日本農村医学会学術総会抄録集
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第55回日本農村医学会学術総会
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一般演題
  • 浅井 秀司, 浦田 士郎, 鈴木 和広, 田中 健司, 小口 武, 吉田 亜紀子, 新井 哲也, 加藤 宗一
    セッションID: 1C12
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
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    <緒言>我々は2004年11月よりGarden stage IからIIIの大腿骨頸部骨折に対してハンソンピンによる骨接合術を行っており、その治療成績を報告する。
    <方法>2004年11月より2005年10月までにハンソンピンで治療した大腿骨頸部骨折25例を対象とした。内訳は女性17例、男性8例、手術時平均年齢は77.7歳(59-93歳)であった。受傷側は右16例、左9例であり、骨折型はGarden stage II 8例、Garden stage III 17例であった。経過追跡期間は平均10.3ヵ月(6-18ヶ月)であった。手術待機期間は平均3.7日(0-9日)であった。手術方法は牽引手術台を用いて解剖学的整復位に整復した。整復困難例ではLeadbetter整復法(1.股関節・膝関節90°屈曲にて大腿部を末梢方向へ牽引、2.大腿を45°内旋 、3.内旋位のまま股関節・膝関節を伸展し、頚体角に応じて股関節を内外転)を用いて整復した。十分な整復の後2本のハンソンピンによる内固定を行った。後療法は術後翌日から可及的に全荷重歩行を許可した。検討項目は1.受傷前と術後6ヵ月での歩行能力の変化、2.術後合併症とした。歩行能力は平成3年発行「厚生省障害老人の日常生活自立度判定基準」をもとに、ランクJ:屋外レベル(独歩、杖歩行)、ランクA:屋内レベル(歩行器歩行、伝い歩き)、ランクB:車椅子生活、ランクC:寝たきりの4ランクに分類した。
    <結果>1.術後6ヵ月の時点で受傷前歩行能力を維持できたのは17例(68%)、1ランク低下は7例(28%)、2ランク低下は1例(4%)であり、3ランク低下した症例はなかった。骨折型別で検討するとGarden stage II 8例では受傷前歩行能力を維持できたのは6例(75%)、1ランク低下は2例(25%)であり、Garden stage III 17例では受傷前歩行能力を維持できたのは11例(65%)、1ランク低下は5例(30%)、2ランク低下は1例(5%)であった。
     2.術後合併症は10例(40%)に生じ、Garden stage II 3例、Garden stage III 7例であった。ピンの刺激による大腿筋膜炎3例(12%、Garden stage III 3例)、偽関節2例(8%、Garden stage III 2例)、大腿骨頭壊死4例(16%、Garden stage II 2例、Garden stage II 2例)、ピンの穿孔3例(12%、Garden stage II 1例、Garden stage III 2例)、転倒によるピン刺入部の二次的骨折1例(4%、Garden stage II 1例)であった(重複あり)。10例のうち5例で再手術(抜釘のみ3例、抜釘および人工骨頭置換術1例、抜釘および骨接合術1例)を行った。
    <まとめ>ハンソンピンによる骨接合術により早期荷重が可能であり、Garden stage IIIでも65%で受傷前の歩行能力を維持することができた。しかし骨折型に関わらず40%で術後合併症が生じており、20%で再手術を要した。今後、大腿骨頸部骨折に対する治療方法および内固定材料を検討する必要がある。
  • 渡邊 敏文, 石突 正文
    セッションID: 1C13
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
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    <目的>反復性膝蓋骨脱臼に対しては、1900年代から100を越える術式が行われてきた。これらは主に大腿四頭筋形成術のような近位リアライメントと脛骨粗面内側移行術に代表される遠位リアライメントに大別されるが、1993年頃から膝蓋骨の安定性に対する内側膝蓋大腿靭帯(MPFL)の重要性が強調されるようになった。われわれは当初、脛骨粗面移行術後の成績不良例に対してMPFL再建術を施行していたが、単独でも十分な制動性を得られるのではないかと考え、MPFL再建単独術を積極的に行うようになった。今回は我々が行っている術式について紹介すると共に、MPFL再建単独術の有用性について報告する。
    <対象・方法>反復性膝蓋骨脱臼に対し、当院および関連施設でMPFL再建術を行った症例のうち、18ヶ月以上経過観察しえた40例42膝を対象とした。男性12例、女性28例、平均経過観察期間は4.3年であった。
     これらの症例をMPFL再建単独群(M群)29膝、脛骨粗面移行術に加え一期的またはニ期的にMPFL再建術を施行した群(TM群)13膝に分け、臨床成績を検討した。
     最終評価時の可動域、膝筋力健側比、術前後のApprehension test陰性率、Lysholm scoreの他に、我々が独自に用いている21項目からなるVASを用いた自覚的膝機能評価も行った。
    <結果>最終評価時に5度以上の伸展制限を残した症例はなかった。また、10度以上の屈曲制限を残した症例はM群にはなくTM郡に2例認めた。
     最終評価時における膝筋力健側比は両群において屈曲・伸展共に平均85%以上であった。
     Apprehension test陰性率は、M群で術前3%(1例)から術後79%(21例)と有意に改善し(P<0.001)、TM群においても術前8%(1例)から術後69%(9例)と有意に改善した(P=0.005)。術前・術後の両群間のApprehension test陰性率に有意差はなかった。また、M群では術後Apprehension testが2+の症例はなかった。
     Lysholm scoreはM群で術前70点から術後92点と有意に改善し(P<0.001)、TM群においても術前72点から術後90点と有意に改善した(P=0.005)。術前・術後の両群間のLysholm scoreに有意差はなかった。
     VASを用いた自覚的機能評価の検討では、M群で21項目全てが平均80点以上であったのに対し、T群では13項目が平均80点以上であったものの、8項目が80点未満であった。このうち、正座に関してはM群で有意に高いscoreであった(平均92 vs. 62, P=0.047)。
    <考察・結論>Apprehension testやLysholm scoreの結果から、M群、TM群共に術後、十分な膝の安定性が獲得されたことが示された。
     また、M群においては可動域制限が認められず、VASを用いた詳細な評価でも比較的良好な結果が得られていたことから、MPFL再建術は単独でも膝蓋骨脱臼に対する有効な手術法となりうる可能性が示された。
  • 宮崎 恭子, 田中 久美子, 富沢 千亜紀, 田中 晶子, 小林 聖子, 瀧澤 勉, 山崎 郁哉, 秋月 章
    セッションID: 1C14
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
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    <はじめに>長野松代総合病院 (以下当院) での人工関節置換術は年間約200関節施行されている.その患者の約90%は65歳以上であり,術後せん妄が発症すると看護上危険である.そのため今回術後せん妄発症の要因を調査しその発症を予測できれば看護上有用と考え,せん妄の頻度とその危険要因について検討した.
    <方法>2003年4月1日から2004年12月31日までに当院で人工膝関節置換術を行った161例(260膝),人工股関節置換術を行った49例(49股),合計210例309関節を対象とした.平均年齢73.2±7.7(SD)歳であった.せん妄の診断には,ICD-10(国際疾病分類第10版)精神および行動の障害?研究用診断基準を用いた.検討項目は1.人工関節置換術後のせん妄発症率及び術式別せん妄発症率.2.術後せん妄発症日及びその継続日数.3.せん妄発症に影響があると予測される15項目の因子についての統計的分析,の3項目で調査を行った.検定はχ2検定,あるいはt検定を用い危険率5%以下を有意とした
    <結果>せん妄発症は210例中23例で,発症率は11%であった.術式間でのせん妄発症率に差はなかった.術後せん妄発症病日は,術当日から術後4日目にわたり,平均1.3±1.2(SD)日目であった.術当日が23例中7例(30%),1日目が8例(35%),2日目が3例(13%),3日目が4例(17%),4日目が1例(4%)であった.せん妄継続日数は,平均2±1(SD)日間であった.せん妄発症患者の平均年齢は78.3±5.2(SD)歳,せん妄非発症患者の平均年齢は72.6±7.7(SD)歳とせん妄発症患者が有意に高齢であった(p<0.001).術後にせん妄発症した患者は全例69歳以上であった.他の調査した項目のうち,有意にせん妄発症率が高かったのは,認知症の既往のある患者64%(p<0.0001)と睡眠障害のある患者18%(p=0.0087)脳梗塞の既往のある患者18%(p=0.046)であった.
    <考察>全身麻酔を受けた一般外科の術後せん妄発症率は10-19%との諸報告がみられるが,手術部位が異なる症例を区別せずに検討したり,せん妄診断基準に独自の診断基準を用いその基準が報告ごとに異なるなどの問題があった.そのため本研究では,対象を人工関節置換術後の同一条件の患者群で調査し,より一般的なICD-10診断基準を用いて検討した.当院での人工関節置換術の手術時間は1肢に対し平均60分,2肢では120分程度とほぼ一定であるが,術式間に差がみられなかった.せん妄発症には年齢,睡眠障害,脳梗塞既往の因子の関連が示唆され,術前の高次機能低下が大きく関係しているのではないかと考えられた.当院のせん妄継続日数については2日間と短く,術後6日目には全例回復した.その理由は早期にリハビリテーションを開始し,同時に心療内科での治療を行い,症状に対応した早期治療を行なった為と考えた.これらの結果から術後せん妄の予防策として,75歳以上または入院時治療検査に対し理解度が悪い患者には術前に高次脳機能評価を行い,その結果で認知症を疑われる患者の家族には術後にせん妄が起こりやすい事を説明し術後の声かけなども指導している.それでも発症を全て防ぐ事は困難であるがある程度発症を予測し準備しておくことが大切と考える.
  • 石嶌 範英
    セッションID: 1C15
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
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    <はじめに> マッケンジー法(Mckenzie system)は1950年代にニュージーランド出身の理学療法士、Robin Mckenzie氏によって考案された力学的作用を利用した診断と治療法(mechanical diagnosis and therapy)である。
     今回は、脊柱由来と考えられる疼痛患者2名に対しマッケンジー法評価により力学的診断及び治療を試みた。
    <症例紹介> 症例1は81歳女性。現病歴は、平成16年1月18日椅子に2時間座っていたら歩けなくなった。痛みは、右下肢膝下までの痛みを訴え、平成16年1月19日当院受診し、MRI検査により腰椎すべり症と診断される。平成16年2月9日リハビリ開始。力学的診断により、後方Derangementと診断。腹臥位での反復伸展運動と姿勢の矯正について指導する。
     症例2は、38歳男性。現病歴は、平成17年10月13日自動車を運転していて縁石に乗り上げる。事故直後は、背中の痛みが強く感じた。その後、右下肢に痛みが広がり両足第一趾に痺れが出現。力学的診断により、後方Derangement。腹臥位での反復伸展運動と姿勢矯正について指導する。
    <結果> 症例1、81歳女性。腹臥位での反復伸展運動に大変良く理解され1日目に1時間ごとに反復伸展運動10回行った結果、開始5時間後に膝下を含め下肢の痛みを感じなくなる。その後、平成16年2月26日ごろには痛みの改善が認められ日常生活での障害は少なくなる。
     症例2、38歳男性。リハビリ開始当初は、腰周囲の痛みの増強を訴える。5日目に下部胸椎の痛みが著名になる。その後、腰周囲の痛みの強弱はあるが下肢への症状の広がりは認められない。1月20日現在VAS Score 2点(腰周囲痛)。
    <考察> 2例とも、反復伸展運動と姿勢矯正により痛みの軽減と動作の改善が認められた。今回、2例とも反復運動に対する理解が高くできる範囲で運動を継続して行えた結果だといえる。“腰痛”というものの、特徴として1).自然回復、2).再発(繰り返すことに悪化する)があげられる。今回は改善まで、1症例目女性は約1ヶ月、2症例目の男性は2ヶ月以上の日数を要した。適切な方向の運動の指導と負の力学的作用を除くための姿勢矯正は、1).Derangementの修復、2).整復した状態の維持、3).機能回復、4).再発の予防となり“腰痛”に対する恐怖心や誤解を取り除き、なるべく活動レベルを高い状態で維持させることにつながると考えられる。
  • 改変型日本語マギル痛み質問票を用いた鎮痛効果の検証
    櫻田 圭介, 嶋田 誠司, 岸野 美代子, 佐藤 嘉寿, 袴田 佳奈恵, 佐藤 毅
    セッションID: 1C16
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
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    <はじめに>広帯域多重複合波治療(以下テクトロン)は、ペインクリニックで利用されるなど、高い鎮痛効果を期待されている。テクトロンの治療効果については、疾患別に調査した報告はあるが、どのような痛みの種類に対して即時鎮痛効果があるのかを述べた報告はない。
     そこで、本研究では、目的を整形外科疾患患者の自発痛に対するテクトロンの効果を知ることとし、テクトロンの施行直前・直後の痛みを評価し、即時鎮痛効果を検証したので報告する。
    <対象と方法>対象は自発痛を有する整形外科疾患患者8名(男性4名・女性4名、平均年齢55.5歳)である。診断名は、肩関節周囲炎4名、腰椎疾患2名(変形性腰椎症、腰椎分離症)、肩甲骨・鎖骨骨折術後、半月板亜全摘出術後がそれぞれ1名であった。発症日(術後の患者は術日)から測定日までの平均期間は793日であった。
     治療器機は、株式会社テクノリンク社製「スーパーテクトロン HP400」を用い、治療モードはAモード、治療時間は20分に統一した。治療部位は、自発痛を呈する部位とした。痛みの評価は、テクトロンの施行直前、直後の計2回、「改変型日本語マギル痛み質問票」を対象者に記述させ、痛みの強度と質感を数値化した。
     統計解析は、ウイルコクソンの符号付順位和検定を用い、施行直前と直後の数値を比較した。なお、有意水準は5%とした。
    <結果>痛みの強度は、施行直前では5.18±2.49cmであったが、直後で3.33±3.01cmとなり、有意に低下した(P<0.05)。痛みの質感は、施行直前では13±4.75点であったが、直後で6.38±3.25点となり、有意に低下した(P<0.05)。
    <考察およびまとめ>本研究結果は、テクトロンが整形外科疾患患者の自発痛に対し即時鎮痛効果を有することを示唆した。この即時鎮痛効果のメカニズムは以下であると考える。花岡は、痛みは侵害刺激が侵害受容器を刺激し、その刺激が知覚神経を介し脊髄や大脳で処理され、筋攣縮や血管収縮が起こり、局所乏血が引き起こされるために発痛物質が発生し、それが再び侵害受容器を刺激するという悪循環が繰り返されるメカニズムで発生すると述べている。これに対し、平野は、テクトロンの治療仮説は、知覚神経に対する神経ブロック(ウェデンスキー抑制)、また、中枢では脳内ホルモンであるβ-エンドルフィンが放出されることで疼痛が抑制される、いわゆる内因性鎮痛作用、さらに、筋ポンプ作用や血管拡張作用による循環の改善であると述べている。したがって、上記の痛みのメカニズムに対し、上記の治療仮説が作用したことで、即時鎮痛効果が得られたと考える。
     テクトロンに関する過去の報告では、肩関節周囲炎や変形性腰椎症および変形性膝関節症に対し即時鎮痛効果を認めており、本研究結果も同様にテクトロンの即時鎮痛効果を支持していた。一方、上記報告では、対象患者がどのような痛みを有するのか、痛みの種類についての記載がなかった。本研究結果は、テクトロンは整形外科疾患患者の疼痛の中で、少なくとも自発痛に対し即時鎮痛効果を有することを示唆した。 
  • 熊木 昇二
    セッションID: 1C17
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
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    <緒言>
     当院は長野県北部にあり、中野市、山ノ内町(圏内)における唯一の救急病院で、圏内に発生した大腿骨頚部骨折(頚部骨折)の90%前後の患者が当院に搬送される。そこでこの特性を利用し、当院で手術を行った高齢者の頚部骨折患者に対し、退院時歩行能力別に生命予後を調査したので報告する。
    <対象と方法>
