日本農村医学会学術総会抄録集
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第55回日本農村医学会学術総会
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一般演題
  • 樗木 智聡, 永山 美子, 鈴木 敦子, 野口 昭三
    セッションID: 1F01
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言>麻疹・風疹・水痘・ムンプス(以下、MMRV)の各流行性疾患は、子供の病気とみられがちである。MMRVは感染力が強く、特に成人においては重症化する傾向がある。2005年12月当院入院患者が水痘様症状を呈し、幸い感染拡大は見られなかったが、院内感染の波及が心配された。水痘は、癌や白血病など免疫状態が低下している患者が罹患すると死亡することもある。また健康成人でも重症肺炎を起こし、時に人工呼吸器が必要となることもある。感染の矢面に立っているスタッフが感染すると患者や他の感受性職員へ二次感染を起こすことが懸念される。さらに職員が感染し就業停止となると病院の機能の破綻をきたし損失は大きいと考える。当院内において、MMRVに対する免疫のない、すなわち感受性者である職員を発端とした院内感染の発生および拡大を防止するための対策はこれまでに未着手であり、検討が不可欠であると考える。
    <目的>当院職員のMMRVに関する免疫の状態を明らかにして職業感染防止対策に役立てる。
    <方法>高萩協同病院に勤務する職員約160名(職員定期健康診断受診者)のうちMMRV抗体価測定を希望した職員を対象とする。
     2006年1月の健康診断の際に採取された血清を、検体として使用。測定はSRL(エスアールエル)社に依頼した。検査項目 基準値麻疹(HI) 8未満(倍)風疹(HI) 8未満(倍)水痘(EIA) 2.0未満ムンプス(EIA) 2.0未満
    <結果>
            (-)  (±)
      麻疹   13   18   31/102   (30.4%)
      風疹   3    3    6/102  (5.9%)
      水痘   0    0    0/102   (0%)
      ムンプス 3    5    8/102  (7.8%)
             n=102
    抗体保有状況とともに抗体価陰性の職員に“ワクチン接種のお知らせ”を個人宛に通知した。偽陽性の職員も時間とともに抗体価が低下し陰性化するsecondary vaccine failure が考えられるのでワクチン接種すべきであると考える。小児科外来の職員の風疹抗体価が強陽性であったのは患者からの曝露によって不顕性感染があったと思われる。病院という特性上、他の部署でも業務中の曝露は十分に考えられ、万が一曝露した場合、感受性職員の感染、さらに院内感染が拡大することが想定される。また3年前に麻疹の抗体価が陽性であったが、今回の測定で陰性化していた職員がおり、これはsecondary vaccine failureと想定される。その事実から考えても一定の間隔を置いて抗体価の測定を行うことが理想的と考える。また麻疹抗体価陰性13名(12.7%)、偽陽性18名(17.6%)合計30.4%という結果は予想以上に高く、病院として積極的に対策を講じる充分なデータである。今回MMRV抗体価測定で受けた職員は任意で行ったため63.8%(102/160名)にとどまった。これは感染対策委員会の啓蒙不足が原因であり、今後も感染対策の意識向上に努め全職員の感受性把握が必要であると考える。尚、新規採用時職員健康診断ではMMRV抗体価測定をルーチンにすることとした。
  • 小林 智子, 高山 義浩, 小澤 幸子, 岡田 邦彦
    セッションID: 1F02
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言>エイズ動向委員会の報告によると、全国における2004年の新規HIV感染者数とエイズ患者数の報告数の合計が1165件となり、HIVに感染した人の総数が初めて10000件を超える報告数となった。これを都道府県別人口比で集計すると、長野県のHIV感染者数は東京に次いで2番目に多い報告数であった。さらに、新規AIDS発症者を人口比で集計すると、長野県は全国で1番多い報告数となった。とくに東信地域は県内でも患者数が多いとされる。これは、新幹線、高速道路など長野オリンピックに備えた建設ラッシュにおいて流入した外国人(肉体労働者とセックスワーカー)が、流行の引き金となったと考えられている。そこで東信地域に位置する当院の新規感染者の推移を示し、この地域のHIV蔓延の実態と対策について考察する。
    <結果>当院では、1986年10月より2006年3月までに79名の新規HIV感染者の受診があり、既知感染者3名の他院よりの紹介受診があった。これら82名の2006年4月1日現在における転帰内訳は、帰国支援 19名(タイ 18名、スリランカ 1名)、当院にて死亡 9名、他院へ紹介 3名、行方不明 8名、入院加療中 2名(HAART施行中 1名、帰国準備中 1名)、通院加療中 41名となっている。
     2005年度に当院を受診した新規HIV感染者は9名であった。このうち8名がAIDS発症者であった。なお、その国籍・性別の内訳は、日本人男性 5名、タイ人男性 1名、タイ人女性 3名であった。
     現在、当院にて加療中の患者43名の国籍・性別の内訳は、日本人男性 29名(平均年齢 49.0歳)、日本人女性 4名(同 45.0歳)、タイ人男性 1名、タイ人女性 8名、フィリピン人女性 1名である。
    <考察>当院における新規HIV感染者は急速に増加傾向であり、主に外国人女性から日本人男性へと感染拡大の様相を呈している。また、いわゆる「いきなりエイズ」が大半を占めており、受診する感染者が氷山の一角に過ぎないと推察される。さらに、近年の傾向として、日本人男性の発症が増加してきているが、今後は日本人女性へとその感染が蔓延してゆくことが危惧される。当院診療圏のHIVの広がりについて、楽観的な要素はほとんどなく、今後も新規感染者の報告数は増え続けるものと思われる。そこで当院では、熟年世代への啓蒙活動やセックスワーカーらを対象とした教育・検診活動を展開することを今年度の活動の柱のひとつとして位置づけ、現在取り組んでいるところである。またHIV感染症の早期発見のため、HIV診断のコツについて、地域医師会などと協力しながら、内科に限らず、皮膚科医、泌尿器科医、外科医などへの教育活動を展開してゆく方針としている。
     またHIV診療の進歩により、その慢性期管理へと我々の診療も軸足が移りつつある。よって、高齢化しつつある感染者と家族を支えるサポート体制の充実も必要となってくることが予想されている。こうした変化に対しても、エイズ拠点病院として適時取り組んでいく必要があると考えている。
  • 山崎 一郎, 寺島 健, 江口 克也, 小池 貴志
    セッションID: 1F03
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <目的>昨年は2004年度医療現場職員のHBワクチン接種前後のHBs抗体につき報告した。今回2005年度の追加データ及び今後の職員検診での感染症検査やワクチン接種対象につき検討したので報告する。
    <対象及び方法>2004年度医療現場職員210名・2005年度202名、前期の職員検診で抗原・抗体陰性者をワクチン接種対象とし、接種歴の有無は本人の申告によった。
     ワクチンを1回接種するごとに、抗体検査を抗体陽性まで1年3回(初回、1ヶ月後、6ヶ月後)・2年で6回を限度に行うことを原則とした。初回接種も3回ワクチン接種後に抗体検査としなかった。
    <結果及び考察>抗体陽性率は2004年度63.8%、2005年度80.6%だった。接種歴のある2004年度23名,2005年度16名は1回のワクチン接種で全員抗体陽性となり、2004年度21名、2005年度13名は100mIU/ml以上となった。接種歴のない2004年度38名は 1)接種2回で42%(16名)が抗体陽性。この16名中5名のみ 100mIU/ml以上。 2)接種3回で94.1%(32名/34名、4名転勤)が抗体陽性となり、3回接種し陽性となった16名中13名は 100mIU/ml以上。 3)接種 4回で100%(1名・1名は妊娠したので接種せず)が抗体陽性となった。針刺しでHBウィルス量が多いときに、抗体価が100mIU/ml未満では感染の可能性を指摘する報告がある。今回の検討から“既接種の反応者は1回、初回接種者は3回1クールのワクチン接種・抗体検査は前期の職員検診” とすれば、100mIU/ml以上の十分な抗体価となることが多い。
     けれども“HBV母子感染防止事業”が全面的に実施された1986年以降に生まれた日本の若い世代、及びワクチン接種や針刺し対策がなされた1980年代始めからの米国医療従事者は、必ずしも追加のワクチン接種や定期的な抗体検査は行われていない。しかしHBVキャリアやHBV感染はきわめて少数になっている。またCDCのガイドライン*)では、十分な抗体価(10mIU/ml以上)を有することが確認できた反応者で、9?15年以上経過すると約23?60%の人に抗体が検出されなくなるが、正常の免疫状態であれば、実質的には100%臨床的B型肝炎が阻止されるので、追加のワクチン接種や定期的な抗体検査は推奨していない。ただし透析患者のような免疫不全者では抗体価が、10mIU/ml未満となったらブースター効果をねらったワクチンを追加すべきとしている。さらにHBs抗原陽性の母の児でなくとも、新生児全員のHBワクチン接種を推奨している。これまで事務系などの職員は医療現場職員とされてなかったが、災害等で救急蘇生などにかかわる場合も想定される。従って全職員の確実なワクチン接種や針刺し対策をすることが、限定された医療現場職員のみのワクチン接種追加や全職員の検診で年に1回の抗原・抗体検査を行うより、感染予防・健康管理の観点から推奨される。
    *) CDC. Recommendations for preventing transmission of infections among chronic hemodialysis patients MMWR 2001; 50(No. RR-5): 1-
  • 佐藤 栄一, 柳沢 素子, 結城 敬
    セッションID: 1F04
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言>近年、臨床栄養の分野は劇的に変化している。その理由としては、栄養管理による疾病治療への有効性が注目されていることに加え、医療経済の点からも栄養療法を実践するほうが有利であること、保険診療上の変革の流れも栄養管理を奨励し後押ししていることが挙げられる。実際の医療現場では、医師、看護師、栄養士、薬剤師、臨床検査技師、嚥下療法士など多職種がチームを組んで栄養管理に取り組む栄養サポートチーム(以下、NST)が全国の数多くの医療機関で立ち上げられ活動を開始している。それに伴い、病院内外の栄養関連の学会や研修会、勉強会も数多く開催され、臨床栄養への関心の高い医療従事者は積極的に参加し、自己研鑽に励んでいる。こうした臨床栄養分野の大きな流れの中、医学部学生への卒前教育と初期臨床研修医(以下、研修医)への卒後教育の中で、臨床栄養教育の実態は不明である。
     今回、当院の研修医への就職時のオリエンテーション期間中、臨床栄養の講義を2年に渡り実施した。その講義の前後で行った研修医対象のアンケートの結果を交え、当院での取り組みを報告する。
    <対象と方法>平成17年度、平成18年度当院採用の研修医計29名中当日欠席した1名を除いた28名を対象に、就職時のオリエンテーション期間中に各々2時間の臨床栄養に関する講義を実施した。講義は約1時間の座学と、実際に入院患者に出している病院食の実食と栄養補助食品の試飲と質疑応答という内容であった。講義前に研修医を対象にアンケートを実施し、更に講義終了後にもアンケートを実施した。
    <結果>平成17年度研修医は11大学出身の14名である。平成18年度は14大学15名である。(1名欠席のため14名が対象)。大学で臨床栄養に関する講義の有無についての質問では、「(講義が)あった」と回答した研修医は平成17年度では2名、平成18年度では3名であった。「講義のうち臨床栄養と名の付く講義はなかったが、一部の講義で触れられていた」と回答した研修医は、前者は7名、後者も7名であった。それ以外の大学では臨床栄養に関する講義は「なかった」としたのは前者3名、後者4名であった。その他に、講義前には「一般の栄養に関するイメージ」や「臨床栄養のイメージ」について尋ねた。また、「栄養に関する基礎的な用語の意味」や「講義への期待」を質問した。講義後のアンケートでは「講義の感想」を尋ねた。それには平成17年度、平成18年度の研修医全員が「有意義であった」と回答した。その他「(講義前と比較して)臨床栄養のイメージの変化」や「興味のある具体的な臨床栄養の内容(例:輸液の基本、経腸栄養法など)」、「来年度の講義の改善点」を質問し回答を得た。実際の講義では、補助栄養食品の試食試飲実習を行い、好評を得た。
    <考察>2年間に渡る今回の取り組みで、当院採用の研修医の卒前教育中の臨床栄養に関する講義の大学間のばらつきが明らかとなった。その一方で、研修医自身の「栄養」「臨床栄養」に対するイメージも講義前には研修医各々で様々であったが、講義後には臨床栄養の重要性を十分理解してもらえた。
     今後は、オリエンテーションだけで触れていた臨床栄養に関する講義を体系化させ、一定期間継続的に講義・実技する卒後研修プログラムを構築していくことが課題である。
  • 清水 美保, 結城 敬, 柳沢 素子
    セッションID: 1F05
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <諸語>当院では2002年からNST(栄養サポートチーム)準備委員会を立ち上げ、2003年からNSTが正式に稼動している。しかし、入院時栄養スクリーニングの体制が整わないこと、主治医からのコンサルテーション型をとっていること、消化器外科病棟が中心となっており、栄養管理の重要性が全病院にはなかなか広がらないのが現状であった。私たちが昨年おこなった入院患者の調査によると低栄養状態の患者が約50%いることがわかったが、NSTが介入し栄養管理を行っている患者はごく一部に過ぎなかった。
     2004年看護部スキンケア委員とNST委員が一つに合併し各病棟で栄養管理の中心となるべき看護師が配置されたため、2005年10月から16病棟中4病棟で、入院時栄養スクリーニングおよびアセスメントが開始された。
     そして今年4月、診療報酬改定の栄養管理実施加算をきっかけとしてではあるが、全病棟において栄養スクリーニングが行われることになった。
     まだまだ始まって間もないが、看護師による栄養スクリーニングを受けての管理栄養士の栄養管理に対する関わり方と業務の変化、問題点と今後の課題を報告する。
     4月からの入院患者に対しての栄養スクリーニング実施率は74.4%だった。看護師によるスクリーニングで問題がないと評価された患者でも、管理栄養士が再度チェックを入れている。検査値などを合わせて見ると問題がある場合もあり、それらの患者に対しては栄養ケアプランを立て、定期的にモニタリングし最終的評価をする。個々の患者の栄養に関する問題点が明確になり、NSTやスキンケアチームで関わる患者や、従来の栄養指導、嗜好調査で関わる患者に加え、何らかの栄養障害があり関わる患者も多くなった。また、一度問題ないと評価しても、手術・化学療法・高齢者など、入院中に栄養不良となり得るリスクを持った人に関しては、再アセスメントを行う必要がある。
     以前は病院全体で入院時栄養スクリーニングを行うことが目標だったが、それだけでは意味が無く、その後の個々人に適した栄養量や栄養補給法(従来の経口栄養法に加え・経腸、経静脈栄養といった非経口栄養補給法の双方から)を決定、実施し、再評価するという一貫した栄養管理を行うことに栄養管理実施加算の意味があり、実施していく上で中心となるのはやはり、管理栄養士でなければならない。
    <今後の課題>今回の診療報酬改定までにはわずかな時間しかなかったが、NSTの活動があったことにより、スムーズに全入院患者の栄養スクリーニング導入はできた。しかし、看護師によるスクリーニングが機械的にならないような働きかけと、自分自身のスキルアップに努めながら、スクリーニングを無駄にしない管理栄養士による質の高い継続した栄養管理ができる体制作りと有効性を評価していくことが必要である。
     入院中に栄養不良となる患者(Hospital Malnutrition)も多い。そのような患者を出さないためにも、先に述べたようなリスクを持った患者、スクリーニングで問題があると判定した患者に対しては、落ちのないようにfollowしていく体制を作ることが今後の課題である。
     1日の入院患者数も多く、管理栄養士1人が栄養管理を行う患者は70名と多いため、摂取量の把握、栄養量の算出、記録方法についてより効率的に実施できる体制を整えていきたい。
  • カルテ記載と摂取栄養実測値との比較をとおして
    松田 里奈, 村中 ひろみ, 相良 友紀, 藤本 七津美, 野本 真由美, 坂田 良子, 永田 秀之
    セッションID: 1F06
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言>栄養管理は治療の基本であり、急性期医療を行う上でも極めて重要と考えている。特に手術後の患者において栄養不良状態は、創傷治癒の遅延や、感染や褥層等合併症の発生を引き起こすことは明らかである。そのため経口摂取量の評価は重要な看護技術の1つである。<BR> 現在、当病棟の看護師による食事摂取量の評価方法は、大半のケースが、実際に観察を行うのではなく、患者の申告により全体の何割を摂取したのかを聴取し記録を行っている。その結果により点滴の追加等の治療方針を決定しているため、クリニカルパスにより治療の標準化を行っている場合、栄養管理でのバリアンスが発生することとなる。
     今回我々は、胃切除術後の患者の摂取カロリーの摂取状況を把握し、現在行っている評価方法が妥当であるかの検討を行った。
