太平洋セメント研究報告
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2009 巻, 156 号
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巻頭言
論文
  • 小川 彰一, 山田 一夫, 平尾 宙, 兵頭 彦次, 松井 淳, フートン ダグ
    2009 年 2009 巻 156 号 p. 3-11
    発行日: 2009/06/25
    公開日: 2025/02/19
    研究報告書・技術報告書 フリー
     高炉スラグ微粉末(GGBS)を混合したスラグセメントは, ポルトランドセメントと比較して環境影響度が小さく, そのコンクリートは優れた耐久性を示す. しかしながら, ポルトランドセメントと比較して, 初期強度, 中性化, あるいはその化学組成によっては不安定な耐硫酸塩性を示すなど, いくつかの不利な点がある. このスラグセメントの耐硫酸塩性を向上させるため, 新しいGGBSを開発した. 本報告では, この新しいGGBSによる優れた耐硫酸塩性を明らかにするとともに, そのメカニズムについて論じた.
     このGGBSを添加することで, 硫酸塩溶液への浸漬によるエトリンガイトのさらなる生成が抑制された. そして, GGBSの利点と東南アジアなど高温地域で用いられる一般的なセメントの強度などを考慮して二つのスラグセメントを提案し, それらのコンクリートにおける性能を示した. 一つのタイプは, 比較対照としたベトナムにおける一般的なセメントであるPCB40と同様な強度発現性を示し, よりよい耐硫酸塩性と遮塩性を示すものであった. もう一つのタイプは, 強度は低いが, 優れた耐硫酸塩性能と, 高性能減水剤を用いた低水セメント比において高い流動性を示した.
  • 原 健悟, 小川 洋二, 石川 雄康
    2009 年 2009 巻 156 号 p. 12-21
    発行日: 2009/06/25
    公開日: 2025/02/19
    研究報告書・技術報告書 フリー
     鉄筋コンクリート構造物の耐久性を考えるうえで, 表層部から鉄筋位置までのかぶりコンクリートの物性変化に着目した. かぶり部を含む表層部のコンクリートは, 外部からの塩分や二酸化炭素などの浸入に対し抵抗し, 内部鉄筋を保護する役割を担う. このため初期養生が重要であるが, 現状では, 型枠の脱型時期はテストピースの圧縮強度により確認されることが一般的であり, 表層部の初期養生を必ずしも考慮していない. 本報告では, 普通・高炉・低熱・早強セメントを用い, 使用頻度の高い汎用コンクリートを想定した水セメント比において, 脱型時期の違いが強度発現や空隙構造に及ぼす影響を検討した.
     その結果から, 脱型時期の影響はセメントの種類により異なるが, 脱型時期が遅いほど表層部の物性が向上することを確認した。
  • 今井 敏夫, 佐々木 彰
    2009 年 2009 巻 156 号 p. 22-33
    発行日: 2009/06/25
    公開日: 2025/02/19
    研究報告書・技術報告書 フリー
     昨今の石炭価格の高騰により, 揮発分の高い亜瀝青炭等のより廉価な石炭の利用ニーズが高まりつつある. ところが, 揮発分の高い石炭は貯炭中に自然発火を起こしやすいという問題がある.
     石炭の自然発火は低温酸化の結果として起こるため, 酸素吸収速度により評価することが可能である. BOD OxiTop法は微生物の酸素消費量を測定する方法であるが, これを石炭の酸素吸収速度測定に適用し, その測定方法を確立した.
     OxiTop法により, 炭化度の異なる複数の石炭の酸素吸収速度を測定した結果, 瀝青炭および亜瀝青炭に対してそれぞれ1.0×10-4~2.5×10-4および4.0×10-4~5.0×10-4[m・mol-O2/g-coal / hr.]を得た.
     また, 石炭の酸素吸収速度が雰囲気中の酸素濃度に比例することを, 実験的に確認した.