     1982年4月ー2001年12月に当院で手術を施行した65歳以上の患者730肢のうち、病的骨折を除く大腿骨頚部単独骨折で本籍地が圏内にあり生死を確認できたものは400肢であった。この400肢のうち入院中に死亡した19肢を除いた381肢を対象とした。これらを退院時歩行能力別に、A群:屋内、屋外ともに自立、B群:屋外では介助を要するが屋内では自立、C群:トイレ歩行ができず、ポータブルトイレを使用、D群:寝たきりの4群に分けた。本研究に対する趣意書を法務局に提出し、各患者の生死の確認と死亡診断書の発行の許可を受けた後、対象の381肢に対し、生死の確認と死亡したものは死亡日を調査した。各群において累積生存率と、死亡したものに対し、死亡年齢、手術から死亡までの期間(生存期間)について比較検討した。累積生存率はKaplan-Meier法を用い、Logrank法で比較した。
    <結果>
     A群138肢、B群102肢、C群71肢、D群70肢。寝たきりのD群は18.4%を占めていた。骨折時平均年齢はA群79.0歳、B群81.8歳、C群83.0歳、D群83.5歳で、A群は他の3群より有意に若かった。累積生存率、死亡年齢、生存期間を比較するために、各群の骨折時平均年齢を85歳以下に限定した。85歳以下はA群123肢、B群70肢、C群44肢、D群39肢であり、骨折時平均年齢はA群77.8歳、B群78.4歳、C群79.2歳、D群78歳で4群間に差はみられなかった。平均死亡年齢は、A群82.9歳、B群81.2歳、C群81.5歳、D群81.0歳で、A群はB群D群より高い傾向にあった(p<0.1)。平均生存期間は、A群63.4ヶ月、B群46.5ヶ月、C群40.2ヶ月、D群29.3ヶ月で、A群はB群C群D群より有意に生存期間が長く(p<0.01)、逆にD群はA群B群より有意に生存期間が短く(p<0.05)、C群より短い傾向にあった(p<0.1)。累積生存率で各群を比較すると、A群はB群C群D群より累積生存率が高く、Logrank法で比較すると有意に生存期間が長かった(p<0.01)。一方B群とC群の間には累積生存率に差を認めなかった。
    <考察>
     85歳以下に限定した検討結果からは、退院時歩行能力が高いものほどその後の生命予後が良い可能性があると考えられた。大関らは術前の歩行能力で生存率を比較検討しているが、それによっても歩行能力の高いものの方が生存率が高い傾向にあった。われわれの結果で興味深いのは、屋外活動はできないが屋内生活なら自立しているものと、屋内生活も自立せず、ポータブルトイレを使用しているものの間で生命予後に差を認めなかったことである。同様の結果が大関らの検討でも示されている。この理由は明らかでないが、この結果は術後のリハビリテーションにおいて屋内生活が自立するところまで達した患者には、さらに屋外活動が自立できるところまで積極的にリハビリテーションを進める必要性を示唆していると考える。
    <結論>
     手術を受けた高齢頚部骨折患者にとって退院時歩行能力が高いとその後の生命予後が良い可能性が示唆された。
  • 名古屋 勢樹実
    セッションID: 1C18
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
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    嚥下体操を業務に取り入れる試み

    三条総合病院 3階療養病棟 土田正子 小柳浩子 名古屋勢樹実

    嚥下体操 音楽CD 業務

    <はじめに>
     経口摂取へのアプローチのひとつとして嚥下体操の有効性を専門1)書で知り、当病棟においても軟菜、きざみ、ミキサー食を摂取している患者が半数以上であり、試行してみる価値を感じ、昼食前の嚥下体操を開始した。スタッフの個人差によるばらつきがあったため統一する目的でCD化を考案し行った結果を報告する。
    <目的>
     嚥下体操を業務として習慣化する。
    <方法>
     嚥下体操の勉強会・OTの協力を得てCDの作製。
    共通認識をはかる為のスタッフへのアンケート調査。
    <結果>
     CDを作製し、音楽に合わせ統一した体操をすることで効率がよくなり、業務として取り入れることができた。
    <考察>
     「活動性の低い高齢者では、食事の際の嚥下という運動に素早く対応できない場があり、食べるという心の準備や、嚥下器官に働きかけ嚥下をスムースにする為に食事前の嚥下体操は重要で2)ある」と田中氏は述べている。
     この嚥下体操を、スタッフの個人差があるために標準化する必要があった。
     CDを作製し、音楽に合わせスタッフ全員が統一した体操をすることで嚥下体操の効率もよくなり、認知症患者は音楽が鳴り出すと周りを伺うようになり、担当のスタッフを注視し、戸惑いの表情がなくなった。現在は習慣化されている。
     「歌は、呼気時間を長くするだけでなく、音程を変えることで咽頭機能を使う効果もあり
    歌詞を発音することで構音訓練にもなる。構音と嚥下は同じ器官を使うので嚥下の訓練にも非常に有効で3)ある。」と藤原らは教示している。
    <今後の課題>
     患者の個別性にあわせて指導できるようなスタッフ体制。
     嚥下体操に歌を盛り込むなど、楽しみながら実施できる体操を検討する。

    <引用・参考文献>
     1)後閑 容子 エビデンスに基づく高齢者の看護ケア P45
     2)田中靖代  老年看護 vol 12 Number 4 日総研P74
     3)藤谷順子他 看護学雑誌 2005.9 医学書院P885
     4)三好春樹  新しい介護 講談社 P68
     5)藤島一郎他 おはよう21 中央法規 
  • リハビリテーションチームとしての関わり
    猪爪 一也, 目黒 文, 高頭 美恵子
    セッションID: 1C19
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>
     2004年の新潟中越大地震で山古志村村民は全員避難し、そのうち要介護状態の人たちが当院に近いけさじろ荘に避難した。そこで当院リハビリテーションスタッフを中心したリハビリテーションチームが、避難当初から仮設住宅移転まで継続した支援活動を行なった。その活動内容について報告する。
    <経過>
     平成16年10月23日中越地震発生。発生直後から多くの方々が当院を受診した。緊急入院が落ち着いた10月下旬、避難所から誤嚥性肺炎の方が入院され、11月3日STが実地調査で避難所を訪れた。避難所で保健師から協力を依頼され、11月6日から本格的な支援活動を開始した。
    <開始当初の問題点>
     避難所を出入りする人が多く非常に落ち着きがなく、避難所を統括する責任者がはっきりしないため、情報の共有が出来ていない状態であった。施設面では広間に布団が敷き詰められ、衣食住すべてを一枚の布団の上で行なわざるを得ない状況で、移動しにくく、トイレ・洗面所が不足していた。このような中で避難所生活者は、活動性が低く臥床している時間が長く、下肢の筋力低下や強い不安もしくは感情の鈍磨が見られた。また、排尿回数を減らそうとするため、水分摂取を控える傾向がみられた。
    <活動内容>
     以上の問題点をふまえ以下の活動を行なった。
    1) 要介護者を中心とした個々の身体・精神・心理状態のチェック
    2) 集団体操・レクリエーション・合唱などの集団リハビリテーション
    3) 集団参加できない方への個別指導・環境調整(移動用具の貸し出し等)
    4) 保健師、社会福祉協議会などほかのボランティアとのミーティング及び介助方法の指導
    5) 個々の問題点について保健師へ文書で報告
    <結果>
     以上の問題点をふまえ 定期的な集団リハビリテーションの導入と継続が生活リズムの確立に役立ち、表情の変化が見られるようになった。また、個別指導・環境調整により活動性の向上が見られた。
     定期的訪問により避難所生活者・スタッフの方々と理解が深まり、個別指導や情報収集の際落ち着いた雰囲気で行なえるようになり、それぞれの抱える問題点・要望等を引き出すことができた。
     時間経過とともに責任者が明確となり、ボランティアの役割分担や情報の共有化・一元化が図られスタッフの活動もスムーズになった。
    <まとめ>
     今回避難所生活から仮設住宅に移行するまでの期間、定期的な支援活動を行なった。混乱した状況の中で活動を行なう際には、a)活動の目的をはっきりさせること、b)継続的・定期的な活動とし、活動内容を大きく変えないこと、c)情報の共有化と一元化を図ること、d)スタッフをうまくコーディネートすることが重要であると考える。
  • 宮島 雄二, 大江 英之, 服部 哲夫, 城所 博之, 久保田 哲夫, 加藤 有一, 小川 昭正, 久野 邦義
    セッションID: 1C20
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
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    <緒言>ヘリコバクター・ピロリ(以下H. pylori)感染症は、慢性胃炎、胃十二指腸潰瘍、および胃癌の最も重要な病原因子であるが、鉄欠乏性貧血や血小板減少症などの血液疾患との関連性も示唆されている。今回われわれは、小児の鉄欠乏性貧血におけるH. pylori感染の関与とその臨床像、および除菌療法の有用性を検討したので報告する。
    <方法>対象は、2000年から2006年3月の5年3ヶ月間に、安城更生病院で鉄欠乏性貧血と診断された15歳未満の107例である。鉄欠乏性貧血の診断は、Hb、MCV、血清鉄およびフェリチンで行い、今回の検討ではHb10.0g/dl未満の中等症以上の貧血を対象とした。対象患者の平均年齢は3歳1ヶ月、男児66例・女児41例である。H. pylori感染症の診断は、血清抗体価と、年長児では尿素呼気試験、年少時では便中ピロリ菌抗原検査を組み合わせて行った。除菌療法はランソプラゾールとアモキシシリンとクラリスロマイシンの3剤併用療法を7日間行い、尿素呼気試験で除菌を確認した。除菌療法は、胃・十二指腸潰瘍を伴った鉄欠乏性貧血では初回に、胃・十二指腸潰瘍を伴わない鉄欠乏性貧血では貧血を繰り返した時点で患児と家族に説明をし、同意が得られたのちに行った。
    <結果>全鉄欠乏性貧血患者107例中9例にH. pylori感染を認めた。年齢は全例10歳以上であり、平均年齢は12歳10ヶ月、男児2例・女児7例であった。2例は姉妹例であり、1例は父親もH. pylori感染で除菌療法を受けていた。
     8歳以上の鉄欠乏性貧血患者は23例であり、その39%にH. pylori感染を認めていた。H. pylori感染症を認めた9例のHbの平均値は6.1g/dl(3.2-7.9g/dl)で非感染者の平均値7.6g/dlと比較して有意に低かった。血清鉄の平均値は11mg/dl、フェリチン値は1.9ng/mlで、非感染者と差を認めなかった。消化性潰瘍は2例に認められた。いずれの症例も鉄剤投与(消化性潰瘍の2例はファモチジン併用)で貧血の改善を認めたが、6例で鉄剤中止後に貧血の再燃を認めた。
     除菌療法は6例に行われ、うち5例で有効であった。除菌療法が有効であった5例はその後の貧血の再燃はなかったが、除菌療法に失敗した1例は貧血の再燃を繰り返しており、現在も鉄剤を内服中である。
    <結語>今回の検討でも、小児の鉄欠乏性貧血におけるH. pylori感染の関与が認められた。特に学童期以降の鉄欠乏性貧血患者では高率に感染が認められ、H. pylori感染の検索の必要性が示された。H. pylori感染に伴う鉄欠乏性貧血の機序はまだはっきりとしていないが、胃・十二指腸潰瘍を伴っていない症例でも鉄欠乏性貧血を認めていた。また、感染経路として家族内感染の重要性が指摘されているが、今回の検討でも家族内に感染者が認められており、家族歴のある患児では注意が必要である。H. pylori感染を伴った鉄欠乏性貧血の患児は鉄剤依存性となる頻度が高いことから、貧血の再燃を認めた場合には積極的に除菌療法を行うべきと考えられた。除菌療法が成功した症例では貧血の再燃は認めなくなったが、除菌失敗例に対する対策も必要と考えられる。
  • 伊藤 忠彦
    セッションID: 1C21
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <目的>学校心電図検診は、不整脈や先天性心疾患の早期発見、突然死の予防を目的に行われている。学校心電図検診で発見された先天性心疾患の臨床像を明らかにし、学校心電図検診の有効性と問題点について考察する。
    <対象と方法>対象は過去10年間で学校心電図検診を契機に発見された先天性心疾患15例と学校心電図検診でチェックされたものの診断が遅れた1例。診断結果、症状、理学所見および検査成績、治療、転帰を後方視的に検討した。小学生8例、中学生5例、高校生3例。
    <結果>(1)診断結果:16例中、心房中隔欠損(ASD)が12例、肥大型心筋症(HCM)3例、原発性肺高血圧(PPH)1例。(2)症状:診断時、症状を有していたのはPPHの1例で、運動時の息切れを認めていたが、両親が喘息症状と思い放置していた。他の15例は無症状であった。(3)理学所見:心音の異常を16例中small ASD1例を除く15例で認めた。収縮期雑音を12例(ASD11、PPH1)、II音の異常(分裂、亢進)を12例(ASD11、PPH1)、III音を4例(HCM3、PPH1)で認めた。(4)主な心電図所見:不完全右脚ブロック11例(すべてASD)、1度房室ブロック1例(ASD)、右室肥大2(HCM1、PPH1)、ST低下1(HCM)、WPW型心電図1(HCM)。(5)心臓超音波検査:全例行われ、確定診断されていた。但し、ASDの1例(15歳)は小学1年時に不完全右脚ブロックでチェックされたが、初診医で心臓超音波検査は施行されずASDの診断はなされなかった。高1の耳鼻科手術の術前心電図で再度指摘され、心臓超音波検査でASDと診断された。(6)心臓カテーテル検査:13例で施行(ASD11、HCM1、PPH1)。目的は手術適応の決定、重症度判定。(7)BNP、HANP:診断時検査した2例(HCM)は2例とも上昇していた。(8)治療:開心術4例(すべてASD)で経過は良好。薬物治療3例(βブロッカーHCM2、プロスタサイクリンなどPPH1)、在宅酸素療法1(PPH)。運動制限4例(HCM3、PPH1)。経過観察のみ8例(ASD)。(9)転帰:現在無症状でフォロー中15例、PPHの1例のみ入院中。
    <考察>学校心電図検診はHCM、PPHといった突然死の危険性のある心疾患の早期発見に有用である。先天性心疾患の心音異常は日常診療や学校内科検診での聴診でチェックされない可能性があり、聴診で見逃されたASDの発見に学校心電図検診は有用である。1度房室ブロックなどの軽微な心電図所見でも先天性心疾患が発見される可能性があり、「要精査」例は全例心臓超音波検査を施行するのが望ましい。
  • 小松 和男
    セッションID: 1C22
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言> 秋田市小児科医会では秋田市医師会及び秋田市内小中学校の協力を得て、1989年から秋田市内の小中学校児童生徒の健康評価の一つとして肥満調査を行ってきた。2005年度からは小児肥満症の実態調査も行うため、小児適正体格検討委員会よりの提言(肥満研究Vol8、No2、2002<トピックス>朝山光太郎、他)を元に調査及び判定を行った。
    <方法> 2005年4月、秋田市内小学校(48校)、中学校(24校)へ調査用紙を配布し、学年別・男女別の肥満度20%以上(標準体重から肥満度を計算し、20%台、30%台、40%台、50%以上に分類)の児童生徒の数・頻度を各学校別に集計を行った。各学校で肥満度20%以上と判定された児童生徒に、学校医から医療機関への受診を勧めてもらい医療機関を受診してもらった。
    医療機関での実施項目
     a)受診時の身長・体重測定、体脂肪率、腹囲測定、血圧測定、睡眠時無呼吸の有無、黒色表皮症の有無などのチェック
     b)血液生化学(前日夜8時以降絶食のうえ、午前中に採血)中性脂肪、総コレステロール、HDLコレステロール、GOT、GPT、血糖、尿酸値、インスリン
    <結果> 各学校から、肥満を指摘され、受診を勧められた小学生は1453人、中学生が868人、合計2321人であった。うち受診したのは、小学生で589人(40.5%)、中学生で122人(14.1%)、合計で711人(30.6%)であった。
    小児肥満症の頻度 
     小中学校全学年では受診者711名中、6点以上で医学的な関与が必要な小児肥満症は364名、実に51.2%に上った。小学校1年生より学年が上がるにつれて小児肥満症割合が増加傾向にあり、中学3年生では実に76.9%に上った。  
     肥満度別にみると、軽度肥満でも既に25%の児童生徒が小児肥満症を呈しており、軽度肥満でも早期対策が必要と思われる。
    肥満度・体脂肪率・腹囲・腹囲/身長比と小児肥満症判定スコアとの相関係数
     小児肥満症判定スコアとの相関では腹囲との相関をみた場合に相関係数が高かった。
     学年別では小学校低学年より高学年、中学校と学年が上がるにつれて相関係数が高まる傾向にあった。
     腹囲が80cmを超える児童生徒は内臓脂肪と小児肥満症が危惧され、特に注意が必要と思われる。
  • 加藤 有一, 伊藤 美春, 多賀谷 亜実, 中村 麗亜, 大江 英之, 服部 哲夫, 久保田 哲夫, 宮島 雄二, 小川 昭正, 久野 邦義
    セッションID: 1C23