    <対象、方法>胃切除術後に食事摂取量が「5割以下」と申告した患者を対象とした。可食後の実際の食事カロリーを栄養士が算定し、患者の申告した量との比較検討を行った。また、各症例について点滴を含めた総投与カロリー、合併症、バリアンスの発生についても検討した。
    <結果、考察>患者により申告された食事量と栄養士が算定した実際の可食カロリーには、大幅な格差を認め、我々が「食欲なし」と判断した症例の中には、実際にはある程度のカロリーを摂取していた症例も存在した。従って現在の評価方法は栄養管理上不適切であり、そのために栄養管理のバリアンスが生じていた可能性も考えられた。改善策としては、例えば副食の1品1品の食べた量を患者自身に日記として記録してもらい、それを栄養科と協力し聴取する、また看護師が栄養士からそれぞれの食事メニューをカロリーで情報を得て、各食事の摂取量を「何割」として記載するのではなく、カロリーとして観察する。実際に摂取したカロリー量や栄養素を把握することで、適切な経口摂取量の評価が可能になると思われる。
  • 山口 さつき, 森下 啓明, 上西 栄太, 石崎 誠二, 近藤 國和
    セッションID: 1F07
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <目的>安城更生病院では、糖尿病教育入院期間をクリニカルパスシステムにより、約14日間としている。ひと月当たりの教育入院患者数は約40名である。そのうち当院継続通院となる患者は約50%で、教育入院後の外来栄養食事指導の継続率は約40%である。そのため、退院後の評価が行えず、食事療法が継続されずにコントロール不良となり再入院となる症例が後を絶たない。そこで、退院後のコントロール悪化を防止するために食事療法の評価を徹底すべく、教育入院後の外来継続指導を介入群(入院時・1ヶ月後・2ヶ月後・3ヶ月後・6ヶ月後)と対象群(入院時・3ヶ月後・6ヶ月後)の2群に分け、栄養食事指導の実態と効果分析に関する研究を実施したので報告する。
    <方法>平成16年10月から12月に入院した2型糖尿病患者のうち、(1)過去に糖尿病と診断された患者、(2)空腹時血糖≧126mg/dl又は随時血糖≧200mg/dl、かつHbA1c≧6.5%のいずれかを満たす患者に対象を絞り、介入群・対象群を無作為に選択した(介入群4名、対象群3名)。カンファレンスにて医師に協力体制と外来栄養食事指導の継続予約指示を依頼した。入院指導時に最終目標を設定し、次回指導までの目標を決めた。対象者には退院前に自己中断防止を踏まえ、外来栄養食事指導を継続することと予約日時を確認し、外来指導2週間前に書面郵送し連絡確認を行った。外来栄養食事指導時に臨床検査データーや体重に合わせて食事療法の実施状況を評価し、必要に応じて食事療法プランの変更を行った。
    <結果>6ヶ月後、介入群はHbA1cが平均3.5%、対象群は平均2.9%改善した。また、両群共にBMI・脂質データーが改善し、栄養食事指導の継続効果が得られた。僅かではあるが食事療法の継続により介入群で、より臨床検査データー改善に繋げるという結果が得られた。
    <まとめ>現在、当院に継続通院する患者に対しては、主治医と連絡を密にして月1回外来指導を実施することで、食事療法の自己中断防止に繋げられている。しかし、病診連携システムにより、入院患者の約半数が他院へ紹介されるため、他院で食事療法が継続されているか不明である。また、管理栄養士間の病診連携が確立できていないため、他院紹介患者のモニタリング・評価が行えず、コントロール不良による再入院増加の原因にもなっている。今後は、地域病院との連携を図り、医師だけではなく管理栄養士を含めた病診連携システムを確立すべきと考える。他院通院患者の中で試験的に1-2病院に絞り、退院2ヶ月後に当院での栄養食事指導を予め予約し食事療法の実施状況を確認評価後、通院先の病院へ回答書にて状況報告を行う運用を計画中である。
  • -栄養管理法をふまえて-
    鈴木 まどか, 岡野 宏
    セッションID: 1F08
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <目的>Clostridium Difficile (以下CD)は入院患者に最も多くみられる下痢症の原因菌であり、生育に不利な環境下では芽胞を形成することにより長期間生存し、また各種消毒薬に抵抗性を示す常在菌である。腸管を守っている正常細菌叢のバランスが抗生物質の使用により崩壊され、本菌が過剰に増殖、毒素を産生することはすでに指摘されている。しかし、抗生物質の使用以外に宿主側の要因もあるとされており、今回栄養管理法をふまえてCD Toxin陽性における他の要因の検索を行なった。
    <方法>2004年4月以降で入院後下痢を認め、Oxoid社のCD toxin A検出キット「ユニクイック」を用いてCD検査を行った連続100例のうち、入院時よりCD Toxin陽性であった4例を除く96例(陽性症例45例、陰性症例51例)において、retrospectiveに検討した(年齢、性別、抗生物質の使用有無に有意差なし)。今回、CD Toxin陽性に影響を及ぼすと考えられる因子として、CD検査前までの1)抗生物質の使用期間、2)栄養状態(TP、Alb、Ch-E、TLC)、3)絶食期間、4)食物繊維の摂取有無、5)経腸チューブの挿入有無の5項目を用いた。
    <結果>抗生物質の使用期間は、CD Toxin陽性群(以下CD(+)):14.3±17.1日、CD Toxin陰性群(以下CD(-)):10.7±10.0日、p=0.485。TPは、CD(+):5.9±1.0g/dl、CD(-):5.9±0.9 g/dl、p=0.915。Albは、CD(+):2.8±0.5 g/dl、CD(-):2.8±0.5 g/dl、p=0.849。Ch-EはCD(+):0.4±0.2?ph、CD(-):0.5±0.2?ph、p=0.641。TLC(末梢血総リンパ球数)は、CD(+):838.4±451.4/μL、CD(-):1030.9±558.0/μL、p=0.125。絶食期間は、CD(+):6.3±8.7日、CD(-):2.2±4.3日、p=0.017。食物繊維の摂取ありは、CD(+):20例、CD(-):33例、食物繊維の摂取なしは、CD(+):25例、CD(-):18例、p=0.048。経腸チューブありは、CD(+):15例、CD(-):8例、経腸チューブなしは、CD(+):30例、CD(-):43例、p=0.047。よって、CD Toxin陽性は、絶食期間の長い症例、食物繊維を摂取しない症例、経腸チューブを挿入した症例で有意に多かった。多変量logistic回帰分析の結果、絶食期間が長くなるほど、他の因子とは独立してCD Toxin陽性が有意に高くなることが示された(オッズ比1.098、95%信頼区間1.001-1.204,p=0.047)。
    <考察及び結論>栄養管理法をふまえて検討を行った結果、CD Toxin陽性の要因には、絶食期間の長さが関係した。
     したがって、絶食の長期化による腸粘膜の萎縮により、1.元々腸管内に少量存在していた菌が増殖、毒素を産生した可能性と、2.体外の菌に暴露され、腸管内に定着、増殖した可能性が示唆される。
     また、その他の要因(食物繊維、経腸チューブ)も考慮し、今後は絶食期間の短縮、食物繊維含有製剤の使用、経腸栄養バッグ製剤の使用を検討していきたい。
  • FMEAを利用したシリンジポンプ中央管理の定量評価
    丸山 雅和, 長島 美幸, 白瀬 昌宏, 古屋 香, 松田 訓弘, 成田 孝行
    セッションID: 1F09
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
     今回、過去5年間におけるシリンジポンプ保守管理データについて、機器不具合事例をFMEA分析によって定量評価し、現シリンジポンプ中央管理体制に関して考察したので報告する。
    <方法> 保守管理データより発見し得たシリンジポンプ不具合の各事例に対し、当院独自に定義したFMEAワークシート及び評価点表を作成し、機器不具合の影響度、致命度、RPN(危険優先指数)を算出し、定量評価及び特性要因図を作成、現シリンジポンプ中央管理、保守管理体制における改善箇所の抽出とシリンジポンプの安全管理に向けた対策を考察した。
    <結果> 過去5年間の保守管理データより、RPN平均4.93、(最高値:16.8、最小値:0.308)、致命度平均975.5/6000(最高値:2160、最小値:96)影響度平均29.3/60(最高値:38、最小値:7)を得た。
    <考察・まとめ> 致命度、影響度、RPN(危険優先指数)を算出することにより明確な対策作成順序及び中央管理体制、保守管理法に関する対策を明瞭化することができた。当院における現シリンジポンプ中央管理体制は基本的に予防保守を行っておらず、発生不具合の致命度、影響度について診療を観点に入れて評価すると、評価内において下位にあったものでも診療においては無視できるものではないと思われた。
     今回のFMEA結果より中央管理・保守管理体制におけるシリンジポンプ予防保守の必要性または中央管理方法の改善は示唆されたものの、経済的要因やマンパワー等を考慮すると完全な予防保守は不可能であるのが現状である。今回の結果を更にいろいろな観点から分析し、より信頼性の高い体制を確立していくこと、及び保守管理データの評価を行いデータベースとして活用できるシステムの構築が望まれる。
  • 高沼 和幸, 小林 正宏, 高橋 延之, 塩澤 勉, 田村 克彦, 長澤 正樹
    セッションID: 1F10
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <目的>当院では、1994年から骨・関節痛、かゆみなどの症状を有する患者にon-line HDF(以下O/L)を施行してきた。今回、透析初期(昭和47年)に導入された超長期透析患者に対して、透析歴23年目よりO/Lを施行した症例について検討した。
    <対象・方法>透析歴33年7ヶ月、O/L歴10年の男性、年齢62歳、原疾患はCGN。O/Lは後置換12L、週3回継続的に行った。検討項目は透析導入時からの各小分子物質の除去率、O/L施行前後のKt/V、nPCR、%CGR、β2-MG、DRA関連因子の推移をレトロスペクティブに検討した。
    <結果>O/L前後の溶質除去については、各小分子物質の除去率では大きな変動はなかった。Kt/V1.2以上、nPCR1.0以上、%CGR100%以上を維持した。β2-MGはO/L開始時30mg/L代から現在では約10mg/Lに低下した。臨床症状の経過は左CTS手術歴があるが、O/L施行後は両手の骨・関節痛は消失し、右CTS手術は未施行である。
    <考察>O/L導入期から振り返ってみると、O/Lによる物質除去効果と清浄化透析液によるETの影響の排除が、臨床症状の改善に対して関与していたと考えられる。更にO/Lを長期的に継続し続けたことがDRAの予防に対して有効であったことが示唆される。更にO/Lが10年間安全に安定的に施行できたことも要因と考えられる。
    <結語>透析患者の透析年数が30年を超える時代になり、透析患者も高齢化が進んでいる中O/L療法は超長期透析患者の透析療法としてQOLの維持に有効である可能性が示唆された。
  • 室橋 高男, 高橋 大樹, 完戸 陽介, 森久保 忍, 石川 俊行, 橋本 佳苗
    セッションID: 1F11
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>当院では、在宅人工呼吸器を利用した患者様宅に医師、看護師が訪問し在宅医療を行っている。臨床工学技士も2週に一度同行し、人工呼吸器の点検等を行っている。その人工呼吸器は、レンタルで使用し5000時間(約半年)でオーバーホールのために交換となる。この交換時に、同機種・同設定で点検後交換した後、患者様から「何かへんだ」等、再度点検依頼がくることがあった。そこで、人工呼吸器の違いを見出すためラングシュミレーターを使用し、人工呼吸器テスター(タイコ社PTS2000)を利用して比較検討したので報告する。
    <方法>患者様使用の人工呼吸器タイコ社アチーバPSをラングシュミレーターに接続、同設定条件で同気道内圧・換気量になるよう調整後、人工呼吸器を交換しPTS2000により、V(ボリューム)、F(フロー)、P(プレッシャー)の波形を出力した。それを利用し実験1.現在使用中のものと、交換予定のものの出力波形を比較、その後同じ波形が得られる設定条件を探し出した。実験2.まったく違う機種(タイコ社アチーバPSと同社ベネット7200ae)に同設定を入力した時の出力波形を比較、同じ波形を得るために必要となった設定条件の確認を行った。
    <結果>実験1.交換前と交換予定の装置で同じ波形を得るための設定値を表1に示す。患者様に使用してもらった結果、「交換予定」に示した値が、患者様からも「一番近い」という返事を頂いた。実験2.機種の違う同設定の出力波形を比較した後、設定変更を行なった結果を表2に示す。
    <考察>実験1.より、機種や型が同じで、同規格のオーバーホールを実施しても、フローセンサー等それぞれに許容値というバラツキがあり、同じにはならずに長期に使用している患者様は、違和感によるストレスを受けることが経験上理解できた。実験2.に関しては、在宅移行時の人工呼吸器の機種変更も考慮し機種間による比較を行った結果、同じ設定でもV、F、Pの波形が全く違い、患者側の感覚が全く違うことが予想できた。しかし、吸気パターン・流速に変更を加えることで、より近い波形を見つけ出すことができた。今まで患者様に「何かへんだ」と言われても「血ガスも特に問題なく同じ設定だから大丈夫。あとは慣れるしかない」という考えも持っていた。しかし、今回の結果によって人間の感覚の鋭さと患者様の存在について改めて考えさせられた結果となった。
    <まとめ>機種変更時や呼吸器交換時の患者様の苦痛を軽減するために人工呼吸器テスターを利用し、換気量を保ちながら人工呼吸器の交換前後の出力波形を近似させる方法は、長期で使用する際の違和感・苦痛等のストレスを減らす方法として有用である。
  • 牧野 陽子, 伊藤 里美, 益田 弘美
    セッションID: 1F12
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>当院は692床の急性期病院であり、そのうち17床の緩和ケア病棟をもっている。2002年5月の移転を機に緩和ケア病棟が設立された時点では、終末期患者のニーズがどのようなものかが理解できていなかった。そのため、日々問題点を解決しながら、当院独自の方法で食事提供に取り組んできたので報告する。
    <方法>当院ではクックチルを採用し、最終調理を各病棟パントリーで実施している。緩和ケア病棟における栄養科の役割は、食欲のない患者にも「口から食べる喜びを忘れないように」との考えのもと「食べたいものをおいしく食べる」ことにより、喜び満足していただく食事提供に努めている。設立当初より開始したのは、手作りのアイスクリームとシャーベットを常備することであった。欠食の患者においても同様で、24時間好きな時に食べられる環境を可能とした。食事のオーダーは一般病棟同様に行なっていたが、患者希望を身近に聞く看護師より栄養科へ相談されるケースは多々あった。特に多かったのは「食べられた」という満足感を少しでも味わうために、食事量を減らして欲しいという内容だった。これにより、食事オーダーは現状を維持し、全ての患者においてひと回り小さい食器を使用したハーフ食を導入することにした。また、患者の入院時は訪問して話を伺うことを業務とし、その他にも必要に応じて訪問した。複雑な食事希望は、対応内容を電子カルテに記録し、部門システムにおいて早急に対応、調理は病棟パントリーにて調理師が実施している。煮込み麺や味の調整、串刺し、同じ野菜でも調理方法により食べられる場合は、なるべく患者の希望に副えるよう努力した。新たな希望が出る度に、栄養士、調理師とで協議しマニュアル作成を行なった。業務内容が定着した頃には、パントリーを担当する調理師により、週3回程度の病室訪問を開始した。食事に対する意見や個人対応の希望を聞き、栄養士と共に検討及びマニュアル修正をした。調理師も参加する月1回の合同カンファレンスでは、医師、看護師との関わりを持ち栄養科では拾え切れない問題点など情報を収集し、できる範囲でのサービスを実施している。
    <結果>設立当初の栄養科は、院内約束食事箋の範囲内でしか個人対応は実施していなかった。しかし、栄養士の病室訪問が開始され、栄養科スタッフは終末期患者の嗜好や摂取状況を実感し、個人対応の必要性を意識するようになった。また、調理師の病室訪問が実施されてからは「もっとやってあげたい」と意識が高まり、調理師自ら業務内容を見直し提案するようにもなったため、個人対応の幅も広がった。対応方法の困難なものは業務を整理しマニュアルを作成したことで、効率化が図られ医療事故防止も同時に遂行することができた。病棟スタッフからは、アイスクリームが常備してあることで、いつでも患者の希望に応えられ、食欲のない方でも好んで食べられると評判が良かった。また、食事対応に関わる時間が減り、その分本来の看護業務に専念することができたという声も聞かれた。
    <考察>この取り組みにより、病棟スタッフとの連携が確立され医療チームとしての役割を担い、終末期患者のニーズの変化に対応することができるようになった。今後としては、求められるものを提供するだけではなく、提供するものが求められるような新たな取り組みを試みたい。
  • 松田 みさ江, 井上 裕子, 稲垣 慎子, 竹内 真実子, 鬼頭 有子
    セッションID: 1F13
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言>進行癌患者では癌の進行もしくはその治療の過程で、筋力低下・運動麻痺・拘縮・しびれや疼痛・病的骨折・浮腫などさまざまな機能障害が生じ、さらには全身性の運動能力の低下・活動性の低下・廃用症候群といった障害も生じてくる。それらの障害によって、移乗動作や歩行・セルフケアをはじめとする日常生活動作(ADL)制限を生じQOLの低下をきたしてしまう。進行癌患者であっても、QOL・ADLの維持・向上を目的にリハビリテーションを行うことは、進行癌患者に生じる疼痛などの症状コントロール、心理面へのアプローチと同様に重要である。当院に緩和ケア病棟が開設されて約4年が経過した。当病棟でのリハビリテーションの現状について検討したので報告する
