強会・面接を通して、双方が満足できるような効果的な指導が行なわれるよう教育環境を整えること、を目的として取り組んだのでここに報告する。
    <期間>平成17年3月から10月
    <方法>平成17年3月に、プリセプターとしての経験をもつスタッフ6人を対象として、(1)適切な学習方法(2)適切な評価(3)学習意欲を引き出すアプローチ(4)意見や思いの傾聴(5)個性の理解(6)満足のいく指導という6つの視点でアンケート調査を行った。この結果を元に学習方法、学習意欲の引き出し方や個性の理解に焦点をあて、コーチングやアサーションスキルアップトレーニングというようなテーマ別の勉強会を今年度のプリセプターに行った。「適切な評価」に関しては、以前から4階西病棟で新人スタッフに用いられてきた技術項目チェック表をもとに、田島の教育評価より認知領域、情意領域、精神運動領域からの視点で、より細かく達成できた項目と努力を要する項目が評価できるように見直した。さらに面接を行い、プリセプターが一人で責任を抱え込まないように面接内容をチームリーダーへ伝達し、所属するチームからの協力も得られるように配慮した。
    <結果>勉強会と面接を開始して半年後の10月、プリセプター2名を対象に、同項目6つの視点でのアンケートを実施した。その結果(3)学習意欲と(5)個性の理解については100%、という回答が得られ、効果がみられた。しかし、(2)評価方法(4)意見や思いの傾聴については50%、(1)適切な学習方法と(6)満足のいく指導の項目は0%という結果であった。その理由に『適切であったかわからない』『これでよかったのか不安』と挙げられていた。
    <考察>新人が初めての職場環境、人間関係に対して不安であるのと同様に、プリセプターもプリセプティとの人間関係構築や指導に対して大きな不安を抱いている。そのため、プリセプターの教育や精神的負担の軽減といった、十分な支援体制によって教育環境を整えることがとても重要である。
     今回のアンケート結果から、自分の指導に対して『満足』できなかったのは、自分の行なった指導が適切かどうか、『不安』であったのではないかと考える。満足感や達成感を得ることは自己効力感につながり、自信をもって次のステップへつなげるための重要な要素であると思われる。よってアソシエイトナースの役割として、プリセプターが自分の指導に満足できるような、指導側に対する評価も必要であったと感じた。
    <まとめ>今回、プリセプターのアソシエイトナースとしての役割を考え、勉強会と面接を行った。今後も十分な支援体制によって教育環境を整えるとともに、今回の反省をいかし、プリセプターが適切かつ自信をもって満足できる指導が行なわれるような指導評価方法を考え、プリセプターへフィードバックしていきたいと思う。
  • -退院調整に関わる認識に焦点をあてて-
    各務 祐佳, 堀 ちづる, 福澤 華代, 勝美 美晴, 鷲見 百合子
    セッションID: 1G510
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>核家族化が進み、高齢者がどのように在宅で療養されているのかを実際に見ている病棟看護師は非常に少ない。そこで今回、退院後訪問看護研修(以下、訪問研修とする)を病棟看護師が行うことによって、実際の在宅療養の場がイメージでき、退院調整に関わる認識が高まるのではないかと考え、研究に取り組んだので報告する。
    <方法>研究期間  平成17年5月から平18年2月
    <研究方法>
    (1)病棟看護師が訪問看護に同行する研修を実施。
     対象患者 :当病棟退院後在宅療養となった患者・家族で研究の主旨を説明し、同 意の得られた4名
     対象看護師 :当病棟スタッフ22名
    (2)退院調整に関わる認識度の質問紙調査。
     時期 :訪問研修前・直後・2ヶ月後
     分析方法 :質問紙は「どの程度認識していますか」という質問でそれぞれ21項目を10段階尺度で記入してもらい平均点で比較する。
    (3)研修を行った病棟看護師に自由形式で感想を書いてもらう。
    <結果・考察>退院調整に関わる認識度の調査結果、全ての質問項目で訪問研修直後に上昇があり、ほとんどの項目で訪問研修2ヶ月後の退院調整に関する認識は大きな低下はなかった。このことから、病棟看護師の退院調整に関する認識向上をねらった研修として効果があったと考えられる。
     また、訪問研修直後は認識が上がってもそれを維持するのは難しいと予想していたが、2ヶ月後の低下はそれほどなかった。日々の業務で退院調整に関わることが増えてきているのも確かであるが、研修をきっかけに全体の意気が上がってきたことが大きな低下をきたさなかった理由の1つではないかと思う。
     2ヶ月後の調査結果で、唯一認識が低下していたのが、在宅での生活を理解するという認識であった。見てきたことは忘れていくという人間の特性とでも言うべきことかもしれない。だが、必要性、重要性など研修で感じてきた思いは、訪問研修後の認識の維持・向上に繋がっていると思っている。知識の獲得、技術の修得、方法の習得といった研修ではなく、認識への働きかけができた研修と考える。
     次に、研修後に感想を書いてもらった中で次のような気づきが多く書かれてた。
    「入院中と違った在宅での患者・家族の表情」
    「会話の大切さ、聞き役の大切さ」
    「人間関係、信頼関係の大切さ」
    「介護者の負担、ストレス」
    「サービスの必要性や他職種の役割」
    「その人の意志の尊重、その人らしい生活」
    「情報提供の大切さ」
     質問紙では測ることのできない部分での気づき1つ1つが、研修後の認識上昇とその後の維持に繋がっていると考える。
     また、対象患者・家族は入院中からの関係があったため、たった1回で、しかも30-40分程度の研修が効果的に行えた要因の1つであったと考える。初対面では、とてもこれだけの気づきや興味、関心はなかったと思う。
     そして、研修から帰ってきた病棟看護師が口からこぼす驚きや感動の言葉に、他のスタッフもすぐに共鳴し、相乗効果的な要素も加わり、研修は楽しく効果的に終了することができたと考える。
    <まとめ>
    1.訪問研修で、病棟看護師の退院調整に関わる認識は上昇した。
    2.訪問研修2ヶ月後の認識度は、大きな低下はなかった。
    3.入院中から関わっていた病棟看護師が、退院後に訪問研修を行うことは、より効果があるといえそうだ。
    4.質問紙では測ることのできない具体的な気づきが多くあった。
  • 伴 慶子
    セッションID: 1G511
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに> 今や周手術期看護は、術前・術中・術後として他の臨床看護業務と同じように看護過程というシステムの中で実践されるものとして発展してきている。また医療を取り巻く経済環境が急速に変化していく中で、医療の安全と質の向上を維持しながら、経営の効率化を図ることが求められている。そこで手術室看護師の業務内容を見直し、医療材料のキット導入により業務の効率化を考えてみる。
    1.当院の手術室看護システム
     手術は緊急を除いては午後から行われる。手術件数は120件/月。夜間、休日は待機体制である。中央材料室には、責任者として看護師が入るが大半は看護助手が滅菌業務を行っている。全身麻酔で手術を受ける患者は全症例、外回りの看護師が術前訪問を行う。その後術後訪問も実施する。
     看護業務の内訳は全体の業務中約30%が付帯業務(展開、ピッキング、再生品作成、器械セット組、滅菌業務、片付け、補充)で占められており、このうち手術材料に関する業務が約80%を占める。
    2.キット導入の目的
     1.手術準備にかかる時間の短縮をする。
     2.緊急手術への対応の時間短縮をする。
     3.在庫物品の低減をする。(ディスポキットの有効期限3年、1箱単位の発注が可能)
    3.キットの導入の結果
     緊急性があり一刻も早く準備が必要な産婦人科帝王切開術キットの導入について考えた。必要な材料がワンパックされたキットを使用することにより術後の片付け、物品再生、滅菌作業が大幅に改善が図れた。また夜間の呼び出しにおいてもスタッフの経験年数による準備時間の差が解消される効果も得られた。業務の効率化はチームや個人の負担を軽減し手術看護のスキルアップのための時間を生み出すために必要であると考える
  • 砂畑 文子, 田中 美智代, 野村 美由紀, 堀井 範子
    セッションID: 1G512
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言>診療報酬の改訂により在院日数が短縮されている。そのため、看護師は、患者の家族や医療・福祉に関わる人々と連携をとり、退院後の療養生活を準備するという退院調整が重要な役割となっている。
     特に介護保険制度の対象者が入院した場合は、入院当初から、退院調整を開始しないと対象者の退院後の生活に支障きたすことになる。しかし、介護保険対象者は高齢者が多いため、必要な情報を収集するには、対象者のキーパーソンの特定が大切となる。また、調整の実際では、介護保険に関する知識を看護師がどの程度持ち合わせているかが、積極的な早期退院調整の鍵であるともいえる。
     そこで、病棟看護師の介護保険に関する知識と退院調整の現状を調査し、問題点を明確にした。
    <方法>
    1.研究対象:病棟に勤務する看護師・助産師17名。倫理的配慮として、調査用紙書面にて目的を説明し、回答があった者を承諾が得られたとした。
    2.研究期間:平成17年9月から11月
    3.調査方法および内容
    1) 介護保険に関する知識調査は、自記式選択法で20問作成。
    2) 退院調整の情報収集に関する質問は、「患者と家族に退院後の療養について」「病室で面会者がいたときの行動」「主治医に今後の方針の確認」を『していない』『あまりしていない』『時々している』『常にしている』の選択肢法の評定法で回答。「退院調整で困ったこと」「連携を必要とする職種」「希望する学習会」について、複数選択法で回答。
    4.分析方法:統計ソフトSPSS10.0jfor Windowsを使用した。退院調整の現状調査で卒後経験年数は、1群:1-4年目、2群:5-9年目、3群10-25年目に分け、一元配置分析を行なった。
    <結果>介護保険制度に関する知識(100点満点中平均点)は、介護保険に関して65点、施設に関して41点、訪問看護に関して82点であり、施設に関する知識が低かった。
     退院調整の現状調査では、情報収集に関する質問において、卒後経験年数の1群と3群と比較して、有意に高かった(p>0.05)。つまり、経験年数が少ない看護師は、面会者に対して患者との関係を確認することや家族へ退院後の療養希望を聴くこと、医師に今後の方針を確認することは、なかなかできないという結果がでた。
