太平洋セメント研究報告
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2003 巻, 145 号
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巻頭言
論文
  • 中西 博, 山田 一夫, 石森 正樹, 矢口 稔, 岡沢 智, 玉木 伸二, 木之下 光男
    2003 年2003 巻145 号 p. 3-10
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2025/03/26
    研究報告書・技術報告書 フリー
     近年,コンクリートには高流動・高強度といった性能が要求され,ポリカルボン酸系高性能AE減水剤に注目が集まっている.ポリカルボン酸系高性能AE減水剤は,優れた減水性能と作業性確保のための流動保持性を併せ持っていることが認識されている.高性能AE減水剤は,さらに,様々な種類の高機能コンクリートの製造に不可欠であり,特に低水セメント比でのコンクリート製造を可能にする.
     日本では,良質な骨材が不足し,かつ,コンクリートの耐久性上,単位水量の上限規格値である185㎏/m3を厳守する必要性から水量を低減するために高性能AE減水剤の使用は増加している.
     コンクリートの耐久性上,ひび割れ制御は重要であり,多くの研究によって指摘されている.ひび割れを低減する方法の一つとして,硬化コンクリートの自己収縮や乾燥収縮を低減することが重要である.この方法としては,単位水量の低減や収縮低減剤等の使用により,収縮量を低減することが挙げられる.しかし,収縮低減剤の使用は,コストが上がったり使用する混和剤の数が増えたりするなど,課題も多くある.よって,多機能型の新しい混和剤を開発することは重要である.
     このような背景を受け,新型の多機能・多目的高性能AE減水剤が発明された.この新型高性能AE減水剤は,幅広い水セメント比で,収縮低減効果と高減水性を併せ持っており,そのコンクリートの性能を本論文に記載する.この新型高性能AE減水剤は,高い水セメント比から超低水セメント比までの様々な用途に適用することができ,その多目的性から次世代型の高性能AE減水剤の候補となりうるものである.
  • 田野崎 隆雄, 市川 牧彦, 藤井 宏東, 瀧本 雅樹, 三浦 太一, 斎藤 究
    2003 年2003 巻145 号 p. 11-17
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2025/03/26
    研究報告書・技術報告書 フリー
     原子力事業に多用される遮蔽用コンクリートの放射化現象に関して,コンクリート構成材料の放射化原因成分の調査を行った.その結果,石灰石骨材は,Naなどの放射化原因成分の含有量が,非石灰石骨材に比べ非常に少ないことを確認した.石灰灰,高炉スラグなどで,長寿命核種を生むEuやCo等の元素の含有量が多い傾向も把握できた.加速器による放射化試験を行った結果,24Naの生成量の低減化により,コンクリートの低放射化がなされることを把握できた.また,それは石灰石骨材の使用量に応じて低くなることも確認できた.加速器運転時に懸念されるMg起源の24Na生成量についても検討を行い,生成比率を推定した.
  • 関野 一男, 成田 健
    2003 年2003 巻145 号 p. 18-35
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2025/03/26
    研究報告書・技術報告書 フリー
     最近,高流動コンクリートは,コンクリート製品やコンクリート構造物に使用されている.そのコンクリートは,フレッシュ時には高い充てん性を有するハイパフォーマンスコンクリートである.我が国においては,フライアッシュを用いた高流動コンクリートは,(社)土木学会および(社)日本建築学会によりセメント質量に対するフライアッシュの最大置換率30%を規定している.しかしながら,現在において,石炭灰発生量の増加に伴って,資源有効利用の観点から,フライアッシュのコンクリートへの利用が望まれている.
     そこで,本研究では,フライアッシュを多量に使用した高流動コンクリートの配合設計法を提案し,その設計法で設計したコンクリートの強度や耐久性に及ぼすフライアッシュ置換率の影響や,実構造物に適用してそのコンクリートの施工性について検討した.その結果,高流動コンクリートにおける強度や耐久性は,フライアッシュ置換率に依存することや,置換率50%の高流動コンクリートの実構造物への施工性や充てん性は良好であることを確認した.