    <対象と方法>当院緩和ケア病棟開設2002年5月から2006年3月までの3年10ヶ月に退院された患者541例のうち入院中にリハビリテーションを受けた41例について、年齢・性別・疾患・目的・施行頻度・期間・中止の理由について検討を行った。
    <結果>年齢は41歳から91歳までで平均66.4歳であった。性別は男性23例・女性18例であった。疾患別では肺癌15例・胃癌6例・大腸癌5例・乳癌4例・子宮癌3例・皮膚癌2例・前立腺癌1例・腎臓癌1例・胆管癌1例・膵臓癌1例・上顎洞癌1例と肺癌が最も多かった。目的はADL向上が20例・廃用症候群の予防・改善が30例・浮腫の改善が3例・疼痛緩和が8例・心理支援が12例・在宅準備が1例であり、目的としてはADL向上・廃用症候群の予防・改善が多くみられた。期間は平均8.5週であった。施行頻度としては週1回未満3例・週3回3例・週3回以上35例と、ほとんどの症例は週3回以上行われていた。中止の理由は退院症例1例以外は全例状態悪化によるものであった。
    (症例1)86歳女性。肺癌。長期臥床による筋力低下を認めていたためリハビリテーションを開始。自力歩行で退院する希望が強く、非常に意欲的であり、毎日の日課として本人もリハビリテーションを心待ちにしていた。リハビリテーション開始時、起き上がりはもちろんのこと寝返りすらできなかった状態であったが開始後3ヶ月で、機能訓練室にて平行棒内歩行を行える状態となった。
    (症例2)59歳男性。上顎洞癌。脳転移による出血があり、入院当初は寝たきり状態であったが、血腫の縮小により意識レベルも改善、リハビリテーション開始。ADLは著明に改善したが家族が在宅での不安があったため、在宅へ向けてのリハビリテーションを行い退院可能となった。
    (症例3)91歳女性。皮膚癌。入院前より寝たきり状態であったため、関節拘縮が非常に強かったが、リハビリテーション開始後股関節の拘縮が改善し、オムツ交換も苦痛なく行うことができるようになった。
    <考察>緩和ケア病棟においては進行癌患者に対してその要望を尊重しながら、ADL向上、廃用症候群の予防・改善を目指したリハビリテーションを行うことが多い。病状の進行とともに身体的機能の喪失を感じる患者が少なくない中で、心理支持という重要性も示唆された。当病棟では現在、担当理学療法士とのカンファレンスを定期的に行っている。カンファレンスを通じて患者のリハビリテーションの状況を知ることは、日常生活援助に大変有用であるため、今後も継続していきたい。
  • 収穫期における中高年者の労働時間と疲労徴候の変化
    百瀬 義人, 末永 隆次郎, 畝 博
    セッションID: 1G101
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <目的>
    本研究の目的は、いちご収穫期に3回(出始め期、中間期、繁忙期)調査した内容を男女別に比較し、労働時間と疲労徴候の関連性を見出すこととした。
    <方法>
    対象は、福岡県下のいちご部会に所属する40歳から69歳のいちご栽培従事者。調査時期は2002年11月、2003年1月、2003年3月の3回。調査内容は、現病歴、いちご栽培歴、栽培面積、作業内容、作業時間、主な身体的疲労部位(目、肩、腰)、蓄積的疲労徴候(CFSI-A)、家事時間(掃除、洗濯、食事支度)及び睡眠時間とした。解析にあたり、腰痛症で治療中の人は医師の指導や腰痛により本来の作業状況と異なる可能性があることを考慮して除外した。解析対象者数は出始め期(男472名、女277名)、中間期(男345名、女236名)、繁忙期(男269名、女205名)だった。
    <結果・考察>
    1日の平均作業時間は繁忙期が最も長く、男12.3時間、女12.0時間だった。収穫期を通じて、この平均作業時間に男女差は認められなかった。平均家事時間は女が男に比べて長く(p<0.001)、女の総労働時間は男より長くなっていると考えられた。平均睡眠時間は女が男より短かった(p<0.05)。作業内容は男女分担の傾向がみられ、男は農薬散布とジベレリン処理、女は選別・調整が多い傾向を示した。身体的疲労部位は男女とも腰が最も多かった。目と肩の訴えは女性が多かった。蓄積的疲労徴候は収穫期を通じて一般的疲労感が最も多く、次いで慢性疲労徴候が多かった。特に繁忙期で、女性の慢性疲労徴候が高率を示した。
    <まとめ>
    繁忙期ほどいちご作業時間は長くなるものの、男女差はなかった。女性は家事時間が加わることで総労働時間が長くなっており、繁忙期における慢性疲労徴候の急激な増加に影響していると考えられた。
  • 臼田 誠, 広澤 三和子, 佐々木 眞爾, 前島 文夫, 浅沼 信治, 夏川 周介
    セッションID: 1G102
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに> 農林水産省農作業事故調査報告書によれば、農作業災害の死亡者数は毎年400人近くに達し、過去30年いっこうに減る傾向は認められないという。それは長野県内でも同じで、毎年十数人が死亡している。そもそも、こうした死亡事故の背景にある農作業事故の実態を把握する調査が実施されていないのが現状である。そこで、演者らは農作業事故を予防する一助として、JA長野共済連の協力を得て、調査を行ったので報告する。
    <調査方法> 今回、農作業に起因する傷害発生状況をJA長野共済連の「普通傷害共済」事故状況報告書から調査した。この普通傷害共済には、平成15年現在、長野県内の0歳から80歳までの33.7万人が加入し、これは県人口221.5万人の15.2%に相当する。
     調査対象は平成15年度に報告のあった約2万件の中から、農業に関連するもの1,523例を抽出し、分析を行った。そして、同様な調査を実施した過去4回(平成2年、5年、8年、12年)のデータとの比較を行った。
    <調査結果> 性別傷害発生状況では、男性が女性よりも1.5倍多く、男性が農業機械では71%、農具で60%、それ以外で56%を占めていた。また、年齢別では60歳代と70歳代で全体の約7割を占めていた。月別では、5月から11月の7ヶ月間に集中して発生し(全体の75%)、特に多かった10月以外は同程度に発生し、はっきりした農繁期ピークは認められなかった。これの傾向は、農業機械、農具、それ以外によるものでも同じであった。傷害発生の時間帯は、9から10時、14から15時にピークがあった。
     作業内容では、摘果、剪定などの管理、整備・点検、収穫、運搬、草刈りの順であり、作業時の作物では稲、畑作物、果樹が多かった。
     農業機械による傷害件数は全体の26.5%を占め、件数の多い機種は草刈り機、歩行型耕耘機、乗用トラクター、軽トラックの順であった。このうち、機械が作動していない状態での事故が4分の1程度あった。農具による件数は30.5%で、果樹地帯が多いため脚立、次いでハシゴが多く、鎌、コンテナと続く。また、農業機械や農具によらないその他での傷害が43%と一番多く発生し、その内容は転倒、転落が主で全体の半数以上を占めていた。
     受傷内容は、農業機械、特に草刈り機、乗用トラクター、耕耘機やチェーンソーでは骨折や腱断裂などの重症例が多かったが、農業機械や農具によらない事故でも軽症とは限らず、一ヶ月以上におよぶ入院の重症も多かった。死亡例は16件もあり、そのうち農業機械に関係したものは6例で、その機種は乗用トラクター、田植機、軽トラックなどであった。その死亡例での作業内容をみると、移動の際の事故が7例あり、そのうち他車との交通事故が4例あった。その他、耕作中や山林での伐採作業などであった。
     過去4回の調査との比較では、発生時刻と場所、受傷内容などには大きな変化はなかったが、農業機械では軽トラックやトラックによるものが増加し、特に移動中での事故が増加傾向にあること、農具ではハシゴによる比率が高くなってきたことなどの違いが認められた。
  • 末永 隆次郎, 百瀬 義人
    セッションID: 1G103
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>農作業による死亡事故が毎年400件前後で推移しており、そのうち農業機械によるものが約75%を占め、農業就業人口が漸減してきている中で、一向に減少する気配を示していない。また死亡には至らない農業機械使用に伴う負傷事故が福岡県内でも毎年500件は起こっている。そこで、今回、主要な農業機械の使用状況を知ることにより、少しでも事故の発生を予防する対策につながるようにしたいと考え、調査を実施した。
    <調査方法>JAM農協管内の農事組合の構成員約12,000名を対象に、農業機械の使用経験や、最近1年間の農業機械の使用状況や事故経験などを調査した。また主要な農業機械である草刈機、乗用トラクター、自脱型コンハ゛インについては使用時間や使用方法などについてより詳細な質問項目を設けたアンケート用紙を配布し、回収した。
    <結果>配布した調査表のうち約4,500名から回収できたが、有効回答数は4,176名分であり、今回はこの中で、最近1年間に農業機械の使用歴のある3,873名分を対象に集計を行った。農業が専業の者が1,877名(平均年齢60.4歳)、兼業の者が1,267名(平均年齢55.3歳)、手伝い程度の者が537名(平均年齢52.3歳)、その他の者が192名(平均年齢59.4歳)であった。使用機械としては、草刈機が最も多く3,579名(91.9%)、次いで乗用トラクターが2,448名(62.8%)、管理機が1,838名(47.2%)、自脱コンハ゛インが1,384名(35.5))、動力運搬車が1,075名(27.6%)、耕耘機(歩行型トラクター)が923名(23.8%)、SS(スヒ゜ート゛スフ゜レヤー)が647名(16.7%)などであった。これを農業への従事状況から見ると、専業では草刈機が最も多く、乗用トラクター、管理機、動力運搬車、自脱コンハ゛インの順で平均3.4種類、兼業は草刈機が最も多く、乗用トラクター、自脱コンハ゛イン、管理機の順で平均3.2種類の機械を使用していた。手伝い程度では、草刈機が最も多く、乗用トラクター、管理機、自脱コンハ゛インの順で平均2.6種類、その他では、草刈機が最も多く、管理機、乗用トラクターの順で平均1.8種類の機械を使用していた。
     3,873名のうち事故経験者は333名(8.6%)であったが、草刈機によるものが139名(41.7%)で最も多く、次いで自脱コンハ゛インが64名(19.2%)、乗用トラクターが54名(16.2%)、耕耘機が37名(11.1%)、SSが28名(8.4%)などであった。農業の従事状況で見ると、専業は1,877名中190名(10.1%)、兼業は1,267名中103名(8.1%)、手伝い程度は537名中31名(5.8%)、その他は192名中9名(4.7%)であった。また事故時の使用機械は、専業では草刈機、自脱コンハ゛イン、乗用トラクター、SSの順、兼業では草刈機、自脱コンハ゛イン、乗用トラクター、耕耘機の順、手伝いでは草刈機、乗用トラクター、自脱コンハ゛インの順、その他では耕耘機、草刈機の順であった。
    <まとめ>農業機械の使用は、専業および兼業では3種類以上、手伝い程度では2種類以上、その他でも1種類以上の機械を使用していたが、具体的な農業機械としては農業への従事状況にかかわらず草刈機を90%以上の方が使用しており、事故経験者の中で最も多い事故原因機械と一致していた。しかし、事故原因機械として次に多い自脱コンハ゛インの使用者数は、乗用トラクターや管理機に比べて少なく、草刈機を除いて、使用者数が多い農業機械が必ずしも事故原因機械とはなっていなかった。
  • 守山 浩子, 筒井 ふく, 出口 光子, 宮木 綾子
    セッションID: 1G104
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに> 胃瘻を介した経腸栄養法の合併症として、胃・食道逆流・下痢などの消化器症状、瘻孔からの漏れによる接触性皮膚炎がある。これらを改善する試みとして、経腸栄養剤の固形化投与法(以下固形化法と略す)が報告されている。当訪問看護ステーションにおいて、液体経腸栄養施行により食道逆流・下痢・及び便秘をきたした症例を経験した。その対策として固形化法を導入し、症状の改善、それに伴う介護の負担を軽減できたので報告する。
    <方法> 平成17年4月から平成18年4月の期間、当ステーションの訪問看護を利用した在宅療養患者のうち、胃瘻から液体経腸栄養を施行された3例に対して、前後の状態を比較した。導入に際し、主治医からの指示、介護者への説明と同意を得た。栄養剤は、水分400mLに対し寒天2gの割合で調整する旨説明した。初回は1食分の調整方法を指導し、翌日昼に介護者と共に注入しその後の状態を観察した。患者の状況に変化のないことを確認した上で介護者が前夜に1日分を調整し、翌朝より朝、昼、夜と3回にわたり注入を施行した。
    <結果>
     事例1) 脳梗塞にて気管カニューレ挿入中の患者、液体経腸栄養注入によりカニューレから栄養剤の逆流がみられ咳嗽が強く介護者による吸引が1時間に平均3回、多いときは1日50回以上行われていた。排便は2から3日に1回の自然排便であったが便の性状は水様で寝衣を汚染する事が度々あった。胃瘻周囲は栄養剤の漏れがあり発赤、ただれがみられた。固形化法導入翌日より咳嗽が減少し吸引回数は1日6回から10回と激減した。排便回数に変化はなかったが、有形便の排泄を認め寝衣の汚染もなくなった。胃瘻周囲からの漏れもなくなり、発赤が軽減した。
     事例2) 脳挫傷後遺症の患者。自然排便なくヒ゜コスルファートナトリウム液(商品名:ラキソヘ゛ロン液)25滴を注入していた。注入後、翌日に水様便が2から3回認められ、寝衣を汚染する事が度々あった。患者は便の排泄のたび苦痛様顔貌であった。胃瘻周囲は漏れのため発赤が認められた。固形化法により、ラキソヘ゛ロン液15滴にて翌日多量の有形便を認め、寝衣を汚染することなく、苦痛様顔貌もなくなった。胃瘻周囲の漏れがなくなり発赤も消失した。
     事例3) 脳梗塞の患者、自然排便なく週3回の訪問看護の際に摘便にて排泄していた。経管栄養施行中に胃瘻を自己抜去することが2回あった。固形化法導入後、翌日より自然排便を認めたものの、しばらくすると摘便をしないと排便を認めなくなった。しかし、注入中介護者がいることより自己抜去はなくなった。
    <考察・結論> 固形化法は胃・食道逆流・栄養剤の漏れ・下痢・便秘・褥瘡などの改善・介護負担の軽減などに効果があると報告されている。本事例でも胃食道逆流の予防、排便状態の改善、瘻孔からの漏れによる皮膚トラフ゛ルの改善が認められた。固形化法の導入には、介護者の調整に関する理解、テ゛イサーヒ゛スを利用している患者の場合、施設へ出向いての指導も必要である。また今回の事例では注入後の合併症は認められなかったものの、在宅での開始のため十分な観察が困難であった。胃瘻を造設し、入院中より合併症のある患者は入院中より固形化法を試みることで経過の観察が十分にでき、また家族への指導も確実となりより安心して在宅において実施できるのではないかと考える。
  • 三浦 未希, 田中 美穂, 横山 美穂, 滝本 すみよ, 片岡 やよい, 鈴木 聖子
    セッションID: 1G105
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
     妊娠・出産する母親にとって母乳栄養は多くのメリットがあり、当院でも母乳栄養の推進を図っていくよう、全スタッフが意欲的に看護援助・指導に取り組んでいる。
     出産退院後、7から10日目に当院より電話訪問し、家庭での様子の把握や育児相談を行なっている。その後も母親からの乳房トラブルなどの問い合わせが、病棟助産師に対し個別にある状況で、その直接対応に平日・休日を問わずケアの受け入れをしていたが、個々の助産師の判断に任されていた。
     そこで、病棟助産師の取り組みについて話し合いを持ち、まず産後1ヶ月健診で母乳相談の関わり方、母乳不足感などの不安への軽減に関わり、対応を検討した。その後、母乳・育児相談室「たんぽぽ」を開設し、母乳栄養支援・育児相談を導入し始めた。
     その結果、相談室で助産師が直接関わることで、ライフサイクルの中での授乳の様子をじっくり把握し、母乳分泌状態の確認・マッサージ等のアドバイスなどに介入することができ、産後1ヶ月以降の授乳期の母乳支援へと踏み出すことができている。
     助産師は、効果的な母乳栄養支援のための大きなきっかけを得ることができ、また母親にとっても相談窓口が開設され、より利用しやすくなったと考える。
     また、地域の保健所・保健センターとの連絡会議における情報交換より、当院で分娩した保健所管内の母乳率の推移は、1ヶ月時で32%(平成15年度)から41%へ上昇(平成16年度)、また3ヶ月で29%(平成15年度)から51.6%へ上昇(平成16年度)した、との結果が得られた。この統計は、保健所支所管内での調査につき当院での6割の分娩利用者の推移であるが、他施設での分娩利用者を含めた支所管内の母乳率の場合に比較し、高率を示し始めている傾向もとらえることができた。
     さらに、母乳支援に取り組んでいく中、1から2回/日人工栄養に頼るものの、ほとんど母乳を継続できているケースについて調査項目では混合栄養群とされ、母乳率の対象外とされてきたが、それらを含めた母乳率は当院で60%とみなすことができる。夜間に人工乳を利用することで「よく寝てくれる」、「預ける場合の手段」として活用するなど母乳栄養継続・母乳栄養支援の対象者ととらえ、生活サイクルの規律や母親自身の育児法の確信に有効に利用している群として今後も内容を把握していく必要があるととらえている。
     昨今の核家族化また育児不安への対応の重要性など含め、当院では2年後に控えた病院新築構想に子育て支援部門での育児への支援についても関わりを深めその具体的取り組み、また母乳育児サークルの立ち上げに努め、母親同士の仲間作りの広がりをバックアップさせていくよう取り組んで行きたい。
    また、育児支援も含めた母乳相談へ引き続き取り組み、地域の母乳栄養支援を継続していきたい。
  • 満足死は人生の道しるべ
    疋田 善平
    セッションID: 1G106
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <満足死は人生の道しるべ>