     今回の調査の結果、介護施設への知識不足と退院調整力には、看護師の力量の差があることが明らかとなった。しかし、病棟で勤務する看護師の経験は様々である。それぞれが一生懸命看護に取り組んで入るものの、内容に差が出ることもある。従って、退院調整のように高度な力量を必要とされる看護は、入院時より上席にあるものを指導者として、受け持ち看護師とともに関わることが大切である。看護の質を保証するためにも、看護師の関わりが標準化されることも必要である。
     今後は、退院調整や地域資源についての学習会を開催して、介護保険制度に関する知識を高めていきたい。また、退院調整を入院時からシステム化できるよう、記録の改善も課題となる。
  • 鳥本 加代子, 初崎 初美
    セッションID: 1G513
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言>疾病構造の変化、在院日数短縮を背景に外来看護の果たす役割の変化が求められた。当院では電子カルテ導入により看護周辺業務がなくなり看護に費やす時間が増えたことを受け、診療の補助中心の外来看護から療養上の世話の出来る看護に眼を向け慢性疾患長期通院患者を対象に継続看護を開始した。その後病棟からの継続看護の要請を受け、長期入院患者退院後の外来継続を開始し病棟・外来間の継続看護カンファレンスの確立を定着させた。更に外来記録マニュアルの整備、看護計画の開示を実施することができたので報告する。
    <方法>当院は病院移転と同時に電子カルテを導入し看護支援システムも組み込まれた。看護部はカルテ開示に向けて概念の統一とアセスメント能力の向上に向け看護診断を導入したが外来では日々のフォーカス記録しか残せていないのが現状であった。そこで外来看護師を対象に看護計画の学習会を開催し外来での長期通院患者を中心に受け持ち看護師を決め継続看護を開始した。その後病棟からの継続依頼を受け病棟・外来間の継続看護を開始した。しかし記録マニュアルが病棟中心に作成されていたため、外来における看護計画の修正、サマリー記載、継続看護、外来における看護計画開示を含め外来記録マニュアルを外来記録委員で作成した。病棟からの継続看護の方法は、病棟からの依頼で外来看護師が退院前に訪室し受け持ち看護師の紹介や外来受診方法を説明した。他職種の関わりの必要な症例に関しては入院中より他職種間カンファレンスを行い外来看護師も同席した。病棟看護師は退院サマリーを記載し残された看護問題を外来看護師に提示した。外来では看護計画を立案し看護を展開し来院時はフォーカス記録を行い定期的に外来サマリーを記載した。再入院の際には外来での情報が病棟で確認出来、病棟・外来間の継続が確立できた。2003/1-2003/12の外来受け持ち患者数は129名、2004/1-2004/12では170名、2005/1-2005/12では392名と患者数は増加した。
     また継続看護対象者に対して看護計画の開示を2003年より開始した。2004/7では26人2005/2は31人、2005/7は76人の看護師が開示をした。件数は増加傾向にあったが2006/2では41人と減少した。
    <結果>1996年看護雑誌で動き始めた外来と題し外来での看護をアピールする時代が来たことを投げかけている。遅れること6年電子カルテ導入を機に当院外来看護は画期的に飛躍した。継続看護の確立、看護計画開示、更には外来看護師初の評価である在宅療養指導料算定も行えるようになった。これらは外来看護師が患者の帰宅後の生活支援を視野に入れた看護の役割を認識し援助をすすめることが出来たからと考える。しかし一方で継続依頼が多く外来看護師1名あたり5_から_6人の受け持ちが余儀なくされ十分な関わりの時間が取れず形だけの受け持ちになったり、計画の変更が出来ないなど問題も出た。そこで病棟とのカンファレンスを行い継続看護の必要な対象の基準を作成した。今後の課題として看護計画の見直し、受け持ち患者への看護計画開示、在宅指導の充実を図っていきたい。
  • 井上 裕子, 初崎 初美
    セッションID: 1G514
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    はじめに〉当院は2002年電子カルテ導入時、看護システムも電子化となりそれまで使用していた標準看護計画を看護診断に変更することになった。カルペニート著の看護診断ハンドブックを参考にし、患者情報をNANDA看護診断の13領域の枠組みを用い当院独自の看護診断とし導入した。看護診断を活用し始めて4年が経過したがカルペニートとNANDA看護診断の併用では診断用語の適正化が問題となり、また、今後看護成果分類(NIC)、看護介入分類(NOC)の導入も考えるとNANDA看護診断への移行が必要があると考え看護診断を見直ししたため経過を報告する。
    方法〉1.当院の看護診断の使用状況からNANDA看護診断にはなくカルペニートが有用であるとし当院で採用している5診断(成熟性遺尿症・呼吸機能変調のリスク状態・セルフケアの不足シンドローム・道具使用のセルフケア不足・安楽の変調)の使用状況の調査 2.この結果を基に看護記録委員会で検討 3.診断ラベル削除前(2003年4月?2005年3月)、削除後(2005年4月?2006年3月)で使用状況を比較する。
    結果〉5つの診断を削除できるのか看護記録委員会で検討した結果、成熟性遺尿症は使用症例がなく小児科病棟においても不要であり削除可能、呼吸機能変調のリスク状態・セルフケアの不足シンドローム・道具使用のセルフケア不足・安楽の変調については定義を読み再度学習し、原因をアセスメントすることで削除可能と判断し、2005年4月より当院の看護診断からこれら5つの診断ラベルを削除した。削除前の看護診断使用件数を月平均でみると不安1274件、安楽の変調1057件、感染リスク状態781件、急性疼痛658件、入浴/清潔セルフケア不足602件、転倒リスク状態570件、身体損傷リスク状態312件、呼吸機能の変調のリスク状態280件、皮膚統合性リスク状態225件、非効果的治療計画管理130件であったのに対し、削除後では不安1287件、急性疼痛954件、感染リスク状態815件、転倒リスク状態644件、入浴/清潔セルフケア不足486件、皮膚統合性リスク状態348件、身体損傷リスク状態298件、睡眠パターン混乱186件、身体可動性障害184件、悪心154件と変化した。また、上位には入らなかったが非効果的気道浄化、活動耐性低下、非効果的呼吸パターン、消耗性疲労、排泄セルフケア不足の使用件数が増加した。5つの診断を削除して1年が経過したが問題は起こっていない。
    考察〉看護診断使用状況から、安楽の変調は安楽でない原因をアセスメントすることで急性疼痛、悪心、睡眠パターン混乱等に、呼吸機能変調のリスク状態は非効果的気道浄化、活動耐性低下、非効果的呼吸パターン等を選択するようになったと思われる。セルフケア不足のシンドロームは4つの領域における機能をアセスメントしそれぞれの診断を使用するようになったと思われる。看護診断の導入に際しては看護記録委員が中心となり独自の勉強法で進めてきたが、看護診断の学習を進めていく中で看護診断の質を評価したときにアセスメント能力の低さが浮き彫りになった。現在のシステムではアセスメントを記載する場がないこと、質的監査まで行えていないことが問題となってきている。また、診断指標を選択できないこともあり看護診断の妥当性が確認しにくい。今後はNIC、NOCの導入の検討、質的監査の方法を考えていく。
  • 大林 浩幸, 平石 孝
    セッションID: 1G601
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに> ビスホスホネート系骨粗鬆症治療薬リセドロネートは、海外大規模臨床試験により、椎体等の骨折予防効果のエビデンスが示されているが、QOL改善効果の検討報告は少ない。今回、我々は、日本骨代謝学会による質問紙Japan Osteoporosis Society Quality of Life Questionnaire (JOQOL)2000年度版を用い、リセドロネート投与後1年間のQOL改善効果を検討した。
    <方法> 原発性骨粗鬆症患者27名(男18名、女9名、平均年齢 73.8±9.1歳)を対象に、リセドロネート投与前、3、6、12ヶ月後のJOQOLを調査した。また、投与前、6、12ヶ月後に、骨密度、骨代謝マーカーの血清bone-specific alkaline phosphatase (BAP) と血清N-terminal telopeptide of type I collagen (NTx)も測定した。
    <結果> 1年間のスタディを完結した患者は20名であった。JOQOL総合スコアは1年後に有意な改善を示した(下図)。女性患者の痛みスコアは3ヶ月後に有意に改善し(p=0.018)、その改善は1年間続いた。男性の痛みスコアは12ヶ月目に有意に改善した(p=0.048)。痛みスコアの改善に続き、日常生活動作、娯楽・社会的活動、総合健康度、姿勢・体形、転倒・心理的要素の各スコアも改善した。骨密度は有意差を得なかったが1年間で男女共改善した。BAP値(U/L)は、投与前・6ヵ月後に各々、男性33.1±12.4 vs 25.1±7.7(p=0.004)、女性31.5±10.9 vs 20.2±7.1(p<0.001)と改善し、NTx値(nmolBCE/mmol)も、投与前・12ヵ月後に各々、男性17.4±6.1 vs 13.7±3.6(p=0.003)、女性16.4±6.0 vs 11.3±3.6(p=0.046)と有意な改善を示した。
    <結論> リセドロネートは、骨粗鬆症患者の骨代謝の改善と同時に、そのQOLも改善し、有用な薬剤である。
  • -患者満足を目指して-
    朝倉 利依, 近田 郁美, 松田 佳子
    セッションID: 1G602
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言> 近年、マスメディアによる医療事故報道など、社会環境の変化に伴い人々の健康、医療への関心が高まる中、時代に対応できる看護の質も重要となり、ハード面とソフト面において安心満足(患者満足)できる医療現場が求められている。当院では、外科、泌尿器科、整形外科の全身麻酔及び腰椎麻酔手術が平成16年度においては405件行なわれている。看護は患者主体に行なわれるものだが、手術後の患者は看護師のスケジュールに沿って看護が展開されていることが多く、束縛された入院生活を送っていることが多い。生野らは「看護については患者の満足度は看護婦の満足度より高値に示しており、患者の期待する看護と看護婦の求める看護の認識に違いがある」と述べられている。患者に映る私たちの看護はどのように受け止められているか、満足して下さっているのか疑問であり、今回看護研究に取り組んだのでここで報告する。
