日本トキシコロジー学会学術年会
第37回日本トキシコロジー学会学術年会
選択された号の論文の345件中151~200を表示しています
一般演題 ポスター
  • 三谷 治, 渡邉 幸彦, 山村 睦朗, 田矢 廣司, 曽我 学
    セッションID: P19
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】我々は第36回本学術集会において,ベンゾジアゼピン系静脈催眠・鎮静剤の血管刺激性を府川らが報告(日薬理誌, 71, 1975) した貯留法での検討結果を報告した。今回,臨床適用に準じた単回投与による血管刺激性を評価するため,注入法(長瀬ら, 第34回本 学術集会, 2007)による検討を行った。【方法】日本白色種ウサギ(Kbl/JW)の後耳介静脈にシリンジポンプを用いてジアゼパム,ミダゾ ラム及び開発中のJM-1232(-)の各製剤を単回投与(1mL/min, 3分間)した。投与部位の肉眼的観察は,投与前及び投与後6,24及び 48時間に血栓形成,炎症反応(紅斑・腫脹)を観察した。また,肉眼的観察終了後に投与部位組織を採取して病理組織学的検査を実施した。 【結果】肉眼的観察において,ジアゼパム投与群では,重度の血栓形成及び紅斑・腫脹がみられた。特に,腫脹は投与した耳介全体にお よび,組織液の体外漏出がみられた例もあった。ミダゾラム投与群では,全例に軽微な血栓形成及び軽度から重度の紅斑・腫脹がみられ, ジアゼパムと同様に重度の腫脹がみられた例もあった。一方,JM-1232(-)投与群では特に所見はみられなかった。病理組織学的検査 において,ジアゼパム投与群では血栓形成,細胞浸潤,血管内皮の脱落・剥離,浮腫,出血,線維化がみられた。ミダゾラム投与群で は,細胞浸潤,浮腫,線維化がみられた。一方,JM-1232(-)投与群は特筆すべき所見はみられなかった。【結論】ジアゼパム及びミダ ゾラムでは重度な炎症反応が認められ,注入法においても血管刺激性が認められた。また,今回の注入法において,刺激性のある薬剤 を投与することにより浮腫性の変化が主として発現することが判明した。一方,JM-1232(-)は刺激性が全く認められなかったことから, その反応性の違いとして可能性のある一要因について報告する。
  • 木屋 昭憲, 関本 良子, 有冨 博之, 丸山 敏之, 高須 伸夫, 上野 元伸, 鳥井 幹則, 加藤 育雄
    セッションID: P20
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】静脈内投与製剤の血管局所刺激性は臨床開発において安全性評価の重要な指標のひとつである。種々のin vivo及びin vitro評価 のうち,本検討では血管局所刺激性を判別するためにより検出が高く臨床でのリスクを評価できる試験系を確立することを目的として 持続注入法による条件設定を行いその系の妥当性を検討した。また,従来の貯留法との比較も行った。
    【方法】ウサギ(Kbl: JW,雄)を用い両試験法を実施した。貯留法は府川らの方法に従い,耳介後静脈に0.05mLの液量で3分間貯留させ それを7日間続けた。持続注入法は,同じく耳介後静脈から50mLの液量を30分かけて静脈内投与し,3日間反復投与した。評価対象 としては臨床で刺激性が懸念されている製剤(陽性対照)及び刺激性が少ない製剤(陰性対照)を用い,本試験系の妥当性を検討した。両 試験法ともに耳介投与局所の病理組織検査を行いその傷害の程度から刺激性を判断した。持続注入法については,投与部位から心臓側 に1,2,3cmはなれた血管及びその周囲の組織検査を行いその所見(細胞浸潤,出血,浮腫,血管内皮の剥離,血栓)とグレードから スコア付けを行い,刺激性の強さを表した。
    【結果・考察】上記の条件で持続注入法の妥当性を検討したところ,陽性対照と陰性対照で刺激性の差が認められ刺激性を評価する系と して適していることが確認された。また貯留法に比べて持続注入法では刺激性の程度がより強く認められた。以上のことから持続注入 法では貯留法より血管局所刺激性の検出度が高く,本法は開発初期での血管局所刺激性についてのスクリーニングにも有効であると考 えられる。
  • 伊藤 辰哉, 三浦 幸仁, 小泉 富彦, 山田 裕一郎, 小松 竜一, 本多 正樹, 高井 了, 木村 和哉, 田保 充康
    セッションID: P21
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
    会議録・要旨集 フリー
    【背景及び目的】従来,一般毒性試験におけるサルの心電図測定は,モンキーチェアによる拘束下で実施されているが,馴化・トレーニ ングを施したとしても動物が必ずしも安静状態にあるとはいえないため,高心拍や体動による筋電図等の影響下で心電図評価が行われ てきた。近年,ジャケット式テレメトリーシステムを用いた心電図測定法が開発され,無拘束下における安静状態での心電図の取得が 可能となった。そこで本試験では,カニクイザルを用いてジャケット式テレメトリーシステムによる無拘束下で安定した心電図波形を 取得するために必要な電極接着技術及びジャケット装着技術の確立を試みた。
    【方法】体外ジャケット式テレメトリーシステム(JETTM/ Jacketed External Telemetry,DSI)を用い,カニクイザル20例を用いて, 電極接着及びジャケット装着に関する技術検討を行った。検討項目は,電極接着前の脱脂処置,インナージャケット着用の有無,電極 の接着位置,並びに装着時の麻酔実施の有無について実施した。
    【結果及び考察】電極接着前の脱脂は,脱脂クリームと消毒用エタノールを比較して,脱脂効果は同等のであったが,消毒用エタノール の方が簡便であった。インナー着用とインナー非着用(伸縮性粘着包帯使用)を比較して,インナー非着用の方が電極の接着状態が良好 であり電極の外れや接着位置のずれがなかった。無麻酔下状態でのジャケット装着は,体動による筋電図により,電極が適切に装着さ れているかの確認しづらい上,装着に時間がかかるため,麻酔が必要である。我々はケタミン麻酔下状態で実施している。なお,麻酔 による影響の確認は今後の検討課題である。これらの方法を適切に実施することにより,精度が高く安定した心電図波形が取得可能で あることが確認された。以上より,本検討において適切な心電図取得のための電極接着技術及びジャケット装着技術が確立された。
  • 宇都宮 慎治, 高橋 義博, 山下 祐介, 大坪 靖治, 一井 隆亨, 中村 隆広, 和泉 博之, 洲加本 孝幸
    セッションID: P22
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】in vivoの光毒性試験に関するガイドラインは整備されておらず,各研究者の検討にとどまっている。我々は,第14回日本免疫 毒性学会学術大会および48th SOT: Society of Toxicologyにおいて,経口投与によるin vivoの光毒性試験について報告をしたが,今 回はBALB/cマウスを用いて,既知の光毒性物質であるciprofloxacin hydrochloride(CPFX)および8-methoxypsoralen(8-MOP)を 静脈内投与した結果を報告する。
    【方法】雄の6週齢BALB/cマウスに50および100 mg/kgのCPFX,あるいは5および10 mg/kgの8-MOPを,1あるいは20 mL/kgにて 尾静脈内投与し,投与10分後より約20 J/cm2の紫外線(UVA)(Dermaray, M-DMR-50, Eisai Co., Ltd.)を照射した。照射終了後30分, 24,48および72時間に,耳介および背部の皮膚反応をDraize法に従って観察し,右耳介厚をdial thickness gauge PEACOCK G-2 で測定した。照射終了後72時間に,病理組織学的検査(Hematoxylin-Eosin染色)のために耳介および背部皮膚を採取した。
    【結果および結論】CPFXの50および100 mg/kg群,8-MOPの5および10 mg/kg群では,皮膚に紅斑および浮腫がみられ,CPFXの 100 mg/kg群,8-MOPの5および10 mg/kg群で耳介厚の増加がみられた。病理組織学的検査では,表皮/真皮,皮下組織に変性,浮腫, 出血および炎症細胞の浸潤がみられた。以上より,CPFXおよび8-MOPをBALB/cマウスの静脈内投与により陽性反応が確認できたこ とから,静脈内投与によるin vivoでの光毒性試験は評価可能と判断した。
  • 和田 聰, 谷川 常博, 細田 秀勝, 伊藤 昂也, 秋山 賢之介, 大保 真由美, 安東 賢太郎, 倉田 祥正, 橋本 敬太郎
    セッションID: P23
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
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    【目的】カニクイザルを用いた安全性試験における心電図検査は保定した動物を用いた方法が一般的であったが,無拘束で心電図検査が 行えるホルター心電図検査が広まりつつある。今回,新型のホルター心電計であるJETシステム(jacketed External Telemetry, Data Science International製)を導入した。このシステムを用いて毒性評価を行う上で必要な背景データを収集したため,これらのデータ を報告する。
    【方法】ベトナム産のカニクイザル雌雄各20匹を用いて心電図パラメータの日内変動及び不整脈の発生状況を調べた。また,カニクイザ ル3匹にQT延長作用を有するSotalol (3mg)を単回経口投与し,投与前24時間から投与後24時間までの連続したホルター心電図検査を 実施した。
    【結果】実験1:RR間隔およびQT間隔およびQTc(Bazettの補正式)は日中(7:00-19:00)に比べ夜間(19:00-7:00)に延長が認められ たが,PR間隔はほぼ変化が認められなかった。不整脈の発生状況として心室性期外収縮が雄13匹,雌11匹,2度房室ブロックが雄0 匹,雌1匹,2拍以上の洞停止が雄4匹,雌2匹に認められた。 また,Sotalol投与時の心電図変化については,投与前に比べて約10% のQTc延長が認められた。
    【考察】JETシステムを用いたホルター心電図検査によりカニクイザルの24時間の連続心電図検査が実施できた。連続心電図検査によ り心室性期外収縮,2度房室ブロック,洞停止といった不整脈が認められたが,発生頻度に明確な雌雄差は認められなかった。 また, Sotalol投与による一過性のQT延長を検出する事が可能であった。これらのことから薬剤誘発性の不整脈およびQT延長作用を検出可 能である事が示された。
    現在,ホルター心電図と同時計測が可能な埋没式血圧測定器を検討を行っており,本学会ではこの結果についても報告を行う。
  • 藤澤 紘, 今野 誠, 山本 智宏, 西脇 森衛, 山崎 則之
    セッションID: P24
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
    会議録・要旨集 フリー
    【背景・目的】老化促進モデルマウス(SAMP8)の老化促進は,酸化ストレスが関係していると考えられている。我々は前検討において, SAMP8におけるアセトアミノフェンによる薬剤性肝損傷について,酸化ストレスでの影響について検討を行った。(日本薬理学会年会 2010年発表予定)検討の結果,SAMP8において肝臓における酸化ストレス脆弱性が示唆された。しかしその脆弱性の原因因子の確定 までには至らなかった。そこで我々は,マイクロアレイによる肝遺伝子発現の網羅的解析を行った。
    【方法】アセトアミノフェンを0及び300 mg/kg用量でC57BL/6Cr,SAMP8/Ta 及びSAMR1/Taの13週齢雄性マウスに単回経口投与 した。投与後約24時間後肝臓を摘出した。摘出した肝臓をAffymetrix社のGene Chip Mouse Gene 1.0 ST Arrayを用い,網羅的遺 伝子解析を行った。
  • 阿部 浩幸, 岡嶋 匠, 堤 宏禎, 勝 尚子, 土山 道夫, 古川 茂典
    セッションID: P25