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言> わが国の平成16年新生児死亡率は1.5%と世界最高水準にある。一方では少子化が表面化し、対局の高齢化とともに現代の大きな社会問題となっている。では現在、新生児医療は、これらの社会問題解決に貢献すべく進歩しているのであろうか。今回我々は、新生児医療の大きな柱である未熟児医療の指標として、出生体重1000g未満の児(以下、超低出生体重児)の診療成績につき検討した。
    <方法> 1996年4月から2005年12月の10年間に、安城更生病院に入院した超低出生体重児全症例を対象とした。診療録から、在胎期間、出生体重、合併症、予後、転帰を抽出し、(1)10年間の診療症例数および生存率の推移 (2)死亡原因 (3)生存退院児の予後として、脳性麻痺(以下CP)、精神発達遅滞(MR)、失明の有無につき検討した。また前期(1996年から1998年)と後期(2003年から2005年)の2群に分け、生存率、予後の変化について比較検討した。
    <結果> 全152例(男:女=81例:71例)、在胎期間中央値26週6日〔22週2日から34週5日〕、出生体重中央値804g〔340g-996g〕。生存退院は122例で生存率80.3%であった。(1)10年前には年間約10症例程度であったが、以降確実に症例数は増加し、近年では年間20-30症例にのぼる。一方、生存率は常に70%以上であり、近年では約90%に到達している。(2)死亡は30例。出生直後の循環不全8例、壊死性腸炎5例、頭蓋内出血4例の頻度が高く、循環不全を主とした生後3日以内の急性期死亡は13例(43.3%)と約半数にのぼっていた。生後2週以降の死亡原因は、壊死性腸炎のほか、肺出血・気胸などの換気不全6例、重症感染症2例、腎不全3例であった。(3)「後遺症なき生存」を果たしたのは103例(67.8%)であった。CP+MRは9例、CPのみ7例、MRのみ3例で、失明に至った症例は3例であった。前期と後期の比較では、症例数(33例vs66例)、生存率(69.7%vs86.4%)、「後遺症なき生存」率(57.6%vs74.2%)とそれぞれ改善していた。(前期vs後期)
    <考察> 当院は愛知県西三河地区周産期医療の中核施設として認定され、地域の周産期医療の需要にこたえるべく医療の向上に努めてきた。今回の検討では、少子化を背景とした需要増加に伴い、超低出生体重児例は明らかに増加していた。さらに生存率においても近年では90%の生存を期待する事ができる。人工肺サーファクタントに始まる様々な薬剤開発、呼吸器やカテーテルなど医療機器の進歩、有用なモニタリングシステムの導入、そしてセンター化による症例経験や人的資源の集約化などが診療成績に貢献しているものと考える。今回の死亡原因の多くは、出生時の回復困難な呼吸循環障害であった。更なる生存率の向上には、適切な母体管理から始まる充実した周生期管理が不可欠である。目標とする「後遺症なき生存」は2/3の症例で実現しており、近年では3/4にまで向上している。中枢神経合併症や長期低栄養が予後に大きく影響するため、更なる改善には、安定した急性期循環動態の維持と早期経腸栄養の確立が重要な課題となる。課題は残るものの、このように将来社会貢献するであろう多くの子ども達を救命している現状から、新生児医療は非常に生産的で有意義な診療であるといえる。今後も当院の基本理念である、「地域住民の健康と幸福に寄与する」ため、「後遺症なき生存」を追求しつづける事はいうまでもない。
  • 鈴木 直光, 太田 哲也
    セッションID: 1C24
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに> 外来において発熱など感染症を伴わない頭痛を主訴として来院した場合、大抵頭部CT/MRIや脳波で異常はなく、起立性調節障害(OD)として対処されてしまう例が多い。一方、子どもたちはテレビ・ゲーム・パソコン・携帯電話など様々な発光画面を見ている。それらはいずれも24時間使え、使用者がスイッチを消さない限り作動している点に問題があり、サーカディアンリズムを乱す原因の1つと考えられている。頭痛を引き起こす原因の1つとしてこのような生活環境の乱れが関与しているのではないかと考えた。そこで頭痛を呈した子どもたちがどういう生活環境に置かれていたのか検討したので報告する。
    <対象および方法> 対象は無熱性の頭痛を主訴に当科外来を受診した学童23(男13)例(平均年齢12.1±2.2歳)である。副鼻腔炎・発熱など感染症を伴った例、および頭部CT/MRI and/or 頭痛間欠期脳波で異常が認められた例は除外した。全例に起立試験を行い、ODの診断基準に合致するものをOD群、合致しないものを非OD群とした。また、生活環境整備として初診後1-2週間は、睡眠表を記入させて早起きの習慣をつけること、TV・ゲームは合計で2時間以内にすること、頭痛薬はなるべく飲まないことなどを説明した。それでも改善の無い場合は頭部CT/MRI and/or 脳波検査を施行した。OD群および非OD群の2群に分けて生活環境因子の違いについて後方視的に検討した。
    <結果> OD群と非OD群で年齢差はなく、65%が中学生であった。頭痛以外の症状としては嘔気・嘔吐、アレルギー性鼻炎が多かった。不登校は2例のみであった。頭痛の部位は右側で特に側頭部が多かった。頭痛の種類は片頭痛が多かった。両群とも半数以上で1日平均5時間以上のTV・ゲーム視聴が認められた。非OD群の75%にサーカディアンリズムの乱れがあった。OD群は塩酸ミドドリンに反応して軽快する例が多く、再診率は高かった。
    <考察> 無熱性頭痛を主訴に来院した場合、一般外来では解熱鎮痛剤の投与で対処してしまうケースが多い。一方で、TV・ゲームなどの視聴時間が長いことや、それによるサーカディアンリズムの乱れなど現代社会における生活環境の乱れも頭痛の患児には多く認められる。生活環境整備により頭痛の改善した例はOD群で47%、非OD群で63%と非OD群で頻度が高かった。今回睡眠表に入眠・覚醒時刻やTV・ゲームの視聴時間を毎日記入させることによりサーカディアンリズムの乱れを自ら自覚し、生活環境を変えることで頭痛の改善した例が約半数に認められた。解熱鎮痛剤の乱用によるdrug induced headacheを防止するうえでも一般外来で早期に生活環境の乱れを指摘し改善することにより頭痛の慢性化は防げるものと考えた。TV・ゲーム・パソコン・携帯電話などは全て発光画面であり、光により夜間のメラトニン分泌が抑制され、サーカディアンリズムを乱すことで頭痛が発症しているのではないかと考える。また、長時間視聴による眼精疲労と同じ姿勢を保つことによる筋の疲れなども生活環境因子による頭痛の原因の1つと考えられる。従って、原因不明の小児慢性反復性頭痛の原因の1つとして、生活環境因子による頭痛があるものと考える。
  • 岡田 京子, 安藤 哲朗, 医療安全対策委員会 メンバー
    セッションID: 1D01
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言> 2001年度から厚生労働省により「医療安全推進週間」が設けられた。
     当院では、取り組みの結果を評価する目的で、この1週間を含む1ヶ月を「医療安全強化月間」とし「安全な医療を提供するための10の要点」を参考に「周囲の安全を見直す」「医療システムの電子化に伴う問題点」「コミュニケーション」「確認」をテーマにして取り組んできた。
     2005年度(5回目)の取り組みを発表形式にした事で、職員から良い評価を得た為報告する。
    <方法> 目的:医療安全対策に関し、職員の意識向上を図る
     テーマ:「危険予知を見つけて」
     ポイント:整えよう療養環境 つくりあげよう作業環境
     期間:2005年11月21日から12月17日
     スケジュール:(1)各単位で危険だと感じた内容(実例)を列挙し、緊急度・危険度を評価する。1つの取り組む問題点を上げ、解決策に添って実施をする。(2)2月に医療安全対策委員会メンバーにて選出した7部署(部門)が発表をする。終了後アンケート調査をおこなう。
    <結果> 40部署から取り組みの提出があり、その中から、「処置台の煩雑化をなくすには『注射の間違いを防ぐため実施』」外来、「医療事故防止は環境整備から」病棟、「安全で快適な入浴環境作り」老健、「医療機器コード整理」ICU、「緊急事例報告からの検証」臨床検査技師科、「調剤室における危険を考える」薬剤・供給部門、「異物混入『髪の毛』の防止」栄養科に発表を依頼した。
    参加者156名で医師は6%、看護師は12%、臨床検査技師・薬剤師は50%以上、その他(放射線技師、栄養部門、ケースワーカー、理学療法師、臨床工学技師、事務、作業職など)の部門からの参加もあった。
     終了後のアンケート結果から、他部署(部門)の取り組みが分り良かった・刺激になった。対策を川柳で表示した案は参考になった。何事に対しても意識付けが重要である。整理整頓、環境整備により事故を未然に防ぐ事が出来る。医療安全は自分自身の意識の持ち方一つで変わる。危険予知、予防のための基本的な考え方。小さな事からの改善・習慣化することが大切である。今後も発表の場があると良い。年間で取り組むと良い。他部門と検討することは重要だ。発表は効果的で部門を越えた共有が出来るよい場となった。期間終了後意識低下してきたが、2ヶ月後の発表で安全への意識向上が再度得られた。又、86%の職員が職場に生かせるテーマを見つけたと回答があった。
    <考察・まとめ> 提出のあった40部署は殆どが、患者・職員にとって危険な環境はないかを視点として見直し、その後2次元方式で検討した、他部門を巻き込んだ、期間のみでなく対策の見直しをつづけている等の部署もある。聞くだけの講義だけでなく、取り組みとその内容を発表する事で、全職員が医療事故について考える機会になり、医療安全への認識づけに有効であったと考える。また、多くの職種の参加があったが参加人数は職種間に差があり、これは発表する部署の影響が大きく、アピールの方法、発表回数の検討も必要となる。
  • 山下 淳一, 磯 毅彦, 不破 香生子, 相川 崇史
    セッションID: 1D02
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>今回、理学療法科(以下、PT科)における委員会への取り組みと結果について報告する。
    <当院の概要>当院は、320床のリハビリテーション専門病院である。
    <当院報告内容の特徴>平成15年度報告において、院内総数1091件(うちPT科32件)であった。内容別に見ると、「転倒・転落」によるものが最も多く、66%を占めていた。PT科においては発生件数23件で、実に71.9%を占めていた。
    <PT科の取り組み内容>PT科における平成16年度リスクマネジメント行動目標を、「転倒・転落事故防止」とした。具体的活動は以下の通りである。
    <「KYT」について>ゼネラルリスクマネージャーが講師となり、PT科全職員に対し研修を行った。方法は、終業後約1時間。計4回開催しいずれか1回出席した。
    <「安全週間」について>職員のリスクに対する意識を高め、事故件数を軽減させる事を目的とし行った。期間は1週間。6月と12月の年2回実施した。方法は、事前に過去に寄せられた報告内容を検討し、それに基づき、院内各部署において各々活動目標を設定した上で、具体的活動を行った。PT科では、行動目標を、「転倒・転落事故防止」とし以下の活動を行った。(1)行動目標・計画の職員への周知徹底(安全週間初日)。(2)PT科職員全員による行動目標の指差し確認・唱和(期間中毎日)。(3)「転倒・転落防止ポスター」の掲示(期間中)。(4)リスクマネジャーによる「転倒・転落について」の講義。また、期間終了後事後評価として、「安全週間」に関するアンケート調査を実施した。
    <報告のPT科全職員による検討>方法は、インシデント・アクシデント発生後、当院所定の報告書の記載とともに、レポートとして、その詳細と対策を提出者が考え記載し、提出する。それらを基にリスクマネージャーと部署長が対策を考え、さらにそれを、朝ミーティングにて報告しPT科全職員にて検討することを行った。
    <始業時、終業時の機器・設備の安全点検実施>方法は、チェックリストを用い、病棟担当の班単位で1週間毎交替し実施する。チェック実施者は、毎回チェックリストを記入する。
    <結果および考察>結果、平成16年度報告において、院内総数901件(うち理学療法科25件)と減少した。また、「転倒・転落」によるものも、56%と減少した。PT科においても発生件数14件で、63%と減少した。PT科では、H15年度の報告書内容を検討した結果、最も問題となる「転倒・転落事故防止」を活動目標に設定した。先に示した具体的活動は、「リスクをどのように発見するか」「何をリスクと認識するのか」の教育もあわせ、「リスク」に対する職員の意識付けに重点をおいたものとなった。結果、転倒転落のみならずインシデント・アクシデントの発生は減少した。今回このような活動を行ったことによって、リスク意識に対する動機付け・教育・訓練ができ、量的・質的にも結果が得られたものと推測さる。また、「リスク」に対する意識付け、ヒューマンエラー減少を可能にしたことが示唆される。今後、さらに院内リスクマネジメントに寄与していきたい。
  • 医療安全組織文化づくり宣言を作成して
    戸谷 ゆかり, 羽賀 達也, 山本 直人
    セッションID: 1D03
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>近年、医療現場における安全の確保が重視されるようになり、本年4月の診療報酬改定では、施設における医療安全管理体制を推進することが要求されるようになった。当院では、患者が積極的に医療に参加することが安全な環境づくりの第一歩であると考え、平成17年11月に誤認防止ポスターを作成して掲示した。また、平成18年4月には、「医療安全組織文化づくり宣言」のパンフレットを作成して配布した。パンフレットの内容が浸透し、実践できているかどうか患者や職員にアンケート調査を行って評価、検討したので報告する。
    <取り組み内容>
    1.平成17年11月 全館に誤認防止ポスター「お名前を教えてください」を作成し掲示した。
    2.医療安全対策に関する指針を共有化するためのパンフレット「医療安全組織文化づくり宣言」を作成し、全職員と入院患者に配布した。外来患者には閲覧できるようにパンフレットスタンドに設置した。
    (内容)第1章は職員の指針、第2章は患者・家族の皆様へのご案内(安全対策10か条)を掲載した。
    3.看護師アンケート調査
     期間:平成18年4月15日から平成18年4月20日実施
     対象:看護師398名(4月入職者は除く)回収率76%
    4.患者アンケート調査
     医療安全対策に関する意識調査を実施中
    <結果及び考察>看護師に実施したアンケート結果は、パンフレットの内容について、理解できたが81%、理解ができないが11%であった。理解できない理由として、「まだ、読んでいない」が最も多い結果であった。「自分もミスをするのではないかと不安になる」という問いに対して、よく感じるが89%という結果であり、看護師は常に緊張感と不安の中で看護を実施しているためだと考えられる。注射や採血の実施時について、患者確認の方法は「フルネームで名前の確認をしているか」の問いに対して、いつも確認するが81%、時々確認するが13%、確認しないが1%という結果であった。確認をしていない理由として、注射については、バーコドによる承認システムが導入されていることからシステムのみに頼る傾向があり、また、「忙しいから」「一緒に確認できない患者が多い」との意見も聞かれ、業務内容や入院患者の年齢構成なども大きな要素であると考えられた。職員の安全対策の実施が不十分になれば、患者の協力を得るのは困難であり、全ての職員が確実に安全対策を実施することが患者の信頼も得られ、チームの一員として医療に参加できると考える。
     また、患者側の認識について、現在アンケート調査中であるが、誤認防止のための「お名前を教えてください」のポスターの提示によって、一部の患者から、「なぜ何回も名前を聞くのか」「まだ、顔も覚えられないのか」などの意見が聞かれた。少しずつではあるが患者に注射や薬を一緒に確認してもらうことによって、「きちんと説明してもらい安心する」という声も聞かれるようになり、採血を実施する際には、自ら名前と生年月日を言っていただけるようになった。今後は現在、調査中の患者アンケートの結果を分析すると共に、患者の意見を反映させた対策の実践が必要であると考える。
  • 田代 和広, 知々田 勝之, 吉田 豊
    セッションID: 1D04
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言>マンモグラフィは、一人の女性が繰り返し行う検査となった。しかし、羞恥心や痛みを伴うため十分な配慮が必要である。
     今回我々は、当院のマンモグラフィ受診者に対し「満足度」のアンケート調査を行った。その結果より、受診者の心理状態を分析し、取り組みを検討したので報告する。
    <方法>当院のマンモグラフィにおいて、取り組みの効果がどれだけあるのかを客観的に知るために、アンケートを実施した。マンモグラフィ受診者を全てとし(乳がん検診100名、乳腺外来50名の計150名)、143名から有効回答が得られた(回答率95.3%)。
    アンケート内容は以下の通りである。
     1)マンモグラフィを知っていましたか?
     2)白手袋、ガウンはどう思いましたか?
     3)マンモグラフィ「満足度」をお答え下さい。
     4)パネルを使った説明で理解できましたか?
     5)撮影時痛みはありましたか?
     6)マンモグラフィをまた受けたいと思いますか?
     7)女性技師、男性技師のどちらが良いですか?