     満足死へのプロセスのベースに宗教心や家族の絆や仕事への情熱などがあり、これらこそ人生行路の道しるべであり、満足死する条件に通ずるものと考える。道しるべに従えば周囲に感謝しながら満ち足りた最後が迎えられるのではないか。
  • 米山 敏美, 山崎 雅之, 渡部 麻実子, 乃木 章子, 塩飽 邦憲
    セッションID: 1G107
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言> 1980年の「農政審議会答申」で、欧米諸国と比較して優れたバランスを持つ日本の食生活を、日本型食生活として定着させる提言が行われた。昨年の本学会で、「日本型食生活」は和食を中心とした日本の食生活の理想像であり、必ずしも日本人の食生活を反映していないことを発表した。また、身体活動の低下した現代社会では日本型食生活の中核である米食が高glycemic index食であり、食後高血糖をきたす可能性に言及した。今回は、生活習慣変容プログラムに参加した中高年の食生活の実態について性、年代別に平成14年度国民栄養調査結果と比較・検討したので報告する。
    <方法> 本プログラムは、健康学習による行動変容理論に基づいて、参加者の生活・健康の認知、プログラムによる体格または代謝パラメータの改善目標、改善目標達成のための具体的な行動目標の設定、生活習慣変容技術の獲得、行動目標のプロセス評価能力の開発、支援的集団療法による動機づけの強化と仲間支援から構成している。生活習慣変容プログラム参加者(出雲市在住、男; 83人, 平均54.6歳, BMI 25.8±3.2; 女; 241人, 平均55.7歳, BMI 24.7±2.9)に対して、プログラム前に栄養摂取量と身体活動度の調査を行った。栄養摂取量調査は、厚生省健康指標策定委員会作成のアンケート式食物摂取状況調査法(簡易法)を用い、30品目の食品の摂取頻度から最近1カ月間の平均的な摂取量を推定した。訓練された調査員が、個別面接方式でフードモデルを用いて摂取量を補正した。身体活動度は、仕事、運動、通勤などの時間と強度を自記式質問票によって調査した。消費熱量は、8月に測定した空腹時の安静時代謝量と生活活動強度指数から[空腹時安静時代謝量]×0.9×[生活活動強度]の計算式で算出した。
    <結果> 摂取熱量は男2,218±480 kcal, 女1,936±402 kcal、消費熱量は男2,269±627 kcal, 女1,774±400 kcalであった。栄養素別の摂取量では、蛋白質は男74±18 g, 女69±18 g、脂質は男59±20 g, 女57±19 g、炭水化物は男298±85 g, 女282±66 g、アルコールは男211±180 kcal, 女30±53 kcalであった。炭水化物食品では、単純糖質は男54±41 g, 女67±43 g、複合糖質は男228±65 g, 女195±52 gであった。栄養素別の熱量摂取割合では、蛋白質は男13.4±2.0%, 女14.3±2.4%、脂質は男23.9±6.4%, 女26.3±5.8%、炭水化物は男53.7±9.0%, 女58.4±6.8%、アルコールは男9.6±7.5%, 女1.5±2.7%であった。いずれの栄養素とも有意な男女差が認められた。年代別では、加齢とともに脂質摂取が有意に減少し、炭水化物摂取が有意に増加したが、単純糖質と複合糖質の摂取量には有意な差を認めなかった。
    <考察> 平成14年度国民栄養調査結果では、50歳代の摂取熱量は男2,252±617 kcal, 女1,827±445 kcal、栄養素別の摂取量では、蛋白質は男84±27 g, 女72±21 g、脂質は男57±26 g, 女52±21 g、炭水化物は男308±93 g, 女260±70 gであった。国民栄養調査結果と比較して、本プログラム参加者の女は炭水化物の摂取が顕著に多かった。これは、出雲地方に伝承する「お茶事(接待に煎茶とともに多くの菓子類を供する習慣)」に由来するものと考えられる。我々は、肥満を有する本集団の体重減少に炭水化物摂取の減少が最も寄与していることを報告している(日農医誌, 2004)。したがって、農村地域での女の肥満に高炭水化物食、特に単純糖質が寄与している可能性が示唆される。
  • 小島 沙織, 遠藤 美緒, 平松 亜紀, 田中 扶規子, 佐藤 和代, 有川 良二
    セッションID: 1G108
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>経口摂取困難・長期臥床患者には口腔ケアを行っているが,老化や疾患に伴い口腔内の湿潤は保たれず,口腔内乾燥がみられた。
     そこで,口腔ケアに唾液腺刺激を併用することで唾液分泌が促進され,口腔環境が改善するのではないかと考えた。
    <研究方法>1.対象者
      経口摂取困難で長期臥床の3事例
    2.研究期間
      平成17年9月17日から平成17年10月4日3.ケア方法
    (1)ハチアズレ使用による口腔ケア
    (2)唾液腺刺激(綿棒を氷水で湿らせ,舌下(唾液腺開口部)を5秒間刺激する)
    (3)調査方法
      ケア開始前・6日後・11日後・23日後に舌苔の有無・pHスティックの湿潤度・pH値・口臭・舌上細菌検査を用い評価。
    <結果および考察>唾液腺刺激を加えた口腔ケアを実施後11日目には、pHスティックの湿潤時間より、3事例とも唾液分泌量が増えた。また、唾液分泌量が増加したことによりPH値も中性に傾いたと考えられる。
     藤沢市歯科医師会1)は「唾液には50種類以上の酵素、生理活性因子および免疫抗体などの成分が含まれています。これらの多くの中にはアミラーゼなどの消化酵素、口腔内のある種の細菌を凝集させ歯面からはがれやすくするアグニチンと呼ばれる生理活性因子、細菌を殺す作用を持つペルオキシターゼ、細菌やウイルスに特異的に反応する種々の免疫抗体、などが含まれています。これらの生体を守る多くの物質によって口腔内は正常な環境に維持されます。したがって唾液の分泌を高め、口腔内を正常な状態に保つことが重要です。」と述べている。舌上細菌検査結果では、1事例で常在細菌が増加し病原性細菌が減少した。これは、唾液分泌量増加による口腔内乾燥改善や、自浄作用の効果であると考えられる。また、1事例においてカンジダが消失したのは、唾液量の増加が口腔内の酸性化をおさえた結果であると考えられる。病状悪化のため抗生剤を使用した事例では、病原性細菌は減少したが、常在細菌も減少した。
     対象者3名とも細菌数の減少量は異なるが、観察上唾液は増加し口腔内湿潤が見られたことから口腔内環境の改善が図れたと考えられる。
    <まとめ>唾液腺刺激を加えた口腔ケアは、唾液分泌量が増加した。
    <引用文献>1)藤沢市歯科会ホームページ
  • 森下 啓明, 坂本 英里子, 保浦 晃徳, 石崎 誠二, 月山 克史, 近藤 国和, 玉井 宏史, 山本 昌弘
    セッションID: 1G109
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <症例> 61歳男性、既往歴に脳梗塞がある。アレルギー歴なし。
     平成17年10月29日昼頃、自宅近くの山林で採取した白色のキノコ約20本を調理して摂取した。同日20時頃より腹痛、嘔気、嘔吐、下痢等の消化器症状が出現したが自宅で経過観察していた。10月31日には経口摂取不能となったため、当院救急外来を受診。受診時は意識清明、バイタルサインに大きな異常はなく、神経学的異常所見も認めなかった。しかし、血液検査に於いて肝機能障害、腎機能障害を認めたことからキノコ中毒を疑い緊急入院となった。
     患者の持参したキノコの特徴および、経過(消化器症状に続発する肝機能障害)よりドクツルタケ(アマニタトキシン)中毒を疑い、日本中毒センターに問い合わせを行った上で治療を開始した。補液、活性炭投与(25g/回、6回/日、2日間)、血液還流療法(2日間)、ペニシリンG大量投与(1800万単位/日、2日間)を施行し、肝機能障害は改善傾向、第26病日には正常化した。また、第7病日より急性膵炎を発症したが、メシル酸ガベキサート投与などを行い第28病日には改善したため、平成17年12月26日退院となった。
     入院時に採取した血液、尿および持参したキノコは日本中毒センターに送付し、分析を依頼している。
    <考察> ドクツルタケ、タマゴテングタケなどに含まれるアマニタトキシンは、ヒトにおいては約0.1mg/kgが致死量とされており、日本におけるキノコ中毒の中で最も致死率の高いものである。急性胃腸症状とそれに続発する肝機能障害が典型的な経過であり、肝不全が死因となる。本例は典型的な臨床経過よりアマニタトキシン中毒と診断したが、ドクツルタケでは1から2本で致死量となることから、今回摂取したキノコは比較的アマニタトキシン含有量の少ない種類であったものと推測された。治療法としては腸肝循環するアマニタトキシンを活性炭により除去すること及び対症療法が中心となり、解毒薬として確立されたものはない。血液還流療法が有効とする報告もあるが、未だに確固たる証拠はない。ペニシリンG大量投与によってアマニタトキシンの肝細胞への取り込みが阻害されることが動物実験によって確認されているが、臨床における有効性は確立されていない。その他、シリマリン、シメチジン、アスコルビン酸、N-アセチルシステイン等が使用されることもあるが、いずれの有効性も未確立である。
     本例では活性炭投与、血液還流療法、ペニシリンG大量投与を行い、肝機能障害を残すことなく生存退院に至った
  • -課題への取り組み-
    杵淵 香純, 石井 洋子, 佐藤 作喜子, 佐野 奈央子, 松島 時美, 川口 麻美
    セッションID: 1G110
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>H17年1月より直接農家から野菜を提供してもらう‘地産地消’に取り組み、開始から1年が経過した。見えてきた問題点に対し、より多くの地元野菜を使用し、農家への還元となるよう行った取り組みについて報告する。
    <見えてきた問題点>地元農家から納品される野菜の数量、農家の売上が伸び悩んでいた。ある野菜だけを納品してもらうのでは、これ以上多くの地元野菜を使っていく事は難しいと思われ、病院の為に計画栽培をしてもらう必要があると考えた。また野菜の価格について、同時期に同一野菜が農家によって差がある事がわかった。生産者直売に慣れた農家の値付けは、市場価格より高値の傾向があった。農家間の格差のない、農家と病院のお互いが納得できる価格設定をしていく必要があった。
    <方法および、経過>
    (1)三者で作付け会議をもった。H18年3月、地元農家グループ、栄養士、JAいせはら担当者が集まり、春夏に収穫される野菜について検討会を行った。農家側から使って欲しい野菜、病院側から納品して欲しい野菜の品目、数量を提示し、農家に作付けの調整をお願いした。作付け会議は年3回行っていく事とした。
    (2)新たに伊勢原産の米、梅干を使用した。H18年1月、JAいせはら担当者とともに、伊勢原産で新たに追加できる品目の検討を行った。2月より、週に100kgずつ阿夫利清流米(伊勢原産キヌヒカリ)の入荷を開始した。土用干しを過ぎた7月より、地元農家の手作り梅干が入荷予定である。
    (3)価格設定に基準を設けた。野菜の価格は変動が大きい為、一応共撰に準じるとしていたが、価格の設定は各農家にまかせていた。H18年4月、価格設定について検討会を行った。基本はA品とし、全農大和の市場価格に手間賃を上乗せしたものとした。B品については、品物の程度によりA品価格より安価とする事とした。
    <結果>作付け会議を持ち、計画栽培を行った事によって、地元野菜の使用量が増加し病院への安定供給につながった。患者に行ったアンケート結果では、昨年同様9割の患者が当院で地元野菜を使用していることを知っており、良いことなので続けてほしいとの結果が得られた。阿夫利清流米を使用している事をお膳に添えたメッセージカード、週間献立表等で伝えており、多くの患者からおいしいとの声を頂いている。
    <結語>地元野菜の納品システムは一応出来上がったが、農家に対し‘病院へ野菜を納品してもらえなくなったら困る’という思いから、野菜の値や品質等の病院側からの要望をなかなか言い出せないでいた。この地産地消を継続しより良いものにしていく為には、良い関係を築き、お互いが良きパートナーであることの大切さを強く感じている。地元農家の積極的なアピールを、入院患者へのメッセージカード、病院HP、病院広報誌等を通して行い、農家の発展と共に、伊勢原の農業の発展に寄与出来る事を望んでいる。
  • 佐野 奈央子, 石井 洋子, 佐藤 作喜子, 杵淵 香純, 添田 義博, 島津 文人, 加藤 肇, 今井 香織, 菅沼 徹
    セッションID: 1G111
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <目的>入院をしなければ経験することのできない病院給食を、一般の人たちに広く理解してもらうため、平成17年5月より栄養室のホームページを開設した。当院で取り組む「地産地消」について、旬の野菜、生産者のメッセージを紹介し、地元農産物の消費拡大に寄与していること、また、生活習慣病と食事の関係を理解してもらうための内容を掲載した。このホームページから病院給食を理解してもらうとともに生活に役立つページにしたいと考えている。
    <掲載内容>ホームページの内容は「地産地消」「気になるメニュー」「祝膳」「特別献立」の4つのコーナーで構成され、毎月1回更新している。
    「地産地消」入院患者のために新鮮で減農薬、安心、安全でおいしい地元野菜を供給しているので、病院に野菜を納入してくれている農家の方の顔写真、畑の写真、その野菜が売っている場所、その野菜を使った料理を紹介している。
    「気になるメニュー」病院のアンケートで人気のあったメニューのレシピを紹介する“人気のメニュー”、糖尿病患者のための“糖尿病食1日のメニュー”、便秘解消、高脂血症患者のための“食物繊維たっぷりメニュー”などの旬の食材を使ったレシピを紹介している。
    「祝膳」和洋折衷のコース料理を年4回季節ごとに変わるメニューで、当院で出産した患者さんにお祝いの気持ちを込めてお出ししている料理を紹介している。
    「特別献立」1ヶ月に1回入院患者に食事を通して季節を感じてもらえるよう、旬の食材を使ったお楽しみメニューを紹介している。家庭でも作れるようにレシピも紹介し、入院患者の生の感想も紹介している。
    病院の広報誌でも「地産地消」「気になるメニュー」のコーナーを紹介している。
    <結果>入院患者を対象にホームページについてのアンケートを行った結果、栄養室のホームページを知っているが1%も満たなかった。また、女性では80%、男性では60%の患者が栄養室のホームページを見てみたいとの回答であった。「気になるメニュー」のコーナーは入院患者だけに留まらず栄養室のホームページを見た一般の閲覧者からも好評を得た。
    <考察・まとめ>栄養室のホームページを知っているが1%にも満たなかったのは、患者に高齢者が多いということもありインターネットを利用出来ないが半数を占めたからだと考えられる。そのため、病棟や外来にホームページを印刷したものを掲示し、高齢者やインターネットを利用出来ない患者にも簡単に見てもらえるようにした。
     今後はより多くの人にホームページを見てもらうことが課題と考えている。インターネットからの情報が氾濫する今、確かな情報を得ることは難しい。当院のホームページから確かな情報が発信され、見てくれた人の健康に寄与できる内容の充実をはかっていきたい。
  • 重信 隆彰, 橋口 孝, 石山 重行, 草野 健, 窪薗 修, 斉藤 和人
    セッションID: 1G201
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>心血管イベントによる死亡数増加を受けて、動脈硬化進展の予防が保健上の重要課題として注目され、メタボリックシンドローム健診も日程に上りつつある。当センターでも、平成12年度から動脈硬化対策としてオプション項目として頸動脈超音波検査、また、平成15年度より脈波伝導速度測定を導入した。脈波伝導速度測定の結果は過去数度報告したが、今回は頸動脈超音波検査の状況とその結果からみた脈波伝導速度との関連について若干の検討を加えたので報告する。
    <健診システム>頸動脈超音波検査は、平成11年12月6日より試験運用を開始し、平成12年4月から日帰り人間ドック一般コースの付加検査として実施した。使用機器はGE横河社製LOGIQ500一台を用い、技師が検査を担当し、判定は専門医師が技師同席して後日判定している。
     検査手順としては、全例に血圧脈波検査を実施して後、正面および側面よりBモード、カラーを使用して総頸動脈、内頸動脈、外頸動脈を短軸・長軸より観察し、両側総頸動脈IMTおよび両側の総頸動脈・椎骨動脈フローを計測し、さらに片側総頸動脈の血管弾力をMモードにより計測している。
    <対象および方法>平成16年4月より平成18年3月までの2年間に頸動脈超音波検査を実施した受診者のうち、降圧剤服用者および血液凝固線溶系薬剤服用者を除外した男性1256名である。
     IMT≦1.1mmかつPlaque size(以下PS)≦1.3mmを正常とし、計測点1箇所でもいずれかを超えた場合を動脈硬化有り、即ち頸動脈超音波検査陽性とした。実際の健診としては、他の因子も加味して6段階の判定を行っている。IMT、PSおよび判定ランクとPWVとの関連について、年齢も加味しつつ検討を行った。
    <結果>
    ・PS陽性者割合は加齢とともに上昇し、70歳以上では88%PS陽性であるが、IMT陽性者は60歳代までは加齢とともに5.4%まで上昇するも70歳以上では3%台に減少していた。
    ・一方、判定結果は加齢とともにより重い判定の増加傾向が顕著であった。・PWVとの関連では、50歳以上ではどの年代も判定が重いほどPWV値が高い傾向にあったが、50歳未満では、要精密・要治療者のPWV値が要指導よりもむしろ低かった。
    ・IMT>1.1mm or PS>1.3を至適基準とした場合のPWVの精度は、cut off値を1390mとすることで、感度約8割、特異度約7割であった。
    <まとめ>頸動脈超音波検査の成績から、脈波伝導速度検査は動脈硬化健診の1次スクリーニングとして有用であると言える。しかし、その判定に当ってはPWV値のみでなく、年齢その他の要因の加味が不可欠である。