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】物体認識試験は,ラットの新規物体への好奇心を利用した記憶学習試験の一つである。他の記憶学習試験のように,水からの逃 避や電気ショック等の嫌悪刺激を必要としないため,動物に大きな負荷をかけることなく記憶学習を評価することができる。本研究で は,アルツハイマー治療薬であるドネペジル塩酸塩を用いて,ラットの物体認識に与える影響を検討した。【方法】SD系雄性ラットを 使用した。物体を入れる観察箱に馴化させておいた動物を,その翌日に同一の観察箱に入れ,2個の同一物体を探索させた(獲得試行)。 獲得試行の24時間後,片方の物体を別の新規物体に交換して物体を探索させた(テスト試行)。ドネペジル塩酸塩(1, 3 mg/kg, p.o.)は テスト試行の1時間前に投与した。テスト試行において2個の物体の合計探索時間に対する新規物体と既知物体の探索時間の差の割合 (識別指数)を記憶の指標とし,対照群と比較した。【結果及び考察】獲得試行24時間後のテスト試行において,対照群は低い識別指数を 示したが,ドネペジル塩酸塩群は用量依存的に識別指数を増加させ,3 mg/kgでは有意な作用が認められた。なお,薬物投与による著 しい自発運動の増減は観察されなかった。以上の結果より,ドネペジル塩酸塩は物体認識試験において,時間依存的な忘却に対する記 憶亢進効果を有することが示唆された。
  • 町田 一彦, 浦野 浩司, 吉村 マスミ, 冨澤 政史, 保田 昌彦, 野村 達次
    セッションID: P26
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
    会議録・要旨集 フリー
    rasH2マウスはヒト発がん物質に対して高い感受性を有しており,短期がん原性試験用動物として使用されている。本試験系では試験 毎に陽性対照群の設定が必要であり,N-methyl-N-Nitrosourea(MNU)が標準物質として使用されている。当研究所では従来よりナカ ライテスク社(N社)の製品を使用してきたが,同製品は現在製造中止であり新規に入手できない。そこで,他メーカーの製品を使用す るに当たり,raSH2マウスへの発がん性をN社の製品と比較検討した。MNUはN社に対し現在入手可能であるSIGMA社(S社)および 和光純薬社(W社)の製品を用いた。MNU 75mg/kg(pH4.5 PBSに溶解)を腹腔内に単回投与し,投与後26週観察した後,剖検し代表 的な発生腫瘍である前胃乳頭腫の発生率およびその他腫瘍をそれぞれ比較した。カプランマイヤー法ログランク検定により生存率をN 社群と比較したところ,S社群は有意差が認められなかったが,W社群は97%以上の有意差が認められた。t 検定によりN社群と体重を 比較したところ,S社群は24週目に95%以上の有意差が認められた。W社群は3, 4, 11, 15, 16, 17, 20, 21, 24週目に95%ないし 97%以上の有意差が認められた。MNU投与26週後の前胃乳頭腫発生率はN社群の100%に対し,S社群は100%,W社群は90%であっ た。胸腺腫/リンパ腫はN社群100%に対して,S社群は80%,W社群は60%であった。いずれもFisherの直接確率定でN社と比較し 有意差は認められなかった。以上の結果より,W社の製品よりもS社の製品の方がN社製品により近いものと考えられた。
  • 長塚 伸一郎, ハインズ ダリナ, 二宮 真一, 加国 雅和, 向谷 知世, 島田 卓, 山添 康
    セッションID: P27
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】重度の肝機能不全,および免疫不全を有するuPA/SCIDマウスにヒト肝実質細胞を移植することにより,肝臓の一部がヒト肝細 胞によって置換されたキメラマウスが得られる。ヒト肝細胞による置換率が70%を超える高置換ヒト肝細胞キメラマウス(PXBマウス) においてはヒト薬物代謝酵素が高いレベルで発現しており,薬物投与後の代謝,排泄のパターンがげっ歯類型ではなくヒト型を示すこ とが知られている。したがって,PXBマウスはヒトにおける薬物体内動態を推定するためのモデル動物としてだけでなく,ヒト型の薬 物代謝に起因する毒性の発現,特に肝毒性の発現を解析あるいは予測するために有用なモデル動物であると考えられる。今回,我々は 異なるロットのヒト肝細胞を移植されたキメラマウスを用い,各種の肝毒性薬物投与後の肝遺伝子発現変動について検討を行った。
    【方法】異なる2つのロットのヒト肝細胞をそれぞれ別個に移植された8週齢のPXBマウスに種々の肝毒性薬物を3日間連続経口投与し た。最終投与の24時間後,肝臓のTotal RNAを調製しAffymetrix社のHuman Genome U133 Plus 2.0アレイにより肝臓の遺伝子発 現を測定した。
    【結果および考察】Basalの遺伝子発現レベルについては2つのロット間での差が認められた。しかしながら,肝毒性薬物によって顕著 な発現変動が認められた遺伝子のFold Change(コントロールの発現レベルに対する変動の率)にはロット間での大きな差は認められな かった。これらの結果から,肝毒性薬物により影響を受ける遺伝子からバイオマーカーを選択するにあたって,PXBマウスの肝細胞ロッ ト差における影響を受けないような選択が可能であることが示唆された。
  • 廣田 衞彦, 本山 晃, 萩野 滋延, 上月 裕一, 板垣 宏, 佐々 齊, 相場 節也
    セッションID: P28
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
    会議録・要旨集 フリー
    【背景】化学物質の接触感作性をin vitroで評価する方法として,ヒト単球系細胞株THP-1のCD86,CD54発現を指標とした方法 (h-CLAT)や感作性物質とペプチドの結合性を指標とした方法などがこれまでに報告されている。我々はこれまでに,THP-1細胞活性 化のトリガーの一つとして,細胞表面-SH基に着目し,THP-1細胞の細胞表面-SH基の変化を指標とする方法(SH test)を開発し,試 験法や基礎検討に関する報告を行ってきた。本報告では,SH testにおける基礎検討及び他のin vitro感作性試験(文献及び学会情報) との比較に関する検討を行った。【方法】文献によるin vitro感作性試験データをもつ物質について,SH testとペプチド結合試験及び h-CLATの結果を比較した。また,一部の感作性物質によって誘導される細胞表面-SH基の増加について,2次元電気泳動による解析お よび細胞内シグナルに関する検討を行った。【結果・考察】ペプチド結合試験(文献情報)とSH testについて,ある程度の相関(約20品, r=0.7)を示す可能性が示唆された。また,h-CLATとSH testの結果を組み合わせることで,各試験におけるin vitro試験に対する偽陰 性評価を減らせる可能性が示唆された。ペプチド結合を示す事が公知であり,SH testで細胞表面-SH基の増加を誘導する物質DPCP (diphenylcyclopropenone)について,SH基の増加にアクチンやチューブリン,heat shock protein類が関与する可能性が示唆された。 さらに,DPCP処理により,小胞体ストレスの指標の一つであるXBP1のスプライシング,細胞内シグナルであるp38 MAPKのリン酸 化が亢進した。これらの結果は,SH testの基礎情報として重要であると考えられた。
  • 加藤 雅一, 小笠原 隆広, 臼井 あけ美, 浜島 史泰, 重田 智美, 畠 賢一郎
    セッションID: P29
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
    会議録・要旨集 フリー
    【緒言】化粧品や化学物質の安全性を確認する眼刺激性試験は,ウサギを用いたドレイズ法が一般的な試験方法であるが,動物福祉の観 点からin vitro眼刺激性試験の検討が始まっている。われわれは,in vitro眼刺激性試験法の確立を目的として,3次元ヒト培養角膜モ デル(以下角膜モデル)を開発し,同モデルを用いたin vitro眼刺激性試験法について,昨年の総会で発表した。本発表では,本モデル の特徴を分析するとともに,種々の化学物質による眼刺激の予測性について報告する。
    【材料と方法】ヒト角膜上皮から分離した角膜上皮細胞を3T3-J2フィーダー細胞を用いて増殖させた。得られたヒト角膜上皮細胞をセ ルカルチャーインサートに播種し,気液層界面で13日間培養し,角膜モデルを作製した。in vivo眼刺激性程度が確認されている化学 物質を角膜モデルに適用し,細胞毒性を指標としたin vitro刺激性試験を行い,in vivo刺激性分類との相関について検討した。また, 刺激性物質を用いて角膜モデルのバリア機能を複数の培養ロット間で評価した。
    【結果と考察】種々の検討から設定した条件(暴露時間1分,後培養時間24時間,生細胞率50%以下を眼刺激性)で目的の化学物質を評価 した結果,in vivo刺激性分類と良好な相関を示した。また,刺激性試験後の組織崩壊の深度がin vivo刺激性の強度と相関する傾向にあっ た。また,刺激性物質を用いたバリア機能評価では,培養ロット間で一定のバリア性能が維持されていることを示した。 これらの結果から,本検討を通じて開発した角膜モデルは眼刺激性試験の有用な代替材料となりうる可能性が示された。
  • 井上 裕基, 森下 克美
    セッションID: P30
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
    会議録・要旨集 フリー
    Zebrafish has become used as a potential new vertebrate model system for assessing new chemical entities in toxicology field. We have established the following three assays in zebrafish for early toxicity screening.
    Screening method for drug-induced repolarization abnormalities: Seventy-two hours post-fertilization (hpf) zebrafish was used to determine the effect on the heart rate after the compound exposure. Fifty-two cardiotoxic compounds were employed to this assay. The compounds that induce hERG inhibition (IC50<0.5 uM) also induced bradycardia in zebrafish.
    Screening method for assessing drug-induced arrhythmia: Larval zebrafish (72 hpf) was placed on a multi-electrode array in anesthetic condition, and the ECG was recorded during the compound exposure. Cisapride and Sotalol, which were known to cause arrhythmia in humans, induced arrhythmia. Terfenadine and Haloperidol induced bradycardia but not arrhythmia. Propranolol did not show any effects on the zebrafish ECG. We have also shown that the change in ECG patterns as the developmental stage of zebrafish.
    Screening method for drug-induced osteoporosis: Zebrafish was immersed from 5 to 9 dpf in the compound solutions, and the head skeleton was stained with calcein to visualize and quantify the bone density. The bone density was decreased by prednisolone but not by other steroids including aldosterone, testosterone, estrogen or progesterone. We have also shown that the change in bone density during the developmental stage of zebrafish.
    Construction of drug screening assays using zebrafish is considered to be useful for early toxicity screening because of their advantages such as easy breeding, transparent embryos and throughput capacity.
