近年,コンクリートには高流動・高強度といった性能が要求され,ポリカルボン酸系高性能AE減水剤に注目が集まっている.ポリカルボン酸系高性能AE減水剤は,優れた減水性能と作業性確保のための流動保持性を併せ持っていることが認識されている.高性能AE減水剤は,さらに,様々な種類の高機能コンクリートの製造に不可欠であり,特に低水セメント比でのコンクリート製造を可能にする.
日本では,良質な骨材が不足し,かつ,コンクリートの耐久性上,単位水量の上限規格値である185㎏/m
3を厳守する必要性から水量を低減するために高性能AE減水剤の使用は増加している.
コンクリートの耐久性上,ひび割れ制御は重要であり,多くの研究によって指摘されている.ひび割れを低減する方法の一つとして,硬化コンクリートの自己収縮や乾燥収縮を低減することが重要である.この方法としては,単位水量の低減や収縮低減剤等の使用により,収縮量を低減することが挙げられる.しかし,収縮低減剤の使用は,コストが上がったり使用する混和剤の数が増えたりするなど,課題も多くある.よって,多機能型の新しい混和剤を開発することは重要である.
このような背景を受け,新型の多機能・多目的高性能AE減水剤が発明された.この新型高性能AE減水剤は,幅広い水セメント比で,収縮低減効果と高減水性を併せ持っており,そのコンクリートの性能を本論文に記載する.この新型高性能AE減水剤は,高い水セメント比から超低水セメント比までの様々な用途に適用することができ,その多目的性から次世代型の高性能AE減水剤の候補となりうるものである.
抄録全体を表示