  • 野田 邦夫, 滝沢 洋二, 横尾 善之, 神田 重高
    セッションID: 1G202
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
     (財)日本成人病予防会は、農山村地域住民に対する生活習慣病対策の一環として、昭和38年の設立以来、競輪等の補助により生活習慣病巡回検診車・検診用機器の整備をはかり厚生連病院の協力を得て検診活動の推進を行ってきた。
     このうち、平成16年度に稼働した検診車76台(間接撮影)による胃集団検診の実態調査を行ったので報告する。
    <検診車の稼働状況等> 検診車76台の年間平均稼働日数は106.1日、1日1台あたり平均受診者数は32.8人となった。
    <受診者> 平成16年度の受診者総数は26万4,560人となった。このうち、男性は11万9,022人、女性は14万5,538人で、男性は女性より2万6,516人少ない。年齢階層別では、60から69歳が最も多く7万5,168人となった。このうち、男性は3万14人(男性受診者の25.2%)、女性は4万5,154人(女性受診者の31.0%)と男女とも最も受診者数が多い年齢階層となった。
    <要精検者> 受診者の11.9%にあたる3万1,363人が要精検者となった。このうち男性は1万6,471人(要精検率13.8%)、女性は1万4,892人(同10.2%)となった。要精検率を年齢階層別に比較すると、男女とも加齢とともに要精検率が高くなり、70歳以上が14.5%(男性17.0%・女性12.4%)と最も高い結果となった。
    <精検受診者> 要精検者の65.0%にあたる2万374人が精密検査を受けた。男女別では、男性9,865人(精検受診率59.9%)、女性1万509人(同70.6%)であり、女性の受診率が男性を大幅に上回った。精検受診率を年齢階層別に比較すると70歳以上が72.8%(男性70.9%・女性75.0%)と最も高く、29歳以下が42.7%(男性41.7%・女性44.1%)と最も低い結果となった。
    <胃がん発見率> 胃がんの発見者数は292人で、受診者総数に対する発見率が0.110%となった。このうち男性は192人(発見率0.161%)、女性は100人(同0.069%)となり、男性の発見率が女性の2.3倍となった。胃がん発見者数の45.9%にあたる134人(同0.051%)が早期がん発見者となり、このうち男性は98人(同0.082%)、女性は36人(同0.025%)となった。
    <結論> 要精検率と精検受診率を男女別で比較すると、女性は要精検率が男性よりも3.6ポイントも低いが、精検受診率は10.7ポイントも高い結果となった。女性が男性よりも健康管理に対する意識が高いことが現れた結果となった。過去3ヵ年における検診者数の推移は、平成14年度30万2,060人、平成15年度29万8,003人、平成16年度26万4,560人と減少傾向となっている。また、要精検率をみると平成14年度11.3%、平成15年度10.4%、平成16年度11.9%、精検受診率をみると平成14年度71.8%、平成15年度71.7%、平成16年度65.0%であった。さらに胃がん発見率をみると、平成14年度0.106%、平成15年度0.138%、平成16年度0.110%となり、早期胃がん発見率については、平成14年度0.061%、平成15年度0.065%、平成16年度0.051%であった。結論として、昨今の検診機器の進歩等に伴い、間接撮影による受診者数が減少傾向にあるなかで、より多くのがんを早期発見するためには、いかに精検受診率の維持・向上を図っていくかが今後の課題である。要精検者に対する説明・指導、早めの検査予約など、受診勧奨への取り組みが一層求められる。
  • 芳賀 英穂, 黒川 順一, 谷奥 加代, 今井 亜矢子, 岡林 義弘
    セッションID: 1G203
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言>骨粗鬆症は生活習慣病の中で女性に多い疾患である。今回我々は,平成14年から17年度までの人間ドック受診者と巡回検診受診者の骨密度測定結果を比較し,更に骨密度に影響を及ぼす因子として体重,食事,運動など日常生活状況と,過去の病歴などを比較検討する。
    <方法>
    (1)対象者:平成14年度から17年度までに骨密度を測定したドック受診者2451名と巡回骨検診受診者953名を比較した。
    (2)骨密度測定:GE横河メヂカルシステム社超音波骨密度測定装置A-1000EXPRESSを用いて踵骨の骨量を測定し,超音波骨密度指数(Stiffness)を求め,年代別平均値(M)と標準偏差(SD)を求めた。
    <結果>各年代の人数,骨密度は表1のごとく,ドック群は20代をピークに加齢と共に骨密度の減少が認められた。巡回でも30代をピークとして高齢群になるにつれ骨密度の減少が認められた。全般的に巡回群はドック群に比して骨密度が低い傾向が見られたが30才代以降では有意差は認められなかった。20才代では有意差が認められたが,受診例が少なくまた,体重でも巡回群47.9kg±4.2ドック群51.2kg±8.5と差があり問題は無いとおもわれる。
     年代別受診者数は巡回検診では50才代から70才代が多く,ドックでは30才代から60才代が多かった。
     また年度別受診者の推移を見ると表2のごとく,巡回検診では著しい受診者の減少が見られる。これは市町村合併などの影響から,検診に対しても住民に就いての平等性の見地から見直しが行われ農村部等の補助が打ち切られたことも影響していると思われ高齢化の進む農村地区の今後の問題である。
     更に,食事,運動,骨折予防など健康教育の問題等についても検討を加え報告する。 
  • 血糖値の正常参考値110は適切か
    澁谷 直美, 大浦 栄次
    セッションID: 1G204
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言>日本人は糖尿病になる者が多く、その対策が国の「健康日本21」でも叫ばれている。特に糖尿病の発症は生活習慣がもたらすことが多く、生活習慣の改善が予防の鍵になる。
     私たち健康管理に携わる者は、糖尿病になってから受診者に注意を促しているようでは遅い。より早期に糖尿病になる可能性のある者を発見し、早期に対策をとることが大切である。今回は、受診者に糖尿病予防に対する注意を促す適切な時点について検討したのでここに報告する。
    <方法>1994年と10年後の2004年の両年とも、厚生連高岡・滑川健康管理センターで行った日帰りドックを受診者した4253人について、1994年の空腹時血糖値を基準に10年後の空腹時血糖値の変動を比較した。
    <結果及び考察>男女別人数は男2103名、女2150名である。
     1994年は男女とも血糖値90から95の者が最も多く、血糖値85から99で全体の約57%を占める。
     1994年と2004年の血糖値の変化を比較すると、男性では1994年の血糖値が115を越えると10年後は7から8割が血糖値125を越えていた。
     血糖値が1994年から10年後の2004年に同じ値にとどまっていた群、より悪くなった群、良くなった群に分けると、男性では1994年の血糖値が105から109を境に悪くなった群の割合が多くなっていた。また、1994年血糖値と2004年血糖値の差も同様に、血糖値105を境に増加していた。
     これらのことから、今までは血糖値110を超えてから糖尿病を意識するように受診者に注意をしてきたが、105を超えるとすでに糖尿病を意識して生活習慣の改善を受診者に促すべきでないかと考える。しかも血糖値115から124の人は境界型糖尿病といわれている範囲であるが、10年後の血糖増加値が大きく、ほとんどが糖尿病になっていた。この値になってから糖尿病予防のために生活習慣の改善を促すのでは遅すぎるのではないかと考えられた。
     女性では10年後の血糖値の変化は、男性と違い115から119で増加値が一時少なくなっている。これは、血糖を下げるための努力の結果が現れているのではないかと考えられる。しかし、血糖120から124の10年後の血糖値は増加値が大きく、血糖値120を超えると早急に糖尿病の治療を促す必要があるのではないかと考えられた。また、男性と同じく血糖値105を越えると10年後の血糖値が悪くなった割合が多かった。女性も血糖値105を超えると糖尿病を意識して生活習慣の改善に取り組む必要があると考えられた。
     10年後の血糖値変動別のBMI値は、男女とも1994年血糖値が104以下の者では、10年後の血糖値が上昇しているほどBMI値が高い傾向があった。このことから血糖値が110になってから体重の減少を促すより、110未満であってもBMI値が高い人に体重の減少を促すのが糖尿病予防に効果的でないかと考えられた。
  • 大浦 栄次, 澁谷 直美
    セッションID: 1G205
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>
     生活習慣病は、長期の生活習慣により起こる。今回、当健康管理センターを94年に受診し10年後の04年にも受診した者について、この間の体重の増減と生活習慣病関連項目の変化について検討し、より早期に生活習慣病予備群を予見する方法について検討した。

    <方 法>
     当健康管理センターを94年と04年に受診した約5658人の、10年間の体重の増減率と各検診項目の10年間における増減率を比較し、体重の増減によるメタボリックシンドローム関連項目に対する影響について検討した。また、同じく、94年に受診し04年にBMI22群(BMI22_から_23.9の者)、1093人について同様の検討を行った。

    <結果と考察>
     最高血圧、中性脂肪は、10年間に体重が増加した者ほど上昇率が高く、体重減少した者ほど増加率は低く、HDLコレステロールは体重が減少した者ほど多く増加していた。
     また、04年に体格指数BMI22群の者、つまり体重「正常値」群についても、肥満を除くメタボリックシンドロームの増加率は、10年間で体重-10%群では、男で0.6倍、女で1.4倍に対して体重10%増加群では、男で5.3倍、女で7.0倍であった。
     つまり、生活習慣病予防を考えるとき、現在「正常値」(今回の場合、BMI)であっても、どのような経過で現在「正常値」であるか否かが問題である。これまでは、検診データを正常域、境界域、異常域のごとく区分し、各ゾーンごとに生活習慣改善や治療方針が立てられていた。(ゾーン・ディフェンス)しかし、同じ生活習慣関連項目が「正常値」の者であっても、10年20年の経過の中で、過去には異常であったが生活習慣を改善し正常になった者(今回の場合、BMIが肥満域から、年数をかけて22群になった者、生活習慣・改善群)、正常値を維持している者(生活習慣・正常維持群)、さらに、長期間にわたる不良な生活習慣を続けてきて、悪化しつつも現在かろうじて正常値の者(生活習慣・異常者群)に区分することが出来る。このように、生活習慣関連の検査項目を現時点の値で区分するのではなく、長期間の傾向・トレンドで区分することにより、生活習慣関連項目「正常群」であっても、「生活習慣・異常者群」として、積極的に生活習慣改善に取り組むよう働きかけること(トレンド・ディフェンス)がより生活習慣病予防にとって有効と考えられた。
  • 服部 哲男, 大林 浩幸, 西尾 政則, 山瀬 裕彦
    セッションID: 1G206
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>われわれは、2004年度、瑞浪市内の公共施設・学校・保育園・郵便局に対し、禁煙アンケート調査を実施し、その禁煙状況を把握し報告した。今回、その1年後の追跡調査を行い、同施設群での1年間の禁煙進捗状況を検討した。
    <方法>岐阜県瑞浪市の公共施設・学校・保育園・郵便局64施設に対し、2004年度を同じアンケートを用い、施設内の禁煙・分煙状況及び、職員の喫煙状況を調査した。
    <結果>アンケート回収率は59施設(92.2%)であった。前回調査と比較し、公共施設・学校内の公共スペース、事務所、休憩室の全面禁煙率が増加した。また、郵便局では喫煙自由の場所が無くなり、分煙・禁煙化が大きく進んだ。調査対象施設の全職員喫煙率は、20%から17%へ減少した。
    <結語>1年後の追跡調査にて、同市内の公共施設・学校・保育園・郵便局で、禁煙化が効果的に推進されている状況が把握できた。(この発表は、日農医誌54巻5号756-761ページ掲載論文の内容である。)
  • 横山 孝子, 鷹野 和美
    セッションID: 1G207
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言> 地域の高齢化の実情を理解させる目的で、長野大学の周辺地域の高齢者との交流に重点を置く、「支えあう健康と福祉の街づくり」の専門ゼミナールを開講し、約50人のゼミ生と直接地域に出た。学生たちは、高齢者の暮らしの実態や要望を把握するニーズ調査や「御用聞き訪問」などに参加し、貴重な学びをしたので報告する。
    <方法> 学生の地域活動の内容は、大学のある地元地域の、老人クラブ双葉会(会員150人)との、会食や焼き芋会などのふれあい交流会を実施するとともに、戸別訪問を中心のニーズ調査と、その意向に沿った「御用聞き訪問」などである。
    <結果> ニーズ調査は、高齢者の暮らしにおける悩みや学生に望むこと、支えあい活動への意向などを聞き取る内容で、その結果では、お年よりは自分や家族の健康が気がかりであるといい、将来の認知症への不安に対し、「認知症予防教室に参加したい」という意見や、「学生との交流」「学生の御用聞き訪問」などへの要望も、2割近い人が示していた。
     「御用聞き訪問」は、学生が担当家庭を受け持ち、散歩などの相手やドライブ、畑の草取りや力仕事のお手伝いなどを、双方の都合に合わせて行うものである。複数で担当するとはいえ知らない家を訪問して、目的を告げ交流関係を持つようにするのは、今どきの若者にとって努力を要したようであった。広い大豆畑の草取りを依頼された学生は、負担が大きすぎるかと思われたが、むしろ他の仲間も誘って畑に出向き、「青空の下で畑仕事をするのは気持ちがよく、お年寄りと話しながらの草取りは、地域の昔の話が聞けたりして、楽しみだった」と語っている。また、「何も用はしなくて良いから、時々お茶を飲みにきて欲しい」といわれ、友達づきあいのようにする女子学生もいた。
     認知症予防の要望には、脳生き生き講座として、いろいろな交流会の中に入れ込んで行なった。老人会員を大学祭に招待して、会食の後に脳元気テストをし、ミュージックセラピー倶楽部の音楽に合わせて歌ったり、焼き芋会でイモが焼ける間の時間を利用して、脳ドリルなどを試みたりした。「ふらつきつまづき予防体操」も含め、これらの講座は学生には、今後のいわゆる介護予防業務への、体験のひとつとして位置づけた。
    <考察> 昨今の大学生は社会参加の場が少ないこともあり、「人と話しをするのが苦手」「グループワークで話ができない」「自分に自信がない」と言う学生が少なくない。また、福祉を目指す学生といえども、高齢者の暮らしや悩みの理解は少なく、お年寄りと触れ合うチャンスはあまり多くは無い。
     この活動を通して、学生たちは「教室では学べない地域の暮らしにふれられた」「学生の訪問を楽しみにしてくれることがうれしかった」「挨拶の大切さを知った」「初対面の人と話すことの難しさを体験した」「人と触れ合う楽しさを知った」「お年寄りとの会話や農業体験は楽しかった」「この取り組みを学生がずっと受け継いでほしい」などとまとめ、対人援助である福祉の仕事について考え、自分自身と向き合う場になった様子であった。
     学生や大学の持つ機能と高齢者の持つ力の、交換による「地域支えあい活動」として、ゼミを進めてきたが、未熟な学生の訪問や交流会に、お年よりはいつも40人ほどが参加し付き合ってくださった。これは若者に対するお年寄りの優しさによるものであり、地域から学ぶことの意味を確認できた。
  • (第2報)介護認定状況の経年変化と自冶体間較差
    荻原 忠, 大久保 俊治, 林 雅人
    セッションID: 1G208
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <始めに> 少子高齢化の進行と要介護者の増加は、地域保健福祉の分野の目前の課題である。介護保険施行7年目を迎え、国は介護予防を前面に出して制度改革を進めつつあるが、各地域毎の介護需要の動向はそれぞれの地域で把握されなければならない。我々は、切明義孝氏の「介護保険制度を利用した健康寿命計算マニュアル」を使用して横手市内の合併前の旧自治体毎の健康寿命を計算した。その結果、健康寿命は男性で75.8才から77.9才と2.1才の開きがあり、女性では80.1才から82.7才と2.6才の差があった。男女差は2.2才から6.4才まで大きい差があった。このような地域差の検討は、自治体合併後の政策決定に地域性を考慮する上で有用な資料となると考える。そこで、保健福祉施策の基礎資料とするために、介護認定データそのものの経年変化と地域差を検討した。
    <結果> 地域全体の検討では次の3点が特徴的であった。
     1)横手平鹿地域において、高齢化率は年々上昇しており、その速度は1年につき0.6%となっている。
     2)前期高齢者は実数も総人口に対する比率も減少傾向にあり、後期高齢者が増加している。
     3)介護認定から見た要介護者数は後期高齢者の増加が著しく、女性で約9割、男性で約8割を占める。
    また、旧市町村別の検討では、次の3点を指摘できた。
     1)高齢化率は新横手市の周辺部ほど高く、中心部より5%程度高い。後期高齢者が増加し、前期高齢者とほぼ同数を占める。
     2)前期高齢者の認定率は2.9から5.4%と全体に小さく差も小さい。後期高齢者では、19.9から35.2%と旧市町村間に大きな差がある。
     3)80才以上で旧市町村間の認定率の差が大きくなり、1.8倍程度の開きがある。また、認定率の経年変化と軽度要介護者の認定の傾向に市町村の特性が反映していると推定される。
    <結語> 市町村合併後は施策の統一が優先される傾向にあるが、このような地域特性に配慮して、実情に合った有効性の高い福祉サービスを実施することが望まれる。