  • 松本 朱美, 宮本 索, 平山 愛, 黒住 千尋, 森 郁生, 堀之内 彰
    セッションID: P31
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】近年,肝細胞空胞化やミエリン様構造増加等の脂質蓄積症が懸念され,毒性を早期に検出する評価系の開発が必要とされている。 本研究は,蛍光標識リン脂質を用いたホスホリピドーシス評価に中性脂肪及びコレステロール蓄積評価を加え,画像解析により同一細 胞で同時に評価できる,in vitroハイコンテントアナリシス脂質蓄積評価系の構築を目的とした。【方法】リン脂質,中性脂肪及びコレ ステロール蓄積の陽性対照化合物並びにそれぞれ適切な蛍光プローブを選択して測定系を構築し,測定系の同時再現性及び日間再現性 を確認した。次に,市販の20化合物について脂質蓄積を評価した。【結果】今回構築した測定系の同時再現性及び日間再現性は良好であっ た。市販20化合物では,中性脂肪,リン脂質及びコレステロールの同時蓄積(4化合物),中性脂肪及びリン脂質の同時蓄積(6化合物), 中性脂肪の単独蓄積(5化合物)がみられ,残り5化合物はいずれの脂質の蓄積もみられなかった。従って,細胞内の脂質蓄積が陽性の場 合は必ず中性脂肪蓄積を伴っていた。更に,2あるいは3種類の脂質の同時蓄積がみられた化合物では,それらの脂質はほぼ同一部位 に局在していることが合成画像により判明した。また,本法と既報との中性脂肪蓄積評価の一致率は82%,リン脂質蓄積評価の一致率 は100%,報告の少ないコレステロール蓄積評価の一致率は100%であった。【結論】今回確立した評価系は,リン脂質,中性脂肪及び コレステロールの組合せでハイコンテントアナリシス評価を行う初めての評価系であり,3種類の脂質を同時評価できることはスクリー ニング時のスピード及びコストの観点からメリットが高い。更に,同一細胞内で同時評価ができることにより,それぞれの細胞内挙動 の解析が容易になることから,創薬研究の早期段階で脂質蓄積評価に有用な試験系と考えられる。
  • 永堀 博久, 吉岡 薫, 森本 隆史, 太田 美佳, 斎藤 昇二, 金子 秀雄
    セッションID: P32
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
    会議録・要旨集 フリー
     これまで,化学物質の皮膚感作性を計算機によって予測する手法が種々検討されてきたが,予測性の向上が最も大きな課題であった。 今回,我々は,量子化学計算を用いて計算された新規パラメーターを用いることにより,化学物質の皮膚感作性をより正確に判別でき ることを見出した。簡便な量子化学計算手法(AM1法)を用いることにより50化合物程度の量子化学計算を数時間で実施した。
     当社で実施した,化学物質等の皮膚感作性試験(マキシマイゼーション法)の合計413のデータから,代表的なアラート構造(マイケ ル付加,ハロゲン化芳香族およびハロゲン化脂肪族)を有する化合物を抽出した(それぞれ59,87および50データ)。これらの化合物 群それぞれについて,全ての化合物の電子状態(電荷,ELUMOおよびERMO(新規パラメーター))をHyperChem8による量子化学計 算(AM1法)により算出し,立体障害性(Taft’s EsおよびSterimol B1)の指標についても計算した。これらのパラメーターについて統 計解析および判別分析を行い皮膚感作性が判別できるかどうか検討した。
     マイケル付加化合物およびハロゲン化脂肪族については,それぞれβ位の炭素またはハロゲン化炭素の電荷および立体障害性が判別 のための主要なパラメーターとなっていた。一方,ハロゲン化芳香族においては,電子軌道の状態およびハロゲン化炭素近傍の立体障 害性が判別のための主要なパラメーターになっていた。
     今回開発した判別手法の特異度は極めて高いものであり,化学物質の電子状態は,皮膚感作性の有無と強く関連することが明らかに なった。また,化学物質の電子状態によって引き起こされる反応性が立体障害性により抑制されることが判明した。今後,他のアラー トの解析および予測モデルの確立が期待される。
  • 鈴木 紀之, 堀江 宣行, 安藤 覚, 斎藤 幸一
    セッションID: P33
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
    会議録・要旨集 フリー
     発生毒性試験の代替法試験の取り組みは,今までに数多く報告されているが,世界的に認知され,広く使用される試験法は未だに開 発されていない。そのような状況下,近年,マウスES細胞を用いた試験法(EST:Embryonic Stem cell Test)がin vitroの発生毒性 試験法として注目されている。しかし,EST法も欧州の研究機関でバリデーション試験が行われ,一定の有用性が認められたが,複数 の問題点が指摘されている。そこで我々は,簡便で汎用性の高い発生毒性の代替法試験開発を目的に,マウスES細胞を用いた検討を 実施し,これまでに,ES細胞から心筋細胞への分化過程で発現変動する遺伝子群の中から,発生毒性を検出する有用なマーカー遺伝 子となりえる心臓の形態形成や心筋構造に関与するHand1,Cmya1遺伝子等13種類の遺伝子を報告した。また,Hand1遺伝子につい て,レポータージーンを利用して発現量を簡便に評価可能な組換えES細胞を作製し,それを用いた簡便でハイスループット性に優れ た基本プロトコールによる被験物質の検証結果を既存のEST法と比較した。
     今回,新たにCmya1遺伝子の評価用細胞を作製し,基本プロトコールに従い,複数の発生毒性陽性および陰性化合物を用いて予測 性を検証し,Hand1遺伝子評価用細胞との比較やそれぞれのマーカー遺伝子の有用性や特性について検討したので報告する。  なお,本研究は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援を得て行った。
  • 鈴木 紀之, 安藤 覚, 堀江 宣行, 斎藤 幸一
    セッションID: P34
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
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     近年,in vitroの発生毒性試験法として,マウスES細胞の心筋分化を指標とした試験法(EST:Embryonic Stem cell Test)が注目 されている。ESTは欧州の研究機関でバリデーション試験が行われ有用性が認められたが,心筋以外の組織での検討等の必要性が指摘 されている。そこで今回,ES細胞から神経細胞への分化過程で発現変動する遺伝子群の中で高精度に発生毒性を評価可能なマーカー 遺伝子の探索を行った。
     まず,マウスES細胞を神経細胞に分化誘導し,誘導後10日間DNAチップによる網羅的な発現解析を行うことで,神経分化過程で発 現変動する83遺伝子を選別した。次に,選別した遺伝子群に対し,発生毒性既知の12種の被験物質(陽性6/陰性6)を用いて,ES細胞 増殖の無影響濃度下における神経分化過程での各遺伝子の発現量を比較した。その結果,22種類の遺伝子が発生毒性陽性化合物処理群 で特異的に発現が低下する傾向が認められ,これらの遺伝子は発生毒性化合物を検出するマーカー遺伝子となりうることが示唆された。 さらに,22種の遺伝子に対し,母獣毒性を想定したBalb/3T3細胞の細胞毒性濃度(IC50値)において,発生毒性既知の24被験物質(陽 性16/陰性8)のES細胞の神経分化過程における各遺伝子の発現量を定量した。そして,溶媒対照に対する相対的な発現量を比較し各遺 伝子の被験化合物に対する影響を詳細に検討した。
     なお,本研究は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援を得て行った。
  • 大坪 靖治, 高橋 義博, 吉川 隆大, 山下 祐介, 宇都宮 慎治, 福田 剛司, 中村 貴敏, 中村 隆広, 和泉 博之, 鵜藤 雅裕, ...
    セッションID: P35
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
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    【目的】LLNAは皮膚感作性試験の代替法であるが,放射性物質(RI)を用いたRI法は,RIの取扱いが制限されるためRIを用いない方法が 望まれている。本研究ではRI法及びbromodeoxyuridine(BrdU)を用いるBrdU法を行い,その有用性について検討した。
    【方法】両法ともに,雌性CBA/Nマウス(感作時9週齢,n=4)を使用した。2,4-dinitrochlorobenzene(DNCB)及びα-hexylcinnamic aldehyde(HCA)を感作物質,アセトン・オリーブ油混液(AOO)を対照物質とし,DNCBの0.2,1及び4mg/mL,HCAの100及び 500mg/mL及びAOOを両耳介に25μL/siteで3日間連続塗布した。RI法では最終感作3日後に3H-thymidineを静脈内投与し5時間後 に,BrdU法では最終感作2日後にBrdUを腹腔内投与し24時間後に両耳介リンパ節を採取した。それぞれ重量測定及び細胞増殖につ いて液体シンチレーションカウンターあるいはELISAキットによって測定した。細胞増殖について対照群に対する感作物質群の比 (stimulation index:SI)を算出し,SI≧3.0を陽性とした。
    【結果及び結論】DNCBの0.2,1及び4mg/mL群のSIは,RI法では2.6,6.4及び12.8,BrdU法では1.8,3.0及び5.9であり,ともに 1mg/mL以上で陽性であった。HCAの100及び500mg/mL群のSIは,RI法では2.4及び9.1,BrdU法では1.7及び5.0でともに500mg/ mLで陽性であった。SIはRI法が高い値を示したが,BrdU法でもRI法と同じ用量で陽性反応が確認でき,両法とも実施可能であった。 また,BrdU法は汎用性がありRIを用いない方法として有用であると考えられた。
  • 横山 篤, 秋田 正治
    セッションID: P36
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
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    <目的>我々は現在まで哺乳類胎児培養法を用いて種々の化合物の安全性について検索してきた。今回は血流量の増加作用を持つミノ キシジルのラット培養胎児への影響を検索したので報告する。
    <実験方法>ラット胎児は妊娠11日目を母体から取り出し48時間の培養を行った。ミノキシジルは200μg/mlを培養液内処理とした。 観察項目は,胎児頂殿長・胎児総蛋白量・胎児心拍数・外表奇形・鰓帯部大動脈血流量値とした。
    <実験結果>胎児頂殿長・胎児心拍数・胎児総蛋白量・外表奇形においては,対照群とミノキシジル処理群で差は認められなかった。一方, 鰓帯部大動脈血流量値は対照群に比べて20%増加した。
    <考察>近年,ミノキシジルは毛根の血流量を増加させ育毛剤として発売されている。培養ラット胎児の動脈においても血流量の増加 が認められ,時期実験段階の長期培養化へつながることが示唆された。
  • 山口 能宏, 中村 牧, Lina BIAN, Xiaolin LI, Lu QIU
    セッションID: P37
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
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    【緒言】日本において歯磨剤などの口腔製品は医薬品,医薬部外品または化粧品に分類され,それら製品や原料の口腔粘膜刺激性はラッ ト,モルモット,ハムスター等を用いて評価されることが一般的である。一方,これまで中国における口腔製品の分類は不明確で,一 昨年より化粧品に分類されたが,口腔粘膜刺激性が評価されることはまれである。上海出入境検験検疫局は市場に流通する国産,輸入 化粧品の安全管理を行っており,今回は3Rsの理念に沿って口腔粘膜刺激性試験代替法の開発検討を行った。
    【方法】口腔粘膜刺激性試験はCTFAガイドラインを参考にHartley系雌性白色モルモット(5-7週齢)を用いて評価した。代替法はウサギ 角膜由来細胞(SIRC)に被験物質(濃度5.0%, 0.5%, 0.05%)を短時間曝露させて細胞生存率を評価する改良STE法を用いた。口腔製 品の汎用原料10種と製品5種をそれぞれ試験し,動物試験結果との一致率を評価した。
    【結果・考察】殺菌剤や界面活性剤として製品に配合されるCPCやSLSは動物試験で強い口腔粘膜刺激性を示し,基剤用途で配合される 濃グリセリンやソルビット液は口腔粘膜刺激性を示さなかった。また,製品5種はいずれも極めて弱い口腔粘膜刺激性を示した。これ らの結果は改良STE法の結果と良く一致していた。しかし動物試験において強い粘膜刺激性を示したエタノールは改良STE法のいずれ の暴露濃度においても「無刺激性から弱い刺激性」に分類され偽陰性となり,ラウロイルサルコシンナトリウムは「中等度の刺激性から 強い刺激性」に分類され偽陽性となった。本発表では水不溶性物質や異なる細胞における改良STE法の結果も合わせて報告する。
  • 河部 真弓, 沼野 琢旬, 勝呂 繭子, 土井 悠子, 今井 則夫, 古川 文夫, 浦野 浩司, 堤 秀樹
    セッションID: P38
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
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    [目的]rasH2マウスを用いた短期発がん性試験が,マウス長期がん原性試験の代替法として検討されている。そこで我々は,rasH2マ ウスの特徴を生かし,梅村らの肺を標的とした超短期発がん性評価法に準じ,N-nitrosobis(2-oxopropyl)amine(BOP)をイニシエー ターとして用いて検討を行った。
    [実験1:BOPの用量設定]日本クレアのrasH2雄マウス(各10匹)にBOPを20 mg/kg B.W.の用量で2回(1回/週)皮下投与した。対照 群として生理食塩液投与群,またNon-Tg動物を用いた群(各5匹)も設けた。実験9週後に屠殺剖検し,肺について病理組織学的に検索 した。その結果,肺の腫瘍性病変の発生はrasH2のBOP投与群で1例に腺腫(1個),Non-TgのBOP投与群で1例に過形成がみられたの みであった。
    [実験2:BHTを用いたBOP肺二段階発がん性試験]イニシエーターとしてBOPを20 或いは30 mg/kg B.W.の用量で2回皮下投与後, 肺発がんプロモーターである,butylhydroxytoluene(BHT)を400 mg/kg B.W.の用量で4回毎日投与,その後は1週に1回の頻度で4 回投与した。実験9週後に屠殺剖検し,肺について病理組織学的に検索した。その結果,BOP 20 或いは30 mg/kg単独投与群での過 形成の発生率及び平均発生個数はいずれも7%,0.1個であったのに対し,BHTを投与すると20 mg/kg群では100%,5.3個,30 mg/ kg群では100%,6.3個とBOP単独群と比較して有意に増加した。しかし腺腫の発生率は低く,BHT投与による差異はみられなかった。 また,標的臓器は肺に限定され,その他の組織・器官には肉眼的な増殖性病変は認められなかった。
    [結論]BOPをイニシエーターとして用いた結果,肺胞の過形成はみられたものの,腺腫はほとんどみられなかったことから,投与量及 び投与回数を再検討し,このモデルを超短期発がん性試験法として確立すべく更なる検討が必要である。
  • Kaori ABE-TOMIZAWA, Yohsuke MINOWA, Katsumi MORISHITA, Hiroshi YAMADA, ...