     マンモグラフィ施行直後に無記名で答えてもらい、回収ボックスへの投函するよう促し、個人を特定しないようにした。アンケート集計は項目別にグラフ化し傾向の把握を行い、またそれぞれの項目と「満足度」を照らし合わせ、受診者心理の分析も行った。
    <結果>
    (1)当院の取り組み
     1)受診者用自作ガウン
     2)撮影技師の白手袋着用
     3)パネルによる説明
     裸(はだか)で撮影の説明と了承、圧迫のメリット、圧迫時の痛み、再撮影の可能性、質問の受付を約5分で行い、技師間のバラツキをなくすため、マニュアル化した。
    (2)アンケートの結果
    各項目の結果につき図1から図8に示す。
    <考察>「パネルによる説明の理解度」が高いと「満足度」も高い。これは、受診前の不安や疑問が払拭できたからだと考えられる。
     「圧迫による痛み」と「満足度」は直接関係がなかった。これはマンモグラフィに対する理解度が高い、すなわち圧迫によるメリットをよく理解していたためと考えられる。
     「パネルによる説明の理解度」は受診意欲に密接に関係するため、不用意な説明では今後の受診意欲低下につながるおそれがある。
     担当技師は、「男性」よりは「女性」がよいと答えているが、「どちらでもよい」がそれよりも有意に多かった。当院は男性技師しかおらず、受診者から担当技師への労いの意も含まれている可能性がある。
    <結語>今回の結果で、「満足度」を一つの指標とすることで受診者心理の把握が行えた。マンモグラフィでの十分な説明は「痛い検査だからいや」、という概念を払拭できる可能性があることから総合的な「満足度」には、インフォームド・コンセントが最も重要であることがわかった。
  • 第1報:薬物モニタリング業務の分析
    奥平 正美, 中村 和行, 河村 真由美, 濱石 華乃子, 小嶋 智子, 岩井 由香里, 林 純世, 間瀬 悟, 祢宜田 和正, 勝見 章男
    セッションID: 1D05
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言>当院は西三河地域における中核病院として位置づけられており、高度な医療を提供しなければならない立場にある。したがって、治療に使われる薬物は有効性と危険性の近接するものが多く、それを安全かつ有効に使用するためにはより高度な知識とチームワークが必要とされる。このような背景の中で病棟薬剤師は、入院患者に対する薬剤管理指導業務の一環として、医師および看護師とともに様々な薬物モニタリングを実践してきた。そこで今回、集積された薬物モニタリングの報告事例を分析することで、当院の病棟薬剤師による薬学的ケアの実践が安全かつ有効な薬物治療に貢献したかどうかを検討した。
    <方法>平成14年7月から平成18年3月までの約4年間に集積された薬物モニタリングの報告事例を分析した。これらは、いずれも病棟薬剤師から医師へ提案が行われ、かつその提案が臨床にいかされた事例である。また、薬物モニタリングの報告事例を独自に作成した4つのカテゴリーに分類した。すなわち、適正使用モニタリング、副作用モニタリング、注射薬配合変化モニタリング、薬物血中濃度モニタリングである。さらに、適正使用モニタリングについては疾患禁忌、投与量、副作用予防、投与方法、同種同効薬、相互作用、薬物治療適応の再考、査定対象となる投与、その他の9項目に細分類した。
    <結果>病棟薬剤師からの提案で臨床にいかされた件数は、平成14年度、15年度、16年度および17年度においてそれぞれ119件、282件、291件、322件と増加傾向を認め、4年間の合計は1,014件であった。さらに、モニタリング報告の内訳を分析した結果、癌化学療法に関連する事例が平成14年度から順に15件、54件、72件、92件と顕著な増加を認めた。また、癌化学療法以外では薬物治療そのものに対する提案を含むその他の適正使用モニタリング(特に重篤な有害事象発現につながる薬物使用のモニタリング)の事例が平成14年度から順に22件、49件、38件、62件と増加傾向を示した。また、病棟薬剤師の勤務体制からの分析では、3名の病棟常勤薬剤師によるモニタリング報告件数は4年間で767件であり、全報告事例の75.6%を占める結果であった。
    <考察>今回の分析結果から、過去4年間においては病棟薬剤師の大幅な増員はなかったにも関わらず、薬物治療に対する病棟における薬剤師の介入件数は増加していることが確認できた。さらに、患者の安全性確保において極めて重要な癌化学療法関連の事例は、平成15年度から平成17年度の間に170%もの増加を示した。これらのことは患者の薬物治療に対する安全確保において、極めて重要な貢献であると考える。さらに詳細な分析において患者の病態や臨床検査データに基づいた薬物治療に関する提案が増えてきたことが認められた。これらの結果は病棟薬剤師が医師および看護師と協力し、より高度な薬学的ケアを実践し始めていることを示唆するものである。
     興味深いことに、今回の調査期間における病棟常駐薬剤師はわずか3名で、全モニタリング件数の約75%(767件)に関与していることが明らかとなった。このことは、将来すべての病棟に薬剤師を常駐することが、さらに薬学的ケアの実践による患者の安全性確保に貢献する大きな可能性を示すものである。
  • 高橋 和久, 吉田 浩, 澤田 和久, 畔柳 敏弥, 三浦 崇則, 坪井 伸治, 勝見 章男
    セッションID: 1D06
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    〈目的〉近年、より高度な医療に適応するために開発された医薬品の中には、承認後においても注意深く安全性の検証を必要とするものが増えてきている。ボリコナゾールもその一つであると言える。本剤の採用審議において、日本人における安全性の検証が乏しいことが、薬事審議委員会(以下薬審)の中で問題として取り上げられた。安全性を確保する一つの方法として添付文書では、薬物の血中濃度が4.5μg/mLを超えないように投与量を調整することと記載されている。また、薬物の血中濃度を上昇させる要因として、その代謝酵素の遺伝子多型が知られている。そこで、薬剤・供給部門では、安全性の確保ができるように血中濃度の測定系ならびに遺伝子多型の解析系を確立した。今回、ボリコナゾール血中濃度の測定ならびに薬物代謝酵素の遺伝子多型の解析を手段として、より安全な医薬品使用における薬審と薬剤・供給部門との連携の重要性を検証したので報告する。
    〈方法〉ボリコナゾールの投与は添付文書通りに行い、安全性を確保するために投与患者全ての血中濃度を測定した。さらに、薬物代謝酵素の遺伝子多型も併せて解析した。臨床効果と副作用ならびに薬物血中濃度との関係から再投与設計(減量)を行った。
    〈結果〉2006年2月採用以降、4症例に投与され、その全てにおいて有効性が認められた。2症例は添付文書通りの投与設計において、定常状態時の血中濃度が4.5μg/mL以下であった。したがって、そのままの投与量で治療が継続された。しかしながら、2症例においてボリコナゾールの血中濃度が4.5μg/mLを超えた。また、この2症例の遺伝子型を解析してみるとヘテロタイプであることが認められた。
    〈考察〉新薬の採用審議において日本人の安全性を確保するためには、海外のデータではなく、日本人における体内動態情報が必要である。事実、ボリコナゾールの厚労省での審議において、日本人の投与は血中濃度の上昇ならびに副作用の発現が問題視されたため、添付文書には、日本人での治療を安全に行うために、「血中濃度をモニタリングすることが望ましい」と記載されることとなった。また、主となる代謝酵素の遺伝子多型により薬物血中濃度が2倍以上になることも確認されており、投与初期の副作用の発現に影響を与える因子の一つであると言われている。特に日本人では約20%がこの変異体を有することが報告されており、副作用発現の上昇が注意喚起されている。これらのことから、薬審では採用審議をする際、安全性を考慮して血中濃度が測定できるかどうかが論点となった。そして、薬剤・供給部門で測定できる環境が整った時点で、ボリコナゾールは採用となった。採用後、安全性を検証するために血中濃度モニタリングを実施してきた。その結果、添付文書通りの投与にも関わらず、4症例中2症例が4.5μg/mLを超えていた。この2症例についての遺伝子型は血中濃度が上昇しやすいヘテロタイプであった。このことは、今後ホモタイプの存在を考慮すると更に慎重に投与しなければならないことを示唆するものである。これらの結果から、薬審で問題視されたボリコナゾールは有効性も高いが日本人の場合、安全性確保のために血中濃度モニタリングも必須の薬剤であることが再認識された。以上のことより、新薬採用審議において薬審と薬剤・供給部門との連携は、薬物治療の有効性ならびに安全性確保において極めて重要であることが明らかとなった。
  •  第1報:調剤室における危険を考える 
    中村 和行, 山下 雅代, 畔柳 敏弥, 三浦 崇則, 坪井 伸治, 勝見 章男
    セッションID: 1D07
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <背景・目的>当院では,2005年度「医療安全強化月間」に伴い,リスク軽減を目的とした各部署における危険予知に関する検討が行われた。薬剤・供給部門においては,(1)日常業務の中で起こりうる危険を薬剤師間で共有化し,患者の安全および職場の安全を図ること,(2)個人個人がリスクに対する意識を高め,危険予知をする。すなわち,「何か変」「ここがおかしい」「こうしよう」といった,リスク軽減のためのリスクセンスアップを図ること,(3)そして何より皆で決めたことを守る(実践する)こと,以上の3つを目標に設定し,ワークショップを実施した。さらに,より安全な医療を提供するためハードウェア,ソフトウェアの観点のみではなく,ヒューマンウェアの観点から解決策を検討したのであわせて報告する。
    <方法>まず,問題点を絞り込んで検討できるよう危険予知対策部署を調剤室のみに限定した。具体的には,(1)薬剤・供給部門のメンバー全員を4(AからD)グループに分ける。(2)調剤室における危険の洗い出しを行う。(3)メンバー間で危険を認識・共有した上で,事故の発生頻度や危険の深刻さを考慮して,問題の絞り込みを行う。(4)グループごとに絞り込まれた問題点に対する対策案・改善策を提案する。(5)提案された対策案・改善策を基にして,リスク軽減に繋がる対策を煮詰めて検討した。
    <結果>当院薬剤・供給部門で報告された全リスクレポートの1/3から1/4が調剤室の監査において発生していたという事実が明らかとなった。そして,さらに詳細な分析を行った結果,薬袋を逆に入れてしまった,薬を入れ忘れた,用法の間違いに気付かなかったなどの事例が報告されていた。そこで,各グループにて検討された内容を収集・解析した結果,患者に薬を渡す前の最終のチェックとなる「監査」における対策に重点を置くこととした。各グループから提案された問題点・改善策を基に危険予知に対する対策として,「監査時には,(1)処方せんを見て,声だし確認を行い,(2)薬袋の用法・用量を確認した上で薬袋に薬を入れる。(3)薬を薬袋に入れたことを確認後,用法の右側の余白に検薬印を押す。」こととした。監査する際には,処方せんを見ることはもちろんのこと,声を出して確認し,耳で聞いて確認を行い,注意すべきところに印を押す。こうすることで,より用法・用量の間違いを防ぐことができるよう考慮した。またこの対策は,薬剤師全員に周知徹底できるよう,ポスターにして目につくところに掲示し,さらに薬剤師個々の意識を高めるため,朝礼にて復唱した。
    <考察>従来,問題点の解決策として,ハードウェア,ソフトウェアの観点から議論されることが多かった。しかしながら今回の取り組みでは,あえてヒューマンウェアの観点から危険予知対策を議論したことは,皆で決めたことを周知することにおいて重要であったと考える。さらに,ワークショップを実施した結果,自分達の身近に多くの危険が潜んでいることを再認識すると同時に,未解決のままになっている問題が多く存在することを認識することができた。今回各グループから提案された他の問題点と対応策については,今後継続検討していく予定である。最後に当院薬剤・供給部門における部署の理念でもある,安心・安全,信頼の医療を患者さまに提供できるような努力を,今後も継続していきたいと考えている。
  • -セーフティーレポート報告から考える-
    成田 孝行, 松田 訓弘, 古屋 香, 丸山 雅和, 白瀬 昌宏, 長嶋 美幸
    セッションID: 1D08
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <目的>医療安全を目的として、セーフティレポートを活用した対策が医療現場において活用されている。今回、医療機器の保守管理業務を行う部門として、医療機器使用の安全を中心にセーフティレポートから分析、検討を試みたので報告する
    <方法>
    ・ME教育の現状
    ・セーフティレポート集計結果
    ・セーフティレポートからの分析
    <結果>
    集計結果から人工呼吸器、シリンジポンプ、輸液ポンプ、人工透析装置、酸素流量計に対する報告が多かった。
    <考察>
    報告の多くが操作ミス・確認ミスによるものが多くあり、改善するにはME機器に対する点検作業、ME機器使用の学習会により初歩的なミスは改善すると思われた。また、経験年数にあわせたME教育の必要性があると思われた。
     今後も、セーフティレポートからの報告を分析しME機器側、操作者側の両側面から分析出来るようしていくことと考えている。
    <まとめ>
    ・ME機器の安全使用からセーフティレポートを集計し分析を行った。
    ・集計結果から医療機器の報告は操作ミスによるものが多かった。
    ・今後、様々な側面からの学習会が必要であり、工学、医学、安全、感染などあらゆる部分からのME教育が必要であると思われた。
    ・今回、レポートの集計を行い医療安全に関する分析を行い、さらに詳細部分の分析を第2報とする。
  • 川上 典孝, 北島 潔, 本田 貴之, 吉田 友彦, 斉須 貴明, 吉田 豊
    セッションID: 1D09
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <目的>MR装置は強力な磁石を使用している為、医療スタッフはMR室への金属持ち込みが厳禁であることを知っていなければならない。しかし世界的に見てもMR装置への金属吸着事故は起きており、昨年、当院でもインシデントが報告された。幸いインシデントで済んだが大事故になりうる出来事であった。今後の事故を防ぐため、当院におけるMR事故防止マニュアルを作成し、全職員を対象に教育訓練を実施したので報告する。
    <方法>MR事故防止マニュアルとして患者、スタッフの入室マニュアルを作成した。教育訓練は2005年12月から2ヶ月間、週3回程度、合計22回実施した。内容はプレゼンテーションにて装置メーカが作成した事故防止のビデオ鑑賞、当院における入室マニュアルおよび緊急時マニュアルの説明、最後にMR室へ金属を持ち込み磁石の強さを体験してもらった。
    <結果>参加者は全職員563人中385人(68%)。MR業務に関わる部署では参加率100%であったが、医師の参加率は52人中4人(7.8%)であった。参加者の感想としては、「こんなに磁石が強いとは思わなかった」「撮影していない時でも磁石のスイッチが入っているのを知らなかった」等。よくあった質問は、「当院で事故が起きたことはなかったのか?」「メガネや靴などの金属は大丈夫なのか?」「なぜメモ帳のような磁石に付かないものまで出さなければならないのか?」等。プレゼンテーションの内容を理解していない方が多くみられたが、磁石の強さを体験することで金属の持ち込みが事故に繋がることを実感してもらえたと思われる。
    <考察>教育訓練の参加者が全職員の68%と非常に高いのは、22回開催したこと及び事故防止委員会でインシデントが報告された後に行われた為と思われる。当院では3年毎に事故防止訓練を行ってきたが、毎日MR業務に就いている看護師でさえ磁石の強さや危険性を認識していなかったことに驚いている。磁石の強さは一度体験すれば一生忘れないぐらいに強力なので、多くの職員が磁力の体験をしたことは今後事故防止に役立つと思われる。今後マニュアルの見直し及び教育訓練を毎年行い、事故防止に努めたい。
  • アロマテラピーを用いた方法の効果の検討
    竹中 理恵, 伊東 尚美, 安 邦子, 加藤 久美子, 峯田 祐次, 阿部 菜穂子, 岩谷 さゆり, 秋野 良子
    セッションID: 1D10
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言>当病棟では、せん妄症状の患者に対し、チューブ類の自己抜去や転倒を防ぐために、やむを得ず睡眠剤の投与や抑制を行い危険行動を抑えているのが現状であった。そこで、アロマテラピーの導入で、せん妄症状の患者に対しても少ない症例ではあるが改善が見られたためここに報告する。
    <方法>
    1.対象 夜間せん妄症状が見られた当病棟入院患者で、今回の研究を行うことに家族の了承を得た患者3名
    2.方法
    1)開始時期
      三瓶氏らのアセスメント表を参考に、せん妄スケール表(以下スケール表とする)を作成し2段階に該当した時点でアロマテラピーを開始する。
    2)アロマテラピーの施行方法
      精油をコットンに垂らし枕元に置く。
      (1)開始時:リラックス効果のあるラベンダーを使用
      (2)開始4時間後から起床時:鎮静効果と催眠作用のあるカモミールを使用
      (3)開始が0時以降の場合は2種類を混合し使用
    3.データ収集方法
       スケールの点数からアロマテラピー使用後のせん妄症状の変化を比較する。
    4.倫理的配慮
     同意書に、知る権利・医療における自己決定権・害を与えないこと・プライバシーの保護について記載し、家族に対して説明する。
    <結果>スケール点数を比較したところ、全ての症例において開始4時間後に点数の下降が見られた。(資料1参照)また、開始時間に関係なく全員が6時から9時の間に覚醒した。
    <考察>環境の変化に不安、チューブ類や安静などによる拘束感、苦痛からくる不眠や疲労に関連し、せん妄症状が出現した患者3名に施行した。アロマテラピー使用後、3名とも「いい臭いがする」「落ち着く」と言い入眠につながった。吉田は「香りの刺激は嗅覚によって感覚されるが、その神経ルートは他の感覚以上に情動脳系に直結している。」1)と述べている。このことから、ラベンダー・カモミールの香りはリラックス効果が高く、ストレスに由来する各種障害に有効と言われているように、鎮痛・安眠効果が得られ入眠を促すことができたと考えられる。
     また、使用開始時間に関係なく全員が6時から9時の間に覚醒し「すっきり眠れた」と話された。深夜問わず睡眠剤を使用した場合その効果が日中まで遷延するが、アロマテラピーのもたらす効果で自然な入眠が得られ、崩れた入眠パターンを取り戻す機会になったと考える。
    <結論>せん妄患者にもアロマテラピーは、自然な入眠を促すことができ、睡眠パターンを取り戻す介入方法として効果が期待できる。
    <引用文献>
    1)吉田倫幸:香りとリラクセーション,現代のエスプリ,P58,1993
    <参考文献>
    1)三瓶智美:クリティカルケアで不穏せん妄をどうアセスメントするか,看護技術,vol 51 No1,2005
  • 水本 明子, 神谷 千代, 木下 幸子, 三澤 浩美, 藤井 聖子
    セッションID: 1D11