  • 松井 洋子, 河合 利衣, 青山 留美子, 塚田 圭子, 岡田 ひろみ, 伊藤 眞知子, 早川 富博
    セッションID: 1G209
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>豊田市社会福祉協議会足助支所では、豊田市の介護予防事業(以下、はつらつクラブ)における認知予防プログラムの1つとして、あかね式積み木パズル(積み木パズル)を平成16年から導入し、有効な事例を経験している。今回、事例報告ならびに積み木パズルに関するアンケート(積み木パズルをする頻度、生活パターンなど)の結果を報告する。
    <対象と方法>79歳-94歳のはつらつクラブ利用者121名(うち女110名)(利用頻度、週1回または月2回)とした。
     3種類の積み木パズル、1つ違い5X5,シースー,さいころ,について、目標完成図(パターン)および完成記録の表(パターン表)を用意。各参加者の、遊び時間・集中度・完成パターン数を記録した。個人的記録として、利用者の様子と職員の関わり方、利用者の反応等を記録した。積み木の購入は個人の自由とし、およそ3ヵ月後に積み木パズルに関するアンケートを行った。
     積み木パズルとは、5色(赤青黄緑白)いずれかの色を持つ2cm角立方体の木材で、2個から5個連結させて一つのパーツとし、そのパーツを手引き図に従い完成させる遊びである。
    <結果>
    事例1:80歳、女性(週一回利用、日記を毎日、自宅でも積み木パズルを時々やっている)
     最初から興味を示したが、遊び方が理解できなかった。飽きっぽくそそっかしい面が見受けられるが、シースーは出来るまで、何度でもチャレンジしている姿が見られた。1つ完成すると午前中約1時間半ほど休憩もせずに遊び続けていたり、昼食時も弁当箱のそばに置き眺めながら食事を取り、昼休憩もしないで、午後のはつらつクラブメニューに移行するまでやっていた。時には来所するなり積み木パズルをやり始めていた。
    事例2:90歳、女性(週1回利用、新聞、日記を毎日。自宅でも積み木パズルを毎日やっている)
     最初はシースーの固定が上手にできず、出来上がりの記録(パターン表)への色塗りも出来なかったが、4ヶ月後には「出来た」など声を出すようになり、10ヵ月後には積み木パズルの種類を自分で選択して遊べるようになった。
     アンケート結果では、ほぼ全員が積み木に興味を持ち楽しいと回答した。完成する楽しみが増える、達成感がある、夢中になる、真剣に考えるところが良い、などの回答がみられた。また個人で積み木パズルを購入して自宅でも楽しんでいる人は51名(42%)もあった。その人たちは購入してない人たちと比較し、日記をつけ、新聞を毎日読んでいる頻度が高かった。
    <考察およびまとめ>積み木パズルは、難易度を調整することによって挑戦する気持ちを失わせることなく、継続的にそれぞれの利用者に合わせた対応が可能で、意欲を引き出すことができた。介護・福祉の現場においてサービス提供の質を問われる現在、今回紹介する積み木パズルは、利用者とのコミュニケーションツールとして有用で、また認知症予防の可能性を秘めているものと考えられる。
  • 中井 智博, 鈴本 宜之, 河合 恵美子, 鈴木 ふみ子, 酒井 順子, 岡田 史子, 早川 富博
    セッションID: 1G210
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
     足助訪問看護ステーション(以下、当ST)は愛知県の北東部にあたる豊田市(旧東加茂郡足助町)にあり、活動範囲は旧東加茂郡全域中心に訪問している。旧東加茂郡は中山間部地域であり、地理的特徴として集落が点在しており当STから利用者宅までの移動に時間がかかり、公共交通機関が少ないことも問題となっている。当地域では訪問看護のサービス事業所は当STしかないので、移動距離、時間の問題を抱えながらもなくてはならないサービスである。訪問リハビリテーション(以下、訪問リハ)は当STから実施しており、併設の病院や開業医からの指示のもとサービスを提供している。訪問リハの開始にあたり本人や家族の希望が多いので、目的や目標を明確にするために独自の生活機能評価スコアを作成し、17年度の実績とスコアを元にサービス提供した一症例を挙げ中山間部の訪問リハについて述べる。
    <B<平成17年度の実績>17年度の実績は、総利用者数49名(男性26名、女性23名)で年齢は27歳から93歳までで平均74.4歳であった。介護度別では、要支援が5名、要介護度1が10名、要介護度2が7名、要介護度3が8名、要介護度4が5名、要介護度5が8名、医療保険は6名。
    地区別では、足助地区24名、旭地区8名、下山地区2名、稲武地区15名であった。
    <対象・方法>生活機能評価スコア(以下、スコア)は、移動動作6項目24点・複雑動作3項目12点・特別介護5項目20点・身の回り動作4項目16点・麻痺拘縮2項目8点・意思疎通5項目10点・問題行動10項目10点とし、このスコアを利用し症例報告をする。
     83歳、女性。要介護度4。平成17年5月、腰痛出現。これを機に急速に体力低下し寝たきり状態となる。両眼緑内障と白内障にて強度の視力低下あり。7月12日、肺炎にて入院(近医より紹介)。7月25日、ADL全介助であるが血液検査の結果、改善傾向を示したため退院となる。全介助であるため、介護者はどのように介護したらよいかわからず近医に相談。近医からの指示により平成17年9月3日訪問リハ開始となる。
     スコアは移動動作6点、複雑動作3点、特別介護14点、身の回り動作7点、麻痺拘縮4点、意思疎通8点、問題行動10点であった。ヘルパーに下肢の自動介助運動を指導し、毎日施行した。10月よりデイサービス週に2回参加で、12月よりリハビリ目的でショートステイを月に3日間利用し、平成18年2月スコアでは、移動動作22点、複雑動作7点、特別介護20点、身の回り動作16点で改善している。
    <考察>今回の介護報酬改定によりリハビリを中心とした介護サービスは医療機関等による訪問リハでサービス提供すべきとされた。しかし、訪問看護STからの訪問リハであると今回紹介した症例のように退院すれば地域に戻り、近医から指示を受けることができる。症例は訪問リハを開始し他のサービスと連携したことで改善できたといえる。今回の改定では単純に回数で判断している。地域に戻す傾向でありながらサービスを受けられないといった矛盾が生じる。もっと内容を重視しなければ、当地域での訪問リハサービスは崩壊してしまう。したがって、中山間部では訪問看護STからの訪問リハにて総合的リハビリテーションを展開していくべきである。
  • 藤井 隆, 國田 英司, 前田 幸治, 小林 正和, 友弘 康之, 占部 洋司, 関口 善孝, 鈴木 孝之, 藤川 光一, 山口 裕之
    セッションID: 1G211
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言>心拍数が不規則な心房細動(Af)は,16列MDCTではBanding artifactのため冠動脈の評価が困難であった.64列MDCTでは,X線管球回転速度の高速化およびコーン角を考慮した再構成方法を用いることで心拍変動が低減し,Banding artifactの減少により画質の向上を認めた.
    <方法>64列MDCT(0.625mm,回転スピード0.35秒/回)を用い,絶対値遅延を使用せず相対遅延(relative RR delay)を用いた方法で画像再構成を行いAf患者の冠動脈描出能の評価を試みた.動態ファントムを使用した基礎実験後に,平均心拍数100bpm以下のAf患者連続24症例(24Pt×14 = 336 segs)において冠動脈評価を行った.また,RR-interval variation rate (RRIVR),すなわち撮像中の心拍変動変化率をRRIVR = (maximum RR interval-minimum RR interval) x 100 / maximum RR interval during the acquisitionと規定,個々の症例でRRIVRを算出し,A群(RRIVR <50% ),B群(RRIVR≧ 50%)に分けて検討を試みた.
    <結果>24例中23例にβブロッカーが前投与され,撮影時平均心拍数は,66.1±10.5bpmであった.全体としてのSegment毎の冠動脈評価可能は89.0%(299/336 segs),評価不能は11%(37/336 segs)であった.評価不能の原因としてMotion artifact 6.3%(21 segs),石灰化2.4%(8 segs),ECG miss trigger 1.8%(6 segs),Stent 0.6%(2 segs)であった.
    RRIVR分類のA群では,評価可能segmentが93.2% (274/294 segs),評価不可能segmentは6.8% (20/294 segs)であった.B群では,評価可能Segmentが59.5% (25/42 segs) ,評価不可能Segmentは40.5% (17/42 segs)であった.B群の評価不能原因としてMotion artifact 16.7%(7 segs),石灰化11.9%(5 segs),ECG miss trigger 9.5%(4 segs),Stent 2.4%(1 seg)であった.
    <考察>平均心拍数が100bpm以下で,撮像中の心拍数変動が少ないAf症例においてはβブロッカーの投与下における64列MDCTによる冠動脈評価の有用性が示唆された.
  • 木澤 政子, 小泉 ひとみ, 疋田 富美江, 永田 恭敏, 家坂 義人
    セッションID: 1G212
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
     当院では、頻脈性不整脈に対するカテーテル心筋焼灼術(以後ABLと略す)を年間370例、徐脈に対するペースメーカー植え込み術や交換術、致死的心室性不整脈に対する埋め込み型除細動器(ICD)手術を年間約100例施行しており、その他電気生理学検査を含め、週平均20人の入院がある。5‐10日間の入院期間でABLをはじめとして手術・検査が行われており、その手術件数は年々増加傾向にある。今回、医師との連携のもと、業務改善を試みたので報告する。
    <経過報告>2000年11月に不整脈診療をメインとする当病棟が増設された。当初はそれまで不整脈治療を行っていた病棟より受け継いだ紙ベースのクリニカルパス(紙パス)を使用していた。
     ABLの適応には、様々な疾患があるが、発作性心房細動は根治が難しく、他県からの紹介入院が多い。発作性心房細動に対しては肺静脈隔離術を行うが、期外収縮やWPW症候群などその他の疾患と検査や処置が一部異なることや、主治医によってオーダーの方法に相違があった。
     2003年1月よりカルテが電子化となり、オーダリングが開始となった。そこで検査や処置を見直し、2003年10月に『カテーテル心筋焼灼術肺静脈隔離9日間』と『カテーテル心筋焼灼術5日間』のオーダリングパスを作成した。しかし、オーダリングパスは検査オーダーは可能可能であるが、疾患や主治医の違いにより、指示に統一性がなく、看護師のみならずコメディカルのオーバーワークも増えていた現状があった。
     医師が中心となり看護師・コメディカルと意見交換の場を持ち検討を行った。
     そこで2006年2月より看護支援システムの導入を契機に、安全性・能率性に配慮した医療の統一をはかり、日常の看護業務を見直し、クリニカルパスと更にオーダリングパスの改定を行った。まず、肺静脈隔離術とその他のABLにわけて、検査や看護処置の見直しを行った。術後の観察時間は帰室時から安静解除まで8回行っていたが、合併症の心電図記録もないため6回へ変更した。12誘導は帰室時から1時間毎に4回行っていたが、心電図異常には病棟の心電図モニターを装着していることで代用は可能であるため、帰室時のみの1回施行と変更した。その他、抗生剤の統一や術中の輸液を改善した。また手術スケジュールの調整し1日の入院患者数の平均化を行ったり、入院前に外来で一般検査を施行するなどの工夫もした。
     以上を踏まえ、安全性を確保し、効率性に配慮したクリニカルパス・オーダリングパスを作り直した。医師のオーダリングが看護支援システムに取り込まれ、ケアフローに観察項目が反映されて、看護の面では業務改善になっている。まだ使用期間も短く使用例も少ないが、医師・看護師からメリットもデメリットも意見が出ている。
    <まとめ>
    1. 看護支援システム導入を契機に日常の治療・検査・処置・看護業務を、医師・看護師・コメディカルと話し合い、見直すことができた。
    2. 看護支援システムと連動したオーダリングパスの使用により、更なる業務改善が可能になり、質の高い医療提供が可能になると思われる。
  • 三浦 貴徳, 本間 玲子
    セッションID: 1G301
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言> 全身性エリテマトーデス(SLE)は、膠原病の代表的疾患であり皮膚をはじめ全身の臓器を障害する疾患である。以前より、抗痙攣剤や抗不整脈薬など各種薬剤によってSLEが発症することが知られている。今回、抗リウマチ薬であるアクタリットの投与後に、ループス様の症状を発症した一例を経験したので、報告する。
    <症例> 症例は、84歳女性。平成17年1月下旬より右足関節痛出現し、同年2月17日に当院整形外科受診。化膿性関節炎の診断にて同日入院となった。抗生剤の投与によって症状改善したため2月25日に退院となる。しかし、退院後再び両足関節の腫脹、疼痛が出現。採血にてリウマチ因子も陽性であったため、関節リウマチと診断され、アクタリット300mg/日が開始された。足関節炎は、一時改善したが、同年5月下旬より、発熱、全身の多関節炎が出現したため同年6月8日に当科紹介、同日入院となった。リンパ球減少、多関節炎、抗核抗体陽性、抗DNA抗体陽性からSLEと診断。また、アクタリット投与前の検査で抗DNA抗体が陰性であったことから、アクタリットの副作用と考え同薬を中止し、プレドニゾロン10mg/日開始したところ速やかに症状が改善し、現在プレドニゾロン減量中である。
    <考察> 関節リウマチに対して、さまざまな抗リウマチ薬が使用されるが、サラゾスルファピリジン、D-ペニシラミンなどの薬剤によってループス様症状がひきおこされることは以前より知られている。また、最近使用されるようになったTNFに対する阻害薬であるエタネルセプトやインフリキシマブ によってもループス様症状が発症することも明らかとなってきている。抗リウマチ薬の持つさまざまな免疫調節作用が抗DNA抗体出現などのループス様症状を発現させる可能性も考えられ、抗リウマチ薬使用にあったては注意を要すると考えられる。
  • 佐々木 眞爾, 臼田 誠, 広澤 三和子, 前島 文夫, 夏川 周介, 岡田 邦彦, 池田 昌伸, 小川原 辰雄
    セッションID: 1G302
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに> 今日アレルギー性疾患の診断、治療そして予防のために血中特異IgE抗体測定は必須のものとされ、農林業に頻発している蜂刺傷に対しても実施されている。蜂刺傷の佐久総合病院受診者と林野庁職員の蜂刺傷例のハチ特異IgE抗体測定結果をみると、重症度とハチ特異 IgE抗体値との間に必ずしも相関が認められない例が少なくなかった。その原因として、日本で使用されているハチ特異IgE抗体測定用アレルゲンが北アメリカならびにヨーロッパ一帯で採取した蜂毒から作製されていることが要因として考えられる。そこで、国産蜂アレルゲン並びに現行の外国産蜂アレルゲンを用いたハチ特異IgE抗体測定キットで同一蜂刺傷患者血清のハチ特異IgE抗体測定を行い、アレルゲンの差異による測定値への影響を調査した。
    <対象と方法> 国内産のスズメバチ属とアシナガバチ属の蜂として、国内で目にすることが多く、刺傷例が多いキイロスズメバチVespa simillimaとセグロアシナガバチPolistes jokahamaeを長野県内の専門業者に採取を委託した。薬剤未使用で生きたまま捕獲後、一時的に低温保管した蜂から直ちに毒嚢を採取し、-80℃超低温フリーザーで凍結保存した。その後、佐久総合病院検査科で使用しているハチ特異IgE抗体測定キット販売製造元スウェーデン・ダイアグノスティックス社に毒嚢を送付し、アレルゲンが作製された。
     林野庁中部森林管理局職員34人ならびに長野県青木診療所を平成17年に受診した蜂刺傷患者21人をハチ特異IgE抗体測定対象者とした。林野庁中部森林管理局職員については、蜂刺傷について問診した後に採血同意書に署名した方から採血を行った。血液はそれぞれ血清分離し、検体血清は-30℃で凍結保存し、その後、佐久総合病院検査科で従来のアレルゲンと国内蜂アレルゲンによるハチ特異IgE抗体測定が実施された。
    <結果> ハチ特異IgE抗体測定データは抗体価によって、0から6の7クラスに分類し、クラス2以上を陽性、クラス1を擬陽性、クラス0を陰性とした。対象者55人のハチ特異IgE抗体測定結果は以下のようであった。日本産キイロスズメバチでは陽性率3.6%と極めて低く、日本産セグロアシナガバチでも陽性率22.0%にとどまった。それに引き替え、外国産スズメバチと外国産アシナガバチでの陽性率はそれぞれ67.2%、40%と国産に比べ著しく高かった。
    <考察> 国内産蜂毒による抗体陽性率が低かった原因としては以下の理由が考えられた。本病院検査科での特異IgE抗体測定試薬製造元スウェーデン・ダイアグノスティックス社の指示のもとに国産蜂毒が処理され、本社でアレルゲンが作製されたが、この作製方法が本来とは同一でなく、毒嚢そのものが使用されたために不純物質が多く、抗原量不足で反応性が弱かったものと推測された。今回の弱いアレルゲン反応性を改善するためには、蜂毒液そのものを採取してアレルゲンを作製することが最も効果的と考えられ、今後再検討したい。
  • 山口 敏之, 井原 頌, 高田 学, 小松 信男, 橋本 晋一, 臼井 健二, 小山 正道
    セッションID: 1G303
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言>粉瘤は日常診療の場において遭遇する頻度の高い皮膚良性腫瘍の一つである.今回我々は,当院で経験した粉瘤症例について検討を加えた.