    セッションID: P39
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
    会議録・要旨集 フリー
    An increase in liver weight is a relatively common finding experienced in preclinical repeat dose studies of new drug candidates. Occasionally, liver weight increase accompanies characteristic histopathological changes that are typified by ground-glass appearance or eosinophilic granular degeneration of hepatocytes. Generally, the onset of these changes is revealed in repeat-dose studies by histopatholoical evaluations. Thus, we aimed to predict and distinguish between the different types of liver weight increase using toxicogenomic profiling in single-dose studies.
    We obtained large-scale transcriptome data of the rat liver in single-dose studies of 150 compounds from Genomics Assisted Toxicity Evaluation system (TG-GATEs) developed by Toxicogenomics Project in Japan. Based on the histopathological findings of the liver in repeat-dose studies, gene expression profiles were divided into 3 classes. Filtertype gene selection was applied to 3-class training samples, and a linear classifier was constructed using the selected genes. The accuracy of the classifier was evaluated by 5-fold cross-validation. Our validation showed a sensitivity of 80.3% with 9.7% false positives for the discriminant model of ground-glass appearance and a sensitivity of 100% with no false positives for the degeneration of eosinophilic granules model.
    Toxicogenomics-based discrimination in short-term studies has the potential to assist in toxicological evaluation of liver weight increase.
  • 五十嵐 芳暢, 清澤 直樹, 南 圭一, 神吉 将之, 太田 聖子, 堀之内 彰, 小野 敦, 山田 弘, 漆谷 徹郎, 大野 泰雄
    セッションID: P40
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
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    【背景・目的】トキシコゲノミクス・インフォマティクスプロジェクトは,遺伝子発現情報を基にした安全性バイオマーカーの探索をお こなう産官学共同プロジェクトである。このプロジェクトにより,150余りの薬剤投与による遺伝子発現変化のデータが蓄積された。 最近,これらの遺伝子発現情報を相補的に補完するメタボロミクス解析がアセトアミノフェン(APAP)投与ラットの肝及び血漿でおこ なわれた。我々はメタボロミクス解析から得られた代謝産物情報とトキシコゲノミクスから得られた遺伝子発現情報を用いて,メカニ ズムに基づくグルタチオン(GSH)枯渇評価系の構築を試みた。
    【方法・結果】メタボロミクス解析および遺伝子発現解析により,4遺伝子(Gss: GSH合成酵素, Gclc: グルタミン酸システインリガーゼ, Baat: 胆汁酸補酵素A, Cyp7a1: チトクロームP450 7a1)がGSH枯渇に関与する鍵因子であることが推察された。これら4遺伝子を柱 とする遺伝子群を用いて,その発現変化情報を基に,他の薬剤でのGSH枯渇リスクのスコア化を試みた。他の薬剤のGSH枯渇作用の 有無は文献情報を基にした。150余りの薬剤のうちGSH枯渇をおこすものは37個,GSH枯渇をおこさないと報告されているものが21 個,GSH枯渇作用未知のものは99個あった。APAPと類似した遺伝子発現変動を示す場合に高スコアを与えるプロトタイプ評価系では, 上位10位までに6個のAPAP型GSH枯渇薬剤とGSH枯渇作用未知の薬剤が4個ランクされた。この結果は,メカニズムに基づいた比較 的少数の遺伝子発現情報によって肝臓のAPAP型GSH枯渇リスクを定量的に評価可能であることを示唆する。
  • 棚治 隆史, 奥山 学, 田川 義章, 松本 幸治, 小野 敦, 山田 弘, 漆谷 徹郎, 大野 泰雄
    セッションID: P41
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
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    [目的]血清トランスアミナーゼ活性(ALT, AST)の上昇は,肝障害時における逸脱酵素として広く用いられているが,明らかな肝障害を伴 わずに活性上昇が認められ解釈に困る場合がある。明らかな肝障害を伴わない上昇は,脂質低下剤であるフィブラート系薬剤などで報告さ れている。産官学共同研究プロジェクトであるトキシコゲノミクス・インフォマティクスプロジェクト(TGP2)では,肝臓や血液における 網羅的遺伝子発現解析データをもとに肝細胞壊死を含む様々な毒性変化に対するバイオマーカー構築を進めている。今回我々は,トキシコ ゲノミクスデータベース(TG-GATEs)を用い,肝細胞壊死を伴わない血中ALTの上昇に関わるバイオマーカーの探索を行った。[方法]肝 細胞壊死を伴わず血中ALT値を上昇させることが報告されている化合物(投与開始時6週齢の雄性SDラット使用,単回及び28日反復投与を 行い計8時点で肝臓採取)として,クロフィブラート,フェノフィブラート,WY-14673及びエチニルエストラジオールを選択し,マーカー 候補遺伝子の抽出及び抽出遺伝子を用いた判別分析(SVM)を行った。[結果]マーカー候補遺伝子として17遺伝子が抽出された。抽出され た遺伝子には脂質代謝に関連するFasnやCD36が含まれていた。次にマーカー候補遺伝子を使用し判別分析を行った結果,陽性と判別され た化合物の多くはPPARαアゴニスト作用との関連が報告されている薬剤であったが,血中ALT値の上昇が認められPPARαアゴニスト作 用との関連が報告されていない薬剤も陽性と判別された。以上の結果,今回抽出した遺伝子は肝細胞壊死を伴わない血中ALTの上昇を診断 するバイオマーカーとなり得ることが示された。今回構築した判別モデルは,これまでTGP2で報告した肝臓及び血液で適用可能な肝細胞 壊死マーカー等と組み合わせて評価することで,開発化合物の持つ肝障害ポテンシャルを判断するのに有用な手段となると考えられた。
  • 上田 晴子, 上原 健城, 箕輪 洋介, 中津 則之, 山田 弘, 大野 泰雄, 漆谷 徹郎
    セッションID: P42
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
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    【背景】薬剤誘発性腎障害は,創薬において最も注意すべき副作用の一つである。近年,医薬品開発の探索段階において腎毒性を早期に 検出する手法として,トキシコゲノミクスが注目されている。これまで我々は,トキシコゲノミクスプロジェクトにおいて構築された データベース(TG-GATEs)を使用して,ラットにおける腎皮質の尿細管障害の判別モデル(19遺伝子)を構築し,単回投与後24時間の 時点の全腎の遺伝子発現データで,反復投与後に発現する腎尿細管障害の有無を高い精度で予測することが可能であることを報告した。 今回我々は,これらの選抜した19遺伝子について,腎臓における病理組織学的な病変の発現部位と遺伝子発現変動の関連を明らかにす ることを目的として試験を実施した。
    【方法】6週齢の雄性ラットに,腎尿細管障害化合物であるthioacetadmide,gentamicin,cisplatin,及び腎皮質及び腎乳頭障害化合物 であるn-phenylanthranilic acid,2-bromoethylamine hydrobromide,phenylbutazoneを単回,あるいは7日間反復投与した。採取 した腎臓を皮質,髄質外帯,髄質内帯/乳頭部の3部位に分割し,各部位における19遺伝子の発現変動をreal-time RT-PCRにより測定した。
    【結果】腎尿細管障害作用を有する化合物に共通して,腎皮質あるいは髄質外帯において,我々の選抜した尿細管障害マーカー遺伝子の 多くが発現変動を示した。一方,髄質内帯/乳頭部においても腎皮質あるいは髄質外帯と同様の発現変動を示す遺伝子が多数認められ, その変動の程度は概ね腎乳頭障害化合物で顕著であった。
    【結論】我々の選抜した尿細管障害マーカー遺伝子は,反復投与により皮質及び髄質外帯で起こる腎尿細管障害を反映して発現変動する ものの,特に腎乳頭障害作用を有する化合物においては,髄質内帯/乳頭部においても同様の遺伝子発現変動を示すことから,全腎の 遺伝子発現データに基づいて腎毒性を評価する際には注意が必要であると考えられた
  • 清澤 直樹, 新野 訓代, 渡辺 恭子, 眞鍋 淳, 三分一所 厚司, 小野 敦, 山田 弘, 漆谷 徹郎, 大野 泰雄, 矢本 敬
    セッションID: P43
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
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    【目的】Bayesian networkなどのネットワーク解析は大規模マイクロアレイデータの解析に汎用されている。しかし個別遺伝子レベルのネッ トワーク解析では,変数(遺伝子発現データ)の数に対するサンプル数が十分でないことや,マイクロアレイデータ自体の精度・互換性が問 題となり,解析結果の解釈を妨げている。本検討では大規模トキシコゲノミクスデータベースTG-GATEsを用いて,個別遺伝子ではなく 特定の毒性エンドポイントあるいは生物学的パスウェイに関連する遺伝子セットレベルでのネットワーク解析を実施し,その有用性を検証 した。
    【方法】TG-GATEsのラット肝臓GeneChipデータから,高用量投与群の単回(3,6,9,24時間)および反復(4,8,15,29日)投与のすべ てのデータが揃った118化合物を選択した。遺伝子セットの発現変動レベルは,薬物代謝酵素,グルタチオン枯渇応答遺伝子,がん原性関 連遺伝子などの計58種類の遺伝子セットに関するD-score(Toxicol Lett 2009 188(2):91-7)計算により評価し,ネットワーク構造推定に はGaussian graphical modelを用いた。得られた推定ネットワーク構造の妥当性を別に実施したBromobenzene(BBz,単回投与後2,6, 12および24時間)あるいはCycloheximide(CHX,単回投与後1,2および6時間)投与試験のラット肝臓GeneChipデータを用いて検証した。 【結果と考察】BBz,CHX投与ラット肝臓GeneChipデータはTG-GATEsベースで構築されたネットワーク構造を反映した時系列変動を示 したことから,ネットワーク構造の妥当性およびTG-GATEs外部データとの良好な互換性が示唆された。本解析手法によって大規模トキ シコゲノミクスデータベースから計算的に生物学的関連を抽出可能であり,大規模データの効率的解釈と共に,新規毒性バイオマーカー候 補の探索にも有用と考えられた。
  • 大林 久佐邦, 山内 秀介, 齊藤 航, 白井 真人, 新野 訓代, 本多 久美, 清澤 直樹, 谷 吉朗, 矢本 敬, 三分一所 厚司
    セッションID: P44
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
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    【目的】骨格筋障害モデルラットを作製し,骨格筋のトランスクリプトーム(TGx)解析および尿・血漿のメタボローム(TMx)解析を行い, 新規骨格筋障害評価バイオマーカーを見出すことを目的とした。
    【方法】9週齢の雄性F344ラットに2,3,5,6-Tetramethyl-1,4-phenyleneamine(TMPD, 3mg/kgおよび9mg/kg)を単回経口投与し,血 中creatine kinase(CK)測定および病理組織学的検査を実施した。TGx解析にはAffymetrix社のGeneChip Rat 230 2.0アレイを用い, MTx解析にはWaters社のAcquity UPLC / LCT PremierTOF-MSシステムを用いた。
    【結果と考察】TMPD 9mg/kg投与群で血中CK-MM(骨格筋由来のCKアイソザイム)レベルが高値を示し,病理組織学的検査によっても 骨格筋障害誘発が確認された。TMPD 3mg/kg投与群では骨格筋障害誘発は確認されなかった。TGx解析の結果,TMPD 9mg/kg投与 群で1,860遺伝子が発現レベル増加,1,268遺伝子が発現レベル減少を示した。Ankrd1,Serpine1,Mt1a,Ccl2遺伝子は用量依存 的な発現レベル増加を示し,9mg/kg投与群で対照群の20倍以上の発現レベル増加を示した。一方MTx解析の結果,TMPD 9mg/kg投 与群で尿では600個以上の,血漿では360個以上の代謝物濃度に変動が認められた。これら骨格筋障害応答性遺伝子および代謝物は新 規な骨格筋障害評価用バイオマーカーとなり得る可能性が期待されるものの,その妥当性についてはCerivastatinを用いた骨格筋障害 モデルのデータと共に検証・考察する予定である。
  • 大村 功, 松田 喬, 木上 大輔, 田村 幸太朗, 神吉 将之, 宇波 明, 小堀 正人, 渡部 浩治, 山田 弘, 漆谷 徹郎, 大野 ...