    <方法> 担当病棟で外科、泌尿器、整形外科の全身麻酔及び腰椎麻酔手術を受け、研究協力に同意を得られた患者20名(男性10名女性10名内全身麻酔患者9名と腰椎麻酔患者11名)と患者に関わった看護師述べ53名(師長を除く)を対象にアンケート調査を行なった。分析は患者と看護師のアンケートを5項目(環境・食事・排泄・睡眠・コミュニケーション)に分類後、回答を平均値化し、患者と看護師間の満足度の認識を比較した。
    <結果> 5項目に関する患者の平均値はコミュニケーション4.33排泄4.25環境4.11食事3.88睡眠3.79の順であった。
    <考察> 1,環境:患者の満足度が高かった項目は「病室はきれいでしたか」であった。これは、病院の移転に伴い建て直され、現在6年と新しく、毎日の清掃がなされていることなどが満足を得られたのではないかと考えられる。2,食事:患者の「必要な食事について指導を受けましたか」が全質問項目の中で最も満足度が低かった。これは、胃切除術以外はパンフレットがないのが現状であるため、指導が行きわたってないと考えられる。3,排泄:この項目は患者の満足度は高かったが、看護師では低く、満足度の差が大きかった。これは、患者が恥ずかしいと思う気持ちが特に強く現れるので患者はしてもらっている思いがあること、看護師は日頃から患者の羞恥心を念頭においてその気持ちを配慮しケアを実施しているため満足度が高かったのではないかと考えられる。4,睡眠:患者、看護師ともに最も満足度が低かった。看護師は症状の観察を優先しがちになり、精神的ケアが不足していたのではないかと考えられる。患者は、術後集中治療室へ入る場合、環境の変化や頻回な検温、モニターなどによる身体の拘束があるため苦痛な状況も多いと考えられる。また看護師は痛みのため不眠と考えてしまう傾向があり、痛み止めを使用し、眠剤の説明が不十分であると考えられる。5,コミュニケーション:患者と看護師の差が1.00以上の項目が多く患者の満足度よりも看護師の満足度が低かった。これは、時間的制限や多忙の業務のために思うような看護ができず、患者を理解し信頼関係を深めていかなければならないとの思いがあるためだと考えられる。
    <結論> 患者、看護師の求める援助は睡眠であり平均値から大きな差は見られなかった。
    <おわりに> 今後は、手術前オリエンテーション内容の充実、受け持ち看護師の役割について理解を深め、このシステムを患者に十分説明する。 
  • 三村 恵美
    セッションID: 1G603
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに> 手術室看護師は術前訪問することで、患者の不安や緊張の軽減を図ることが可能だといわれている。当院では平成17年度より術前・術後訪問を開始した。これまで私たち手術室看護師が患者と言葉を交わす時間はわずかで、手術室に患者が運ばれてくるまでお互い何も知らない状況であった。そこで私たちが病棟に出向くことで,1)患者の情報収集をする,2)患者の情報収集から看護診断を挙げ看護計画を立案する,3)患者の手術や麻酔に対する不安や恐怖の緩和に努める,4)患者に手術治療への協力を得る,5)患者受け入れ時の申し送り時間の短縮と簡素化を図る,6)病棟看護師や医師と連携を図り継続看護の充実を図る,7)術前看護の成果を知り術中看護につなげることにより継続看護の一端を担うことを目的として体制を整え導入に至った。月平均24%の訪問を行い、主に全麻患者を対象とした。導入当初は前日訪問を行っていたが手術の件数が増えると手術自体の準備などにも時間がかかり訪問時間の確保が困難となった。手術当日訪問も行うようになった。また手術室看護師は学生の時看護過程を学んでも、実際の場でブランクがあり、看護計画を立案・評価することに対する苦痛は大きく、依頼件数の増加とともに負担にもなってきている。患者訪問する前にカルテから収集する情報は、限られた訪問時間を濃密にし多くの成果をあげるのに役立っている。また病棟看護師や主治医からの情報も身体的観点だけでなく、精神的観点を含む全人的アプローチとして看護ケアの一貫性や人間の尊重に関する情報が重要であると思われる。さらに患者とのコミュニケーションを短時間で効果的に行うことが求められる。そこでスタッフ間でカンファレンスを行いそれぞれ工夫している点、感じたことなど話し合いさらに充実した看護を行えるよう努めた。術前・術後訪問で患者の心理状態を受け止め、看護上の問題点についていろいろな側面から患者をみるということは、看護師としての責任を持つということだと考えられる。そして対象手術の内容を熟知し、手術介助することは、看護の質を向上させることにつながると考える。
  • 患者及び看護師のアンケートより
    渡辺 厚子, 益田 和美, 中嶋 一二三, 加納 一二三, 矢島 広美
    セッションID: 1G604
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言>A病棟では、パンフレットを用いて術前オリエンテーション(以下術前オリとする)を行っているが、振り返りや評価がなされておらず、施行時期や場所は様々であり、看護師の術前オリに対する意識の違いがあると考えられた。そこで、術前オリの場が患者の不安表出に有効となり不安のある患者にとって不安軽減につながっているか、また問題点はないか調査し、今後の術前オリのあり方について方向性を見い出したので報告する。用語の定義・不安表出:不安についての言葉の表れ
    <方法>
    1 研究対象
    1) 術前オリを受けた後全身麻酔下で手術を受けたA病棟入院患者(緊急手術患者・認知症患者・小児患者・術後不穏患者を除く)
    2)A病棟勤務看護師
    2 研究期間H17年8月1日ー11月30日
    3 調査方法及び調査内容 独自のアンケート用紙(患者用・看護師用)を作成し、患者用は術後5日目に記入後回収。
    4 倫理的配慮 研究の主旨及びプライバシーの保持と得られた内容は本研究の目的以外には使用しない事を説明し同意を得た。患者用は不安表出の有無と以下の1)ー8)を記述統計及びχ2検定
    1) 性別 2)術前オリを受けた人 3) 術前オリを受けた場所 4) 術前オリ施行看護師5) 手術承諾書記入時期 6) 術前オリ施行時期 7) 術前オリに対する印象 8) 術前オリ施行後の手術に対する気持ちの変化看護師用は以下の1)ー3)を記述統計1) 経験年数 2) 術前オリ施行場所への配慮の有無3) 実際の術前オリの施行場所と内容
    <結果>患者アンケートにおける有効回答数28名(回収率93%)平均年齢65.8歳(SD±11.9)そのうち術前不安があった患者16名(57.1%)。不安表出あり9名(56.2%)・不安表出なし7名(43.8%)。
    看護師アンケートにおける有効回答数18名(回収率90%)。不安表出の有無と、分析方法1)ー8)を検定した結果、いずれも有意差はなかったが、術前オリ施行看護師が担当看護師でない場合と、術前オリを手術前日に行った場合において、不安表出されない傾向があった。入院後に医師から手術の説明を聞き、患者なりの覚悟や心の準備をする期間が短く、手術前日の術前オリ施行は、看護師の業務的もしくは一方的なものになりがちとなっていたのではないかと考えられる。また、術前オリ施行場所に配慮している看護師15名(83.3%)だったが、実際にはプライバシーの保護されてない場所で術前オリ施行している看護師8名(44.4%)であったため、今後は完全なプライバシー保護下で担当看護師が行うことが望ましい。術前オリ内容について、自己の知識や経験から術前術後の流れを付加してより詳しく説明している看護師が17名(94.4%)だが、付加内容の統一がなく、今後検討の必要がある。入院期間の短縮により、手術前日に入院する患者が増えたため、短期間に集中した説明が続くが、患者の声や思いを聞きだし理解が深まる術前オリの確立が今後の課題である。
  • 町田 輝子, 田嶋 宏子, 宮坂 照男, 黒沢 和雄, 浅沼 信治, 夏川 周介
    セッションID: 1G605
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに> 農村保健研修センターは厚生労働省、農林水産省の指導のもと、昭和50年に農山村地域における、生活、保健、医療、福祉の関係に携わる方々の再教育機関として、全国農協組織によって開設された。昭和52年に始まった研修事業も今年で30年目を迎えたので、今回はその活動を報告する。
    <設立の背景> 設立の背景は大きく二つに分けられる。一つは、昭和45年10月に開催された第12回全国農協大会での農村医科大学設立構想を受け継いだものである。一つは、地域住民の健康を守るために、保健および医療活動担当者の意識と技能を高めることが重要であると強く要請されたことによるものである。
    <研修の目的
    1. 農業や農村生活をしっかり把握し、その実態を社会学的に知ることによって、農民に対するシンパシー(共感)をもたせ、ヒューマニズムにあふれた技術者をつくる。
    2. 従来の大学では教えられなかった農業医学や農村保健学の分野に関する特殊な学問を学ぶ。
    3. 農村の保健活動、特に集団検診、地域診断、保健教育、生活指導についての実践的な技術を身につける。
     このような方針のもとに、医師を対象にした1ヶ月コースの「農村医学基礎コース」を基本に、「農村健康管理コース」「営農安全管理コース」などを設け、昭和52年10月に佐久病院の教育ホールで開始した。
    <30年間の事業内容>
    1. 研修事業:研修内容は、長野厚生連本所主催の各種セミナー、全国厚生連共催の「保健活動推進セミナー」「医事業務実践向上セミナー」、研修センター企画の「老人保健施設セミナー」「実践に役立つカウンセリングセミナー」等を実施し全国からの参加者を迎えている。セミナーは「学問を討論の中から」を基本理念に、参加者を30名ぐらいの少数におさえ、講師との意見交換を大切にしながら研修カリキュラムの企画、運営を図っている。その根底には農村地域住民のニードに従い、「農民のいのちを守る」という初心がある。
    2. 研究事業:研究は、主にセンター隣の実験農場を研究圃場に取り組んでいる。行政と農協、佐久総合病院の三者が連携して、昭和55年に「臼田町有機農業研究協議会」を設立し活動をしている。実験農場では、看護学生や研修医が有機農業の農場実習を体験している。
    3. 出版事業:出版活動は、当初「農村医学とは」「農薬中毒と健康管理」など数多く出版した。2005年には、「健康福祉ハンドブック」の改訂版を発行した。
    <おわりに> 研修センターは、設立から今日まで全国組織からの多大なる援助と、多くの講師陣や参加者、地域の皆さんの支えによってここまで続けてくることができた。深く感謝を申し上げたい。これからも地域住民の健康を守るために、そのニードに応えられるセミナーの実施と、地域との交流を大切にしていきたいと考えている。