    <方法>1985年1月_から_2005年12月までの過去21年間の病理結果報告書から粉瘤と診断されたものを抽出し,患者年齢,性別,摘出年度,担当科,発生部位について調査した.
    <結果>対象となった症例は376例で,男性260例,女性126例と男性が女性の約2倍であった.平均年齢46.64±17.13歳で男性46.96±16.60歳,女性46.02±18.19歳で男女間に年齢の差は認められなかった(P=0.62).調査期間を前半10年と後半11年に分けて例数を検討したところ,後半に増加傾向がみとめられたが,統計学上は有意な変化は認められなかった.担当した科は外科,皮膚科,整形外科が多く,3科で全体の85%以上を占めた.発生部位は,顔面,頚部,背部に多くこの3部位で全体の約60%を占めた.足底部に発生した患者の年齢は足底部以外に発生した患者の年齢に較べて低かった.
  • 三宅 範明, 山本 明, 宮本 忠幸
    セッションID: 1G304
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言>
    近年子宮筋腫に対する子宮動脈塞栓術の施行症例が増大している。開腹を要しない術式であるため、腹部に手術創を生じない点が本術式を希望する女性が増加している大きな理由と推察される。本術式を施行後に尿管狭窄という極めて稀な合併症を生じた症例を経験したので症例を提示するとともに文献的考察を加える。
    <症例提示>
    症例:37歳、女性。
    現病歴:2005年5月13日に子宮筋腫に対する子宮動脈塞栓術を他施設にて受ける。5月19日朝より下痢を認め、夕方からは右腰背部痛も認めたため当院救急外来を受診。
    現症:右腎部圧痛、肋骨脊椎角叩打痛著明であった。腎部エコー、腹部CTにて右水腎症を確認した。精査加療目的で緊急入院となる。
    入院後経過:右腰背部疼痛が著明であり、尿管通過障害の原因は判然としなかったが尿管ステント留置により右水腎症の改善を図るべきと判断した。尿管ステントの挿入および留置は特に問題なく実施し得た。ガイドワイヤー、尿管ステント挿入時に抵抗は認めなかった。尿管ステント留置後、腰背部痛は軽減したのであるが尿管ステント自体による膀胱刺激症状が高度のため、尿管ステント抜去を強く希望した。5月23日尿管ステントを抜去した。その際、右側逆行性腎盂尿管造影検査を施行した。造影剤のドレナージは良好であり尿管ステントの再留置は実施しなかった。5月27日のKUB,DIPで右下部尿管に約1cm程度の狭窄および軽度水腎症を認めたが、患者の希望もあり尿管ステントの再留置はせず経過観察とし5月28日退院となった。10月17日のKUB,DIPで右水腎症の改善を確認した。
    <考察>
    1995年にRavinaらにより子宮筋腫に対する子宮動脈塞栓術の有用性が報告された。本邦では1999年に勝盛らの報告があり以後本治療例の報告が増大している。本術式の大きな利点は開腹手術に比し侵襲度が低く、大きな手術創が残らないことである。さらに入院期間が開腹手術に比し短いことや子宮温存が可能であるなどの点がある。しかし、一方欠点としては1)塞栓術後の疼痛を生じること、2)変性筋腫への感染などにより全身感染、敗血症などを惹起する可能性があること、3)異所性塞栓のため子宮以外の臓器に障害を生じる可能性があること、などが挙げられる。
    本治療後に尿管狭窄を生じた例は我々の調べ得た限りでは報告されておらず本例が最初と思われる。自験例ではCTなどの画像診断で尿管病変部と筋腫部分が極めて近接していたことより、尿管狭窄発症の機序として異所性塞栓に起因しているとするより変性筋腫の炎症が尿管に波及し通過障害を生じた可能性が高いと推察する。今後、本術式の施行症例がさらに増大するに従い今回提示したような症例が増加する可能性がある。
    <結論>
    子宮筋腫に対する動脈塞栓術施行後に尿管狭窄を惹起した症例を報告した。本術式施行後の尿管発生例は本例が初めてと思われる。
  • 岡野 学, 山田 徹, 河田 幸道, 丹羽 優佳里, 齋藤 公志郎
    セッションID: 1G305
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
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    <緒言> 過誤種は、腫瘍様の組織奇形として諸臓器にその報告例がみられているが、後腹膜腔における過誤腫は稀である。今回、その1例を経験したので報告する。
    <症例> 28歳、男性。
     (主訴) 下痢
     (家族歴) 特になし
     (既往歴) 平成12年 左精巣腫瘍にて手術
     (現病歴) 平成17年5月4日より下痢が続くため当院内科を受診し、急性腸炎として内服治療を受けるも改善せず。このため精査したところ左後腹膜腔に腫瘤が認められ、5月9日当科へ紹介された。
     (現症) 身長171cm、体重68kg。胸腹部に異常を認めぬものの、左鼠径部に手術創を認めた。
     (検査所見) 尿検査ではSG 1007, pH 7.5、prot (-)、sugar (-)、urobil (±)、bil (-)、OB (-)、RBC 0/HPF、WBC 0/HPF、Bact (-)であった。血液検査はWBC 7880/mm、RBC 527×10/mm、Hb 15.6g/dl、Ht 44.6%、Plet 29.4×10/mmで、生化学検査はGOT 12IU/l、 GPT 16IU/l、 LDH 313IU/l、 Alp 219IU/l、 T.P 6.6mg/dl、 Alb 4.2mg/dl、 BUN 12.1mg/dl、 Cr 0.8mg/dl、 Na 140mEq/l、 K 4.3mEq/l、 Cl 102mEq/l、 T.chol 178mg/dl、 CRP 2.46mg/dlであった。  超音波検査では左腎下極内側に径4cmほどの嚢胞状の腫瘤を認めその内部には隔壁も見られた。腹部CTでも左後腹膜腔で腸腰筋および尿管に接して多房性で径4cmのlow density massが認められた。MRIではT1でiso-low intensity、T2で強度の異なるhigh intensityを示す多房性の腫瘤として描出された。DIPでは特に異常は認めなかった。Angiographyではtumor stainなどは認めなかった。Gaシンチにおいては明らかな集積像は認められなかった。
    <経過> 画像所見より良性の後腹膜腫瘍がもっとも考えられたが、精巣腫瘍の既往もあり、今後は尿管を圧迫する可能性もあり、平成17年5月25日に摘出術を施行した。術中、左腎下極に接して長さ5cmほどで弾性軟の腫瘤が触知された。その側方には左尿管が走行しており、背部では腸腰筋の筋膜と強く癒着していた。摘出標本は7.5x5.5x4cmの大きさで63gであった。内部には黄色透明と赤褐色混濁の2種類の液が見られ、細胞診は陰性であった。腫瘤を切開したところ多房性でその内面は灰白色平滑であり病理組織検査では悪性所見は見られず大腸や胆嚢の組織に類似しており過誤腫と診断された。
    <考察> 後腹膜腫瘍は比較的稀な疾患であり、その頻度は内外の報告では全腫瘍の0.2%であり、そのうち悪性腫瘍の占める割合は80%以上と報告されている。悪性腫瘍はその大部分が肉腫や中皮腫であり、良性腫瘍では奇形腫や嚢腫などが多く見られるが過誤腫の報告は極めて稀である。小児では後腹膜腫瘍の1-2%と報告されているものの成人も含めた全体の発生頻度については不明である。初診時年齢層は比較的幅広く、小児から初老期に及んでいる。腫瘤数はしばしば多発する傾向にある。過誤腫の発生部位として多いのは胎生初期細胞移動の中心をなす体の中心線上とされており、後腹膜腔においても正中線付近に発生する頻度が高いと考えられる。過誤腫は自立的増殖形態を示さないため、後腹膜腔が元来疎な組織腔であることも手伝って無症状に経過し剖検などの機会に偶然発見されることが多い。有症状例では消化器症状をはじめとする不定愁訴が多いようである。確定診断は手術しかなく、治療に関しても一般に外科的全摘が行われていることが多い。
    <結語> 後腹膜腫瘍の診断のもとに手術が行われ、病理学的には過誤腫と診断された1例を報告した。
  • 水野 健太郎, 秋田 英俊, 濱本 周造, 加藤 誠, 神沢 英幸, 山田 健二, 岩瀬 豊, 岡村 武彦
    セッションID: 1G306
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
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    <目的>BCG膀胱内注入療法は表在性膀胱癌に対して広く行われているが、注入量・回数は施設によって異なるのが現状である。今回我々は注入量の違いで再発予防効果に差があるか検討を行った。
    <対象と方法>1985年2月から2005年3月までに安城更生病院およびその他2施設で治療を行った表在性膀胱癌のうちTUR-BtとBCG膀胱内注入療法のみ施行した症例についてretrospectiveに解析した。BCG注入量別(80mg、60mg、40mg)に分けKaplan-Meier法により非再発率を比較した。また副作用についても出現頻度を比較した。
    <結果>症例は100例(男性84、女性16例)、年齢37-84才(平均67.3才)。観察期間6-108ヶ月(平均25ヶ月)。組織型は全て尿路上皮癌、G1:G2:G3 = 9:63:26例(不明2)、pTis:pTa:pT1 = 15:43:37例(不明5)。全症例の3年非再発率は61.4%、注入量別では80mg群=65.3%(n=55)、60mg群=42.3%(n=17)、40mg群=61.7%(n=28)であり、有意差はないものの60mg群では80mg群や40mg群に比べて非再発率が低い傾向であった。膀胱内注入療法の完遂率は、それぞれ80.0%(80mg群), 82.3%(60mg群), 85.7%(40mg群)と、40mg群で最も良好であった。また、各群ごとに年齢分布を見ると、80mg群は35-84才(平均65.4±9.1才)、60mg群は54-79才(67.1±7.5才)、40mg群は55-84才(平均73.0±7.8才)と注入量が少ないほど年齢が高い傾向であった。副作用については、膀胱刺激症状が各群で最も多く、肉眼的血尿・38℃以上の発熱などが認められた。80mg群の2例に萎縮膀胱を、60mg群の1例で尿路結核を発症したが、その他重篤な合併症は認められなかった。
    <考察>60mg群ではやや効果が劣るものの全体として良好な成績が得られていた。岡根谷らの報告(1991年)以来、本邦ではBCG膀胱内注入量について40mgでの報告が数多くなされているが、60mgの報告はあまりない。60mg群の成績が40mg群より劣っていたのは予想とは異なる点であったが、年齢・副作用などを考慮し、症例に応じて注入量を変更することで効率の良いBCG膀胱内注入療法を施行できる事が確認できた。
  • 浜本 周造, 最上 徹, 神沢 英幸, 水野 健太郎, 秋田 英俊, 加藤 誠, 岡村 武彦
    セッションID: 1G307
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
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    <目的> 近年透析技術のめざましい進歩に伴い、10年以上の長期透析患者数は増加し続けている。それとともに悪性腫瘍による死因の割合が増加している。透析患者の悪性腫瘍発生率は健常者と比較して一般的に高いと言われているが、なかでも泌尿器系腫瘍、特に腎腫瘍の割合は高いとされている。今回、透析患者に発生した腎腫瘤性病変につき、透析導入からの期間、診断方法、病理組織型、治療、予後などについて比較検討した。
    <対象と方法> 2001年4月より2006年3月の5年間に安城更生病院において診断された透析患者13例の腎腫瘤性病変につきRetro-spectiveに解析した。性別は男性10例、女性3例、平均年齢は60歳(51歳から69歳),平均透析期間は154ヶ月(1ヶ月から32年)。後天性多嚢胞化萎縮腎(ACDK)は7例に認められた。原疾患は7例が慢性糸球体腎炎、2例が糖尿病性腎症、腎硬化症とIgA腎症が各々1例ずつで、2例は不明であった。症状は発熱を認めた3例をのぞき、無症状であった。診断は全例造影CTを行い、診断に苦慮した場合、MRIを追加した。
    <結果> 全症例の術前臨床病期はstageI 11例、stageIII 1例、stageIV 1例で、術前に肝転移を認めた症例は手術適応外とした。病理組織学的検討が可能であった、手術施行12症例の組織学的異型度はG1 2例、G2 8例、不明 2例であり、組織亜型は腎細胞癌11例(淡明細胞癌 3例、顆粒細胞癌 2例 嫌色素細胞癌 1例)で1例は悪性所見を認めず感染性腎嚢胞であった。透析歴32年の1例は両側の腎細胞癌とオンコサイトーマを合併した症例であった。手術時の合併症は特に見られず、術後せん妄状態となった症例を1例認めた。手術時肝転移をみとめ、術後1ヶ月で死亡した症例、他因子にて死亡した症例を1例ずつ認めた。手術適応外の症例はインターフェロンαを継続しているが、他の症例は現在再発無く生存中である。
    <考察> 透析患者の腎腫瘍は高頻度にみられ、時に進展例も認められる。スクリーニングとしては各透析施設による定期的な腹部USやCTなどに頼らざるを得ないが、ACDKや嚢胞内感染、嚢胞内出血を伴った場合、診断に苦慮する場合も少なくない。結果的に感染性腎嚢胞を1例に認めたが、その他は悪性腫瘍であった。術後経過は良好であることより、腎腫瘍が疑われた場合には、早期に積極的に手術を行うべきであると考えられた。
  • 倉持 元, 長谷川 伸
    セッションID: 1G308
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
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    <目的> 我々は、昨年の本学会にて血液透析患者における腎性貧血に対して、ヘマトクリット(Ht)値を30から35%に維持するようにエリスロポイエチン(EPO)製剤を用いた治療をしているが、Ht値が30%未満の症例において検討したところ、これらの患者は血清アルブミン値が有意に低値を示したことおよび血清アルブミン値の正常群(3.8g/dl以上)と低値群(3.7g/dl以下)において腎性貧血の程度およびEPO投与量を調査した結果、低値群では貧血の程度も強くかつEPO投与量も有意に多かったことから、低栄養状態の改善は腎性貧血の改善およびEPO投与量の減量につながる可能性を報告した。そこで今回、栄養改善をめざして血清アルブミン低値の維持血液透析患者においてEPO投与量は変えずにアルブミンリークのないダイアライザーへの変更と透析ごとにアミノ酸製剤の補給を6ヶ月間行い、各種パラメーターの変動について検討した。
    <対象および方法> 週3回の血液透析療法をうけている栄養状態のよくない患者9人(男6人、女3人、55から90歳)においてそれまで使用していたポリスルフォン膜、ポリエーテルスルフォン膜(1.1から1.5m2)ダイアライザーからエバール膜(1.2m2)ダイアライザーへ変更し、血液透析ごとにアミノ酸製剤(ネオアミユー)200mlを点滴静注した。これを6ヶ月間継続させ各種パラメーターの変動を検討した。この期間中は各自のEPO投与量は変えずかつ鉄剤の投与も行なわなかった。統計処理はpaired t testにて行ないp<0.05で有意とした。
    <結果> 全体の平均値で比較すると、6ヶ月後で有意にPCR、BUN値は増加し、KT/V、 Fe、 TSAT値は低下した。血清アルブミン、総タンパク、トランスフェリン、RBC、Hb、Ht、血清クレアチニン、 総コレステロール値には変化は認められなかった。また症例ごとで検討すると血清アルブミン値が増加した3人ではいずれもHb、Ht値が増加、血清アルブミン値が低下した4人ではHb、Ht値は2人で低下、2人で増加した。また血清アルブミン値が不変であった2人でもHb、Ht値は増加した。またエバール膜ダイアライザーでの透析液中アルブミン量は0.0mg/dlであった。
    <結論> 栄養状態の基本となるのは日常での十分な食事摂取であり、まずこの食事摂取状況の改善が低栄養状態の患者では最も重要と考えられる。
     しかし高齢透析患者では食事摂取量が低下していることが多く、さらに高性能ダイアライザー膜を使用した血液透析療法を受けていると透析液へのアルブミンリークもあり、低栄養状態に傾くことが予想される。
     そこで今回、低栄養状態の患者にアルブミンリークのないダイアライザー膜への変更と、アミノ酸製剤の経口摂取で血清アルブミン値が上昇したとの報告があることから、透析施行時にアミノ酸製剤の経静脈補給を行なった。今回の調査結果から、この透析方法は栄養面での改善への一つのサポートになると思われ、かつ栄養面の改善は腎性貧血の改善およびEPO投与量の減量につながると考えられた。
     今後さらに日常での食事摂取量の綿密な調査を基にした栄養指導を加え、より積極的に低栄養状態の改善をめざすべきと考えられた。
  • 丹羽 政美, 安藤 秀人, 平松 達, 深澤 基, 伊藤 栄里子, 安藤 俊郎, 渡邉 常夫, 藤本 正夫, 小出 卓也, 岡野 学
    セッションID: 1G309
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>前立腺癌は日本人の高齢化と食生活の欧米化に伴い、日本でも増加傾向にある疾患である。前立腺疾患の診断においてはprostate specific antigen(PSA)、直腸診、経直腸的超音波断層法、MRI、針生検などが中心になっているが、生検が簡便に施行できるため画像診断よりも生検が優先される傾向にあった。しかし、従来の生検のsensitivityは50%前後という報告や最近のMRI診断法の進歩によって前立腺の内部構造が明瞭に描出されるようになり生検で前立腺癌と確定した症例の臨床病期診断のみならず、生検前の癌病変の検出においても非常に有用であることがわかってきた。生検前にMRI検査を行って癌部が検出もしくは疑いができれば系統的生検と標的生検を同時に実施することができ、診断能の向上が期待できる。以前勤務した西美濃厚生病院や当院でも前立腺癌を疑った場合、生検前にMRI検査を行うことをルーチン化し、生検の診断能の向上を目指して担当技師が画像についてコメントを記載している。