    セッションID: P45
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
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    【目的】トキシコゲノミクスは薬剤候補化合物の毒性評価に活用できる有用なアプローチである。GeneChipによるラット肝臓の網羅的遺伝子発現データ ベース(トキシコゲノミクスプロジェクトDB;TG-GATEs)を用いて,薬剤誘発性の肝細胞壊死に関連した遺伝子マーカー探索と判別モデル構築を試みた。
    【方法】陽性薬剤として,肝細胞壊死を惹起することが知られていて,且つトキシコゲノミクスプロジェクト(TGP)における毒性試験においても所見が認 められた6化合物(アセトアミノフェン,四塩化炭素,アリルアルコール,チオアセトアミド,ジクロフェナク,メタピリレン)を選択した。これら6化合 物の各3用量群(溶媒対照,中用量,高用量)につき,3,7,14,28日間反復投与後各24時間の肝臓遺伝子発現データを,また肝細胞壊死を惹起しない6 化合物(ベンズブロマロン,ファモチジン,グリベンクラミド,ハロペリドール,メチルテストステロン,チオリダジン)の同用量・時点の肝臓遺伝子発現デー タを用いた。判別モデル構築には線形判別分析を用い,F統計量を指標とした前向き属性選択・クロスバリデーション精度を指標とした後向き属性選択 によりマーカーprobe setを抽出した。
    【結果】マーカー候補として112 probe setsを抽出し,クロスバリデーションによる予測精度99.6 %の判別モデルを構築した。これらのprobe setの多 くは肝細胞壊死との関連は不明であったが,細胞死(FAS, PIK3R1)に関連する遺伝子や酸化ストレス(AKR7A3, GSTA3)に関連する遺伝子が含まれて いた。判別モデル構築には利用していないテスト化合物を用いてROC曲線による予測精度を評価した結果,陽性判定率約60 %において偽陽性が約10 %となる判別モデルであった。今回構築した肝細胞壊死判別モデルは,創薬の初期段階において開発化合物の肝細胞壊死ポテンシャルを予測するツール として利用できる可能性がある。今後は,構築したモデルを他施設でも活用できるかトキシコゲノミクス・インフォマティクスプロジェクト(TGP2)に おいて検討する。
  • 住田 佳代, 五十嵐 芳暢, 鳥塚 尚樹, 松下 智哉, 阿部 香織, 青木 幹雄, 漆谷 徹郎, 山田 弘, 大野 泰雄
    セッションID: P46
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
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    【目的】ジメチルスルホキシド(DMSO)は細胞を用いたアッセイにおいて脂溶性の化合物を添加するときによく用いられる。しかし,DMSOはその濃度が高くなると, 細胞毒性を呈することが知られており,DMSOの細胞に対する種々の影響をよく踏まえておくことが必要である。今回,我々はDMSOがヒト凍結肝細胞の遺伝子発 現に与える影響を検討した。
    【方法】1.2x106個のヒト凍結肝細胞を6ウエルプレートに播種し,4時間後に培地交換した後,さらに20時間培養した。0,0.1,0.5,0.75,1,2%(v/v)DMSOを 含む培地に交換し,24時間培養した。細胞播種から48時間後に培地及び細胞の全RNAを回収した。培地内のラクテートデヒドロゲナーゼ(LDH)活性を測定し,細胞 毒性を評価した。また,HGU133Plus2.0アレイ(アフィメトリックス社,約55,000プローブ搭載)を用いて網羅的遺伝子発現解析を行い,DMSOの影響を検討した。
    【結果】LDH活性を指標とした細胞毒性は,DMSO濃度2%(v/v)まで認められなかった。遺伝子発現データを解析した結果,DMSO濃度0.75%(v/v)において,2倍 以上あるいは1/2以下の発現変動を示した遺伝子数はそれぞれ11個,46個と少なかった。また,薬物代謝酵素の発現への影響を解析した結果,大半の酵素に関して, DMSO濃度0.75%(v/v)までは発現変動の振れ幅が1標準偏差内に収まり,大きな影響は認められなかった。今回得られた結果を総合的に考察すると,少なくとも DMSO濃度0.5%(v/v)までは遺伝子発現データに大きな影響を与えないことが示唆された。現在,ラット初代肝細胞を用いてDMSOの影響を検討中であり,合わせ て報告したい。
  • 松下 智哉, 武藤 裕紀, 芦原 基起, 三島 雅之, 山田 弘, 漆谷 徹郎, 大野 泰雄
    セッションID: P47
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】トキシコゲノミクス・インフォマティクスプロジェクト(TGP2)では,毒性マーカー遺伝子の探索を行なっている。今回,トキシ コゲノミクスプロジェクトで構築されたデータベース(TG-GATEs)を用いて,薬剤誘発性胆管増生マーカー遺伝子の探索を実施した。
    【方法】6週齢のCrl:CD(SD)雄性ラットに約150の化合物を3, 7, 14, 28日間反復投与後24時間に剖検して得られた肝臓の病理組織学的 検査データおよび遺伝子発現データ(Affymetrix社製GeneChip)を用いた。病理組織学的検査において,いずれかの時点で胆管増生の所 見が認められた6種の陽性化合物(アセトアミドフルオレン,アリルアルコール,ロムスチン,メタピリレン,ナフチルイソチオシアネート, ニトロソジエチルアミン)および所見が認められなかった10種の陰性化合物の28日間反復投与後のデータを用いて薬剤誘発性胆管増生 のマーカー候補遺伝子を抽出した。マーカー候補遺伝子の抽出にはSupport vector machine(SVM)- Recursive feature elimination (RFE)を用いた。
    【結果】28日間反復投与後の肝臓の遺伝子発現データを用いて,91遺伝子(95プローブセット)からなるマーカー候補遺伝子を得た。TGGATEs 中の全化合物を用いたバリデーションを行い,7, 14, 28日間反復投与後に得られたデータについて,いずれもSensitivity 50% 以上,Specificity 95%以上の精度が確認された。また,得られたマーカー候補遺伝子には,細胞増殖に関連したCcnd1や,胆管上皮細 胞のマーカーであるKrt19等,胆管増生の病態を反映していると考えられる遺伝子が含まれていた。以上のことから,今回得られたマー カー候補遺伝子は胆管増生の評価に有用であることが示唆された。
  • 齊藤 航, 清澤 直樹, 山内 秀介, 熊谷 和善, 矢本 敬, 三分一所 厚司, 古川 忠司
    セッションID: P48
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
    会議録・要旨集 フリー
     メタボノミクスは生体内の代謝物を網羅的に解析する手法であり,毒性変化を捉える手段として注目されている。メタボノミクスに よるバイオマーカー探索では,毒性を誘発する化合物の投与により疾患モデルを作製し,その尿や血液を対象として代謝物を測定する ことが一般的に行われている。代謝物を解析する際に,投与した化合物由来の外因性代謝物と内因性代謝物を区別する必要があるが, 溶媒投与による対照群と投薬群の比較では薬物の代謝過程によって生じる変化と毒性に起因する変化を区別することが困難であった。 我々は,毒性変化を誘発する化合物と毒性を発現しない類縁体を比較解析することにより,毒性バイオマーカーの抽出を試みた。本研 究では代表的肝障害物質であるアセトアミノフェン(APAP)と肝障害を惹起しないと報告されている類縁体N-メチルアセトアミノフェ ン(N-Me APAP)を用いた。9週齢の雄性F344ラットにAPAPまたはN-Me APAPを500 mg/kgまたは800 mg/kgの用量で単回経口投 与し,投与後24時間の蓄積尿および投与24時間後の血漿を液体クロマトグラフィ/飛行時間型質量分析(UPLC/TOF MS)の陽イオン モードで解析した。群内でばらつきが少なく,一定以上の強度のあるピークに注目して主成分分析を行った。その結果,血液化学およ び病理学的検査において,APAPの800mg/kg投与群でAST及びALTの有意な上昇と小葉中心性の肝細胞壊死が認められたが,N-Me APAP投与群ではそのような肝毒性変化は認められなかった。内因性代謝物に関して,APAP投与群でのみクレアチンやコルチコステ ロンなどの変動が顕著であり,毒性に関連した代謝物であると考えられた。その他の肝障害マーカー候補についても複数検出されてお り,現在解析を進めている。
  • 中津 則之, 神吉 将之, 山田 弘, 漆谷 徹郎, 大野 泰雄
    セッションID: P49
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
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    【目的】ヒトでの肝毒性を早期に検出あるいはモニターするためには血液等の非侵襲性サンプルの使用が必要である。我々は血液中のヒ ト肝毒性マーカー遺伝子の同定を目的とし,ラットをモデルに肝毒性を惹起する薬剤を投与したラット血液を用いて網羅的遺伝子発現 解析を実施し,血液中の肝毒性マーカー遺伝子の探索を試みた。
    【方法】ヒトで肝障害の報告があり,ラットで肝細胞壊死の惹起が報告されているチアオセトアミド,メタピリレン,クマリン,ブ ロモベンゼンをCrl:CD(SD)ラットにそれぞれ単回および反復経口投与し,単回投与後3, 6, 9, 24時間および3, 7, 14, 28日間反 復投与後に剖検を実施した。PAXgene Blood RNA System(PreAnalytiX社)を用いて全血からRNAを抽出した。抽出したRNAは GLOBINclear kit(Ambion社)によりグロビンmRNAを除去した後,Rat Genome 230_2.0 Gene Chip(Affymetrix社)を用いて遺伝 子発現データを取得し,肝機能パラメータおよび肝臓組織所見との相関を検討した。
    【結果】AST,ALT値の増加および肝細胞の壊死が単回投与6時間後および3日間反復投与後から用量依存的に認められた。遺伝子発現 解析の結果,4薬剤共通で変動を示す遺伝子が抽出された。これらの中にはIFIT family遺伝子など肝細胞壊死や炎症性サイトカインと の関連が報告されている遺伝子が複数含まれていた。本検討により抽出された変動遺伝子セットは,肝細胞壊死を非侵襲的に検出ある いはモニターできる可能性があり,現在肝細胞壊死のマーカー遺伝子としての妥当性を確認する為にリポポリサッカライドやデキサメ タゾン等を用いて検証を進めている。
  • 半田 千彰, 武藤 信一, 中津 則之, 赤羽 敏, 山田 弘, 大野 泰雄, 漆谷 徹郎
    セッションID: P50
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
    会議録・要旨集 フリー
    【背景】トキシコゲノミクス・インフォマティクスプロジェクト(TGP2)では,トキシコゲノミクスプロジェクト(TGP)で蓄積された実 験データを活用して,非臨床試験・臨床試験の効率化を目的に,化合物によって誘導される肝/腎障害の研究を行っている。我々は, 肝障害の一つである肝線維化のマーカー探索を行っており,過去に,四塩化炭素の少量投与実験データから炎症に関与していると考え られる3遺伝子(Ccl2,Lbp,Gstm4)をマーカー候補として抽出し,それらを用いた判定・予測能が良好であったことを報告している。 本研究では,より判定・予測能を高めるために,四塩化炭素の高用量投与実験のマイクロアレイ発現データからマーカー候補を抽出し 検討した。【結果】インフォマティクス手法による解析の結果,以前の3遺伝子とは異なる組み合わせのマーカー候補を抽出した。それ らのマーカー候補の発現値をスコア化して,肝線維化の病理所見がある6化合物のサンプルの判定能をROC曲線により確認したところ, 高いAUC値を示した。化合物毎に判定結果を確認したところ,本研究のマーカー群の方が判定率が高かった化合物,逆に,以前のマー カー群による判定率の方が高い化合物があった。また,今回のマーカー候補による予測では,以前の予測と比べると肝線維化の病理所 見を伴わない傾向があることを確認した。【考察】新たなマーカーの生物学的機能を検討した結果,線維形成との関与が示唆された。以 前の炎症と関連があるマーカーとは異なる機序に基づいたマーカーであり,これらを相補的に利用することで判定・予測能を高められ ると考えられる。また,今回のマーカーによる予測で肝線維化の病理所見を示さない化合物を調べたところ,胆管増生の所見がある化 合物が多く,肝線維化との関連を否定するものではなかった。
  • 甲斐 敏裕, 弓立 恭寛, 青木 幹雄, 山田 徹, 木村 徹, 山田 弘, 漆谷 徹郎, 大野 泰雄
    セッションID: P51
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
    会議録・要旨集 フリー
    体内に入った薬物は,肝臓の薬物代謝酵素(CYP,UGTなど)によって代謝され,多くの場合は活性を失って体外に排出される。しかし, 代謝によって反応性代謝物を生成する薬物もあり,これらが細胞内のタンパク質への共有結合や代謝過程で生じた活性酸素種による酸化ス トレスにより薬物性肝障害を引き起こすことがある。体内で反応性代謝物が生成すると,通常はグルタチオンなどによって無毒化されるが, 投与期間・遺伝的素因・環境など様々な要因により5000人に1人以下の低頻度で致死的な肝障害が発生し,薬の市販後に市場からの撤退 や使用制限を余儀なくされることがある。このため,臨床開発前に反応性代謝物生成について評価できる方法の確立が求められている。