  • 「厚生連院内感染予防対策研修会」の6年間の取り組み
    原田 正弥, 奥山 智子, 村田 郁子, 木内 健行
    セッションID: 1G606
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言>感染予防対策の最終目標は医療の質改善を目指すものであり、マニュアルを作成すればよいものではなく、サーベイランスを実施するだけでも意味がない。やるべきことが正しく実践され、集められたデータ(結果)をフィードバックすることで、実践がさらに改善されていく体制やそれを実践するチーム医療(多職種の協働)を主体とした組織体制の構築が重要である。そのためには、感染管理に係わる教育の役割は大きく、実践に結びつく内容が必要となる。「厚生連院内感染予防対策研修会(以下研修会)」は、そのニーズを把握した上で、感染管理のけん引役となる人材育成支援を目的に、2001年より開始した。今回は、これまで6期6年間開催してきた研修会の取り組みとアンケート調査から得られた知見などを交えて報告する。
    <方法と内容>
    1.対象:感染管理の実践を担う役割の大きい看護職をメインターゲットに、施設内の感染管理業務に係わるすべての職種を対象。
    2.教育カリキュラム:研修日程は土曜、日曜の2日間を1セットとし、全5セットで延べ10日日間(約50時間のカリキュラム)。
    3.教育担当者と教育形態:日本文化厚生連が主催し、実行委員とICHG研究会の全面的支援により開始。
    4.アンケート調査による状況把握:
    1)薬剤師担当の講義内容(消毒薬の適正使用など)を主体とした基本事項の認知度把握。
     調査時期:2001年8月、2006年8月。
    2)研修終了時の満足度を研修終了時(毎年11月)、参加者全員を対象に実施。
     調査時期:2001年から2005年。
    <結果>
    1.参加総数353名、参加施設数82、医師15名、薬剤師55名、看護師236名、検査技師28名、その他19名。
    2.カリキュラムの内容は当日提示。
    3.学習ピラミッドの考え方を取り入れ、プログラムにグループ討議、実際の練習(手洗い手技、プラスチックエプロンや手袋の脱着)、他人への教育(研修修了者から次年度以降、講師への参加)などを導入。
    4.1)消毒薬などの基礎知識に対する研修前後の影響が表れ、研修成果の一端がうかがえた。
    4.2)研修会修了時の満足度は、大変役に立つ83%、まあまあ役に立つ15%で、おおむね好評を得た。
    5.その他:研修会を通して、標準予防策の普及を目的としたJAブランドの感染対策用商品の開発が進展した。
    <考察>研修会は、2001年より6年間継続し延べ350人を超える参加者を得たという実績や修了者を対象としたアンケート調査の満足度などから、ある程度の評価および成果は得ているものと推測できる。また、内容も病院組織のチーム医療型構築を実践するにおいて、あるいは各職種間で浸透が予想される専門性確立を目指す場合においても十分期待に沿えるものと判断している。今後は、数的評価(アウトカム)も交えた視点から「研修会」のあり方を検証する必要性がある。
    <謝辞>ご多忙な中、研修会の趣旨にご理解いただき、スタッフを参加させていただいた各事業所長殿および毎回、継続して熱心にご指導いただいたICHG研究会の講師の先生方に、深謝申し上げます。
  • 伊藤 祐子, 瀬戸 幸智子, 田中 千鶴子, 村田 園美, 梶 千里, 佐藤 真理子, 林 久美子
    セッションID: 1G607
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに> 手指衛生は感染対策の基本である。当院ではH14年度より看護職員を対象に手洗い教育を実施している。CDCガイドラインが改訂され、場面に応じた手洗いが行われているか、H15年度より手洗い手技について13項目・手洗い意識について6項目を含めた「手洗いチェックリスト」(以下チェックリスト)を用いた現状把握・評価を行ってきた。当初は、定期的な指導・評価を行わなかった為、期間が空くことにより手洗い手技の低下がみられた。そこでH16年度からは、定期的(3ヶ月毎)に実施し、その結果正しい手洗い手技は定着してきている。しかし手洗い意識に関しては、必要な場面で手洗いが実施できている部分と、実施できていない部分がある。この3年間の教育結果を分析し、手洗いの意識面と実践面を相互に踏まえた手洗い教育について考察したので報告する。
    <分析方法> 3年間の手洗いチェックリストを項目毎、セクション毎に集計・比較した。
    <結果・考察> H15年から現在まで9回実施し、評価を行った。手洗い手技項目1回目の結果、できているが全体で78%であった。この結果を各セクションのリンクナースにフィードバックし指導したところ、3ヶ月後に実施した2回目は89%と上昇。しかし3回目実施まで8ヶ月期間が空き、手洗い手技の項目が80%と2回目より低い結果となった。これは3回目のチェックリスト実施までの期間が空き、時間の経過と共に個人の手洗いの意識が低下したためと考える。正しい手洗いの定着をめざし、H16年度より期間を決めて実施し、継続的教育に取り組んできた。その結果、手洗い手技に関しては全体的に92%以上ができているという結果となった。正しい手洗いを実施する為には期間を決めた継続的教育が有効だった。しかし手洗い意識に関する項目については良い結果が得られていない。特に同一患者の処置毎、他の患者に移る前の手洗い・手指消毒ができていない。チェックリストの内容に『同一患者、他の患者に移る前に必ず手洗いもしくは視覚的汚染のない時は擦式消毒剤を使用しているか』というCDCガイドラインに基づいた擦式消毒剤の使用を推奨した項目がある。しかし、その表現は場面にあった具体的な内容では無いため正しい結果が得られていない。これは手洗いの意識、必要性に個人差があることと、場面に応じた手洗いの方法が身についていないことなどが原因として考えられる。手洗いは、適切な場面で確実に正しい方法で行う事が重要である。今後は正しく身についた手洗い手技を維持し、場面に応じた正しい手洗いが、実践できるようチェックリストの内容を検討し、定期的・継続的教育に取り組んで行きたいと考えている。
  • 薬剤師として
    荒木 美穂
    セッションID: 1G608
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉 各々の専門職が共通認識の上、他部門との連携を図りながら患者の治療・教育を行っていくことがチーム医療の基本となっている。
     糖尿病においても平成13年に「糖尿病療養指導士(以下CDEと略)」という資格がつくられた。このCDEが中心となり、各専門職(薬剤師・看護師・栄養士・理学療法士・検査技師・臨床心理士)を含めた糖尿病チーム医療を展開している病院が多くなった。特に、糖尿病治療においては「初期における患者教育が重要」とされ、その「患者教育のための入院」が増えてきている。
     当院でも、平成11年からチーム医療による外来糖尿病教室へ変更し、平成15年には糖尿病教育入院(クリニカルパス)を開始した。その後、糖尿病教育入院の全般的な指導を行う看護師から様々な課題(指導方法、指導内容など)が挙ってきた。
     今回、CDE薬剤師として糖尿病教育入院の様々な課題の解決に関わったので報告する。
    〈方法〉 従来のクリニカルパスの指導方法(指導冊子、指導内容など)をCDE薬剤師の立場で見直し、その内容・方法について看護師にアンケートを実施した。
    〈結果〉 看護師からは、以前の指導方法に比べ、指導内容・指導方法については比較的改善されていて指導に困らなくなったなどの評価だった。
    〈考察〉 糖尿病チーム医療をうまく動かすためには、知識の習得・コメディカルへの教育(情報提供)が必要不可欠だと思われる。今回のアンケート結果からも、“職種を問わず”その治療方法の概要・指導方法・指導内容について関心を払い、情報を共有化し認識することが重要だとわかった。
     また、指導内容・指導方法の見直し作業を共同で行う際に、CDE薬剤師としてコーディネーター能力を発揮していくべきであると強く感じた。
    〈結語〉 近年、経口糖尿病薬やインスリン製剤の種類の増加に伴い、適正使用に関する情報量も著しく増えている。
     また、インスリン治療において、低血糖時の指導や針などの医療材料の扱い方・使用後の処理方法等も含め、患者指導の習得状況を反復確認しているかが問われるようになった。
     今後も、より安全で安心できる医療を提供するため、薬剤師は中心的な役割を果たしていくキーマンであれ。
  • -バリアンスの分析からDPC導入に向けて-
    高野 かよ子, 圓崎 京子, 杉浦 悦子, 板倉 紀子, 菊地 幸代, 前田 益孝
    セッションID: 1G609
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに> 当院では、平成18年6月からDPCが導入される。それに伴い、在院日数の短縮に向けたクリティカルパス(以下パス)の見直しが必須となった。当病棟では、保存期腎不全患者に、教育入院として低蛋白食事療法の体験、自己管理方法などの指導を実施している。しかし、既存のパスでは在院日数が多くなりまた、バリアンスの発生率も高くなっているのが現状である。そこで、カルテレビューしバリアンスの発生要因を調査しDPCの導入に向け、今後のパスの再検討を行ったので報告する。
    <研究方法>
     期間:平成17年5月から12月まで
     対象:慢性腎不全患者で教育入院パスを使用した患者42名,平均年齢69.5歳
     平均在院日数:16.7日
     方法:バリアンスの発生要因の内容を分析しDPC導入にむけて今後のパスの再検討をする。
    <結果・考察>
     カルテレビューした内容を分析すると42名中11名にバリアンスが発生していた。バリアンス発生患者には、入院時血清クレアチニン値がすでに、7mg/dl以上の患者が5名いた。また手足の浮腫や呼吸苦、倦怠感、食欲不振などの症状を示している患者は8名であった。その患者の中で入院中に治療方針が変更となり、シャント作成・透析導入となるケースが半数以上にみられた。さらにバリアンス有群と無群の血清Cr値の平均値は、有が5.03mg/dl、無が3.39mg/dlであった。パス使用者の6割は他院からの紹介であり、その時点で血清クレアチニン値がすでに高値の患者もおり、バリアンスの発生を防ぐことは困難であった。これらのことを理解し、DPCの導入に向け教育入院かまたは透析導入かなどを区別し、患者に適したパスの準備が急務と考える。診療報酬では既存のパスは、保険点数が約35,000点であるのに対し、バリアンス有群では50,000から60,000点であった。しかし、DPCの導入後は入院12日間で約30,000点と定められ低くなっている。そのため教育指導内容のシステム化、検査内容の見直しが必須となる。患者の年齢や理解力に合わせたアウトカムの設定、病期別に機能分化するなど検査値の適応などの対策も必要と考える。そのためには、医療スタッフや外来との連携を図っていくことが重要である。今後DPCに沿った教育内容の充実と患者満足度の向上のためにパスの再検討を図っていく必要がある。