  • 高野 博幸, 神谷 隆, 青野 克己, 中野 卓, 牧野 知之
    2009 年 2009 巻 156 号 p. 34-40
    発行日: 2009/06/25
    公開日: 2025/02/19
    研究報告書・技術報告書 フリー
     2006年7月, WHOとFAOによる合同食品規格委員会CODEXにおいて農作物中のCd濃度の基準値が討議され,コメについては0.4 mg/kgという基準値が採択された. これにより, 日本でも農用地土壌汚染防止法の基準値(現行1.0mg/kg)の引下げが見込まれており, コメ中のCd低減技術の実用化が緊急の課題となっている.
     当社は2003年度から農業環境技術研究所と共同で, Cd汚染農用地修復を目的とした土壌洗浄法の開発を行っており, 既に, 塩化第二鉄を洗浄薬剤とする基本工法を開発している1)2)3).本報告では,浄化効果の向上および工期短縮を目指して開発した改良工法の概要と, 現場試験による改良工法の検証結果について述べる.
     今回改良した土壌洗浄法の浄化効果は,改良前の2倍であった. 改良工法での洗浄処理により土壌中Cd濃度は0.07mg/kgまで浄化され, 洗浄土壌で栽培した玄米中Cdは国際基準である0.4mg/kgを満足する0.2mg/kgとなった. また, 水希釈洗浄工程に必要な時間は2/3になり, 工期短縮によるコスト低減が期待される.
報告
  • 肥後 康秀, 吉本 稔, 福田 康昭, 本間 雅人
    2009 年 2009 巻 156 号 p. 41-49
    発行日: 2009/06/25
    公開日: 2025/02/19
    研究報告書・技術報告書 フリー
     これまでコンクリートポールの製造に使用してきた良質な天然骨材は, 徐々に枯渇してきている. そこで, 将来にわたっての安定供給や品質確保の面から, 石灰石骨材をコンクリートポールに適用する研究を行った. また, 石灰石骨材を使用したコンクリートは, そのすべてがセメント原料としてリサイクルすることが可能なため, 環境負荷低減の評価を併せて行った.
     その結果, 石灰石骨材を使用したコンクリートは, 天然骨材を使用した場合と同等以上の性能を有しており, コンクリートポールの規格値を満足する製品の製造が可能であることを確認した. また, コンクリート廃材をセメント原料化することによってLCCO2が14%程度低減できるなど, 環境負荷低減につながる有効なリサイクルが可能であることが確認された.
  • 田辺 進吉, 窪川 豊之
    2009 年 2009 巻 156 号 p. 50-59
    発行日: 2009/06/25
    公開日: 2025/02/19
    研究報告書・技術報告書 フリー
     Li-N-H系水素貯蔵材料は, リチウムアミドと水素化リチウムを複合化した新材料である. この材料は, 150℃で理論上6.5mass%の水素を吸放出する特徴を持つため, 車載用の水素貯蔵材料としての用途活用が期待されている. Li-N-H系水素貯蔵材料の水素放出特性の改善には, 原料であるリチウムアミドと水素化リチウムの均一な混合と, これら材料の複合化が不可欠である. そこで, 遊星ミルを用いて回転速度および粉砕時間の検討を行い, 適正な粉砕条件の把握を試みた.
     遊星ミルによる原料の粉砕時間を長くすると, 本材料の水素放出特性を示すDTAのピーク温度が低下する傾向であった. さらに, 遊星ミルの回転速度を高め, 粉砕時に与える重力加速度を大きくすると, DTAのピーク温度が低下する傾向であった. しかし, 遊星ミルによる粉砕時間が長すぎる場合, あるいは回転速度が高すぎる場合は, DTAのピーク温度が高温にシフトした. そこで, 水素放出特性を改善する粉砕条件をミルの仕事量から考察した. 水素放出に伴うDTAのピーク温度と水素放出量は, ミルの回転によって与えられる重力加速度G(m/s2), 粉砕重量w(g), 粉砕時間T(hr)と関係しており, GT/w≒10となる粉砕条件が適正値であった.
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