    トキシコゲノミクスプロジェクト(TGP)データベースの150化合物から,文献情報に基づき10個の陽性化合物と13個の陰性化合物を選び, ヒト初代肝細胞の薬物添加24時間後の遺伝子発現データを対象に,PAM(Prediction Analysis of Microarrays)法を用いて,バイオマー カー探索を行った。得られたマーカーセットを用いて,残り全化合物の反応性代謝物生成ポテンシャルを評価した。
    PAM法を用いて,薬物添加24時間後のヒト初代肝細胞の遺伝子発現データから,反応性代謝物生成リスクを評価できる47プローブセット を得た。クロスバリデーション法で予測精度の評価を行うと,これらのマーカーは学習セット化合物を高精度(正確度96%,感度90%,特 異性100%)で判別することができた。また,残り約130化合物について予測を行うと,陽性スコアが上位の化合物の多くで反応性代謝物 や活性酸素種の生成の報告があることがわかった。これらの結果から,このマーカーセットは反応性代謝物生成リスクの評価に有用である と考えられた。
  • 鳥塚 尚樹, 中津 則之, 小野 敦, 山田 弘, 漆谷 徹郎, 大野 泰雄
    セッションID: P52
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
    会議録・要旨集 フリー
    【背景・目的】トキシコゲノミクス・インフォマティクスプロジェクト(TGP2)は国立医薬品食品衛生研究所,(独)医薬基盤研究所およ び製薬企業13社の共同研究プロジェクトであり,150を超える化合物のラット肝遺伝子発現データ及び関連する毒性学的データを用い て安全性バイオマーカーの探索を行っている。本発表では,TGP大規模データベースを用い,小胞体ストレス関連遺伝子のラット肝に おける発現変動について報告する。
    【方法】150化合物を投与開始時6週齢の雄性SDラットにそれぞれ単回および28日間反復投与し,計8時点で肝臓を採取した。遺伝子発 現解析には,Affymetrix GeneChip Rat 230 2.0を用いた。
    【結果】文献情報に基づき小胞体ストレス関連遺伝子をリスト化し,そのうち有意な発現が認められた70プローブセットを解析対象とし た。遺伝子発現変動には単回投与後ラット肝のGeneChipデータを用いた。発現変動が大きい化合物の多くでは,反復投与時に肝に病 理学的変化が見られ,遺伝子発現変動で複数のheat shock proteinの増加が見られた。また,発現変動が大きい化合物には非ステロイ ド性抗炎症薬(NSAIDs)が多く含まれた。NSAIDsによる消化管障害と小胞体ストレスの関連性については研究例が多いが,肝での遺 伝子発現変動が大きかったことは興味深い。NSAIDs以外では,ダナゾール,チクロピジンなど,28日間までの反復投与でラットに顕 著な肝障害を示さなかったものの臨床使用では肝障害の報告がある化合物も含まれた。以上の結果から,単回投与時の小胞体ストレス 関連分子の発現変動の評価は,毒性試験で多用されるラットにおける反復投与時の肝毒性や,ヒトでのリスクの可能性を予測する一助 になるものと考えられた。
  • 安藤 洋介, 武井 誠, 齊藤 航, 谷本 友恵, 清澤 直樹, 眞鍋 淳, 三分一所 厚司, 岩渕 晴男, Klaus-Peter ADA ...
    セッションID: P53
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
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    【目的】医薬品開発でしばしば生じる問題として精巣毒性があるが,細胞の多様性と種々のホルモンの影響からその発症機序は不明なこ とが多く,毒性評価は容易ではない。そのため,精巣毒性の評価に発症機序に基づいた適切なバイオマーカーが望まれる。本研究では, ヒトや実験動物において精巣などの細胞分裂や代謝が盛んな組織で毒性を発現するEGMEに関して,メタボノミクス解析によりラット 精巣毒性の発症機序とバイオマーカーの探索を試みた。【材料と方法】EGMEを30,100 mg/kg/dayで1,4,14日間反復経口投与した 雄性F344ラットから血清,24時間尿,精巣,肝臓を採取し,UPLC-MSとGC-MSにより内因性代謝物の変動を解析した。また,精巣, 精巣上体,肝,腎,胸腺の病理組織学的検査を実施した。【結果と考察】病理組織学的には,100 mg/kg群のDay 14においてのみ,精 巣で分裂期精母細胞の単細胞壊死,円形または伸長精子細胞と精母細胞の減少が,精巣上体で精子数の減少が認められた。メタボノミ クス解析では,主にアミノ酸代謝あるいは脂肪酸β酸化に由来するザルコシン,ジメチルグリシン,種々のカルニチン,グリシン抱合 代謝物の変動が,精巣で組織変化が発現するよりも早期から,または組織変化のない30mg/kgにおいても認められた。代謝パスウェイ 解析の結果,電子伝達フラビン蛋白質を補因子としたフラビン蛋白質脱水素酵素群による触媒反応が代謝物の変動に共通して関与する ことが判明した。また,この触媒反応を欠如したヒト遺伝性疾患である多種アシルCoA脱水素酵素欠損症においても本研究の結果によ く類似した血清と尿中の代謝物プロファイルが報告されている。これらのことから,フラビン蛋白質脱水素酵素群が関与する代謝パス ウェイの阻害がEGMEにより誘発される精巣毒性の発症機序であり,その下流で変動する代謝物は精巣毒性を予測あるいは診断するバ イオマーカーになり得ると考えられる。
  • 竹内 有沙, 坂口 実, 馬場 きみ江, 谷口 雅彦, 芝野 真喜雄, 高岡 昌徳
    セッションID: P54
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】アシタバは,伊豆諸島に自生する日本特産の大型セリ科植物で,最近では健康野菜として食されており,アシタバ含有の機能性 食品も注目されている。アシタバには,カルコン類であるXanthoangelolおよび4-Hydroxyderricinが特に多く含まれている。これま でに,両化合物は癌の転移や血管新生に抑制作用を示すことや,Xanthoangelolがヒトの神経芽細胞腫の増殖に抑制作用を示すことが 報告されている。今回,ヒト胃癌細胞株であるKATO III細胞を用いて,その増殖や生存に及ぼす両化合物の影響について検討した。
    【方法】KATO III細胞に対するXanthoangelolと4-Hydroxyderricinの細胞増殖抑制作用は,WST-1法で吸光度を測定することにより 検討した。細胞周期進行に及ぼす影響は,細胞を固定後,DNAをヨウ化プロピジウムで染色してフローサイトメトリーにより解析した。 また,アポトーシス細胞の形態変化は,ヘキスト33342で核を染色した後,蛍光顕微鏡により観察した。さらに,アポトーシス細胞の 定量は,細胞表面に露出したホスファチジルセリンと特異的に結合するアネキシンVの結合量を指標として,フローサイトメトリーで 測定した。
    【結果および考察】KATO III細胞の増殖に対して,Xanthoangelolと4-Hydroxyderricinの両化合物とも濃度依存的な抑制作用を示し, 72時間後の50%抑制濃度はそれぞれ約15μMと約5μMであった。そこで,両化合物の細胞周期進行に及ぼす影響を解析したところ, 両化合物とも著しい影響を及ぼさなかったが,sub G0-G1細胞の増加を誘導した。また,両化合物で処理したKATO III細胞では,ア ポトーシス誘導された細胞の特徴である核の凝集や断片化が認められた。さらに,両化合物は濃度依存的,経時的にアポトーシス細胞 数を増加させた。以上の結果より,両化合物によるKATO III細胞の増殖抑制作用は,アポトーシスを誘導することによって起こること が示唆された。現在,両化合物によるアポトーシス誘導機構について検討中である。
  • 望月 義也, 辻 まゆみ, 小山田 英人, 大田 美智, 小口 勝司
    セッションID: P55
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
    会議録・要旨集 フリー
     ヒト肝臓細胞ではalcoholにより活性酵素種(ROS)が生成され,その酸化ストレスでアポトーシスが誘導される。これには主にミト コンドリアを介した経路と,death receptor を介した経路が知られている。しかしそれらの詳細な機構は未だ不明な部分も多い。ま た近年,ROS合成酵素であるNADPH oxidase(NOX)の同位体が肝細胞膜に存在する事が報告された。我々は,ethanol によるFas death receptorを介するアポトーシス経路とNOXの関連について検討した。
     実験には,alcohol dehydrogenaseの発現が報告されているヒト肝癌細胞株SK-Hep-1細胞を使用し,Fas death receptorを介す るアポトーシス経路を遮断するために,Fas death receptorのアダプター分子であるFas assosiated death domain(FADD)をノッ クダウンしたdominant negative FADD(dnFADD)SK-Hep-1細胞を作製した。各細胞はethanol (50mM ~500mM)処置し,さらに, NOX阻害剤であるapocyninを前処置した。
     wild SK-Hep-1細胞ではethanol処置によりROSの増加及びcaspase-8,-3活性の上昇,single strand DNAの増加,mRNAレベルで Fas及びNOX4発現の増加が認められた。dn FADD SK-Hep-1細胞のcaspase-8,-3活性は,wild SK-Hep-1細胞に対して有意に抑制 されていた。また,apocynin前処置群ではcaspase-8,-3活性が無処置細胞に比較して有意に抑制された。
     結論としてSK-Hep-1細胞におけるethanolは,NOX4を活性化させROS産生増加による酸化ストレスを促し,Fas death receptor を介してアポトーシスを誘発する事が示唆された。
  • Enkhbaatar ULZIIKHISHIG, 今泉 直樹, 安仁屋 洋子
    セッションID: P56
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
    会議録・要旨集 フリー
    The mitochondrial permeability transition (MPT) is a sadden increase of the mitochondrial membrane permeability caused by opening the MPT pore and has been implicated as being involved in cell necrosis and some types of cell apoptosis. Previously we reported that mitochondrial membrane-bound glutathione transferase (mtMGST1) is involved in oxidative stress-induced MPT pore opening. Since copper ion preferentially facilitates ROS formation including hydroxyl radicals, we examined whether copper ion causes the MPT pore opening through mtMGST1 activation. When mitochondria or subfractions were incubated with copper chloride, mtMGST1 in mitochondrial outer membrane (OMM), not inner membrane, was activated accompanied by disulfide-linked mtMGST1 dimer formation. Hydroxyl radical were detected by treatment of mitochondria with copper ions. By incubation of mitochondria with copper ions, mitochondrial swelling was observed in which GST inhibitors such as S-hexylglutathione (SHx) and tannic acid (TA), singlet oxygen quencher L-histidine (His), and ADP inhibited the swelling whereas a classical MPT inhibitors cyclosporine A and bongkrekic acid did not inhibit. In Western blot analysis, the mtMGST1 content was decreased in mitochondria after swelling by copper ion and the decrease was prevented by swelling inhibition with SHx, TA, His, and ADP. These results indicate that mtMGST1 is involved in copper ion-induced MPT pore opening.