    <まとめ>
    (1) 従来の教育入院患者のバリアンス発生は血清Crが高値の患者に多い傾向にあることが明確になった。
    (2) DPC導入にあたり教育入院パスを作成するには病期別に機能分化されたパスが必要である。
    (3) DPCにむけたパスは指導内容のシステム化と検査内容の見直しが示唆された。
  • 岡崎 久美, 人見 和枝, 千葉 布由子, 寺田 勝枝, 石浜 みち子
    セッションID: 1G610
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    はじめに
    手術室では、経尿道的手術(transurethralresection以下TURと略す)においては医師2名と看護師1名でチームを組むことが多い。しかし、間接介助は煩雑となり、特に記録に有する負担が大きかった。そのため、業務改善の一環としてTURクリ二カルパス(以下TURパス)の導入を図った。記録時間の短縮、コストの漏れや記入漏れがないかについて看護師からのアンケートによる評価も含め若干の検討を加え、報告をする。
    目的
    記録時間の軽減を図るために作成したTURパスの効果に対する評価
    研究内容
    1:パス導入から評価までの期間
    2005年3月25日から6月30日
    2:方法
    TURパス作成後、自己記述式アンケート
    3:対象 当手術室に勤務する看護師25名
     1) 記録時間の短縮は図れたか
     2) 記入漏れやコスト漏れの有無
    4:TURパス作成までの経過
    TURは基本的には、1時間から2時間の手術である。看護師は腰椎麻酔の介助、患者の観察、還流液の交換、体位の保持、標本の受け取り、整理など多くの業務を一人の看護師が行っている。しかし、手術記録用紙、患者送り書、患者経過記録用紙、温度板、医事課請求用紙と記録の種類が多く余裕のない状況で手術に携わっていたことでTURパス導入となった。
    結果
    1)作成したTURパスの特徴:
     (1)患者術前情報欄を設けた
     (2)手術の経過が明確である
     (3)コスト請求欄を設けた
    2) 看護師の評価を以下に示す
    表1.看護師アンケート結果 
    はい いいえ 無回答
    記録時間の短縮は 23名 0名 2名
    記録、コスト漏れ 1 名 22名 2名
    看護師のアンケートで無回答がいたが、TURパスを未使用の看護師であった。
    考察
    TURパスは、関連病棟や医師、担当事務も含め協議をしながら修正を繰り返し、試用を約100例実施した。その後に、院内のクリ二カルパス委員会のワーキンググループで承認されて現在に至っている。今回、TURパスの特徴である、患者術前情報欄を追加したことについては、今まで、別紙の術前訪問用紙を基に情報収集していたが、パス用紙のみで、情報把握できるようになった。さらにコスト請求欄を設けたことにより、記録の重複が削減され、記録時間の短縮に繋がった。その結果、時間的余裕が生まれ、患者にかかわる時間が増えた。また、手術の経過が明確なため、経験年数に関係なく適切で統一された間接介助を提供できるようになった。
    おわりに)今後、電子カルテに向けて、パスが導入できるよう独自の雛形を作成し準備を進めている。
    参考文献
    1)山口 悦子 業務改善からクリ二カルパス作成へ 月間ナーシング Vol.18 _No._8 1998.7 p82
    2)小林 敏郎 オペナーシング2001春季増刊号 手術室クリ二カルパス活用マニュアル 泌尿器科手術 p241
  • 中野 詩朗, 今井 浩二, 高橋 昌宏, 柳田 尚之, 赤羽 弘充
    セッションID: 1G611
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>医療の標準化と向上を目的に、各病院でクリニカルパス(以下CP)の導入が進められている。当院では外科医4名ずつの2チーム(A、B)で術前、術後管理を行っているが、チーム間で指示に相違があり、患者、看護師に戸惑いがみられていた。そこで鼠径ヘルニア、腹腔鏡下胆嚢摘出術、乳癌、胃癌、大腸癌の手術症例に順次CPを導入した。
    <目的>2003年4月に導入し、2004年11月に初回の改定を行った幽門側胃切除術のCPの有用性と課題について検討した。
    <対象>80才以下、重篤な合併症を有さない幽門側胃切除術例。改訂後は年齢を問わない。CP導入前(CP前群)の49例(Aチーム24例、Bチーム25例)、改訂前CP群40例(Aチーム24例、Bチーム16例)、改訂後CP群29例(Aチーム13例、Bチーム12例)の118例。
    <方法>各群の食事開始日、在院日数、抗生剤投与日数、輸液投与日数、採血回数について比較検討した(バリアンス症例、合併症症例を除く)。P<0.05をもって統計学的に有意差ありとした。また、病棟看護師にCPに関してのアンケートを施行した。
    <症例の背景>年齢、男女比に差はなかった。CP前群においてD2隔清の割合が低かった。
    <CPの内容>抗生剤(第2世代セフェム)は入室時より投与、4日間。改訂後は第1世代セフェムを3日間。術後1日目、経鼻胃管抜去、初回歩行。術後3日目、飲水開始。術後5日目、食事開始。術後6日目、ドレーン抜去。改訂後は5日目、もしくはドレーンなし。術後輸液は8日目まで。改訂後は7日目まで。術後胃透視は原則的に施行せず。術後10日目以降、退院可。
    <結果>CP採択率は改定前43%(40/94)、改定後74%(29/39)と向上したが、バリアンスは改訂前16%、改訂後26%と増加した。抗生剤投与日数はCP前群においてAチーム4.5日、Bチーム3.7日と差を認めたがCP導入後は解消し、両チームあわせるとCP前群4.1日、導入後3日と有意に短縮した。同様にドレーン抜去日はCP前群でAチーム6.7日、Bチーム7.8日であったが、導入後に差は解消し、両チームあわせるとCP前群7.3日が改訂前CP群6日、改訂後CP群4.9日と有意に短縮した。食事開始日はCP前群5.9日が改訂前CP群5日、改訂後CP群4.7日と有意に短縮した。同様に術後在院日数はCP前群15.6日が改訂前CP群13.6日、改訂後CP群13.5日と有意に短縮した。術後輸液日数もCP前群10.4日、改訂前CP群8.8日、改訂後CP群7日と有意に短縮したが、術後採血回数はそれぞれ3.5回、3.2回、3回と減少傾向は認めるものの有意差はなかった。保険請求額はCP前群1,085,296円(1日あたり51,411円)、CP群1,004,665円(1日あたり51,848円)と有意差は認めなかった。病棟看護師へのアンケートでは看護記録の短縮(100%)、使いやすい(70%)、患者の理解度(70%)、業務内容の軽減(65%)と肯定的な点も認めるものの、自己のCP理解度(52%)、患者との時間の減少(74%)と問題点も浮き彫りになった。
    <まとめ>当科の幽門側胃切除CPは食事開始時期、輸液日数、抗生剤投与日数、ドレーン留置日数、平均在院日数が短縮した。チーム間の指示が統一され、差がなくなり、患者、医療従事者にとって治療スケジュールがわかりやすくなった。医療従事者の業務負担が軽減されたが、患者とのコミュニケーションが不十分になりがちになった。今後の検討課題である。
  • 齋藤 哲也, 沼尻 俊夫, 小仁所 啓子, 三上 たづ子, 田沢 潤一
    セッションID: 1G612
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>注腸検査はバリウムを用いて大腸内の病変を描出する検査である。この検査によって、微小病変を描出するためには食物残渣等が妨げとなることから、前処置は、非常に重要な位置を占める。そのため当院では、検査前日から検査当日にかけて食事・水分摂取・下剤投与に関する注意や、それに伴う指示を記した検査説明書を用い説明していた。しかし、その用紙は、A4で4枚分にもなり、文字数も多く見づらい構成であった。
     また、スタッフ間のコミュニケーションにおいても、検査時に必要な患者情報の伝達にばらつきがあり、検査直前に確認する場合も多く経験していた。
    <目的>今回我々は、従来の検査説明書を見直すとともに、検査に関する患者情報の伝達および業務の標準化を目的に注腸クリニカルパス(患者さま用、スタッフ用)を作成したので報告する。また、患者様に検査の説明を行う際に使用する検査説明書も作成したのであわせて報告する。
    <方法>
    1.パスを作成するに当たり内科外来のスタッフと共にワーキンググループ(医師1名、看護師2名、放射線技師2名)を立ち上げた。
    2.従来の前処置マニュアルを見直し、患者さま用クリニカルパスを作成した。
    3.検査説明を行う際に使用する検査説明書を作成した。
    4.検査にかかわる全てのスタッフの業務を洗い出し、医療者用パスを作成した。
    <結果>患者様用パスでは、縦軸に処置・食事、備考等を記し、横軸に検査予約日から検査後までの一連の流れをスケジュール化した。
     検査説明書では、検査の目的や前処置の重要性を記した。また、検査に対しての不安を軽減させることを目的に実際の検査の流れを記した。
     医療者用パスでは、検査に携わるスタッフの業務の標準化を図り、各々の役割と責任の所在を明確にした。
    <考察>注腸検査では、検査予約日に検査食の購入や、下剤の入手およびその使用方法や注意について説明を受け、検査前日には、指示や制限の多い前処置を行なっている。そのため、この検査は患者様にとって非常に煩わしい検査のひとつであると言える。
     当院では従来から検査説明書を作成し患者様に説明を行なってきた。しかし今回、説明用紙を見直しパスの手法を取り入れ改良を行なった。その結果、従来の説明用紙を軽減することができ、また、予約日から検査終了まで患者さまが行うことを時系列に表示することが出来た。また、予約から検査終了までに関わる医師・看護師・受付・放射線技師各々の業務において、パスの手法を用いて標準化することは、リスク管理にも有用であった。
     今回作成したパスは施行版であり、まだ使い始めて日が浅いため、その有用性は分析していない。今後、注腸用パスを広く実施し、評価分析、修正を行うことが課題である。
  • クリニカルパス導入を通して