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉 当院が平成15年に開院され三年経過した。分娩件数も初年度は年間140件であったが、徐々に増加し、昨年度は209件になった。しかし、外来と病棟の連携が円滑でなく妊婦の情報を性格に把握できないまま、病棟に引き継がれたり、保健指導においても個別性にかけたりする点など、様々な疑問や問題が生じてきた。出生率の低下から1人の女性が分娩を体験することが減ってきている。この分娩という貴重な体験を妊婦がより安心し、より満足できているのだろうかという不安が職員間で生まれた。そこで今回、保健指導を目的とした助産師外来を開設し、バースプランという出産に主体的に取り組む妊婦やその家族が出産に関する要望を医療者に伝える手段を使用し、外来通院中に立案し、そのバースプランをもとに入院・分娩をする。その後分娩を終えた褥婦に対し満足度についての自記式質問紙法にて調査したところ、良い評価を得られたので、改善前・改善後の比較検討を行ったので、ここに報告する。
    〈方法〉 保健指導を中心とした助産師外来を開設。月から金曜日の9時から12時。対象者は現在通院中の妊婦。妊娠初期検査時(妊娠10週)に第一回の面談。(助産師外来問診表を記入) 妊娠32週に第二回の面談。(バースプランの説明と記入依頼)助産師外来担当者は助産師1人とし、午前は外来、午後は病棟勤務とし、助産および保健指導を主に行う。
    〈結果および考察〉 妊婦の婦の情報については、改善前では外来カルテからしか得ることができなかったが、改善後は助産師外来問診表を見ることで、妊婦個々の家族歴や妊婦の背景、また妊婦がどのように分娩について受け止めているかなどを知ることができるようになった。助産師外来で個々に面談していく中で、妊婦とのコミュニケーションを図っていくことができ、助産師外来で育まれた信頼関係は後々の分娩時や産褥期にまで影響していくことが良くわかった。次に妊婦の教育の点においても改善前では外来業務の傍らで医療者側からの一方的な母親学級の受講の勧め方であったので、妊婦が受講せず入院時にトラブルを起こすなどの問題もあった。改善後は助産師外来で、個々に面談しながら受講を勧めるので、100%の受講率を得ることとなり、入院時のトラブルは激減した。患者満足度についても今回の分娩に対し満足であるという意見は75%を占めた。当院での助産師外来は主に保健指導を行っているが、妊婦の抱えている不安や問題を外来通院中から援助していき、バースプランを立案する。病棟のスタッフはバースプランが計画どおり実施できるように分娩前よりあらかじめ準備することで外来と病棟の連携がうまく取れ、満足度の増加につながっているのではないかと考える。外来通院中にいかに関わりを持つかということがその後の患者の満足度を左右する。
  • -透析患者および、家族へのアンケートより-
    坂本 孝美, 新井 修, 柴田 房江, 鷹野 ふよう, 山口 博
    セッションID: 1D12
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <目的> 小海分院透析室は佐久総合病院透析室よりサテライトとして移行され本年で 12年になる。その間分院自体も2回の施設変更が行われ一時は入院透析もできない状況が2年ほど続いた。今回2回目の移転に伴い亡くなられた透析患者の家族および、現在HD患者へアンケートを行い僻地サテライト施設としての今後の体制つくりの検討を行った。
    <方法> 平成5年から平成17年までに亡くなられた22名の患者の家族および、現在透析を行っている方を対象にアンケート調査を行い、分析、検討を行った。
    <結果> 高齢化率30%を超える地域において透析患者の高齢化も進んでいる。通院や介護に関して患者家族への負担も大きい。入院を余儀なくされた場合、本院への通院は自家用車で現在の分院より30分の距離にあり、公共の交通機関を利用すれば時間的制限まで加わり家族にとって、かなり負担が増加する。分院での治療が可能であれば分院への入院希望が多くみられた。
     今回、腎内科のDrの選任化、透析看護師の2人常勤化、臨床工学技師1.5人と、増員によりスタッフの充実がはかれ入院透析についても患者自身「安心して任せられる」といった意見がみられた。家族からは「医師の体制は大切である、今回本当に助かった」「近くなることにより面会の制限がなくなった」「家族だけでなく親戚なども喜んでいる」等の意見もよせられた。
    <まとめ> 今後も透析患者の高齢化に伴い、入院透析が増加することが予測される。山間部で通院困難な透析患者において、分院に入院することで患者家族への負担も軽減する。しかし、PTA・DSAなどの特殊検査、及び外科的手術はまだまだ本院の力を借りている状況である。今後外科的対処についても臨時的な形をとりながら分院で行えるよう検討し、患者負担の軽減を図ってゆく必要がある。

    ※アンケートを行うにあたり患者及び家族に対し趣旨を十分説明し理解していただいた上で回答をいただいている。また、スタッフの守秘義務についても説明している。
  • -Cohnの障害受容プロセスを用いて-
    梶野 直子, 磯部 裕美, 東 久美子, 小野 直美, 長島 幸子
    セッションID: 1D13
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>障害受容とは、障害者自らが障害の存在を認め、自己の能力の限界を現実的に認識し、なおかつ積極的に生きていく態度を持つ事である。今回、維持透析中で化膿性脊髄炎により長期入院となった患者を受け持った。意欲の減退があり在宅は困難と考えられたが徐々に化膿性脊髄炎の障害を受け入れる事ができ在宅へ移行できた。そこで、障害受容プロセスという観点から振り返る事で、心理的変化を知る事ができ援助方法を検討できたので報告する。
    <研究目的>cohnの障害受容プロセスを用いて心理的変化を知り援助方法を検討できる。
    <倫理的配慮>研究の趣旨を口頭で説明し承諾を得た。
    <研究方法>期間:2005年8月から2005 年11月。方法:(1)看護記録から患者の言動・行動・表情を抽出。(2)Cohnの障害受容プロセスに沿って患者の言動・行動・表情を分析。
    <事例紹介>患者:52歳女性。家族構成:夫と2人暮らし。診断名:化膿性脊髄炎、消化管出血、慢性腎不全(維持透析中)
     入院期間:発症から16ヶ月。入院中の経過:化膿性脊髄炎で整形外科病棟入院。頚椎骨融解ありハローベスト装着。その後消化管出血あり維持透析中であった為、腎臓内科病棟に転科。消化管出血なくなったが腰の骨融解あり整形外科病棟に転科。治療により改善した為、腎臓内科転科。症状安定した為退院。
    <結果>Cohnの障害受容プロセスに沿って言動・行動・表情の振り返りを分類(表1)
    <考察>障害という自覚がない為、訴えを受け止める事が大切だと思い、傾聴に努めた。この段階をショックと分類。徐々に改善してきた為、励ましや同意をした。しかし逆に期待を持たせ、落ち込んでしまった。現実を理解させる事が必要であったのではないか。この段階を回復への期待と分類。症状再出現した為、傾聴する事で不安の表出ができ、無気力になる事を最小限にできた。この段階を悲嘆と分類。疼痛の緩和により意欲的な言動が聞かれた。又、自分で在宅用品を選択できた事が自信に繋がった。この段階を防衛期と分類。夫へ働きかけ、外泊を繰り返す事で転院を希望していた夫も在宅を希望するようになった。この段階を適応期と分類。Cohnは防衛規制を悲嘆への対処として位置付けている。障害受容プロセスを用い分析した結果、同様の経過をたどり、対処できていたと思われる為、Cohnによる障害受容のプロセスを用いて心理的変化を分類した事は適切だったと考える。しかし悲嘆から適応期を何度か繰り返していた。心理的変化は個人差があり、適応の段階になったからといって終わりではなく、継続して援助していく事が大切である。
    <おわりに>今回、Cohnの障害受容プロセスを通して、闘病意欲を低下させない援助を振り返る事ができた。現在では、歩行可能で表情も豊であり、車椅子で当院透析外来通院中である。
    表1 患者の言動・行動・表情を分類
  • 山本 愛, 林 美恵子, 飯田 智子, 多田 あゆみ
    セッションID: 1D14
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>
    術後の患者は、術前からの絶飲食、手術中の挿管による口腔内の乾燥、副交感神経遮断薬使用による分泌物抑制、また術後の発熱などによる不感蒸泄など、さまざまな要因で口渇が生じやすい。従来、当病棟では口渇時は水による含嗽をすすめている。しかし、術後口渇を訴える患者は多い現状にある。そこで今回、唾液の分泌作用・清涼作用のあるレモン酢に注目し、口渇への効果があるか検討した。
    <研究方法>
     目的:口渇に対するレモン酢の効果を知る。
     期間:平成17年12月1日から平成18年2月28日。
     対象:全身麻酔下で消化器開腹手術を受けた、術後2から3日目の絶飲食期間の患者11名。
     方法:1.患者11名に対し、レモン酢を40倍に希釈したレモン酢水(以下40倍レモン水)・50倍に希釈したレモン酢水(以下50倍レモン水)・水道水の3種類での含嗽を実施。実施後は、患者が口渇緩和になると感じた含嗽を行う。希釈倍数は、無作為に選出した看護師に2種類のレモン水含嗽を行い、40倍をすっぱいと感じ50倍をすっぱいと感じなかった結果から決定した。
     2.含嗽後、アンケートに沿って聞き取り調査を行う。
    <結果>
    口渇は10名が感じ、口渇のなかった1名はレモン水含嗽を行うことで口渇だったことが分かったと答えている。2種類のレモン水含嗽で3名が口渇は残ると答え、「早く飲みたい」という意見が強かった。全員が50倍レモン水での含嗽を続けていた。水道水は、「味がなくすっきりしない」「口の中がすぐに乾燥する」、50倍レモン水は口腔内の潤いを感じたと全員が答えていた。50倍レモン水は、味覚において不快に感じた人はおらず、「すっきりする」「さっぱりして気持ちが良い」と全員が答えた。しかし、40倍レモン水はレモン特有の酸味が強くなり後味が悪くなると3名が答えた。また2名の患者が氷を入れて含嗽を行っており「すっきりする」「生き返ったようにな」との言葉が聞かれた。
    <考察>
    50倍レモン水で全員が口腔内の潤いを感じたことは、レモン酢に含まれるクエン酸や酢酸の唾液分泌効果によるものと考える。一時的とはいえ口渇への緩和につながったのではないか。今回、絶飲食を強いられた患者にとって飲めないというストレスが生じている。レモン水含嗽を行っても口渇が生じたことは「飲みたい」という意識が高まっているからだと考える。術後苦痛が強いなか、患者の言葉からも、口渇という苦痛を緩和させることができ、同時にストレスも緩和できたと考える。今回、すっぱいと感じる40倍レモン水で不快を感じたことから、レモン特有の酸味を強くすることは、術後の患者に刺激を与え不快を生じ逆効果とわかった。術後回復過程をたどる患者に、絶飲食中に爽快感を得る50倍レモン水含嗽は有効であった。また、氷を入れて含嗽を行っていることから、口渇緩和と温度の関係も調べていけたのではないか。
    <まとめ>
    1.50倍レモン酢水は、一時的な口渇緩和での効果がみられ、口渇という苦痛の緩和にもつながる。
    2.術後の患者には、40倍レモン酢水の強い酸味で不快を与える。
  • 佐々木 京子, 八巻 美恵子, 高橋 悦子
    セッションID: 1D15
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <研究目的>低出生体重児を出産した母親の育児不安要因を明らかにし、育児支援の方向性を見いだす
    <研究方法>
    1.方法:因子探索研究
    2.対象:低出生体重児の母親23名
       児の出生体重  942g-2,416g
        内訳 1,000g以下    1名
            1,000g-1,500g  3名
            1,500g-2,500g 19名
       児の平均在院日数33日
    3.期間:平成17年7月から8月末
    4.データ収集方法:
    1) 調査方法 選択式および自由回答式質問紙による郵送調査。
    2) 調査内容・時期 平成15年9月から平成17年3月までに低出生体重児を出産した母親に、児の退院後から初めての小児科外来受診までの時期を振り返り、以下の内容について回答してもらった。母親自身に関する不安を「母乳について」「気持ちの落ち込み」「イライラする」「体調不良」「相談者の有無」とし、児に関する不安を「一時的な症状」「哺乳量について」「今後の成長について」とした。その他、「退院後の病棟看護師からの電話訪問希望」、不安に関する自由記述欄をもうけた。
    5.分析方法:母親を初産婦、経産婦に分類し、単純集計を行った。
    <倫理的配慮>
    本研究の目的、意義とプライバシー保護に努めることを書面で説明し無記名とし、研究同意が得られた母親のみに返信してもらった。
    <結果>
    アンケート回収率69.6%(23通中16通)
    初産婦 10名  平均年齢32.3才
    経産婦 6名   平均年齢32.7才
    1.気持ちの落ち込みについては、初産婦は50%、経産婦は33%があると答えている。その内容は、初産婦では「今後の子供の成長」が多く、経産婦では内容の項目に差は見られなかった。2.イライラするは、初産婦は60%、経産婦は33%があると答えている。その内容は、初産婦では「思い通りにならない」「眠れない」が多く、経産婦では内容の項目に差は見られなかった。3.児の一時的な症状についての不安は、初産婦は70%、経産婦は50%が不安だと答えている。その内容は、初産婦では「のど・鼻のぐずぐず」が最も多く、次に「目やに」「肛門周囲発赤」「湿疹」が同人数であった。経産婦では内容の項目に差は見られなかった。4.今後の成長についての不安は、初産婦は70%、経産婦は33%が不安だと答えている。その内容は、初産婦では「免疫力がない、病気にかかりやすい」「後遺症が出るか」「普通の子のように大きくなれるか」全ての項目を全員が挙げていた。経産婦では「普通の子のように大きくなれるか」が1人だった。5.退院後、病棟看護師からの電話訪問があれば良かったかでは、初産婦は80%、経産婦は17%が「はい」と答えている。
    <結論>
    1. 低出生体重児を持つ初産婦は、児の成長や、児の一時的症状に対して不安を抱く人が多い。また、初産婦は不眠や疲労感などの体調不良を認めることが多く、育児に対するイライラ感を持つ人も多い。
    2. 初産婦の方が、育児不安を多く抱いており電話訪問を希望している。
    3. 退院後も医療従事者からの支援を求めており、個別性を重視した電話訪問を確立する必要がある。
  • -写真を用いての紹介-
    杉村 夏子, 吉村 美香, 加藤 弘子, 岡部 恭子
    セッションID: 1D16
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉当呼吸器センターはベッド数51、固定チームナーシングを導入している。入院患者の平均年齢が70.2歳と高く、付き添い家族の高齢化も顕著である。
    患者や家族にわからないことや困ったことが起きた時、どの看護師に聞いたら良いのだろうか、今日はだれが自分の担当なのか、という戸惑いを感じている方も少なくないと思われる。
    看護師の名前は伝えているものの、今までのやり方は顔と名前が一致しにくいという問題点があった。そこで、昼間や夜間にそれぞれどの看護師が担当しているのかを明確にし、困ったときに遠慮なく声を掛けていただけるような環境とすることで、患者との信頼関係を高めることができたらと考え改善した結果、効果が得られたため以下の通り報告する。

    〈期間〉 平成17年6月1日-平成18年2月28日
    〈方法〉 1.現状把握
    ・入院から退院までの間、主治医・受け持ち看護師が就くこと、日替わり看護師がいることの認識について、患者アンケートを実施。
    ・受け持ち看護師として名乗ることができ、日替わり看護師として挨拶ができているかについて、看護師アンケートを実施。
    2.改善方法
    ・各医師・看護師の写真の下にメッセージを書きラミネートパウチして掲示。
    ・主治医・受け持ち看護師の写真を、寝ていても見易い床頭台の上に設置。
    ・日替わり看護師の写真を病室の入口に掲示。
    ・休日・準夜・深夜勤務者の写真をナースステーション前に掲示。
    3. 再調査
    ・5ヶ月後に再度患者アンケートを実施。

    〈結果・考察〉アンケートをもとに、受け持ち看護師・日替わり看護師の名乗りを、写真を用いてわかり易く掲示することで、担当看護師がわかる:67%→79%、顔と名前が一致する:52%→72%、準夜の看護師がわかる:40%→56%、深夜の看護師がわかる:14%→51%、とそれぞれ改善された。
    以前は、誰に聞けばいいかわからず通りすがりのスタッフに声を掛ける等、患者・家族に戸惑いが見られたが、名前で声掛けされたり、「声が掛け易くなり、誰に聞けばいいかわかるようになった。」という声が聞かれるようになった。訴える窓口ができ、責任の所在も明確となり患者にとって安心感に繋がったのではないかと考える。
    スタッフ自身にも、今までは照れくささや恥ずかしさがあり名乗りが徹底できていなかった、タイミングを逃がし名乗る前に退院されることがあった、名乗っていたが覚えていただけない・忘れられてしまうという不安もあった。それが今では名乗ることが当たり前になり、責任を持って働くことができ、また受け持ち患者・家族に顔や名前を覚えていただき、家族の思いや家族に漏らす本人の思いを聞くことも可能となった。患者・家族と信頼関係を築きやすくなり、責任感をもって業務に励む意識付けにもなった。
    看護師間での受け持ち患者の情報伝達もスムーズとなった。医師やコメディカルからも、指示を出したいときや患者の情報を得たい場合に担当看護師に直接伝達することが可能となり、業務が円滑に行われるようになった。

    〈結語〉24時間毎日責任の所在がわかることで、患者・家族の安心感が得られ、スタッフの責任感と業務の改善に繋がったと思われる。
  • 都築 和美, 内藤 いづみ, 市石 知子, 梶野 浩子
    セッションID: 1D17
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>平成14年5月の病院移転により脳神経外科内分泌内科の混合病棟の固定チームを開始した。私たちはこのシステムの利点を活かし継続した質の高い看護を提供できることを目指している。そのためには受け持ち看護師が中心となり個々の患者に対して責任のある看護計画を立案しチーム全体で実践していく必要がある。私たちが受け持っているチームは急性期の患者が対象である。術後の患者や状態が不安定の患者も多く、患者や家族は症状や状態を心配される反面、回復への期待が大きくなりがちである。今回、不安を強く訴えた家族に対して家族支援の必要性を再認識したので報告する。
    <目的>チーム内の看護師の言動を統一することで家族の患者に対する不安の軽減ができる。
    <経過と結果>入院を境に姉は介護休暇を取り、日中は患者に付き添っていた。この頃の患者は見当識障害が残るものの主治医からは「意識がよいので様子をみましょう」と説明されていた。
     姉は弟の回復への期待は大きく社会復帰を目標にされており、患者及び医療スタッフにも厳しく要求も多かった。特に看護師に対して言動の統一を強く希望されていたが、看護師の申し送りの不手際があり姉に不信感を抱かせ姉とのコミュニケーションが図れなくなってしまった。私たちは再度、家族とコミュニケーションを図るため情報を共有し看護ケアを統一するにはどうすればよいかと考えた。そこでチーム内で検討し家族との伝言用紙やスタッフ間の統一事項を記入するノートを作成した。家族との伝言用紙は水分管理の必要な患者であるため1日の水分摂取量を記入する欄、スタッフのコメント欄、家族からのコメント欄を設けた。スタッフのコメント欄には家族が付き添わない夜間の患者状態を書くことによって、家族は患者のことがわかり問題を共有することができるようになった。家族からのコメント欄の中からは、家族の想いや迷いなどを知る糸口も見出すことができた。