  • 森山 智之, 花見 正幸, 堀江 利治
    セッションID: P57
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】ドキソルビシン(DXR)は,重篤な心筋症を引き起こすことが知られている。その発症にはDXRセミキノンラジカルに起因する 酸化ストレスが関与することが知られている。蛋白糖化反応は,糖とアミノ酸の非酵素的反応であり,複雑な過程を経て最終産物と して糖化反応後期生成物(AGE: Advanced Glycation End-product)が形成される。このAGEは糖尿病合併症の発症に関与すること が知られている。数あるAGEのうち,ペントシジン及びカルボキシメチルリジン(CML)は,その形成過程で酸化が必須とされている。 酸化反応は,DXR心筋症の発症に重要な役割を演じているだけでなく,AGEの形成も亢進させる。従って,DXR心筋症における蛋白 糖化反応の関与の可能性について検討した。
    【方法】雄性SDラットに2 mg/kg DXRを週1回8週間投与し心筋症モデルを作製し,心筋症を心エコー,病理組織検査,及びトロポニン I測定により経時的に評価した。心筋及び血漿中ペントシジン及びCML,酸化ストレスマーカー,及び血漿グルコースも経時的に測定 した。また,ペントシジンの局在を確認するため,免疫組織染色を行った。さらにAGE形成阻害剤による影響も検討した。
    【結果・考察】DXRを投与したラットで,6週目より左室内腔の拡張を伴う心収縮力の低下がみられた。心筋症発症と同時期に,心筋中 でペントシジン及びCMLが増加した。この増加に先立ち,酸化ストレスマーカーが変動したが,血糖値に変動はみられなかった。また, 心筋病変部位にほぼ一致して,ペントシジン陽性顆粒が認められた。DXR心筋症と心筋AGEとの間には有意な相関関係が認められた。 AGE形成阻害剤により,AGEの形成が抑制され,心筋症が軽減された。以上の結果より,DXRが酸化ストレスを介し,心筋細胞内で AGE形成を亢進させることが明らかとなった。また,蛋白糖化反応がDXR心筋症の病態形成に関与することが示唆された。
  • 内野 正, 仲川 清隆, 五十嵐 良明, 西村 哲治, 宮澤 陽夫
    セッションID: P58
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
    会議録・要旨集 フリー
    目的:ヒト皮膚は紫外線等の酸化ストレスに常に曝されており,皮脂のスクアレン(SQ)は太陽光暴露により酸化修飾を受けスクアレ ンモノハイドロペルオキシド(SQOOH)を生じることが報告されている。我々は太陽光暴露により6種類のSQOOH異性体が生成する ことを既に報告したが,各異性体がヒト皮膚細胞に及ぼす影響は明らかでない。そこで3次元培養ヒト皮膚モデルを用いて各異性体単 独あるいはそれらの混合物の細胞毒性及びサイトカイン産生能を検討した。
    実験:SQOOHの6種類の異性体(2-OOH-SQ, 3-OOH-SQ, 6-OOH-SQ, 7-OOH-SQ,10-OOH-SQ, 11-OOH-SQ)及びそれらの混合 物(m-SQOOH)をVitro-life Skinに24時間暴露し,細胞毒性をテトラカラーワンで評価し,培地中のIL-1αをELISAで定量した。
    結果・考察:m-SQOOHは20 mMまでは細胞毒性は認められなかった。2-OOH-SQは5 mMで細胞生存率が有意に減少した。 2-OOH-SQはm-SQOOHよりも低濃度でIL-1αの産生を有意に増加させた。SQOOHは酸化修飾部位の違いにより細胞毒性及びIL-1 αの産生能が異なり,各SQOOH異性体のヒト皮膚中の存在量や他のサイトカイン産生能への影響等,今後更なる検討が必要と思われ た。
  • 坪田 健次郎, 神吉 将之, 竹内 文乃, 能登 貴久, 白木 克尚, 小野 美穂子, 大石 裕司, 中山 裕之, 松本 正博
    セッションID: P59
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
    会議録・要旨集 フリー
    【緒言】ラット卵巣では,発情前期の夕方になるとグラーフ卵胞で卵胞液が増加し,卵胞腔は拡張し,発情期の早朝に破裂・排卵すると ともに黄体化が始まる。本検討ではこれらの形態学的,生理学的な経時的変化に伴う,排卵前後の卵胞および初期黄体における遺伝子 発現プロファイルについて調べた。【材料と方法】9週齢のCrl:CD(SD)系雌性ラットを用いて,5日間採取した膣スメアから性周期を判 定し,発情前期の動物を選択した。12時間間隔[発情前期の10時と22時(排卵前),発情期10時(排卵後)]の3時点で各3例の卵巣を採取 した。凍結切片を作製し,グラーフ卵胞,初期黄体をLaser microdissectionで切出し,total RNAを抽出後,Affymetrix製GeneChip (Rat230_2.0)にて遺伝子発現データを取得した。【結果・考察】発情前期10時と比較した遺伝子発現解析の結果,<1>発情前期22時 においてのみ変動する遺伝子(1073 probe sets),<2>発情期10時においてのみ変動する遺伝子(694 probe sets),<3>排卵過程 の進行とともに経時的に発現量が増加する遺伝子(598 probe sets),<4>発情前期22時および発情期10時の両時点で同様に変動す る遺伝子(354 probe sets)の4つの発現変動パターンを示す遺伝子群が抽出された。それぞれの遺伝子群についてIngenuity Pathway Analysisによる解析を行った結果,<1>にはテストステロン合成やGTP加水分解に関連する遺伝子が,<2>には糖分解,アンドロ ゲンシグナリング,細胞死,アクチン重合化や細胞移動に関連する遺伝子が,<3>には細胞接着,細胞死やアクチン重合化に関連す る遺伝子が,<4>にはプロゲステロン代謝,細胞移動や血管新生に関連する遺伝子がそれぞれ含まれていた。今回得られた排卵前後 の遺伝子発現プロファイルは,今後さらなる詳細な解析を進めることにより,化学物質による排卵阻害などの毒性の機序を考察する上 で有用なものになると考えられる。
  • 浅川 直之, 大塚 純, 角 将一, 水谷 立美, 吉澤 和彦, 古田 富雄, 松本 常男, 栗田 晃伸, 鈴木 勝也, 鈴木 倫, 小林 ...
    セッションID: P60
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】ペントバルビタール(PB)ナトリウム製剤は実験動物の全身麻酔薬として広く使用されている。我々はヒト・動物用医薬品であ るネンブタール注射液(NT)を繁用していたが,近年,販売中止となったことから,動物用医薬品であるソムノペンチル(SP)を使用す ることとした。しかし,NTとSPでは成分含量や添加物が異なること,これまでNTを用いたマウスの麻酔において,成書で謳われて いる至適投与用量(saline希釈,50 mg/kg,腹腔内投与)を投与しても十分な麻酔効果が得られない個体が出現することから,SPの使 用に先立ち,マウスにおけるSPの最適な麻酔法を確立するため,まず麻酔用量の検討を行った。さらに,マウスでは製剤を希釈して 投与する必要があることから,希釈溶媒をsalineからNTおよびSPの添加物であるEtOH(10%)に変更して比較検討を行った。また, 上記検討において得られた最適な麻酔用量を用いて,希釈溶媒による麻酔効果の差を体内動態の面から解析した。
    【方法】10%EtOHまたはsalineで希釈した各用量(50.5,64.8および84.3 mg/kg)のSPを8週齢のCrlj:CD1(ICR)マウスに腹腔内投与 し,麻酔深度の判定基準に従って麻酔効果を比較した。また,最適な麻酔用量(salineまたは10%EtOH希釈)での血漿中および脳中PB 濃度をHPLCを用いて測定し,薬物動態学的解析を行った。
    【結果および考察】10%EtOHで希釈したSP 64.8 mg/kgを腹腔内投与する麻酔条件がその効果の確実性,持続性の面から最適であっ た。また,64.8 mg/kgでは,脳のT1/2(消失半減期),AUC(濃度-時間曲線下面積)およびMRT(平均滞留時間)はsaline希釈と比べて 10%EtOH希釈で高値傾向を示したが,血漿中濃度推移は顕著な差が認められなかった。このことから,マウスでのSP投与では,希 釈溶媒がPBの脳移行性に影響を与え,10%EtOHはsalineよりもSPの麻酔効果を増強させることが明らかとなった。
  • 勝山 博信, 松島 眞浩, 日根野谷 一, 伏見 滋子, 富田 正文, 渡辺 洋子, 日高 和夫, 西條 清史
    セッションID: P61
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
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    【緒言】植物エストロゲンの一種であるゲニステインは骨粗鬆症予防や更年期症状の軽減に効果があると言われるが,妊娠動物に投与す ると胎児生殖機能に影響すると言われる。しかしながら,骨格系に対する影響は知られていないので,ゼブラフィッシュ骨格系に対す る影響を検討した。
    【材料と方法】TL系統ゼブラフィッシュ受精卵に,受精後1日から5日まで種々の濃度のゲニステインを暴露し,死亡率,生存胚の形態 変化,alcian blue染色による骨格の形態を調べた。さらに,軟骨形成に関与するソニックヘッジホッグ(Shh)及びその受容体である Patched遺伝子の発現をin situ hybridization法にて検討した。
    【結果及び考察】ゲニステイン暴露5日後の死亡率は,45μMで約50%,50μMでは100%であった。このことより,ゲニステインは初 期胚に対して致死的に働くと考えられた。生存胚の形態では,頭部形態異常,心臓周囲や卵黄嚢の浮腫,体軸の湾曲などの変化を認め た。Alcian blue染色で頭蓋骨格の形態変化を調べたところ,メッケル軟骨と舌骨の変形を認めたが,篩骨の変化は認めなかった。又, in situ hybridization法ではShhやPatchedの軽度の発現抑制を認めた。
    以上より,高濃度のゲニステインは初期胚に対して致死的に働き,生存胚に対しても軟骨形成を阻害することが明らかとなった。
  • 石川 典子, 平田 真理子, 須永 昌男, 中山 拓生, 木口 雅夫, 松浦 正男, 今井 俊夫, 小川 久美子, 西川 秋佳
    セッションID: P62
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
    会議録・要旨集 フリー
    アルミニウムは、土壌中に含まれる3番目に多い元素であり、アルツハイマー病との因果関係をめぐり、研究されてきたテーマでもある。摂取されたアルミニウムはヒトにおいては99%以上吸収されないと言われているが、腎臓透析患者では、アルミニウムが腎臓から排泄されず一時的に蓄積されて嘔吐、下痢などの症状を惹き起すことも知られている。
    アルミニウムはその手軽さから、調理器具など種々のアルミニウム製品を始めとして、着色料や乳化剤などの食品添加物としても多用されているが、アルミニウムの消化管からの吸収は、化合物の種類、pH、共存物質などの種々の影響を受けると言われている。今回、食品添加物として使用されているアルミニウム化合物の安全性評価の一環として、その生物学的利用能試験を行うのに際し、ラット血清中のアルミニウム濃度測定に関する検討を行った。
    アルミニウムの測定法としては、原子吸光度法やICP-AES法、ICP-MS法などが知られているが、我々は迅速・簡便な方法としてHPLC-蛍光法を選択した。硝酸による除タンパクを行い、得られた上清をアルミニウム専用カラムを用いて測定し、直線性・再現性・定量限界・回収率などについて検討した。また、Crl:CD(SD)系ラットに、生理食塩液で調製した硫酸アルミニウムと乳酸アルミニウム溶液を静脈内および胃内に単回投与し、経時的に採血してラット血清中のアルミニウム濃度を測定したので、その結果について併せて報告する。
  • 高田 達也, 栗田 弘史, 安田 八郎, 高島 和則, 水野 彰
    セッションID: P63
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