     今回、東濃厚生病院と西美濃厚生病院で昨年度一年間に生検前にMRI検査を施行した症例について生検結果と比較検討した。また拡散強調画像が可能であった症例についてADC(apparent diffusion coefficient)値を測定したので報告する。
    <方法>東濃厚生病院と西美濃厚生病院で昨年度一年間に生検前にMRI検査を施行し標的生検が可能であった91例について生検診断をゴールドスタンダードとして年齢、PSA値、MRI診断について検討した。撮影装置は1.5T(PhilipsおよびGE社製)装置でphased array coilを用いて撮像した。撮像法はT1強調画像、T2強調画像、Gdダイナミック画像で検討した。(可能であった24症例についてはADC値も検討した。)
    <結果>生検前にMRIが施行された91症例中37症例に生検によって前立腺癌が認められた。癌の平均年齢は72.5歳でPSA値の平均値は46.5ng/mlであった。PSA値を年代群別に癌とBPHを比較検討すると年代群が高くなるにつれて高値になる傾向がみられたが年代群別では有意差はみられなかった。しかし、癌とBPHでは各群で有意差を認めた。生検結果を基準にみたMRIの正診率は84%、感度96%、特異度76%、陽性的中率73%、陰性的中率95%と高い診断能が得られた。また拡散強調画像が可能であった前立腺癌部のADC値は平均0.97×10-3mm2/sec、正常部のADC値は1.57×10-3mm2/secであった。
    <考察>前立腺は生検後の出血によって前立腺の信号強度は修飾され、しかもその影響が長く続くことが知られている。これらの信号変化は読影の妨げになるだけでなく、偽病変の原因となり病変の検出能をも低下させる。そのためMRIは生検前に撮像することが推奨されるが、今回の検討でかなり精度の高い診断が可能であることが認められた。また、Gdダイナミック撮像やADC値を測定することにより、より精度が増すと考えられる。さらにMRIは検出能だけでなく皮膜外浸潤や隣接臓器浸潤などの検出も可能で治療法を選択するためにも必要不可欠な検査であると考えられた。ただし、MRIで強く前立腺癌が疑われたにもかかわらず生検でBPHと診断された症例があることやMRIで癌と良性病変との鑑別が困難な場合もあったことより十分に経過観察し今後の検討課題としたい。
  • 岐阜県前立腺癌検診の影響について
    小出 卓也, 斉藤 昭弘, 清家 健作, 伊藤 康久, 永井 司, 岡野 学, 小林 覚
    セッションID: 1G310
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言>人口の高齢化や生活習慣の欧米化を背景として、前立腺特異抗原(PSA)を用いた前立腺癌スクリーニングの普及などに伴い、前立腺癌は近年増加している。岐阜県下では1998年より前立腺癌検診が開始されたが、2002年までは全市町村のうち4%の実施率であった。しかし、2002年12月以降の前立腺癌に関する報道、自治体関係者に対する啓蒙活動など様々な要因により、検診実施市町村は2003年には66%、2004年には88%と急激に増加した。
     JA岐阜厚生連のうち、泌尿器科医が常勤する東濃厚生、中濃厚生、揖斐厚生、西美濃厚生、岐北厚生の5病院は、いずれも地域の中核病院として前立腺癌検診の二次検診患者の受診が多い。5病院の前立腺癌の2002年から2004年までの臨床統計を比較し、岐阜県前立腺癌検診により、農村部の前立腺癌症例にどのような変化が生じたかを検討した。
    <方法>岐阜県前立腺癌検診は対象患者が50歳以上であり、一次検診として、PSAを測定。4.01ng/ml以上を要二次検診として、泌尿器科のある医療機関を受診するよう指示した。原則として二次検診病院では全員に前立腺生検を施行した。5病院の2002年から2004年までの前立腺癌の臨床統計を検討した。
    <結果>5病院の前立腺癌の症例数は2002年は55名、2003年は213名、2004年は122名であった。
     受診動機は、2002年は検診が12%、有症状は88%であった。2003年は検診65%、有症状35%であり、2004年は検診63%、有症状37%であった。
      初診時のPSAは、2002年が4.01〜10.0ng/mlのgray zoneが16%、10.1ng/ml以上が71%であった。2003年はgray zoneが38%、10.1ng/ml以上が61%であった。2004年はgray zoneが46%、10.1ng/ml以上が53%であった。
     臨床病期は、2002年がStageA4%、B49%、C18%、D29%であり、2003年がStageA1%、 B80%、C8%、D11%、2004年がStageA4%、B76%、C11%、D9%であった。
    治療方法としては、2002年は手術療法が11%、内分泌療法が89%、2003年は手術療法23%、内分泌療法74%、2004年は手術療法8%、内分泌療法89%であった。
    <考察>前立腺癌の症例数は、2002年の55名に比して2003年は213名であり、約4倍と急増した。受診動機として、検診は2002年は12%と少数であったが、2003年は65%と急激に増加し、2004年も63%と高率であった。PSAはgray zoneが2002年は16%、2003年は38%、2004年は46%と上昇し、比較的低いPSAでの受診が増加した。
      臨床病期はStageDが2002年の29%から2003年は11%、2004年は9%と減少した。限局癌であるStageBは、2002年の49%から2003は80%へと急増し、2004年も76%と高率であった。手術療法の症例数は2002年の11%から2003年は23%へと増加した。
     岐阜県前立腺癌検診の実施市町村が2003年から急激に増加したことにより、検診を受診動機とする、比較的低いPSAの早期の前立腺癌が多数発見され、手術療法を受ける症例が増加したと考えられた。
    <結語>JA岐阜厚生連5病院の前立腺癌症例は、岐阜県前立腺癌検診により、大きく変化した。検診による今後の前立腺癌死亡減少効果が期待される。
  • 加藤 あい, 宮田 明子, 守屋 由香
    セッションID: 1G311
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
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    <はじめに>
     産褥期における子宮の復古および悪露の変化は著しくかつ重要であるため、産褥期における注意深い観察と復古促進に向けたケアが必要となる。
     経腟分娩後の子宮復古状態については基準化され、看護を行う上でのアセスメントの指針ともなっている。しかし、帝王切開後の子宮復古に関しては一般に経腟分娩より遅いと言われているが、明らかなデータとして発表されているものはない。そこで、経腟分娩と帝王切開の子宮復古状態を比較し、帝王切開術後のアセスメントの基準を明らかにすることを目的とし検討した。
    <研究方法>
     経腟分娩者30名、帝王切開分娩者21名。正期産かつ単胎とし、帝王切開分娩者に関しては、緊急帝王切開や合併症がない者とした。産褥0日より退院日までの子宮底長と硬度および、悪露量を測定した。妊娠・分娩経過、分娩週数、妊娠・分娩歴、Hb値、胎盤の大きさ・重さ、児体重、使用薬剤名・投与量、排泄状況、離床時期などについてフェイスシートを用い情報収集した。
    <結果および考察>
      子宮底長の経日的変化に関して、産褥1日を除いては、帝王切開の方が経膣分娩の子宮底長に比べて高い。これは子宮に手術操作が加わることや、安静の期間が長いこと、授乳開始の遅れが影響していると考えられる。
    悪露量の経日的変化において、産褥1・3・4日で帝王切開より経腟分娩のほうが有意に悪露量が多く、産褥5日は経腟分娩の悪露量が多い傾向にあり、産褥2・6日は、帝王切開の悪露量が多い傾向であった。産褥1日は経腟分娩では、授乳の開始や安静の制限がされていないことが関連していると考えられる。産褥2日に帝王切開の悪露量が多い傾向であったのは、歩行開始となることが関連していると考えられる。
     帝王切開の場合、経腟分娩と比べて子宮底長は高く経過していくが悪露量は経腟分娩が多い量で推移することが多かった。一般的には、子宮底長が高いと悪露量が多く子宮収縮が悪いと判断するが、帝王切開の場合は子宮底長が高いことと、悪露量の多さには関連がなく、子宮底長と悪露量では子宮収縮状態を判断することはできない。
    【まとめ】
     経腟分娩と帝王切開における産褥期の子宮底長の経日的変化をみた結果、帝王切開分娩の方が、経腟分娩よりも子宮底長が高く推移することが明らかとなった。しかし、帝王切開の子宮底長が高く推移しても、経腟分娩に比べ悪露量は少なく、子宮収縮が不良という指標にはならない。
    産褥期の子宮復古に影響を及ぼすといわれる因子についての今回の研究では有意差はでなかった。今後は、産褥期の吸啜回数や時間など、本研究項目に取り上げなかった因子の影響も含め、検討すべきである。
  • 野原 緑, 久世 美紀, 後藤 美代子
    セッションID: 1G312
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
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    〈はじめに〉 出産を迎えた女性は、心身の変化に戸惑いながら妊娠経過を受容していく。その中で悩みや出産に対する不安を抱えた妊婦は、それを解決していきながら出産の意識を高めていくが、従来の妊婦健診では妊婦のニーズを満たすことは難しい。多様化する妊婦のニーズに対応するため、また助産師の専門性を高めるために当院では「助産師外来」を平成16年2月より開設した。以来2年が経過したため、その業務を評価し、今後の方向性を検討した。
    〈概要〉当院の助産師外来は、病棟の助産師が正常な妊娠経過をたどる妊婦に対し、妊婦健診・保健指導・バースプラン説明を実施している。
    〈方法〉 対象:平成17年5月から18年1月の間に当院の助産師外来を受診した妊婦50人に対し、産後入院中に独自に作成したアンケートを行った。
    〈結果〉
    1.対象者:初産婦26人、経産婦24人であった。出産方法では経膣分娩が39人(78%)、帝王切開が11人(22%)であった。
    2.助産師外来の評価:受診して非常に良かった・よかったと回答した妊婦は82.5%、内訳は初産婦88%、経産婦71%であり、多くの妊婦が助産師外来を肯定的に捉えていた。アンケート結果より、妊娠経過の受容・効果的な受診・不安の解消・出産方法の理解・助産師との人間関係・乳房管理の6項目に分類すると、肯定的意見の第一位は助産師との人間関係であった。しかし初産婦の11.6%、経産婦の29.2%はどちらでもないという回答であり、経産婦の評価が低かった。
    3.バースプランの活用状況:妊婦の主体性を育てるためにバースプランを指導しているが、バースプランを夫と話し合った妊婦は73.9%、話し合ってない妊婦は26.1%であった。また、バースプランを話し合った妊婦は、話し合ってない妊婦に比べバースプランの各項目で高い活用度を示した。
    4.今後助産師外来に期待すること:もっと回数を増やしてほしい、という意見が多く、その他にはバースプランを具体的に教えてほしい、気になる症状について具体的な指導を希望するなどがあった。
    〈考察〉 今回の結果から、当院における助産師外来を受けた反応は良好であり、出産について考えることができた・不安の解消ができたという意見があった。助産師は妊婦にとって意見を聞きやすい相談しやすい存在であるといえる。しかし妊婦の求めるニーズに応えきれてなく、助産師外来の回数を増やして欲しいという意見や、医師が行う妊婦健診との違いが理解できていないという意見があった。今後、助産師外来の実施回数を増やし、妊婦のニーズに応えていくことが必要である。また、バースプランをより充実させるために、夫の参加を妊婦に促していく必要がある。バースプランは妊婦自身の出産や育児について実践するための計画となるため、妊娠後期に助産師外来を受けることは、妊婦の主体性を尊重しながらバースプランを深めていくこととなる。
    〈結論〉
     ・助産師外来を受診してよかったと思う褥婦は82.6%と多く、必要性は大きい。
     ・夫と話し合った妊婦のバースプランは実用性であり、効果的である。
     ・今後助産師外来の回数を増やすことで、継続ケアの必要性が示唆された。
  • 久我 貴之, 重田 匡利, 工藤 淳一, 山下 晃正, 藤井 康宏
    セッションID: 1G313
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
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    <目的> 世界保健機構の平成18年4月発表によると日本男性の平均寿命は79歳,日本女性の平均寿命は86歳と世界一である。さらに農村地域においては高齢者患者の占める割合が都市部と比較して高く,受診がん患者の高齢化傾向も目立つ。過去6年間に当科で手術治療した80歳以上乳癌症例において,臨床像および治療を検討し,農村地域における高齢者乳がん治療の現状について知ることを目的とした。
    <対象と方法> 平成12年8月より平成18年2月までに経験した80歳以上乳癌14例を対象とした。男性1例・女性13例であった。年齢は80歳から95歳(平均84.4歳)であった。対象例において,臨床像,病期,術前合併症,重複癌,術後内分泌化学療法,生存率,予後および死因について検討した。
    <結果> 主訴はしこり13例,血性乳汁分泌1例であった。腫瘤の大きさは2cm未満が3例で2cm以上が11例であった。病期分類はI:1例,IIA:5例,IIB:3例,IIIA:1例,IV:2例,判定不能2例であった。判定不能はリンパ節郭清を施行しなかったためであった。術前合併症は心疾患:9例,COLD:1例,痴呆1例。重複癌が3例(胆嚢癌、子宮癌、対側乳癌+甲状腺癌)であった。全例がん告知された。ホルモンレセプターは陽性6例,不確実5例,陰性3例であった。術後補助療法は内分泌療法9例(AI8例、フェアストン1例),化学療法3例(重複あり)(FEC1例、UFT3例)であった。補助治療なし4例であった。放射線療法は乳切後リンパ節転移個数7個症例の1例のみであった。予後は14例中9例生存。死亡5例の死因は乳癌死:2例,他癌死(胆嚢癌):1例,肺炎:1例,COLD急性増悪1例であった。Kaplan-Meier法による3生率は約40%であった。
    <まとめ> 80歳以上高齢者乳癌自験例をまとめると腫瘍径2cm以上例,術前合併症を有する例が比較的多かった。ホルモンレセプター陽性・不確実例は約79%であった。アンスラサイクリン系抗ガン剤を用いた化学療法例は少なかったが内分泌療法は積極的に施行された。温存手術希望例は少なった。3生率は約40%であった。
    <結論> 高齢化社会が進む現在,がん治療にもその波が押し寄せている。近年がん治療においてはEBMやガイドラインが重要視されているが,その中には年齢の考慮はなく,また年齢を考慮した具体的なPSの違いも明記されていないのが現状である。臨床の現場では高齢者がん治療としては本人および家族と十分な話し合いを持ってEBMやガイドラインを参考とした個々人にあった医療になることが多い傾向であった。
  • 神谷 有希, 松野 俊一, 田中 史朗, 高橋 治海, 山本 悟
    セッションID: 1G314
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
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    <はじめに> 非浸潤性乳管癌(以下DCIS)の発見契機は、MMGでの微細石灰化や腫瘤・乳頭異常分泌である。MMG上では石灰化で検出されることが多いというのは知られているが、腫瘤・非対称性陰影・構築の乱れなどでも描出される。
     今回は、非触知・US上所見なし・MMG上微小石灰化で発見されたDCISの症例を報告する。
    <対象> 女性 39歳
    <経過>2003年10月左乳頭異常分泌により当院受診 MMG・USとも異常なし 1年後のfollow up
     2004年12月左MMGに集簇性、円形の微小石灰化 カテゴリー3 USは異常なし 6ヵ月後のfollow up
     2005年6月左MMGに集簇性微小石灰化 前回より変化なし 6ヵ月後のfollow up
     2005年10月前回の微小石灰化が一部線状 カテゴリー4 ステレオガイド下マンモトーム生検を実施
    <結果>生検の結果DCISであった。
     触診では触れず、US上石灰化の場所が特定できず、ステレオガイド下においてフックーワイヤーを留置し、Bq+Axを行い、断端(-)であった。
    <考察> 乳癌は乳管上皮層から発生するため、ある時期には乳管の中に留まっており、その時期の癌は非浸潤癌である。この時期はまちまちであり、人により異なる。この非浸潤癌は癌細胞が乳管の中だけで増殖し、乳管内を進展するためリンパ節転移や遠隔転移をきたすことのない癌である。そのため、早期の発見が大切である。
     集簇性の微小石灰化は乳がんを疑うものであるが、ごく狭い範囲に微小石灰化がある場合は良悪性の判断は困難である。
     今回はfollow upしていたところ一部線状の石灰化が発生したため、マンモトーム生険を施行し、確定診断を行った。石灰化の位置がUS上で特定されなかった為、ステレオガイド下においてフックーワイヤーを留置し、手術を施行した。このように、エコー下にて病変部位が特定できず石灰化がある場合においての生険およびフックーワイヤー留置はステレオガイド下のマンモトームが大変有用である。
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