     家族からの質問に対して回答し、必要時は主治医や看護師長の回答も記載した。スタッフノートには家族からの要望や検討事項、統一事項を記載した。また家族との伝言用紙を添付した。これらによって情報の共有や処置・ケアの統一が図られてきた。看護計画を開示したときには家族から「意向に沿った援助が受けられた」「ともに看護計画立案でき感謝している」と言った言葉が聞かれた。
    <考察・まとめ>家族の労をねぎらい、励ましながら患者の現状を共に受け止め、家族の意思を確認した。その際に共感的態度や、それぞれの思いや考えを文章にして伝えることで、家族の不安や悩みを引き出すきっかけになったと考えられる。
  • 杉村 龍也, 吉村 公博, 井木 徹, 松村 弥和, 蟹江 史明, 今川 智香子, 梶原 佳代子, 龍樹 利加子
    セッションID: 1D18
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言>医療法の改正や診療報酬の改定、社会福祉基礎構造改革で介護保険法を主とした社会保障領域における福祉制度の改正や新設などにより、患者を取り巻く医療供給体制がここ数年目まぐるしく変化してきている。急性期病床の加茂病院においても、退院や転院に関する援助件数が、年々飛躍的に増加している。そこで、医療供給体制の変化と当地域医療保健福祉連携室における相談実績の統計資料とを比較検討し、豊田市(人口40万)における今後の地域医療のあり方を考察する。
    <方法>〉平成7年度から平成17年度の加茂病院の地域医療保健福祉連携室の相談実績の統計や豊田市周辺の医療・介護提供施設の状況と、第2次医療法改正から現在までの医療供給体制の推移を比較検討する。
    <結果>加茂病院の地域医療保健福祉連携室における対応件数は開設当時から現在に至るまで年々増加の一途をたどってきている。その内訳を見ると、全体的に増加傾向であるが、中でも退院・転院に関する相談は顕著である。平成7年当時と比べると、退院・転院相談の実件数は平成12年で2倍強、平成16年では4倍強となっている。
     転院の例として平成9年当時の医療・介護提供施設を見てみると、転院先として挙げられるのは老人病院と長期療養型病床群、老人保健施設しかなく、特に豊田市では、平成9年当時は長期療養型病床群が無く、老人病院も市内には一ヶ所のみであり、周辺市町村への転院が殆どであった。そのため、施設待機の1ヵ月から2ヶ月を加茂病院での入院継続を余儀なくするケースも多かった。
     しかし、現在の医療・介護提供施設を見ると、施設がそれぞれ専門分化してきている。急性期病院では、急性期加算をとるための平均在院日数を意識しながらの退院指示や、受入れ施設に併せた形での退院指示が増えている。回復期リハビリテーション病棟では、入院日数や入院までの日数に制限が設定されるようになり、早期での転院を求められるようになった。以前のように施設待機を急性期病院で過ごすことが難しくなり、早期での退院指示に不安を抱える患者・家族が多くなったのである。つまり、単独の医療機関では、治療から療養・介護までの一連の医療の提供ができないのである。
     この現状は、国の医療費抑制政策が大きな要因となっている。特に平成12年の介護保険法施行や平成14年の急性期入院加算の設置などは、専門特化しないと病院が生き残っていけない現状を作り出したと言える。それ以上に影響を被ったのは患者・家族である。社会構造や家族形態の変化による家庭介護力不足が深刻な中で、医療依存度が高い患者でも退院指示が出されるようになり、高額な施設への転院や、充分な準備の無い中での退院を迫られる状況となった。以上のことが退院相談増加に繋がっていると言える。
     結論として、今後の地域医療では、単独の医療機関だけで充分な医療の提供はできない。そのため、患者・家族に不安の無い充分な医療を提供するには、医療費抑制政策の中で専門分化した複数の医療機関が、相互の特性を活かした密接な連携を図り、地域の中で一つの大きな医療機関として機能する必要があると考える。
  • 秋田 珠実, 橋本 善夫, 板谷 純幸, 白井 勝, 芝山 信子, 高山 学, 舟木 映二, 秋本 信子, 西野 京子
    セッションID: 1D19
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言>褥瘡予防対策実施後、院内の褥瘡発生数は減少した。しかし、入院時に褥瘡を持ち込む患者数は年々増加している。そこで、なぜこのような状況がみられるのか、その要因を探り対応策を検討したため報告する。
    <方法>平成14年8月から17年12月までの、持ち込み褥瘡患者、154事例の分析を行った。
    <結果>褥瘡患者の入院目的は、褥瘡治療が12%、主要疾患に付随したものが88%であった。入院時の褥瘡状態は、IからII度(NPUAP分類)の軽症褥瘡が75%、IIIからIV度の重症褥瘡が25%を占めた。褥瘡発生場所は、自宅が72%、前医療機関25%、老人保健施設3%であった。自宅で褥瘡が発生した患者の、入院時の生活自立度(障害老人の日常生活自立度判定基準)は、「寝たきり」63%、「準寝たきり」33%、「自立」は4%であった。自宅発生患者の主な疾患は、悪性腫瘍が52%、脊髄・骨・関節疾患13%、脳血管疾患12%であり、この内、褥瘡予防を目的に社会的資源の導入や、体圧分散寝具などを活用していた患者は、悪性腫瘍17%、脊髄・骨・関節疾患57%、脳血管疾患33%であった。
    <考察>当院の持ち込み褥瘡患者は、生活自立度の低下した、悪性腫瘍、脊椎・骨・関節、脳血管疾患患者が多く、その殆どが自宅で発生していた。また、特徴として、悪性腫瘍患者は社会的資源の活用が少なく褥瘡発生し、脊椎・骨・関節、脳血管疾患患者では、資源が活用されていても褥瘡が発生していた。これらの結果から、褥瘡発生には退院時・通院時・地域要因があり、連携やシステム面にも問題があると考えた。退院時要因は、褥瘡教育の不足に加え、在宅支援体制の未整備や不備があった。通院時要因では、患者の状態把握不足から、教育や資源の導入に遅れがあった。また、褥瘡予防に関する情報提供や相談窓口が無いことも問題であった。地域要因では、患者の情報交換や連携面に不足があった。また、医療者および地域間で、患者に行った結果を評価し、これをフィードバックするシステムが無く、在宅における褥瘡問題が解決されない要因とも考えられた。
     そこで、これらの問題を解決するため対応策を検討し、フローシートにまとめた。(図1)大きな骨子は、退院時に褥瘡発生危険リスクのある患者の支援強化と、外来通院患者のスクリーニングによる、褥瘡教育の実施と患者問題に応じた資源の導入である。また、相談窓口を開設し、タイムリーにこれらの問題に対応してゆきたいと考えた。連携面では、褥瘡予防支援の向上を目的に、医療者および地域間で支援内容や結果を評価し、これをフィードバックするシステムを考案した。
    <まとめ>当院持ち込み褥瘡患者の背景には、退院時・通院時・地域要因があり、連携やシステム面にも問題があることが明らかとなった。これらの問題を解決するため対応策の検討を行い、本格的実施にむけ準備段階である。
  • -患者の服薬に対しての行動化と知識の向上を目指して-
    菊地 直樹, 児玉 尚之, 宇田 晃, 濱辺 晶子
    セッションID: 1D20
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
     統合失調症患者の薬物療法の重要性及び服薬中断による再発率の高さは周知のとおりである。今回、陰性症状が主体で入退院を繰り返し、拒薬の既往がある患者に対しアンケート調査を実施した。そのなかでMMSE21点以上の統合失調症の患者を対象に服薬行動の主体性を高めることを目的として取り組んだ。
     配薬方法を「部屋をラウンドして薬を手渡しする」方法から「患者自らステーションに受け取りに来る」方法に変更し、服薬行動に変化が見られた2ヵ月後、コンプライアンス向上に向け服薬指導を開始した。指導は週1回30分間行い、評価は患者アンケートと服薬行動項目のチェックで行った。結果、個人差はあるが6人共に服薬行動の主体性が高まった。陰性症状主体の患者に積極的、かつ繰り返し看護師が関わることで、服薬のモチベーションを向上させるこができた。
  • 宮本 涼子, 西前 順子, 桜井 陽子, 辺見 典子
    セッションID: 1D21
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言>術後患者は、痛みなどの肉体的苦痛のほか、不安・緊張・孤独感などの精神的負担も伴う。その結果、創痛や不安を過大に自覚し、睡眠障害・不穏・せん妄が見られることがある。私達は日頃の多忙な看護業務の中、精神的へのケアが不十分ではないかと自覚している。そこで、術後患者のリラクゼーション効果を得るために癒しの効果がある曲としてモーツァルトを選択し、ヒーリング音楽を流す効果について検討した。
    <対象・研究方法>病棟に入院され、全身(+硬膜外)麻酔下にて外科的手術を受けた患者23名を対象とし、無作為にコントロール群(音楽を流さない)12名(平均72.0歳)と実験群(平均68.6歳)の2群にわけた。また、両群間共に手術後、ヒーリング音楽を流し、その効果についてのアンケートを施行する旨を術前オリエンテーションで説明し了解を得た。
     コントロール群は、従来どおりの環境下において患者の疼痛・睡眠状況を把握した。実験群は、術後30分から翌朝6時まで、癒しの曲として有名なモーツァルトの曲を、音量・スピーカーの位置を統一した上で繰り返し流した。術後、自覚的疼痛の程度を、フェイススケールを用いて術翌朝まで経時的に観察した。鎮痛剤使用の時間と内容を記録し、音楽の感想、睡眠状況、痛みや不安についてのアンケートを術後3日以内に実施した。
    <結果・考察>今回の研究では、ヒーリング音楽を流すことによる手術後の疼痛軽減、睡眠の確保といった肉体的な苦痛軽減は得られなかった。これらは、ヒーリング音楽は肉体的苦痛への直接的な軽減効果が無い事を示している。しかし、侵襲の大きい手術後においては、実験群で疼痛が軽減されている傾向があり、鎮痛剤の平均使用頻度も実験群のほうが少なかった。看護師側への影響としても、「音楽を流す事により緊張した気持ちが和らぎ、ゆとりを持って患者と接することができた」という意見もあり、より良い看護につながるのではないかと期待される。
    <まとめ>今回の研究において、ヒーリング音楽を流すことは、肉体的苦痛の軽減が得られるとは言えなかったものの、患者の不安軽減など精神面でのサポートに効果的であることが示唆された。また、看護師側にも、ゆとりをもって患者に接することができるようになった。今後、精神的な苦痛緩和のためには、患者への声かけなど精神面へのケアを充実させることはもちろん、ヒーリング音楽などの聴覚、嗅覚(アロマなど)、視覚(病室の照明など)などの感覚に訴えるような補助的な方法を積極的に導入することも重要であると思われた。
  • 宮崎 嘉英
    セッションID: 1D22
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>平成14年に医療保険制度改正で外来がん化学療法に診療報酬上加算(300点/日)・無菌製剤処理加算(40点/日)が認められたことと、患者様のQOL改善のため当院でも平成16年4月より外来化学療法室設置し、導入となった。
     外来化学療法が軌道にのると、在院日数短縮、外来診療単価改善、外来収入と患者数増加、QOL改善により患者の満足度を向上するなどの利点も多い。しかし、帰宅してからの時間帯におこる遅発性副作用への不安を感じている患者がいる現状があった。その不安軽減のためには自己管理できるように継続看護が重要である。
     今回、個別な情報を共通理解するためのフェイスシート、共通指導が行われるように、患者チェックリスト・知識理解度表を作成し試行した。以前に比べ情報収集しやすくなり、スタッフ教育も充実した。患者より満足の言葉も聞かれるようになったので報告する。
    1、外来化学療法の実施までの流れ
     (1) (初回)医師によるレジメン(治療計画書)提出後、薬剤部で審査(投与可能条件・投与量・回数等)、外来化学療法処方箋プロトコール作成し、クリティカルパス作成(以下、CPとする)
     (2) 医師が、処方箋・外来治療ベッド予約受付用紙記載し薬剤部と治療室へ提出
     (3) 当日採血し各科外来医師施行許可後、治療室・薬剤部に連絡し治療室で実施
    現在プロトコールのある外来化学療法にはCPが導入されており、各プロトコールで副作用の特徴があるものは、観察内容として記載され、化学療法前後のバイタルサインチェック・PS評価記入欄がある。
    2、患者指導の流れ
     (1) 治療室の使用説明
     (2) 患者チェックリストA
     (3) 患者情報収集しフェイスシート作成
     (4) パンフレット(化学療法)にて指導
     (5) 患者チェックリストB
     (6) チェックリストにより知識不足の点を重点的に個別指導(高齢のため理解困難、疾患による記憶障害等ある患者様には家族にも指導)
     (7) 各チェックリスト再度行う
     以上の内容が、共通指導できるよう、スタッフ指導用紙「ケモ室NS理解度表」を作成した。
     今回、フェイスシート・患者チェックリスト・指導パンフレット・「ケモ室Ns必要知識理解度表」など使用することで、以前にくらべ情報収集しやすくなり、スタッフの教育も充実した。患者より満足の言葉も聞かれ、病気に対する相談も受けるようになった。
     化学療法室看護師は、がん化学療法に関する知識・技術の習得をしたうえでの観察力がもとめられる。また副作用の観察の他に、患者が抱えている日常生活上の問題を知り個別性ある看護へとつなげていくことが大切である。化学療法室看護師は問題意識を持ち、看護アセスメントしやすい整理された記録情報用紙に記載し、活用していくことが、継続看護充実につながると考える。
    <おわりに> 外来化学療法は、抗がん剤の開発や治療の多様化に伴い,今後もさらに増加していくことが、予想される。
    外来がん化学療法マニュアルをさらに充実させ、安全で確実な化学療法が実施されるようにしていきたい。
  • 田實 直也, 米山 英二, 久保田 敏行, 磯部 貴子, 澤 正史, 小野 芳孝, 濱田 国義
    セッションID: 1D23
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉
    近年におけるがん治療は進化する一方である。同じく、がん治療における選択肢として、外来における化学療法投与が近年クローズアップされつつある。当院においても、がん診療拠点病院として地域のニーズに沿うべく、外来化学療法を施行する通院治療室の構築が検討された。今回は、通院治療室の構築経緯と運用考慮点について報告を行う。
    〈経過と方法〉
    ハードとしての通院治療室は、施設基準の要件を満たすべく新しく新設されることとなったが、ソフト面では、予算と工期の関係上、電子カルテ内の専用ツール導入は先送りとなった。よって、第1段階として既存の電子カルテシステムを使用した運用を構築し、その後、電子カルテのバージョンアップとともに専用ツールを導入するという2段階制となった。人員構成は、薬剤師と専属看護師を配置し、より専門的な対応を可能とした。また、医師においても血液内科の医師を中心として、当番制によって室内に常駐する体制を敷いた。新規運用を行ううえで特に考慮した点は、外来の化学療法調製を薬剤師が安全キャビネット内で行うといった安全且つ正確性に対する考慮とともに、医師による患者状態のダブルチェック運用を構築し、次の第2段階につなげる基礎的な部分を充足することに重点を置いた。また、化学療法においては、今後、入院患者の薬剤も通院治療室内で薬剤師が調製を行うことを予定しており、院内の化学療法におけるトータル的な管理運用を通院治療室スタッフが行う構想である。
    〈対象患者〉
    主な対象は、前述の通り外来においての化学療法であるが、当院は、地域における急性期病院としての役割が色濃く、これら以外にも、在院日数短縮のための日帰り検査(具体的には心臓カテーテル検査や気管支鏡検査)や自己血採血用の部屋として利用する予定である。尚、外来の化学療法は院内登録のプロトコールに沿った投与方法のみが承認され、それ以外の使用方法は運用的に行わないこととしているため、対象の患者は全て院内認可のプロトコールに従った化学療法を行う患者である。しかし、小児科の白血病患者は例外としている。これは、大人から感染する可能性やルート確保スキルの問題、セット登録を行うシステム対応が実運用に馴染まないこと等があり、今回の対象からは除外している。
    〈問題点と今後の対策〉
    今回は、第1段階として運用構築を行ったが、システム的にチェックを行っている部分が少ない。人の目によるチェックは見落としの可能性が否定できない。また、システム的機能追加を行わず、既存の機能を流用、あるいはカスタマイズしているため、例え院内で認可されていないプロトコールでも、注射オーダを利用して投与できてしまう可能性を残している。これらに対し、第2段階として、電子カルテシステムによる上限量、休薬期間、相互作用禁忌を行い、誤投与を防ぐ化学療法マネージメントシステムを導入する予定である。それまでは危険を最小限に減らすため、薬剤師による事前チェックを行う運用とした。この要因もさることながら、薬剤管理と施行面において薬剤師の役割は非常に重要且つ多義にわたるため要員不足が生じているのもひとつの問題である。
    第1段階がまとまった現在、第2段階としての運用構築を現在鋭意検討中である。
  • 永美 大志, 矢島 伸樹, 西垣 良夫
    セッションID: 1E01
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに> 演者らは、第51回学会(2002)において、水田土壌に除草剤ダイムロンが、相当長期にわたり残留する可能性があることを報告した。
    水田土壌に、農薬を供給する経路としては、当該圃場への施用はもちろんのこと、用水の上流の圃場で施用することにより、用水に除草剤が含有している場合などが考えられ、1999年に改正されたJAS法の中で、有機栽培を行う場合、上流に圃場がないこと、または、圃場があって、用水に農薬が含まれている場合は、これを除去する措置を取らなければならないことが規定されている1)
     演者らは、長野県内の有機栽培を行っている水田用水中のダイムロン濃度の推移を調査したのでその結果を報告する。
    <調査対象および方法> 長野県佐久市中南部の水田単作が行われている3つの圃場の用水路、小さな河川および千曲川の水について調査した。2002-2004年の4月から8月にかけて、週1回以上採水した。ダイムロンは、水からジエチルエーテルへ抽出し、高速液体クロマトグラフィー・ダイオードアレイ検出器により分析した。
    <調査結果> 5月下旬頃を中心に最高で3μg/L程度のダイムロンが検出された。検出濃度の推移を右図に示した。用水路、小河川の別では、顕著な差は認められなかった。
    この検出状況は、調査地点の上流の圃場で使用されたダイムロンが、田面水の流出とともに、用水路、河川へ流出していることを示している。
    Okamura et al.2)は、岡山県児島湖および流入する河川の水質を調査し、数十μg/L程度のダイムロンを検出している。本調査の結果は、Okamura et al. の結果に比較して、1桁ほど低いが、このことは、(1)佐久地方が水源を形成する森林の面積が大きく表流水が安定して豊富であること、(2)調査地点上流の圃場数の多寡などが考えられる。
    今回程度の濃度の用水を取水し続けると、除草剤を使用していない水田であっても、土壌濃度として0.01μg/g の桁の土壌濃度をもたらすことが予想され、6, 7月にはダイムロンが検出される可能性がある。児島湖付近の水田では、さらに1桁高い土壌濃度をもたらす可能性が考えられる。
    千曲川の河川水からも、最高で0.12μg/L程度検出された。本河川の下流域では上記以上の濃度レベルが存在しうると推察される。しかも、上水源として使用される場合3)があり、今後の検討課題としたい。