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    [背景]喫煙はがんを引き起こす要因の1つである。がんについての研究が世界中で行なわれ,そのメカニズムが明らかにされてきている。 がんが引き起こされる原因の1つとしてDNA突然変異があり,DNA損傷と喫煙の関係について詳細な知見を得ることは極めて重要であ ると考えられる。本研究では,従来法では難しい個々の分子の挙動や長鎖DNAに対する解析を行うため,蛍光顕微鏡を用いた1分子観 察によるDNA損傷の解析を試みた。
    [方法]既報に従いタバコ煙抽出液を調製し,従来法であるアガロースゲル電気泳動により調製したタバコ煙抽出液によるDNA損傷の解 析を行なった。続いて長鎖DNAとタバコ煙抽出液を反応させ,そのDNAをガラス基板上に固定させて個々のDNA鎖長を直接計測した。
    [結果および考察]アガロースゲル電気泳動による解析では環状2本鎖DNAを用いた。その結果,1本鎖切断による環状DNAの構造変化 が観察された。1分子DNA蛍光観察によるDNA損傷の解析では,直鎖状長鎖DNAを用い,タバコ煙抽出液の濃度の上昇と反応経過に伴っ てDNA鎖長が減少している様子を直接観察することに成功した。また反応速度論的解析を行ったところ,切断頻度を定量化することが でき,得られた切断頻度がタバコ煙抽出液の濃度に比例することが示された。
    [結論]1分子観察法を用いて,電気泳動法では困難であったタバコ煙抽出液による長鎖DNAの切断が解析を行い,切断反応の反応速度 論的解析が可能であることが示された。本手法は他の化合物等によるDNA切断やその抑制物質の探索にも適用されると期待される。
  • 坂田 孝, 西尾 綾子, 小田 康雅, 塩原 範久, 松本 清司
    セッションID: P64
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
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    【目的】我々は,第32回本学会において,動物用血液分析装置XT-2000iVを用いた骨髄有核細胞数の計測が可能であることを報告した。 今回,我々はBN,MES, BN.MES-Cybames等の骨髄顆粒球系細胞の増殖を示すラット系より採取した骨髄を用いて骨髄細胞粗分類の 可能性について検討したので報告する。
    【方法】測定試料は,大腿骨より骨髄を採取し,生理食塩水で細胞浮遊液とした後,孔経0.1mmのナイロンメッシュを用いて濾過し, XT-2000iVで測定しマニュアル解析機能を用いて細胞分類値を求めた。対照法して,サイトスピン法で塗抹標本を作製し,目視にて 500細胞をカウントした。
    【まとめ】XT-2000iVの測定結果は,側方散乱光強度と蛍光強度の二次元スキャッタグラムとして表示され,側方散乱光強度は細胞内 部構造の複雑さ(核形態,顆粒の有無,顆粒の大きさなど)を反映する,蛍光強度は主にRNA量を反映しており,幼若なステージの細胞 ほど強い蛍光を発する。各細胞は,二次元スキャッタグラム上,非ミエロイド系細胞群(リンパ球,赤芽球),ミエロイド系細胞群(好 中球系細胞),好酸球系細胞群の3群に明瞭に分画された。各群の比率と目視法の比率の間には,良好な相関(相関係数r>0.85)が認め られ,骨髄系細胞の造血動態を簡便に把握可能と考えられた。本法を骨髄毒性の評価として用いるには,更に赤芽球系細胞とリンパ球 の分離が必要であるが,この点については現在,フェニルヒドラジン投与ラットの骨髄造血動態を検索中であり,この成績も合わせて 報告する予定である。
  • 横田 俊二, 高島 宏昌, 宮原 敬, 吉田 由香, 根倉 司, 斉藤 義明, 平林 尚之, 渡辺 卓穂, 太田 亮, 堀内 伸二, 藤谷 ...
    セッションID: P65
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
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    【目的】近年,化粧品を始めとした多様なナノ素材が我々の日常において利用されるようになり,今後はヒトへのナノ素材の暴露がさら に増加することが予想されている。一方,鼻腔から吸入されたナノ粒子が嗅覚神経を経由して嗅球や脳に移行する可能性が高い事が最 近になって報告されており,呼吸器系のみならず中枢神経系へのナノ粒子の及ぼす影響について早急に調べる必要性がある。【方法】我々 は雄ラットにナノ粒子を多く含むディーゼル排気粒子(NRDEP,個数モード径:21nm)を2週齢から週1回の頻度で4週間,10または 50μg/ratの用量で点鼻投与し,6週齢から行動学的検査を実施した。なお,対照群として偽操作群および溶媒(0.05%Tween80-生理 食塩液)投与群を設定した。【結果】6週齢で実施した自発運動量測定では,NRDEP 10μg/ratを投与した動物で有意な運動量の増加が 認められた。また,9週齢で実施したshuttle boxを用いた条件回避学習能検査ではNRDEP投与動物で回避率の低下傾向が認められた。 14週齢で脳を摘出し,扁桃体内側核,乳頭体内側核,視床下部外側野および視床下部内側核をパンチアウトし,それぞれのモノアミン 含量を測定したところ,NRDEP投与動物で乳頭体内側核のドパミンおよび代謝物(DOPAC)含量の低下傾向が認められた。【考察】本 検討の結果から,鼻腔に侵入したナノ粒子は中枢神経系の神経伝達物質レベルに影響を与え,動物の情動性や学習能に影響を示す可能 性がある事が示唆され,さらなる検討が必要と考えられた。
  • 森下 裕貴, 吉岡 靖雄, 山下 浩平, 東阪 和馬, 吉田 徳幸, 藤村 真穂, 長野 一也, 阿部 康弘, 鎌田 春彦, 今澤 孝喜, ...
    セッションID: P66
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
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    近年,ナノマテリアル(NM)の開発・実用化が進展し,化粧品・食品など,直接ヒトに適用する分野で汎用されており,既にNMは我々の生活に不可欠な 素材となっている。一方でNMは,粒子径の減少に伴い,革新的な機能だけでなく,従来のサブミクロンサイズ以上の素材には無い未知の生体影響を呈し てしまうことが危惧されつつあり,その安全性評価と安全性確保が急務となっている。しかしながら,未だNMのリスク評価に必須となる動態情報やハザー ド情報は世界的にも乏しい。特に生殖組織への影響評価は,次世代にまで影響が及ぶ点で最優先課題と考えられるが,詳細に検討した例は国内外を問わず 皆無に等しい。そこで本研究では,NMの次世代影響に及ぼす基盤情報の収集を目的に,既に化粧品基材・食品添加物として汎用されている非晶質ナノシ リカ(nSP)を用い,精巣への移行性等を評価した。経皮経路で体内への侵入が確認されている粒子径70nmのnSP70と,従来型のサブミクロンサイズ以上 の粒子径300,1000 nmのnSP300,mSP1000を,雄マウスに2日間連続で尾静脈投与した後,精巣組織への移行性を透過型電子顕微鏡により観察した。 その結果,nSP300,mSP1000は精巣組織への移行が観察されず,nSP70は血液精巣関門を通過し,セルトリ細胞や精母細胞内に移行することが明らか となった。また,精母細胞においては,細胞質だけでなく核内にまで移行していた。次に,精巣組織の機能に及ぼす影響を,血中テストステロン量及び病 理組織学的に解析した。以上の結果から,nSP70は精巣血液関門を突破し,精巣組織へ移行すること,今後のハザード研究が重要になることが示唆された。 今後はnSPの長期曝露による精巣移行性や,精子形成障害などを詳細に検討し,安全なNM設計に必須となる基盤情報を集積する予定である。
  • 栃木 彩恵子, 吉川 友章, 鍋師 裕美, 仲里 泰太郎, 松山 恵吾, 平井 敏郎, 近藤 小百合, 赤瀬 貴憲, 長野 一也, 阿部 康 ...
    セッションID: P67
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
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    非晶質ナノシリカ(nSP)は,乾燥粉末状食品や食塩などの吸湿/固結防止剤,化粧品の流動化剤として使用され,我々の生活の質の向上に必須の素材となっている。 nSPは粒子径を微小化,さらには分散化することによって吸湿性や流動性が向上するため,既に5-100nm程度のnSPが実用化されている。しかし,nSPに代表 される直径100nm以下の素材(ナノマテリアル:NM)は,サブミクロンサイズ(数百nm~数μm)以上の従来素材とは異なる有用機能を示す一方で,こういった 特有の機能が逆に予測しにくい生体影響を誘発し得るものと指摘され始めている。事実,昨年度の本会において我々は,粒子径70 nmの表面未修飾ナノシリカ (nSP70)がマウス尾静脈投与モデルにおいて血液凝固異常や種々の急性毒性を誘発し得ることを報告しており,nSP含有製品の開発支援に向け,安全なnSPを 設計するための指針提示の重要性を指摘している。そこで本演題では,nSPの安全性向上方策の抽出を目指して,nSP70の表面性状が血液凝固異常等に与える 影響を解析した。まず,粒子表面をアミノ基あるいはカルボキシル基で修飾したnSP(それぞれnSP70-N,nSP70-C)を尾静脈内より単回投与(100mg/kg)した マウスを用いて血球検査・凝固検査を実施した。その結果,nSP70投与マウスは投与後12時間以内に全例が死亡し,これらのマウスにおいては血小板数の顕著 な減少およびプロトロンビン時間の延長などが認められた。一方,表面修飾nSP投与群ではこれらの異常所見は全く認められなかった。以上の結果から,nSP の表面性状の適切な制御が安全なnSPの設計指針になり得ることが示された。現在,nSPの表面修飾と血液凝固活性化の連関をさらに詳細に追及している。
  • 納屋  聖人, 小林 憲弘, 遠藤 茂寿, 丸 順子, 江馬  眞, 中西 準子
    セッションID: P68
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/18
    会議録・要旨集 フリー
    工業ナノ材料は既存の材料にはない様々な優れた特性を持つことから,幅広い用途への応用が期待されている一方で,従来の知見から は予測できない毒性を持つのではないかという懸念も一部で持たれている。今回,我々は多層カーボンナノチューブ(MWCNT)をラッ トに気管内投与して,肺ならびに全身に対する影響を検討した。
    雄性SD系ラットにMWCNTの0, 0.04, 0.2, 1.0mg/kgを単回,気管内投与した。投与後3日,1週間,4週間,13週間,26週間の時点 で気管支肺胞洗浄液(BALF)中の細胞数,LDH,タンパク,各種サイトカインなどを測定して肺に対する影響を観察するとともに,大脳, 肝臓,腎臓,脾臓,肺の病理組織学的検査を行った。陽性対照として結晶性シリカの5mg/kgを同様に投与した。
    MWCNTの1.0mg/kgでは投与後3日の時点で,BALF中の白血球数,LDHが増加したが,以後の観察時点では変化は認められなかった。 肺の病理組織学的検査では投与後1週間までは炎症細胞浸潤などが認められた。肺胞ではMWCNTをマクロファージが貪食している像 が認められたが,時間の経過とともにマクロファージ内で繊維状のものが凝集している像が観察された。0.04, 0.2mg/kgではいずれ の観察時点においてもBALFならびに病理組織学的検査で変化は認められなかった。大脳,肝臓,腎臓,脾臓での病理組織学的検査で はいずれの投与量,観察時点においても変化は認められなかった。陽性対照の結晶性シリカでは,BALF中の白血球数増加,LDH増加, IL-1Bの増加,肺の病理組織学的検査での炎症細胞浸潤,泡抹状のマクロファージの集蔟が時間経過とともに著明となった。
    以上のことから,MWCNTをラットに単回気管内投与した場合には,肺に対する影響は投与量に関連して認められるが,可逆的な変化 であり,炎症が発現する用量においても全身に対する影響はないことが確認された。
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