スラックスは, スカートに比べてかなり帯電電位が低いが, 材質によっては歩行中に帯電のために足にま
つわり
ついて着用感や外観を損なうことがある.
また, 作業着としてはスラックスが用いられることが多いので, 衣服の帯電が原因となる種々の障害を回避するためにも, その帯電を防止することは大切である.
そこで, 被服製作や着用の面からスラックスの帯電を防止するために配慮しうる点を検討する目的で, 脚部の形態の異なるスラックスを製作し, 歩行中の帯電電位を測定して次の結論を得た.
1) スラッスの形態の影響
歩行中のスラックスの帯電電位は, 裾や膝の幅が広い形態のもののほうが, 狭い形態のものに比べて全体的に平衡帯電電位が高くなる.
2) スラックスの部位による傾向
i) 同じスラックスでは, 裾付近がもっとも平衡帯電電位が高くなり, ついで, 膝付近であるが, 裾や膝の幅が非常に狭い形態のものは, 裾よりも膝付近のほうがやや高くなる傾向がある.
ii) 同じスラックスでは, 内側のほうが外側よりも高くなる.
3) ナイロンストッキング着用の影響
ポリエステルのスラックスは, ナイロンストッキング着用時には, 素足の場合に比べて帯電電位の増え方がやや速く, 平衡帯電電位も高くなる.
ウールのスラックスは, ポリエステルのスラックスに比べて, 素足の場合の帯電電位が低いが, ナイロンストッキング着用による影響もあまり見られない.
4) ま
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つきの傾向
ま
つわり
つきが生ずる場合には次の傾向がある.
ま
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つきは, 素足の場合には少なく, ナイロンストッキング着用時に多い.また, 帯電電位が高くなる形態のもの, すなわち, 裾や膝の幅が広い形態のものは, ま
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つきが多い.
以上まとめると, スラックスの帯電を少なくするためには, 運動機能を妨げない限度内で裾や膝の幅を狭くして, 足と布との摩擦や布同士の摩擦を避けることが必要である.
また, スラックスの下には, ナイロンストッキングをはくことを避け, 素足, または, もめん等の帯電性の小さい材質のものを着用することが望ましいと考える.
なお, 著者は別報で, スラックスに, 摩擦係数の小さい布地で膝当て布をつけることによって, 動作時のスラックスの運動機能性が増加する実験結果を報告した.また, 前報では, スカートにキュプラやポリエステルの裏地をつけることが帯電やま
つわり
つきの防止に効果があることが明らかになったので, スラックスに, これらの裏地で膝当て布をつげると, 動作時のすべりがよくなり, 帯電防止効果が加わるものと考える.
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