    <文献>
    1)日本農林規格協会.有機農産物及び有機農産物加工食品.同協会:2000;1p、
    2) Okamura H et al. Sci Total Environ. 1999:234(1-3);223-31、3) Yamamoto M. Environ Health Prev Med 2000:37;223-9
  • 児玉 宜子, 遠藤 信英, 岩舘 恭子, 水野 光規, 石原 祐美, 石川 聡, 森田 真貴子, 森永 貴理, 玉井 宏史
    セッションID: 1E02
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言>高度肥満患者の自殺企図による殺虫剤シアノホス(有機リン系殺虫剤)の大量服薬を経験したので報告する。
    <症例>53歳男性。162cm、体重111kg、BMI 42.3。既往歴:高脂血症、痛風、高血圧症、糖尿病を指摘されるも放置。薬物中毒、自殺企図の既往なし、精神科受診歴なし。家族歴:母はうつ病で精神科通院中。職業:トラック運転手。現病歴:200万円ほどの借金があり自殺しようとして2005年1月7日朝に有機リン系殺虫剤であるサイアノックスを服用した。昼間から様子がおかしく「助けてくれ」と言っていた。21時頃に意識障害があるため家族が救急要請し当院救急外来を受診。推定服薬量はシアノホス100ml程度。縮瞳、徐脈、嘔吐、大量の気道分泌を認め、有機リン中毒と診断し、輸液負荷と利尿剤、活性炭50g胃内投与、PAM1gを静注、硫酸アトロピン1mg/hrにて治療を開始した。循環虚脱、呼吸抑制を認めたため、昇圧剤を開始しICUにて挿管のもと人工呼吸器管理となった。誤嚥性肺炎の合併もあり気道分泌も多かったため適宜気管支鏡を用い吸痰を施行した。中心静脈栄養開始後にHbA1c8.9%と高度耐糖能異常を認め、インスリン1日130単位程度必要とした。第13病日、呼吸器weaning中に自己抜管。起座位の保持、マスクCPAPを使用しながら何とか酸素化を維持した。第14病日よりリハビリを開始。精神科も受診し、週3回程度のカウンセリングとセレネースを中心とした内服薬の調節を行った。
     第19病日にICUを退室。自殺企図であったため、一般病床では家族の付き添いを依頼したが、不可能とのことであり早期退院を目指した。硫酸アトロピンを漸減したが、硫酸アトロピンを中止すると大量の下痢が出現。ロートエキスの内服を開始したところ下痢が治まり第29病日に硫酸アトロピンを中止し第32病日に退院となった。
     退院後1週間でロートエキスを中止することができ、社会復帰した。糖尿病に対しては退院時にはアカルボース100mg3錠、メトホルミン250mg2錠の内服としたが、その後は食事療法のみでHbA1c6.1までに改善した。
    <結語>有機リン系殺虫剤は脂溶性であり、脂肪への薬剤の貯留が多い。服用量にもよるが、今回のような肥満症例では特にコリン作用が遷延すると考えられる。ムスカリン様作用である気管支分泌物、縮瞳といった症状とニコチン様作用の筋力低下を認め、これらの症状により長期間にわたり持続の硫酸アトロピン投与を必要とした。高度肥満のため、呼吸訓練や姿勢保持のリハビリテーションも長期間にわたり必要であった。また、キシレンによると考えられる誤嚥性肺炎も合併した。糖尿病と高度肥満により急性期治療に難渋した有機リン中毒を経験した。初期治療の文献的考察も交えて報告する。
  • 藤井 恵美子, 岡本 信子, 藤本 真理, 松田 久美子, 宮地 恵子, 藤田 寿賀
    セッションID: 1E03
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>
     口腔環境の改善は、口腔機能の維持・回復や嚥下性肺炎の予防にも有効であり、QOLの向上・ADLの改善にも密接に関係している。呼吸器疾患患者を多く抱える当病棟は、嚥下性肺炎で入退院を繰り返す要介護高齢者が少なくない。そこで、口腔環境の改善を目的にした「病棟歯磨き隊」を結成し口腔ケアの見直しを行っている。従来、含嗽ができない患者はガーゼやスポンジによる口腔清拭の方法を行っていた。しかし、ガーゼやスポンジの清拭だけでは喀痰や食物残渣の除去はできても粘調な喀痰の除去は困難で、看護者の自己満足でしかないのではないかと考えた。そこで、専用ブラシに吸引チューブを装着し、使用済み輸液ボトルと輸液セットを使用して口腔内を洗浄と同時に吸引する口腔洗浄法を試みた。その結果、口臭や口腔内の汚染状況の改善が見られ、更に患者自身や家族にも変化が見られたのでその方法を紹介する。
    <対象>
     寝たきり度ランクC(含嗽のできない患者)
    <方法>
     使用済みの輸液ボトルに洗浄水を入れ輸液セットを装着する。専用ブラシ(吸引クルリーナブラシ)にもう一本吸引チューブを固定し、吸引器と輸液セットにそれぞれ接続する。患者はファーラー位の側臥位とし、洗浄水を誤嚥しないよう滴下量を輸液セットのクレンメで調節しながら洗浄と吸引を同時に行う。
    <結果及び考察>
     導入当初は洗浄水の滴下量の調節が不適切で患者がムセたり、手順に時間が掛かるなど技術不足により患者に負担を強いることもあり、患者が開口してくれないなどの問題点もあった。看護者も誤嚥のリスクや施行時間が掛かるなど日常業務の中で取り入れる事の不安があったが、技術的に慣れてくると口腔内の洗浄と吸引が看護師一人の手で行え、口腔ストレッチを合わせて行っても15分程度で施行できるようになった。開口してもらえなかった患者が、少しずつ開口もしてくれるようになり、発声しなかった患者の声が出るようになるなど患者の反応も従来とは違ってきている。また、家族が進んでストレッチや口腔ケアの方法を聞いて実践するなど、患者の周囲の変化もみられるようになった。現在では手順に慣れた事もあり業務の一環として取り組む事ができるようになり、口腔内の観察も看護者全員がポイントを把握し行えるようになった。
     口腔環境の改善は究極的には摂食・嚥下を促し、ひいては栄養状態の改善、会話によるコミュニケーションの維持、呼吸器感染の予防などQOLを維持・向上させることと密接に関係している。その一環として口腔ケアは必須であり、看護の中では日常的に実施はされているものの個々の経験的なケアが主体であり、エビデンスに基づいたケアプログラムはまだ見当たらない。口腔洗浄法は看護者の知識や技術が必要であるが、訓練により従来の口腔ケアの施行時間と大差なく行え、患者の口臭や口腔内環境が良くなり家族の反応も変化してきたと考えられる。
    <おわりに>
     今後は、口腔洗浄法を口腔ケアの一方法として位置づけできるように効果としてデータを収集し評価していきたい。
  • 通所サービスを導入して
    西條 美雪, 宮越 明子, 川村 美千子, 吉田 優子, 松岡 富紀子, 竹内 真奈美, 大塚 博江
    セッションID: 1E04
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに> 我が国では、家庭においても医療、看護を必要とする人が急速に増加している。在宅療養については吸引の為に家族は多大な介護負担を強いられる場合が少なくない。 在宅療養を継続するためにはこの状況を改善する必要性を感じこの研究に取り組んだ。
    <事例紹介> U様 62歳(妻と2人暮らし)H12多系統萎縮症と診断される。(気道閉塞の為、気管切開施行)
    ADLの状況
    移動:車椅子(全介助)食事:経管栄養
     排泄:オムツ使用 導尿(朝・夕 2回)
     意思疎通:文字盤 eyeコンタクト
    <方法>
    ・サービス担当者会議を持ち、在宅中のケアの方向性を明らかにする。
    ・サービス事業者に受け入れを働きかける。
    ・実際にサービスを利用する。
    ・本人・妻の感想を聴き、継続して利用できるよう調整する。
    <結果> 各サービス事業者と医師を交えサービス担当者会議を実施。医師の助言により、施設利用可能となった。本人と家族からはサービス導入に向けて前向きな意見が聴け、デイサービスを試みることとなり、1回目の利用時には訪問看護師とケアマネの同行を提案した。
    1回目のデイサービスを利用、特に問題はなかった。その後は引き続き、週に1回程度継続的に利用できるようになった。
    <考察> 介護者の負担は大きいにもかかわらず、サービスを受け入れてくれる所が少ないため在宅療養に限界を感じているケースが多い。
     今まで気管切開のある方は訪問サービスによる介護支援を実施してきた。しかし、頻回の吸引等で介護者は精神的・身体的に疲労が蓄積している。小林氏らは、1)「介護者を身体的・精神的負担から開放し、十分で効果的な休息をとらせていくことは、在宅療養をよりスムーズに継続させていくためには必要不可欠である。」と介護休息の重要性を述べている。
    これまでもデイサービスの利用を検討したが、気管切開をしており吸引が頻回なことで実現できなかったという経過がある。
    今回、医師より病状・今後在宅での必要なサービスについて説明・助言を得たことは、家族の意識改革とサービス事業者の理解を得、安心感を与えたと考える。
     また1回目の利用時に訪問看護師とケアマネが同行し、個別的な医療ケアを含めた係わりを共に実践したことで本人とサービス提供者双方にとって自信に繋がった。更に、利用中は隣の利用者を気遣う様子が見られ、次回からのサービス利用に拒否的態度が見られなかったことは社会性回復のきっかけになったと言える。
    <結論>
    ・施設利用により、介護休息が取れた。
    ・本人・家族及び関係者の共通理解のためには、医師を含めたサービス担当者会議の開催が不可欠である。
    ・社会性を保つためには他者との交流が必要である。
    <おわりに>難病患者をはじめ、医療依存度の高い患者が在宅療養に移行するケースが増えてきている。今後は現在あるサービスを利用するだけでなく、各事業者間で連携をとりながら新たなサービスの開拓にも取り組んでいく必要があると考える。
  • 大林 浩幸, 服部 哲男, 原 政子, 小林 亜喜子, 小林 ミカ
    セッションID: 1E05
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>本邦の禁煙治療のほとんどは、医師面接型の禁煙外来によるニコチン置換療法(NRT)が主流であるが、その成功率は必ずしも高いと言えない。1999年9月に開講した当院禁煙教室は、2006年9月に8年目を迎えた。この間400名以上の禁煙指導・治療を行い、その中で特に当院独自の禁煙プログラムを実施した参加者の1年後禁煙継続率は数年来60%前後を維持している。今回、その教室での禁煙プログラムの成果を検討したので報告する。
    <方法>対象は1999年9月から2006年3月までに当院禁煙プログラムを実施した、教室参加者232名である。禁煙開始1年後の禁煙継続率および、年度ごとの累積禁煙継続率を検討した。なお、当教室で行う6ヵ月間の禁煙プログラムは、6ヵ月間の禁煙行動療法の体得と実践に、初期8週間のNRTを併用したものである。医師・薬剤師・看護師・栄養士・理学療法士等から成る禁煙専門サポートチームが、1グループ10名以内の小グループ単位の参加者に対し、患者参加型の禁煙指導・治療を行う。さらに、管理栄養士による体重増加防止の栄養指導、理学療法士による禁煙ストレスを取る体操を定期プログラムに取り入れている。
    <結果>232名の禁煙開始8週間後・6ヵ月後・1年後の各禁煙継続率は、78.4%、70.3%、64.7%であった(2006年3月現在)(Figure 1(A))。また、累積禁煙継続率をFigure1(B)に示す。1年禁煙継続者の78.0%が、禁煙教室での禁煙は楽と答えた。
    <結論>当院で行う、6ヶ月間の患者参加型禁煙教室は、この7年間、高い1年禁煙継続率を維持し、参加者に対して効果的な禁煙治療を提供できていたと考える。
  • (個別指導と集団指導を比較して)
    伊佐治 亮平, 横山 敏之, 小林 加代子, 上木 美智子, 岡本 歩, 武山 直治
    セッションID: 1E06
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉喫煙が肺癌・咽頭癌・慢性閉塞性肺疾患・虚血性心疾患・脳梗塞など多くの病気を引き起こすことは医学的にも確立されてきた事実である。また、禁煙に対しての関心も高まり、禁煙を望む人も増えている。そこで、当院における禁煙外来の個別指導と集団指導を比較して、どのような因子が禁煙成功に影響するか検討した。
    〈方法〉指導方法として、個別指導は、個人から受診希望があった際に資料を送付し初回受診日までに記入して持参する。そして、各個人が希望する日に初回受診し、検査(呼気CO濃度測定・尿中ニコチン濃度測定)・医師の診察・保健師による禁煙指導を行い、ニコチンパッチを2ヶ月間使用した禁煙方法とした。禁煙開始から2-3日後に電話にてフォローし、2回目受診日(禁煙から2週間後)・3回目受診日(禁煙から6週間後)・4回目受診日(禁煙から8週間後)に検査(呼気CO濃度測定・尿中ニコチン濃度測定)・医師の診察・禁煙指導を行った。禁煙3ヶ月後・6ヵ月後・1年後に電話にて禁煙経過の確認を行う指導方法とした。集団指導は、高山市住民健診を受診した高山市国民健康保険加入者のうち旧高山市住民の喫煙者全員(平成16年までは高山市国保総合健診及び飛騨農協総合健診を受診した喫煙者全員)に対して電話にて禁煙を推奨し、受診希望があった人に教室の案内文を郵送した。初回は、全員が同じ日で、禁煙すると決めなくても参加できる日とし、禁煙に関する話と以前に集団指導を受診した禁煙成功者が直接体験談を話す会とした。その上で実際に禁煙を始められる方は、数日後の指定日に受診し、検査(呼気CO濃度測定・尿中ニコチン濃度測定)・医師の診察・禁煙指導・グループワークを行い、ニコチンパッチを2ヶ月間使用した禁煙方法とした。禁煙開始から2-3日後に電話にてフォローし、個別相談週間(禁煙から2週間)・集団指導受診日(禁煙から4週間後)・個別相談週間(禁煙から6週間)・集団指導受診日(禁煙から8週間後)に検査(呼気CO濃度測定・尿中ニコチン濃度測定)・禁煙指導を行い、集団指導時には全員が同じ日に受診し、グループワークを実施した。教室終了後も集まりたいとの要望があり、3ヶ月毎に自主的に同窓会を開催し周囲との情報交換の場となった。そして、禁煙1年達成者には次年度の集団指導初回時に禁煙達成証明書を渡して表彰した。
    〈対象および結果〉受診者は、個別指導34名(平成12から16年)・集団指導45名(平成13から16年)であった。禁煙成功率は、個別指導32.4%(11名/34名)・集団指導80%(36名/45名)であり、集団指導で高い成功率を示した。
    〈考察〉集団指導で成功率が高かった因子として、<1>初回受診において、禁煙をすると決めていなくても参加出来ることで気軽に受診ができたこと<2>初回受診時に禁煙成功者の話を聞いて禁煙するという気持ちを高めることが出来たこと<3>グループワークを行うことでお互いの励みになり、自主的な動き(同窓会)が出たこと<4>地域性として、顔見知りが多く、農閑期に集団指導を実施できたことが考えられる。
    〈結語〉今回個別指導と集団指導を比較検討し、集団指導の禁煙成功率が高かった。今回の考察を生かし、より充実した禁煙指導を行いたい。
  • -小学生を対象にした喫煙防止授業の試み-
    渡 正伸, 熊谷 元
    セッションID: 1E07
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言>近年、日本はたばこ規制枠組条約を批准し、たばこ規制に対して国際レベルの行動が求められるようになった。喫煙の有害性が認められるようになり、禁煙運動も社会的に大きな流れとなっている。しかしながら我が国においてはタバコ産業の大株主は財務省であり、厚生労働省もたばこが有害と知りながらも縦割り行政の弊害のためか抜本的なたばこ対策が実施しにくい状況と言える。近年、男性の喫煙率が低下する一方で、若い女性における喫煙率が増加している。若い女性、つまり子どもを持つ母親の世代での喫煙率が増加していることは、喫煙行動が子どもにとって身近な事柄となっていることが推察され憂慮すべき状況といえる。このような状況下に置かれた子ども達にたばこの有害性を教えていくことは最重要課題の一つと考えられる。国、政府がたばこの有害性を知りながらも現状維持のたばこ政策を行うかぎり、国民、子どもは被害者でありつづけることになる。人々の健康を守ることは医師の使命の一つであることを考えると、たばこの有害性をまずは医師が率先して訴えなくてはならない。日々の診療をするにとどまらず、もっと積極的に疾病予防の見地に立って第一次予防に目をむけるべきである。
    <方法>呼吸器疾患をはじめ循環器疾患など多くの疾病に喫煙の有害性が大きく関与している。喫煙患者の禁煙指導が必要な反面、健康者に対する禁煙教育、さらには防煙教育が重要と考えた。即ち、未だたばこを吸ったことのない小学生時代に喫煙の有害性を知っておくことが重要であり喫煙防止効果も期待できると考えた。最初は校医をしている知り合いの医師をとおして小学校に喫煙防止授業の提案を行った。快諾を得た後、小学6年生に喫煙の有害性について授業を実施した。その後は市の教育課長に依頼し市全域の小学校に働きかけをしてもらい、喫煙防止授業を実施するよう小学校に呼びかけた。授業は院内の診療業務の合間に予定して実施し、診療に重大な支障が生じないよう配慮した。
    <結果、考察>2002年度から小学校を中心に喫煙防止教室を行ってきた。2002?2005年度で5、6、9、11校と授業を実施してきた。徐々に開催校は増加している。今後さらに喫煙防止授業を希望する学校が増加した場合、個人ではマンパワー不足となる可能性がある。対策としては協力者を募るか、地区医師会や校医の協力が必要となる可能性もある。若い女性、即ち小学生の子どもを持つような女性の喫煙率が増加している現在、喫煙に対する正しい評価と判断を下すためには、正しい知識を小学生のうちに身に付けてもらうことが重要である。そのためには我々医師が喫煙の有害性を具体的に教えていく必要があると考えられる。喫煙防止授業の活動がどれ程の成果をあげるかは未知であるが医師の大きな役割と考えている
  • 砂田 光江, 大塚 幸子, 太田 くる美
    セッションID: 1E08
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>当院の看護職員で構成されている自治会(以下「ふれ愛会」とする)は、平成15年度から禁煙支援活動に力を入れてきた。活動内容としては、ポスター掲示や禁煙研修への参加、院内での禁煙講演の実施を継続して行っている。今回、禁煙支援活動の有効性を看護師の喫煙実態調査から示唆することができたのでここに報告する。
    <研究方法>平成15年度と平成16年度の年度末に2回、独自に作成した喫煙実態調査を実施した。対象者は当院看護師(平成15年度274名、平成16年度242名)
    <倫理的配慮>対象者に承諾を得、個人が特定されず、調査目的以外には使用しないことを説明した。
    <結果・考察>喫煙実態調査の結果は表1に示す通り、当院の平成15年度喫煙率は23.0%であったが、禁煙支援活動を行った次年度は20.2%と減少している。これは岐阜県看護協会が調査した(平成15年度)医療圏内看護者喫煙率29.3%より、平成15年度・16年度共に低いことが分かった。しかし、禁煙を試みたが失敗した・禁煙を考えたが何もしない・禁煙を考えたことがない者が平成15年度45.0%、平成16年度33.5%であった。里村・中原氏は、「喫煙がやめられない理由はニコチンの興奮と抑制という薬理作用に依存している状態」と述べているように、禁煙支援活動を行っていく上での課題と考える。今後、喫煙によって自分の健康が損なわれることの自覚を促し、薬害・副作用を考慮した禁煙支援活動に繋げていく必要がある。また、仕事中吸わない者は平成15年度52.0%、16年度32.7%であった。この結果から仕事中は吸わないという意志の強さや他の事への関心から、吸わないという行動変容を起こすと考える。今後は禁煙を進めるためのサークル活動などの場を提供し、喫煙者の心理面でのサポートができる禁煙支援活動に取り組むことが大切と考える。そのためには、これらの禁煙支援活動を継続・強化していくことが必要である。尚、この研究での対象者は同一でないため、研究の限界はある。