    関 優子, 中村 和与, 金澤 亜紀子, 高橋 恵美, 阿瀬川 満枝
    セッションID: 1G613
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉当院での白内障手術は年間約300件行われ、一日に4-5件の手術を同一看護師が担当している。また連続して手術を行っているため、患者の入退室が同時になってしまう状況にある。現在、白内障手術の記録は、局所麻酔用の看護記録用紙に経時的叙述法で記録しているが、患者看護・さまざまな処置の介助と平行しながら行っているため時間内の看護記録の記載は困難である。そのため、実施した看護行為が記録に残せず、手術経過・医療行為優先の記載に留まってしまうことが多い。そこで、記録内容の見直しと記録時間の短縮が求められた。近年多くの医療現場において、記録時間の短縮、ケアの標準化・効率化、実施した看護行為の明確化などを目的にクリニカルパス(以下パスと記す)が導入されている。当院手術室でも、チェック方式のパスを作成・導入した結果、記録時間短縮の効果が得られたのでここに報告する。
    〈研究方法〉
    1.パス導入前後の時間の実態調査(各20症例)1)患者の入室から退室までの時間2)手術時間3)看護記録に費やしている時間
    2.看護記録内容の検討、パス作成
    3.評価 パス導入前後で、各時間の測定した結果を比較する。結果は平均±標準偏差で表し、比較検討にはt検定法を用いる。 
    〈結果〉1)入室から退室までの平均時間は導入前43.5±20.3分、導入後43.0±15.4分でパス導入前後に差は認めなかった。手術時間においても導入前は平均25.6±19.4分、導入後は平均26.5±10.7分と差はなかった。看護記録に費やしている時間は、パス導入前で平均7.6±1.6分、導入後は4.8±1.0分であり、有意に短縮した(p<0.05)。2)パス導入前の手術時間、入室から退室までの時間は、ほぼ比例していた。それらの時間は各症例でばらつきが見られたが、記録時間においてはほぼ一定であった。この傾向はパス導入後でも変化はなかった。               
    〈考察〉今回の結果から、チェック方式のパスを看護記録用紙として導入したことで、文字を記載するという事が減少したため記録時間の短縮につながったと言える。各症例で手術時間、入室から退室までの時間にばらつきが見られたが、記録時間はほぼ一定であった。これは、短時間の手術になる程、記録時間の占める割合が高くなることを意味する。したがって、今回のパス導入により、記録時間が短縮されたことは、その他の看護(処置、患者とのコミュニケーション)に費やす時間の増加につながると推測され、評価できる。手術看護記録には、実施した看護行為や観察事項、手術の進行・経過を記録する必要があると言われている。これまでの白内障手術の看護記録内容を振り返ってみると、記載内容が看護師により異なっていた。そこで、白内障手術での標準看護計画を立案し、パスを作成・導入したことで、チェック方式ではあるが実施した看護行為、処置、介助などが記録に残るようになった。これは術後の継続看護につながっていくと考えられる。また、実施すべき項目の明確化、看護の標準化により、記載漏れが減少し、経験年数に関係なく同じレベルでの看護の提供ができるようになると考えられる。  
    <結論>眼科白内障手術においてチェックリスト方式のパスを看護記録用紙として作成・導入したことは、1.記録時間の短縮2.看護行為の明確化3.ケアの標準化に有効であった。
  • 江連 とし子, 塚本 千恵子, 飯泉 友美, 大塚 美樹, 玄 東吉, クリティカルパス 委員会
    セッションID: 1G614
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>
    DPCは本邦独自の急性期入院医療費の包括払い方式である。当院も平成18年6月1日からDPCが導入される。DPC調査協力病院の基準の一つに「診療計画策定体制」の確立が挙げられている。その役割を担っているのがクリティカルパス(以下パスと略記)である。その内容は、入院初期が重点的に評価されているDPC制度では、各診断群について(1)25%パーセンタイル値までの日数(入院期間1)(2)平均在院日数(入院期間2)(3)特定入院期間、に該当する患者のパスを用いて常に把握する必要があると言われている。そこでDPC導入に先がけ、当院のパスがDPC対応となりうるか否かについて、既存のパスの評価と見直しを実施した。その結果、DPC対応へのパスの方向性が得られたので報告する。
    <対象と期間>
    平成16年4月から18年3月までの期間に当院全病棟で運用されたパス87種類
    <方法>
    バリアンスデータから平均在院日数値を求め、当院のパスをとDPC電子ソフト(「病名くん」「ふくろうくん」)を用いて診断群別に分類し、全国標準のパスとの比較検討を行った。
    <結果>
    診断群別疾患分類結果(代表例)
    入院期間1・・・約5%
    (例:ヘルニア・検査(肝生検等)
    入院期間2・・・約60%
    (例:虫垂炎・ポリペク・扁摘・鼻内等)
    特定入院・・・約30%
    (例:TUR-BT・前立腺全摘・声帯ポリープ切除・シャント・胃潰瘍・胃全摘等)
    該当無し・・・クモ膜下出血・脳梗塞・心筋梗塞・回腸導管等
    既存のパスとDPC対応分類との対応関係は上記の通りであった。「入院期間1」に分類されたのは検査と外科の小手術であった。また、既存のパスでは「入院期間1」に分類されるが、バリアンス発生率が高く、在院日数が延長し、「入院期間2」に分類される外科系のラパコレ、開腹胆摘術等の例もあった。「入院期間2」は、平均在院日数の範囲内であればDPC対応とされており、当院では全体の60%以上を占めていた。「特定入院」は比較的侵襲の多い手術が分類された。「該当なし」となったのは、内科系脳梗塞、急性心筋梗塞のパス、外科系ではクモ膜下出血等、バリアンス発生率の高いパスが分類された。
    <考察>
    DPC対応型の「入院期間1」は、小手術・検査と少数であった。また少数ではあるものの、パス自体が「入院期間1」に分類されているが、バリアンス発生が高く、本来ならば改定されるべきパスの存在も明らかになった。また、DPCソフトが提示する分類と整合しない既存のパスが全体の約30%を占めていた。これはDPC上において、手術などの出来高払い方式と包括払い方式が混在するために生じる課題であろう。既存のパスの約60%は「入院期間2」の範囲内であり、DPC対応型のパスとして平均在院日数の範囲内にあることの条件を満たしていると考える。
    <まとめ>
    (1)当院でのバリアンスデータ集積と分析はDPC対応のクリティカルパスの見直しと改定に際して重要なデータとなっている。
    (2)各科のDPC対応型のパスの課題と問題点が明確化された。
  • 高橋 将, 蔵 尚樹, 須藤 礼子
    セッションID: 1G615
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉 当院では、前立腺生検の全症例に対してクリニカルパス(以下パス)を使用している。職員用のパスを使用する際、フローチャート化されておらず、検査や日程・バリアンス発生時などバイタルサインとを見比べたいとき、パスと温度表の書式や大きさが異なるため、不便さを感じていた。
     パスを見直しフローチャート化することで、バイタルサインの変化と検査日程との関係を一目で見られるようになれば、患者様の状態をより把握できるようになると考えた。そして、パスを有効に活用することで検査を円滑に実施できると共に、患者様の不安の軽減にも繋がることが分かったので報告する。
    〈方法〉 現行パスについてのアンケートを行った。対象として当院泌尿器科病棟スタッフ21名。期間は平成17年9月17から22日(6日間)実施した。次に、その結果を元に、改訂版パスの作成し同年9月20日から10月20日の30日間実際に使用した。最後に改訂版パスについてのアンケートを行った。
    〈結果〉 現行のパスを使った事がありますか?という質問に対し83%のスタッフが現行のパスを使用した事があるが、17%の人が使用した事がなかったことが分かった。
     パスの内容について、字の大きさでは、大きい24%、ふつう70%との意見があり、小さいという予想外の結果も6%あった。持ち運びについて(用紙の大きさ)は、大きいという意見が多かった。
     現行のパスに求めることについて、フローチャート化し、患者様の状態と入院中の流れを同時に見られるようにして欲しいなどの意見もみられた。泌尿器科担当医師と共に、現行パスで変更した方が良いと思われるところを話し合い内容の変更を行った。例として、今まで前立腺生検の入院の際には、入院時から翌朝6時までの尿量の合計を記入していたが、医師より「検査後の尿量が知りたい」との要望があったため、検査後から翌朝6時までの尿量を記載するよう変更した。
     内容の再確認・使用許可を得て9月20日から10月20日の30日間実際に使用した。使用件数は、外来4件・手術室1件合計5件だった。
     使用後のアンケート結果では、用紙の大きさ・字の大きさ共に丁度良く全体的なバランスも良いとの意見があり、フローチャート化することにより、より一層患者様の状態が把握できるようになったと意見があった。一方、今までとは、尿量の記載方法など細かい点で見直しがあったため、それに戸惑う声も聞かれた。
    〈考察〉 パスを利用することで、得られるメリットとして、看護者としては、業務の効率化ができ、看護業務における雑用の減少が期待できます。パスを作成する段階での、教育効果、新人への教育効果です。患者様としては、検査や処置、手術など、自分の受ける医療内容・行わなければならない実行内容が理解しやすくなり、「わかりやすい医療」が展開されることになる。そうすることにより不安感の減少も期待できる。
    〈まとめ〉 検査入院のパスを見直すことにより、今まで以上にパスを有効に活用する事が出来るようになった。今後も定期的なパスの見直しを図ることの必要性を感じる結果となった。そして、この研究を元に、他のパスについてもフローチャート化・内容の見直しなどを行っていこうと思う。
  • 癌末期患者のQOL維持と在宅での終末期医療をめざして
    水野 幸太郎, 深井 一郎, 橋本 宇
    セッションID: 2C01
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <目的> 癌性胸膜炎は絶えまない癌性胸水産生により、患者の呼吸を著しく損なう癌終末期の病態である。一方、切除不能な癌であってもパフォーマンスステータスが保たれていれば外来化学療法を行うことでQOLを損なうことなく意味ある延命が可能である。したがって、癌性胸水の完全な制御ができれば癌性胸膜炎はパフォーマンスステータスが保たれた癌終末期状態になり、意味ある治療がさらに附加され、患者の享受できるメリットは少なくない。
