研究目的繊維の諸性質が糸の強伸度にいかなる影響を与えるかを考察するために, まず諸性質にむらのない繊維からなる糸むらもない理想的な糸について最適より係数以前における理論的近似解を求めんとした.
研究結果(1) 紡績糸中の繊維の張力分布形としては等脚台形型が適当である.
(2) 最適より係数以前における外周繊維の切断より角度θ
R1bと繊維切断率λとの問に次の関係式を得た.
F (θ
R1b) =0.0047645√D/√ωαβγL0μ (1- (νλ) 2) (1+ε
b)
ただし上式において
F (θ
R1b) =1+2log (cosθ
R1b) /tan2θ
R1b, ε
b= (1+λ) ε
b/2
D, ω, L0, μ, ε
b : 繊維のデニール, 密度, 繊維長.摩擦係数, 切断伸度
α, β, γ, ν : 定数
ただし最適より係数における外周繊維の切断より角度β
R2bはλ=0.95として求めうる.
(3) 糸の切断伸度e
bは引張り前の外周繊維のより角度をθ
R0とすれば次式で示される.したがって測定時初張力を常に一定に保つときはより係数の増大と共に糸の切断伸度も増大する.
e
b≒ε
b (1+λ) /2 cosθ
R0(4) 糸の切断強力為は次式で示される.
Fb=NTbcosθ
rb=NTb (1+λ) cosθ
rb/2= (切断繊維強力+すべり繊維摩擦力) cosθ
rbただし上式において
N : 糸断面中の繊維数
T
b, T
b : 繊維の切断強力, 糸中の繊維の平均切断強力
cosθ
rb : 糸の切断時における繊維の糸軸に対する平均の傾斜
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