    <結論>
    1.喫煙者の多数は禁煙を意識している。
    2.禁煙支援活動を実施すると、禁煙する者が増加する。
    3.禁煙支援活動により喫煙行動に影響を与える。           
  • 碓井 裕史, 鎌田 恭子, 野村 恵美, 久保 知子, 福岡 達仁, 横山 聡
    セッションID: 1E09
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    喫煙は各種臓器のがん,肺疾患,心血管障害の重大な危険因子である。喫煙者は減少傾向にあるとはいえ,禁煙を志す人の約半数は中途で挫折すると言われている。たばこの煙に含まれる発がん物質(ペンゾピレン,ニトロソアミン)の代謝に関与する酵素の遺伝子変異(CYP1A1およびCYP2A6遺伝子の一塩基多型およびGSTM1遺伝子の欠損)は肺扁平上皮がんのリスクを高めることが報告されている。喫煙者が自分の遺伝情報を知ることは,禁煙の開始やその継続に対して大きな動機付けになると考えられる。本研究は喫煙者の禁煙支援を目的に,喫煙者に対して上述の遺伝子変異の有無を調べ,その意味を説明し,希望者には保健師による個別の禁煙指導を行った。対象者は広島市周辺の農協関連職員の喫煙者で遺伝子検査を希望する46人で全員男性であった。遺伝子の解析は広島総合病院臨床研究検査科で行った。CYP1A1遺伝子の解析ではm1/m1型24人,m1/m2型20人,m2/m2型2人であった(m1/m1,m1/m2,m2/m2の順で肺扁平上皮がんの危険率が高まる)。GSTM1遺伝子の解析では本遺伝子存在17人,欠損29人であった(遺伝子欠損で肺扁平上皮がんの危険率が高まる)。CYP2A6遺伝子の解析では4A/4A型1人,1A/1A型7人,左記以外の型38人であった(4A/4A型,1A/1A型,その他の型の順で肺扁平上皮がんの危険率が高くなる)。46人中,禁煙指導を希望した8人の遺伝子型の偏りは認められなかった。禁煙指導を希望した人の喫煙ステージ分類(遺伝子検査前に調査)ではステージ1(禁煙しようとは思わない)12人中1人(8%),ステージ2(禁煙に関心はあるが,この1年以内の禁煙は考えていない)12人中1人(8%),ステージ3(禁煙に関心があり,この1年以内の禁煙を考えている)6人中3人(50%),ステージ4(この1ヵ月以内に禁煙する予定)2人中2人(100%),ステージ5(この検査の結果によっては,禁煙を考える)14人中1人(7%)であった。ステージ1および2の人で遺伝子検査後,禁煙指導を希望する人が現れた。ニコチン依存度で見ると低依存度5人中1人,中依存度26人中4人,高依存度15人中3人が禁煙を希望した。禁煙指導を受ける年齢は,20代5人中0人,30代は16人中5人,40代は18人中2人,50代は7人中1人と30代の人で多かった。これらの禁煙希望者に対して,喫煙状況,たばこに対する考え方等のアンケート調査を行った後,禁煙プログラムを作成して文書,電話等で個別に連絡を取りながら禁煙指導を始めた。禁煙支援の一環としてニコチンガムを希望者に配布した。8人の内,5人がニコチンガムを使用している。現在のところ,禁煙の離脱者はおらず,引き続き連絡を取りあって禁煙の支援を行っている。
  • 今後の効果的な血圧指導に向けて
    加藤 智美, 須藤 真弓, 志水 美香, 山口 倫子, 加藤 貴子, 金野 房代, 永峰 秀子
    セッションID: 1E10
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>糖尿病患者における血圧管理は、動脈硬化・脳心血管系の発症、更には糖尿病性腎症の発症・進行に大きく関わり血糖コントロールと同様、血圧コントロールの重要性が問われている。現在約2,000名の糖尿病患者が通院しているが、血圧コントロールが難しい状況である。その原因の一つは、指導の対象や内容が看護師個々の判断に委ねられている部分が多く、指導内容が統一されていないためと考える。今後の指導のあり方を見直すために、血圧管理を必要とする患者がどの程度いるのか、合併症の程度・状態など実態を知ることを目的として調査を行った。
    <研究方法>外来通院糖尿病患者 300名のカルテ調査(属性:糖尿病歴、HbA1c値、三大合併症の有無、腎症の病期、脳心血管系障害の有無、高血圧の有無、外来随時血圧値など)を行った。
    <結果及び考察>主な合併症の頻度としては、高脂血症58%、高血圧56%、腎症53%(早期26%、顕性20%、腎不全7%)、肥満40%、網膜症39%、心血管障害30%、神経障害30%、脳血管障害10%の順であった。高血圧・高脂血症・肥満・腎症・脳心血管障害のいずれかを有する患者は、264名で88%であった。
     糖尿病の三大合併症の有病率は網膜症38.8%、腎症(顕性)20.1%、神経障害36.3%と全国と大きく違いはなかった。2型糖尿病では、受診時すでに腎症や網膜症などの合併症が進展している事が多いと言われており、調査でも、すでに腎不全が7%みられた。初診時に合併症の状態をアセスメントし、指導内容の優先順位を考えた関わりが重要である。糖尿病性腎症は、主な合併症の三番目に多くみられた。血圧を長期間良好にコントロールできれば腎機能の低下速度が遅くなることが明らかになっている。外来随時血圧は「腎症無」「早期腎症」の平均血圧は130/80mmHgの目標値を達成しているが「顕性腎症」は最高血圧平均137 mmHg、「腎不全」は134 mmHgと達成していなかった。しかし、外来での血圧測定はストレスなどの因子が加わり、それだけでは評価できないと言われており、家庭血圧の必要性・回数・記録方法など具体的な指導が必要である。
     厚生労働省による「平成14年糖尿病実態調査報告」では「糖尿病で高血圧が多い」という知識がある人は、40.5%と半数にも満たなかったため、血圧管理の重要性を認識できるような教育が必要と考える。その対象は第一段階として、(1)糖尿病と初めて診断された患者、(2)すでに腎不全状態の患者、(3)外来随時血圧が140/90mmHg以上の患者と考えている。方法は、統一した指導が行え、継続できるようなチェックリストの作成を検討したい。また、指導の対象者が多数であることから、個別指導に限らず待合室のパンフレットの配置・院内のパネルや内科外来設置のビデオで、血圧値の基準や家庭血圧測定の有効性、糖尿病と血圧の関係を情報提供していきたい。
    <まとめ>今回リスクの高い患者が数多くいることが、あきらかになった。今後も継続した関わりが必要であり取り組んでいきたい。
  • 畝 博, 林 雅人, 武山 直治, 百瀬 義人, 瓜生 洋子
    セッションID: 1E11
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言> 近年、生活レベルは農村部と都市部の間、あるいは地域間に大きな差はなく、生活習慣は全国的に均一化してきているといわれている。そこで、全国4ヶ所の農村部・離島の生活習慣と生活習慣病有病率の調査し、農業従事者と非農業従事者、および地域間の生活習慣と生活習慣病有病率にどのような違いがあるか比較検討した。
    <方法> 対象者は、秋田県平鹿町、岐阜県古川町、福岡県夜須町、および離島の長崎県大島町の基本健康診査を受診した2,328人(男850人、女1,478人)である。
     調査項目は、血液生化学検査、栄養調査、および身体活動量調査である。血液生化学検査は同一の測定機関で行った。身体活動量調査には国際標準化身体活動質問票を、栄養調査には簡易型自記式食事歴法質問票を用いた。
    <結果>
    1.総コレステロール値の地域差
     地域の生活習慣や生活習慣病の格差のバロメーターになる総コレステロール値の平均値をみると、男では192-203mg/dl、女では208-226mg/dlであり、4地域の間に若干の違いはあるものの、その差は大きなものではなく、生活習慣は均一化していることを裏付けるものであった。
    2.生活習慣病に対する農業従事者のリスク
     平鹿町、古川町および夜須町の3地域を対象として生活習慣病に対する農業従事者のリスクをLogistic Regression Analysisにより算出した。
     女の農業従事者では非農業従事者より高コレステロール血症(オッズ比=0.72、p<0.05)とHbA1c 6.1%以上(オッズ比=0.57、p<0.05)のリスクが有意に低かった。
    3.生活習慣病と栄養素摂取状況との関係
     平鹿町、古川町、夜須町および大島町の4地域を対象として生活習慣病と栄養素摂取状況との関係についてLogistic Regression Analysisにより検討した。
     女では早食いの者(オッズ比=2.04、p<0.001)と脂質エネルギー比率が高い者(オッズ比=1.35、p<0.05)で、男では早食いの者(オッズ比=2.43、p<0.001)で肥満のリスクが有意に高かった。
  • 塩飽 邦憲, 渡部 麻実子, 山崎 雅之, 米山 敏美, 乃木 章子
    セッションID: 1E12
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
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    <緒言> 遺伝子の一塩基多型(遺伝子多型)と生活習慣病との関係を調べ,予防や治療に役立てようとするオーダーメイド医療の研究が進みつつある。農村で増加する肥満発症には,遺伝子多型が30%,環境が70%関与すると考えられている。しかし,これまで本学会で報告したように北東アジアでの肥満関連疾患は民族によって異なっている。そこで,北東アジアでの肥満関連(β3-アドレナリン受容体)遺伝子多型と肥満との関連を検討した。
    <方法> 1999-2003年に島根県(男288、女576),韓国・釜山(男250,女185),モンゴル・ウランバートル(男105、女148)の労働者を対象に断面調査を行った。また,2000-2005年に島根県出雲市壮年(平均56歳)のメタボリックシンドロームおよびその予備軍(日本人肥満群:男65,女210)に3カ月間の健康教育による生活習慣変容プログラムを行った。絶食状態で、body mass index (BMI)を測定し,白血球よりDNAを抽出してβ3-アドレナリン受容体遺伝子多型をRestriction Fragment Length Polymorphisms法にて検査した。
    <結果>
    1.北東アジア人の遺伝子多型
     β3-アドレナリン受容体遺伝子多型は,島根県では野生型62%,ヘテロ接合型35%,ホモ接合型4%で,日本人での平均多型割合とほぼ同率であった。一方,韓国では野生型73%,ヘテロ接合型24%,ホモ接合型3%,モンゴルでは野生型67%,ヘテロ接合型29%,ホモ接合型4%で,白人よりも日本人に近似していた。
    2.断面調査での遺伝子多型とBMI
     野生型に比較して変異型(ヘテロ接合型およびホモ接合型)は,島根県ではややBMIが増加していたが,韓国およびモンゴルでは有意な差を認めなかった。日本人肥満群でも介入前はBMI,ウエスト囲など肥満指標に有意な差を認めなかった。しかし,血中インスリン濃度とHOMA-IRは女の変異群で有意に高かった。
    3.教育介入と遺伝子多型
     3カ月間の教育介入によって,参加者は平均1.5 kg(男1.8 kg,女1.3 kg)の減量を行った。体重減少量の線形回帰分析では,男女とも生活習慣変容による熱量出納差(β: 男0.272, 女0.476)が最も強く影響し,ついで介入前の肥満BMI(β: 男-0.269, 女-0.175)が関与していた。男では,加齢(β: -0.288),女では3-アドレナリン受容体遺伝子多型(β: 0.120)が有意に関係していた。
    <考察> 肥満度の異なる北東アジア人のβ3-アドレナリン受容体遺伝子多型は,白人と異なり,変異率が高いことが明らかになった。本研究でのコミュニティ対象および肥満群での断面調査では,本遺伝子変異による肥満への影響は観察されなかった。肥満への関与が最も強いとされているβ3-アドレナリン受容体遺伝子多型は,これまでの断面調査では,変異群が野生群よりBMIをわずかに(0.3)増加させることがメタ分析で報告されている(Fujisawa et al., 1998)。一方,3カ月間の介入試験による平均1.5 kg減量では,生活習慣変容よりも弱い影響ではあるが,女の本遺伝子変異群が痩せにくいことが明らかになった。
  • 「職員相談」開始から1年を迎えて
    五艘 香, 川崎 弘子, 別所 隆
    セッションID: 1E13
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
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    <はじめに>職業生活においてストレスを自覚する労働者は年々増加傾向にあると言われている。医療界では医学の高度化に伴い業務内容の高度化・複雑化が進行し、また医療制度変革に伴う業務量の増加がみられている。心の問題への社会的関心や認識が高まる中、医療現場でも患者様を支える職員のメンタルヘルス対策の必要性が指摘され、サポートシステムの構築が進められてきている。
     当院においても、うつ病をはじめとする精神疾患による病気欠勤者の増加、若年職員の職場不適応や離職数の増加などが問題視されるようになってきた。職場内の人間関係を円滑にし、職場の活性化を図り、仕事の生産性、安全性を高めるために職員一人一人の身体・精神的健康の維持・増進が重要である。当院では職員の精神的健康の維持・増進を目的として、平成17年4月から職員メンタルヘルス相談が開始された。開始から1年間の取り組みを報告する。
    <対象と方法>職員メンタルヘルス相談は、名称を「職員相談」とし、当院に勤務する職員を対象に平成17年4月1日から開始した。担当は常勤の心理職1名。患者を対象とした臨床心理業務と職員を対象とした職員相談の業務を兼任している。職員相談開始の広報では、目的・意義・利用法などについて、管理者対象の会議、院内掲示、各部署へはミーティング、案内紙、メール、WEBなどを利用して行った。相談方法は面接を原則として予約制で行い、問い合わせには電話やメールでの対応も行っている。プライバシーの保護が前提ではあるが、緊急性を要する場合や、職場内の調整が必要であると判断された場合には相談者本人の了解の上、職場内での調整も行った。なお、心の問題を誰もが抱える身近な問題と捉え、ストレスへの気づきを促すためにもコミュニケーション誌を利用するなど啓発教育活動も継続的に行っている。
    <結果>平成17年4月1日から平成18年3月31日の1年目の結果について報告する。(1)総面接件数543件(相談者との面接271件、院内調整237件、院外調整35件)、実相談者数33人 (2)相談の開始経路は、相談者自ら51.3%、上司などラインより45.5%、他3.0%であった。(3)相談内容は、職場や仕事に関する相談78.8%、相談にくる本人自身に関する相談54.5%、家族に関する相談27.3%であった。(複数回答有)(4)精神科医などへ紹介を行ったケース33.3%であった。
    <考察>職員のメンタルヘルスの一環として、平成17年4月に「職員相談」が開始された。開始1年の相談件数は、予想を上回る件数であり、広報・啓発活動も功を奏したのかスムーズな導入ができたと考える。ラインからの相談で開始となったケースも多く、メンタルバランス変調への気づきは職場が最初であることも多い。「職員相談」の開始以前は、ラインや職場での対応が求められ多忙な業務の中で、本人はもちろん上司・同僚ともにストレスフルであった可能性が推察される。個人のプライバシーに配慮しながらも職場との連携、そしてラインや職場へのサポートの必要性も感じた。
     職場が医療機関であり、経営陣のメンタルヘルスへの関心・理解が高かったことも職員相談がスムーズに導入された一因であろう。今後も継続的な広報・啓発活動を行い、相談の実践を積み重ねて行くことで問題点を整理し、組織的なメンタルヘルス活動への取り組みにつなげていきたい。
  • 当院看護者にアンケート調査を実施して
    絹村 典子, 桜井 洋子, 諸星 浩美, 玉内 登志雄
    セッションID: 1E14
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
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    <緒言>近年、わが国の保健医療界では高齢化や生活習慣病が増加し、医療技術も進歩している。看護職に求められる知識や技術も高度となり、日常の業務に伴う緊張の連続によって看護師は過度のストレスにより、心身共に疲弊状態に陥る者が増加している。
     当院でも、患者の高齢化、時間外労働など労働条件の悪化がみられ、看護職のストレスは多いと思われる。看護師は、日頃から患者満足度を高める努力を職務としているが、患者満足は職員の仕事上の満足とも強く関連していると考える。今回、ストレスと仕事の認識の関係について調査したので報告する。
     <方法>
     調査対象:K病院 看護部長、看護副部長を除く看護職員178名
     調査期間:2005年7月1日から7月12日
     調査方法:質問紙自記式無記名調査法
     職業ストレスのスケールは、東京医科大学衛生学公衆衛生学の労働省作業関連疾患の予防に関する研究班が開発した「職業ストレス簡易調査票」を使用した。
     仕事に関する認識のスケールは、Hinshawの開発したモデルをもとに中山洋子氏らが作成したものを使用した。ストレスあり群となし群の2群間で、クロス集計を行った。
    <結果>対象は、男性2名、女性174名。ストレス有り77名、ストレス無し87名で、年齢別で有意差は見られなかったが、23歳以下にストレスが高い状態の者が多かった。
     仕事に対する認識について、「管理システム」に対して満足が4名、不満足が159名であり、「給与」に対する不満足が154名と多かった。「仕事上の人間関係」に対して満足が16名、不満足が140名であり、その中でも「医師との人間関係」に対して不満足が157名と多かった。「専門職性」に対して満足が12名、不満足が151名であり、「ケア提供時間」に対しての不満足が158名と最も多かった。「看護師としての自己実現」に対して満足が18名不満足が153名であり、「変革力」が157名と最も多かった。
     ストレスと仕事の認識の関係では、ストレスあり群100%とストレスなし群97.4%が「管理システム」に対し不満足と回答している。「仕事の人間関係」ではストレスあり群94.4%とストレスなし群85.9%が不満足と回答している。「専門職制」ではストレスあり群95%とストレスなし群88.3%が不満足と回答している。「看護師としての自己実現」ではストレスあり群92%とストレスなし群85.9%が不満足と回答している。
    <考察>適度なストレスは毎日の生活にメリハリを持たせ、プラスに働くことがある。今後は職場における心のリスクを減少させるために、原因となる職場の環境を整える努力と個人のストレスへの対応能力を向上させる努力の2つの柱が必要となる。
     当院の看護職者の変革力を失わせる要因は、看護管理システムや医師との人間関係に影響されている可能性も考えられる。
     仕事を継続して行く上での労働条件や労働環境の調整、改善がなされること、看護部が発言力を持ち医師と対等な立場で看護ができることで職務満足度が向上することが示唆された。
     今後、働く職員が全員で参加できるような取り組みや経営改善ができ、病院全体が明るい方向へモチベーションを上げられるような具体策を提案して行きたい。
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