    <対象と方法> 対象は10例(男性7例、女性3例)の肺癌による癌性胸膜炎患者である。全例、分離肺換気下に胸腔鏡を使用した。まず、鏡視下で完全に癌性胸水を排除する。次に任意の肋間から血管留置針(サーフロー18G)を鏡視下で安全に胸腔穿刺する。50ccの注射器に5gのタルク沫を入れておき空気とともに留置した穿刺針から手動で胸腔内に散布する。この操作を数カ所から行うことで胸腔内全体にタルクが散布できる。タルクの総散布量は10gである。つづいて、肋骨横隔膜洞と肺尖にそれぞれ1本づつドレンを留置し、十分陰圧をかける。このとき麻酔医は20cm水柱のPEEPを30秒から1分間かける。これにより肺は十分に再膨張し、肺と胸壁との密着が完成する。術後は7日間の持続吸引の後胸腔ドレンを抜管する。全例、胸膜癒着に成功し胸水の再貯留は見ていない。
    <考案> 本法は胸腔鏡を扱える医師と分離肺換気麻酔のできる麻酔医の調和のとれた共同作業を必要とするが、確実な胸水制御が可能であった。むしろ課題は一般医家に本法を広く認知してもらうことだといえる。つまり、一般医家においては癌性胸膜炎の状態でbest supportive careに入ってしまうケースが多いのではないかと危惧される。その点、厚生連のネットワークは都心の単独病院よりも広報手段をもっている点で有利ではないかと考えられる。在宅での終末期医療という一つの理想に向けては農村部住居の癌性胸膜炎患者の方が都心部住居の患者より有利な環境にあることが考えられる。
  • 久保山 修, 徳永 毅, 武井 秀信, 小林 和郎, 湊 志仁, 椎貝 達夫
    セッションID: 2C02
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <背景> メタボリックシンドロームとは、肥満、高血糖、高血圧、高脂血症などの動脈硬化因子が一個人に重複して存在している状態を指す。その結果、メタボリックシンドロームは虚血性心疾患の発症の危険性を増大させるとの報告が多数存在する。また、上肢下肢血圧比(ABI)は下肢の慢性虚血の指標であるが、虚血性心疾患に深く関与するとの報告が認められる。そこで、メタボリックシンドローム、ABI、その他の冠危険因子といわれているものが虚血性心疾患発症の予測因子となりえるかを、虚血性心疾患を疑われ入院精査した患者で比較検討した。
    <方法> 対象は、狭心症などの虚血性心疾患を疑われ当院で冠動脈造影検査を施行した連続232人。メタボリックシンドロームの診断基準として、National Cholesterol Education Program’s Adult Treatment Panel III report (NCEP ATP III)の診断基準で腹囲の代わりにBMI 25以上としたものを用いた。また、入院時にABIを測定し、0.9以下である場合をABI陽性と診断した。メタボリックシンドローム、ABI、その他、高血圧・喫煙歴・高脂血症・家族歴・高脂血症・肥満の従来冠危険因子と呼ばれているものや血清Cr、蛋白尿、尿糖などが、虚血性心疾患の予測因子になりえるか比較検討した。また、同じ項目が重症3枝病変の予測因子となりえるかも比較した。
    <結果> 冠動脈造影検査の結果、虚血性心疾患であったのは184人(79.3%)で、重症3枝病変は52人(22.4%)であった。また、メタボリックシンドロームであったものは102人(44.0%)で、ABI陽性は14人(6.0%)であった。メタボリックシンドロームは虚血心疾患の予測因子(90/184 v.s. 12/48, p=0.02)であるが、3枝病変の予測因子ではなかった(23/52 v.s. 79/180, p=0.96)。逆に、ABIは3枝病変の予測因子であったが(7/52 v.s. 7/180, p=0.01)、虚血性心疾患の予測因子ではなかった(13/184 v.s. 1/48, p=0.2)。また、高齢者、高コレステロール血症、糖尿病、高血圧、血清Cr高値、尿糖陽性は虚血性心疾患のみの予測因子であり、尿蛋白陽性、低HDL血症、喫煙歴、男性は虚血性心疾患および3枝病変、両方の予測因子であった。
    <結論> メタボリックシンドロームは虚血性心疾患の予測因子であり、ABIは3枝病変の予測因子であった。また、尿蛋白陽性、低HDL血症、喫煙歴、男性は虚血性心疾患および3枝病変、両方の予測因子であった。
  • 香田 雅彦, 鷹津 久登, 安田 憲生, 井尾 謙介, 岩田 啓之, 門崎 徹, 佐野 圭司, 佐野 祐次, 完山 裕倫, 田中 孜
    セッションID: 2C03
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
     最近増加傾向にある下肢動静脈疾患の診断にMRIを用いた撮影が有効か否かを検討した。MRI装置はPhillips社製Intera Achiva, 1.5T Novaを使用しFresh Blood Imaging (FBI)法により撮像したが、動静脈の分離にはFlow-Spoiled FBI(非造影下肢動静脈分離法)を用いた。下肢動脈については、運動時疼痛や間歇性跛行、足趾の変色などの症状のある例、長期の糖尿病罹患歴のある例、血液透析患者などASOが疑われる症例を対象にMRA (MR angiography) を施行した。下肢静脈については、深部静脈血栓症を疑う症例として片側性の下腿浮腫患者にMRV (MR venography)を施行した。
    <結果>(1)下肢動脈;ABIが0.7以下を示したASO患者ではすべて、有意の動脈狭窄を指摘することができた。また、F-Fバイパスを施行した症例ではバイパスの開存を視覚的に容易に確認可能であった。(2)下肢静脈;片側性の下腿浮腫を有し、深部静脈血栓症を疑われた症例では静脈の閉塞部位を視覚的に明らかにすることができ、また治療後の経過観察に有用であった。
     撮影は造影を必要とせず簡単に施行可能であり、set-upも含めて各々約15分で撮影完了することができた。MRIであるため、放射線被爆の心配もなく、繰り返し外来で施行することも可能であった。画像の質も良好で、今後,閉塞性動脈硬化症や深部静脈血栓症を疑う症例には、第一選択の画像診断法として活用が期待される。
    <結語>MRIを用いて下肢動静脈疾患の画像診断について検討した。診断能は、十分満足できるものであり、かつ非侵襲的な検査法であるため、診断のみならず、治療効果判定などにも非常に有用であると思われた。
  • -頚動脈超音波検査とMetabolic Syndrome-
    高松 道生, 盛岡 正博
    セッションID: 2C04
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <研究の背景と目的>年齢調整を行った心筋梗塞死亡率は各年代で低下しているものの、高齢者人口の増加に伴って実数は増加しつつある。動脈硬化性疾患の発症予防に役立てるべく健診活動が行われているが、効果的な健診のあり方を視野に本研究を行った。
    <対象と方法>動脈硬化性疾患を有しない440例(男性259例、女性181例)を対象として頚動脈超音波検査を行い、内膜中膜複合体肥厚(以下、IMT)を測定するとともにMetabolic Syndrome(以下、MS)との関連を調べた。MSの診断基準は(1)BMI≧25、(2)HDL-C<40mg/dl or TG≧150mg/dl、(3)BP≧140/80mmHg、(4)FBS≧110mg/dlを用い、3項目以上を満たす例をMSとしたが、MS群は50例(男性35例、女性15例)と対象の11.6%を占めた。相関を求めるための統計処理にはMann-Whitney法を用いた。
    <結果>頚動脈IMTは左頚動脈>右頚動脈と諸家の報告同様左右差を示し、左頚動脈IMTはMSと有意の相関(p=0.01)を示したが、右頚動脈IMTは相関を認めなかった。(p=0.88)。<表1,2>
    <考察>MSは動脈硬化性疾患準備状態と考えられているが、本研究においてもIMTでみた動脈硬化度と有意の相関を認め、MSの意義を再確認し得た。
     2005年にわが国で独自に考案されたMSの診断基準は腹囲計測が基本であり、健診の場でも標準項目として普及しつつある。本研究においてはMSの診断基準を腹囲ではなくBMIを用いて行ったため今日的意義にやや限界があるが、頚動脈超音波検査との組み合わせという手法で新たな成果が得られたものと考える。また、今後の課題として健診受診例の動脈硬化性疾患発症および転帰調査研究に取り組む事で、より科学的で精度の高い健診方法を創り出す事が必要と考えられる。
    <まとめ>動脈硬化性疾患発症予防を視野に入れた健診においてMSの診断基準に合致する健診項目を導入することが重要であり、MSの結果としての動脈硬化度を測定する頚動脈超音波検査の健診への導入について検討する事が必要と考える。
  • Extensive Encircling Pulmonary Vein Isolation法
    永田 恭敏, 大友 潔, 鵜野 起久也, 家坂 義人, 藤原 秀臣
    セッションID: 2C05
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
     心房細動(AF)は日常診療において最もよく見られる不整脈であり、動悸・胸部不快感といった自覚症状のみならず、長期的には心機能低下や脳梗塞を引き起こすリスクも知られている。通常、抗不整脈薬によるリズムコントロール治療が行われるが、その洞調律維持効果は決して満足いくものではない。1998年にHaïssaguerreらにより、肺静脈内異常興奮(PV firing)が発作性AF(PAF)の発生トリガーとなること、および起源部位の焼灼(Focal ablation)によりAFの根治が可能であることが初めて報告された。しかし、その有効性は低く、PV狭窄など合併症の問題もあることから、同グループより2000年に肺静脈個別の電気的隔離法(PV isolation; PVI)が考案され、本法がAFアブレーションの基本的手技となった。土浦協同病院でも、国内他施設に先駆け1998年よりAFアブレーションを開始した。当初は、Haïssaguerreらと同様の方法(Focal ablation→PVI)を行っていたが、2002年より独自に開発した拡大隔離アブレーション法(Extensive encircling PVI; EEPVI)に移行した。従来のPVIが上下肺静脈入口部を個々に取り囲むのに対して、EEPVI法は同側の上下肺静脈入口部とその前庭部を一括して大きく取り囲むことにより、従来の方法では治療困難であった肺静脈入口部トリガーによるAF治療も可能となると共に、PV狭窄も回避できるようになった。また、心房Substrate修飾効果もあり、持続性AF(PerAF)にも有効であることが分かってきた。2002年11月から2006年1月末までに350例(PAF/PerAF=258/92例)にEEPVI法を施行した。手術時間は210±52分、透視時間は75±23分。22±12ヶ月のフォローアップ中、87%が抗不整脈薬なしでAF再発を抑制できた(再セッション施行74例含む)。抗不整脈薬併用も含めば、計94%でAF抑制が可能であった。2006年2月以降は、Electroanatomical mapping systemを併用したEEPVI法(CARTO-EEPVI)に発展し、4月末までに40例に施行しているが、より安全で効率的なアブレーション治療が可能になっている。