  • 白井 一義, 下山 義秀, 片桐 誠, 前堀 伸平, 兵頭 彦次, 上田 宣人
    2003 年2003 巻145 号 p. 36-44
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2025/03/26
    研究報告書・技術報告書 フリー
     圧縮強度200N/mm2を有する繊維補強セメント系材料である反応性粉体コンクリート(RPC)の引張性能,およびこれを用いて作製したRCはり部材の曲げせん断性状を実験的に検討した.まず円柱試験体を用いた引張試験において,鋼繊維を2%混入したRPC(FM)はひび割れ発生後の応力保持性能が高いことが明らかになった.曲げ降伏型のはり部材においては,FMはコンクリートの引張強度を考慮しない計算値と比較して最大耐力が2倍以上に増大し,部材の等価粘性減衰係数も大幅に増大した.せん断破壊型のはり部材においては,鋼繊維混入によりせん断補強筋量3.6~4.6N/mm2の増加に相当するせん断補強効果を得た.
  • 中村 秀三, 谷辺 徹, 小幡 浩之
    2003 年2003 巻145 号 p. 45-55
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2025/03/26
    研究報告書・技術報告書 フリー
     ヨーロッパでのトンネル火災事故の頻出とその損害の重大性を受け,コンクリート構造物に耐火被覆を施工する事例が増加している.
     そこで,バーミキュライト軽量モルタルを湿式吹付け工法にてコンクリート表面に被覆する耐火工の,RABTならびにRWS加熱曲線下の性能を実験的検討した結果と耐火時の温度を数値解析により推定することの妥当性を検討した結果,以下の知見を得た.
    (1)本耐火工を最低20mm施工することにより,RABTならびにRWS加熱曲線による耐火試験において,コンクリート温度を350℃以下に保護することが可能であった.
    (2)耐火工にひびわれが生じている場合でも,そのひび割れ幅が3mm以下であれば,耐火工の耐火性能が大きく損なわれることはなかった.
    (3)耐火材を被覆したコンクリートの表面温度を伝熱解析によって実用的な精度で推測することができた.さらに,耐火材とコンクリートの界面に仮想伝熱境界層を設けるモデルを用いることによって,数値解析の精度が向上した.
  • 江崎 徹, Suwan MANUSPIYA, Paul MOSES, 内野 研二, Alfredo Vazquez CARAZO
    2003 年2003 巻145 号 p. 56-62
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2025/03/26
    研究報告書・技術報告書 フリー
     日本セラテック社の圧電トランスは主に液晶用バックライト点灯用インバータモジュールとして,既に製品化されている.ラップトップコンピュータについては,現在のところ5W程度の出力が圧電トランスに求められているが,今後,液晶ディスプレイのサイズが大きくなるにつれて,より高い出力が要求されることは必至である.また,AC/DCアダプターや蛍光灯などの電気機器では,現状,巻線型トランスを使用しているが,圧電トランスで30W程度の高出力と機器の小型化が実現できれば,今後それらの分野で,圧電トランスの市場を拡げることもできる.ここでは,AC/DCアダプターの小型化に適する積層型圧電トランスの設計について,圧電トランスの機械的品質係数や電気機械結合係数の影響に焦点を置きながら研究した内容について報告する.
資料
  • 大竹 淳一郎, 江里口 玲, 佐野 奨, 久保田 耕司, 大森 啓至, 市川 牧彦
    2003 年2003 巻145 号 p. 63-73
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2025/03/26
    研究報告書・技術報告書 フリー
     コンクリート構造物を対象とした環境負荷評価プログラムLela-CIECOS(Life cycle Environmental Load Assessment System of Civil Engineering Concrete Structure)を開発した.本プログラムは,コンクリート材料の製造から,練混ぜ,施工,解体,および破棄・リサイクルに至るまでの,コンクリート構造物のライフサイクルにおける環境負荷の度合いを,定量的に評価するソフトウェアである.算出される項目は,エネルギー資源の消費量やCO2,NOx排出量等のインベントリ,大気汚染や地球温暖化等を表すインパクト,そしてこれらを統合して無次元化した統合化指標である.統合化は,国内事情を考慮して適切な重み付け係数と統合化係数を定めた当社独自の評価手法により行っている.また,利用者が客観的な評価ができるように,既往の手法による算出結果との比較も可能とした.
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