    <結語>大規模臨床試験AFFIRM studyでも、リズムコントロールの心拍数コントロールに対する優位性は明らかにならず、その予後規定因子の解析では、洞調律維持は予後を改善するものの、抗不整脈薬使用は逆に予後を悪化させた。一見すると矛盾するかに思えるこの結果は、非薬物治療によるリズムコントロールが予後改善につながる可能性を示唆しているとも言える。当院で施行しているEEPVI法は、AF抑制に有効である。アブレーション治療を含むAF治療戦略を展開することで、より多くのAF患者のQOL(Quality of life)の向上のみならず、予後改善も期待できると思われる。
  • 安全かつ予防的な苦痛緩和への介入
    中根 由華, 天野 米香, 久米 織加, 岡田 密恵
    セッションID: 2C06
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
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    <緒言>急性心筋梗塞(以下AMI)にて経皮的冠動脈インターベンション(以下PCI)を受けた患者は、鼠径部に動脈ルートが挿入され安静臥床を強いられる。当院CCUでは、長い人では数日間にも及び、体位変換などによる苦痛の緩和を図っている。しかし、一般に急性期は血行動態が不安定と考えられており安静が優先される。このため苦痛緩和に対する積極的な介入が困難な現状である。 体位変換による血行動態の変動を時間経過で調査し、患者の苦痛緩和を安全、かつ予防的に介入することを目的とする。
    <方法>研究期間内にPCI治療を受けた患者を対象とし、体位変換群(以下a群)、安静臥床群(以下b群)に分けフェイススケール(以下f.s.)、血行動態を調査する。f.s.は数字が高いほど苦痛があると評価し、スケール0-1:1グループ 2-3:2グループ 4-5:3グループとした。統計にStat View5を用いp<0.05を統計上有意とした。a群は帰室30分後の体位変換直前・直後、10分後、30分後、2時間後の体位変換直前・直後、8時間後、b群は帰室30分後、2時間後、8時間後にf.s.を使用し苦痛評価をした。
    <結果>a群11名(47.8%)、b群12名(52.2%)の総数23名であった。平均年齢(平均±SD)はa群65±11歳、b群69±11歳であった。身長・体重・BMI、DM・HT既往、慢性腰痛を持っている患者はa、b群有意差は認められなかった。a群・b群のf.s.の比較では有意差は認められなかった。しかし2時間後ではa群の1グループでは9名、2グループでは2名、b群の1グループでは5名、2グループでは7名と有意差が認められた(p=0.0487)。早期に体位変換を行なった群では体位変換を行なわなかった群より苦痛が軽減できている結果となった。8時間後のa群とb群では有意差は認められなかった。体位変換を行ったa群のみ血行動態の変動の比較を行った。体位変換直前・直後では有意な差は認められなかった。体位変換直前と体位変換10分後、30分後でも有意な差は認められなかった。2時間後の体位変換直前・直後でも血行動態に有意な差はみられなかった。今回急性期に体位変換を行なったが血行動態に影響することはなく合併症もなかった。
    <考察>香川らはPCIの安静に伴う疼痛について、患者が「効果的だった」と答えたケアは体位変換と鎮痛剤の投与であったと報告している。今回の研究結果からも早期に体位変換することにより苦痛を軽減できることが分かった。しかし8時間後では大差がなかったことから、早期に体位変換しても同一体位を強いられることは苦痛であった。そのため体位変換した後も短時間で頻回に介入していくことが必要であることが示唆される。AMIの急性期治療に関わる看護師は今後そのことを考慮して介入していく必要があると考えられる。今回の研究結果から体位変換を行っても血行動態の変動がみられなかった。これは右側臥位が左側臥位よりも、下大静脈の圧迫により血行動態に影響が大きいと思われているため安全を考慮し左側臥位とした。また、村田らによると体位変換の角度は30度が望ましいと報告されており、30度での体位変換を行ったためであると考えられる。より苦痛を軽減することができる介入のために、今後は右側臥位や30度以上の角度などでも安全であるか否かを検討していく必要があると考える。苦痛の軽減のためにも体位変換を行うことは効果があり、その際に血行動態の変化の観察と看護判断が重要となってくる。
  • 松田 知子, 日高 幸代, 西脇 純子, 浅野 正絵, 田中 富美子, 遠藤 利子
    セッションID: 2C07
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
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    <はじめに>冷罨法は解熱効果を得るために頭部、腋窩、鼠径部を冷却し行われている。しかし、そのほとんどが経験的に行われている看護技術であり、解熱効果や生体に及ぼす影響はあまり知られていない。また、解熱の手段として冷罨法のほか解熱鎮痛剤を使用することがあるが、近年、解熱鎮痛剤の使用は生体に多様な影響を及ぼすことがわかった。とくに生体機能の低下した高齢者には、様々な弊害が生じる恐れがあるため、解熱鎮痛剤の使用は慎重に行わなくてはならない。一方で、高齢者の発熱は脱水、不快感、新陳代謝の亢進により体力が消耗するなど、様々な影響を及ぼすため、効果的な解熱方法を検討する必要がある。そこで看護ケアとして行っている冷罨法に着目し、その効果を検討することとした。
    <方法>
     1.サーモグラフィーを用いた皮膚温の変化の測定。20代の看護師3名を対象とし、測定前にサーモグラフィーで皮膚温の測定を行い、頭部、腋窩、鼠径部、腋窩と鼠径部の4つの部位別に冷罨法を施行し、1時間後に部位別に周辺の皮膚温の測定を行う。
     2.入院患者のうち安静臥床が保て、研究の主旨を説明し同意を得られた70歳以上の発熱者(37.5℃以上)30名を対象として頭部冷罨法(頭部群)、腋窩冷罨法(腋窩群)、鼠径部冷罨法(鼠径部群)、腋窩と鼠径部冷罨法(腋窩&鼠径部群)の4つの部位別に冷罨法を施行し、温度変化を測定し比較検討する。頭部、鼠径部は腋窩で、腋窩、腋窩と鼠径部は耳式体温計でそれぞれ1時間後、2時間後に体温の測定を行い、各々30症例のデータ収集をし比較検討した。どちらも頭部には、氷枕にタオルを巻いたものを使用し、腋窩と鼠径部には200mlのプラスチックボトルに水を入れ冷凍させた物にタオルを巻き使用した。
    <結果>
     1.サーモグラフィーの測定結果より、頭部冷罨法は頭部のみ冷却され、体幹部には変化は認められなかったが、腋窩冷罨法は腋窩周囲が特に変化が強く認められ、上肢、胸部まで温度変化を認めた。また、鼠径部冷罨法では鼠径周囲が特に変化が強く認められた。腋窩と鼠径部の冷罨法では温度変化は腋窩と鼠径部の両方を認めた。
     2.冷罨法による効果比較(図2)より、各群の時間ごとの体温変化は頭部群、鼠径部群は有意差がなく、腋窩群、腋窩&鼠径部群は有意差を認めた。また各群間では、頭部・腋窩群間、頭部・腋窩&鼠径部群間、鼠径部・腋窩群間、鼠径部・腋窩&鼠径部群間に有意差を認めた。
    <結論>頭部冷罨法は、解熱効果には有効ではない。腋窩冷罨法は、解熱効果に有効である。鼠径部冷罨法のみでは、解熱効果は有効ではない。腋窩・鼠径部冷罨法は解熱効果に有効である。
  • 人工肛門造設患者にコーヒー豆滓消臭剤を使用して
    岩渕 秀子, 棚橋 和子, 深沢 加奈子, 小林 美幸, 高野 多美子
    セッションID: 2C08
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    はじめに
     人工肛門造設をした飲食店経営の患者から、「臭いがするだろうし、もう人前に出るのは難しい。」と悩みの声をきっかけに、消臭を図ることで自信を持って社会復帰出来るよう看護介入の必要性を感じた。そこで、これまでの調査で明らかになっているコーヒー豆滓の「臭いを吸着させる」という性質を利用して、医療の場でも活用できないかと考えた。
    研究方法
     乾燥させたドリップ後のコーヒー豆滓30gを市販のお茶パックに入れ、装具の上に置き1週間後に交換する。創処置が不用になったら腹帯をはずし、穴を開けて装具を通し二つ折りにした腹巻きに替える。厚生省で定められた「臭いの強さ6段階方式」と「臭いの快、不快の9段階方式」を利用し消臭剤使用前と後に同じ尺度を用いたアンケート調査を実施した。また、退院後初回の外来受診日に訪問しケアの継続性、患者の日常生活の様子を調査した。
    結果及び考察
     平成16年7月から12月に人工肛門造設術を受けた患者14名を対象に、アンケートで「不快な臭いを感じている」と答えた患者10名に看護介入した。「臭いの感じる強さ」について、消臭剤使用によって臭いの強さは軽減した。「臭いの快、不快」についても、消臭剤使用により軽減した。(図1)t検定からも優位な関連が認められた。(P<0.000)消臭剤の重さ、腹巻きの使い心地についても適切であるという結果がでた。退院後初回外来受診日に訪問した時も90%の患者が継続して使っていた。また、退院前臭いを気にせず外出できるか、の質問に「はい」90%「いいえ」10%であったが、退院後100%の患者が外出できたという結果だった。
     臭いは人前では憚られる話題であり、気がかりでも我慢してしまう患者が多いだろう。アンケート調査は患者が思いを看護者へ表出する場となり、訴えに傾聴した看護者の姿勢が患者に精神的な安心感を与えることができたと考える。
     患者自身が障害を抱えたことをどう捉えて克服し、生き甲斐を感じられるかが重要となる。退院後も100%の患者が継続して消臭剤を使用しており「安心して外出できるお守りだ。」という言葉を聞くことが出来た。
     今回の看護介入で、臭いという目に見えないが隠すことの出来ないハンディキャップを、患者自身が克服する糸口になったと言える。
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